*加筆及び修正をしました(1/4)
-AKUMATONOTAIDAN-
「ゆんゆん来ないな」
私とカズマは今、浴場前でゆんゆんを待っている。
もう来ても良い頃合いのはずだが、ダクネスかアクアに止められているのだろうか?
「そうですね。何してるのでしょうか?」
こうやって二人で話していると本当にデートしてるみたいで楽しい。
「あっ!あれゆんゆんじゃないか?」
カズマの指差す方向には確かにゆんゆんがいた。
「でもダクネスとアクアも一緒なのは、どうしましょう」
予想通り、二人をまけなかったのだろう。
「向こうは気付いてないみたいだし逃げよう」
「そうですね。このまま集合場所に向かいましょう。たぶん二人に問いただされて、逃げられなくなったのでしょう」
そしてウィズの店にたどり着いた私達だったが。
「いらっしゃいま・・・せっ!?」
店内に入るとカズマ(バニル)がいた。
「やっと来たか小僧。貴様が来るまでこの体で貧乏店主を口説けるか試していたのだが、もう来てしまったか。いい所まできていたのだがな」
この悪魔はなんてタチの悪い嫌がらせを。
「えっ!バニルさん!バニルさんなんですか?」
「やっと気付いたか行き遅れ店主」
「誰が行き遅れですか!というか私の純情返してください!」
ウィズが珍しく結構本気で怒っている。
どの位かと言うとデュークへの勘違いに気付いた時ぐらいに。
「なんで俺の姿してんだアイツ。まさか元の体が無くなったから、次の体が、死ぬ間際に見た俺のになったとか?」
カズマはこの状況にある種の危機感を抱いたのか、そわそわしだした。
「そんな訳なかろうて、もしそんな事になっていれば、我輩が指名手配されていないであろう」
「そうなのか?じゃあなんで俺の姿してんだ」
予想は簡単につきます。
「この店主を騙すために決まっている。ほれ、この通り貴様らと会った時の姿である」
額には先程まで無かった文字が刻まれていた。
「それって、誰にでもなれるのか?」
「うむ、小僧の考えている通り、裸の美女になる事も出来るぞ。おおっと!これは予想していない所からも良い悪感情。我輩、今日は運がいいようであるな」
カズマが望めばそれくらいの事はしてあげるのに、どうしてこの悪魔なんかに頼もうとするのだろうか?
「そんな事考えてないから!いやホントだって!めぐみん!そんな目しないでくれ!」
「本当ですか?カズマは最近セクハラをしてくるのであながち間違っていない気がするのですが」
気にしてはいないけど、こういう時の材料には使える。
「そそそそんな事してないって」
誰がどう見ても怪しい。
「じゃあ、爆裂散歩の帰り道、手の動きが不自然になるのはなんなんですか?」
「それは手が疲れて・・・めぐみんの感触を楽しんでました。すいませんでした!でもホントにさっきのは思ってないから」
ここまでされるといじめたくなりますがやめておこう。
カズマに嫌われたくないから。
「この感じだと嘘はついてなさそうですね。バニル。本当は何を考えていたのですか?」
「小僧のパーティーで汝を除いた女性の水着姿であるな」
「ほう、カズマ!私が除かれている理由を聞こうじゃないか!」
どうせ私の胸が小さいからだろう。
許せない。
「いやなんで除かれてるのに怒ってんだよ」
除かれているから怒っている。
「だからなんですか?私は理由を聞いているのですが」
「分かった!話すから!目を輝かせるのやめてくれ!」
「仕方ないですね!」
カズマを睨みつけるのをやめた。
「えっと、そのめぐみんはその色々ちっちゃいから・・・あっ、ホントすいませんでしたあああ」
やっと気付いたカズマがまた土下座をした。
ウィズへ事の次第を伝え、自己紹介を済ませた。
「貴様らには感謝しきれんほどの悪感情を貰ったゆえ、何か見通して欲しい事を三つずつ聞いてやろう」
「何か企んでませんよね?」
バニルが此方の得になるような事を言う時は大抵そうだ。
「我輩は何も企んでなどおらん。ただ機嫌が良いだけであるぞネタ娘」
ここは我慢しないと話が進まなくなってしまう。
「そうですか。で用件はなんですか?」
「汝も想像がついているであろう。商談の話をそこの小僧とする事である」
「商談?なんの事だ?」
一人だけ取り残されるカズマ。
「バニルさん。商談ってどういう事ですか?」
訂正。
ウィズも理解していないようだ。
「この店の赤字を解決するためにカズマの知的財産権を買い取るための商談ですよね」
「うむ」
「知的財産権?俺そんな大層なもの持ってねえけど。あとなんでめぐみんはその事知ってんだ?」
しまった。
何も考えずに発言してしまった。
「前にも言いましたが里の占い師であるそけっとに聞きました」
「そうなのか?それならもっと早くに教えてほしいんだが」
なんとか誤魔化せて良かった。
そけっとに助けられる事が多くなりそうなので今度何か送っておこう。
「未来の事は、その事がおこる直前じゃないと教えてはいけないと言われているので、すいません」
これで今後の私の行動を変に思われないか気にする必要がなくなった。
「話は終わったか?では商談に戻らさせて貰おう。小僧の国の物はとても実用的でこの国には存在せん物が多い。そこで小僧の知る限りの便利品を高額買取りすると言う事なのだがいかがか?」
突然の話にカズマは困惑しているようなので助け船を出してみる。
「確かライターという物をカズマが作ると聞いたのですが、それは作れますか?」
「作れるけど。えっ、そんなので良いのか?」
「そう言っているではないか」
「ならその話に乗らせて貰おうかな」
カズマのやる気が出てきたようだ。
「急を要する訳では無い。じっくり考えるがいい。答えが出た時にでもこの店に来てくれたまえ。お金の話はまたその時にでもしようではないか」
「分かった。助かる。じゃあまたな」
「またのご来店を待っておるぞ」
「カズマさん、めぐみんさん。もし必要な物があればぜひ来てください!安くしますので!」
「その時はお願いします」
これで経済的な心配はなくなった。
私達二人は建前の約束通りに大衆浴場前にもう一度来ていた。
「みんな悪い。待たせた」
「話が盛り上がって遅くなってしまいました。すいません」
二人でデートを楽しんできた事にすれば問題もなく、ダクネスが恋敵になる可能性を減らす事ができる。
「別に気にしてないわよ。それよりも、ねえねえ、二人がデートしてたってホントなの?ダクネスから聞いたんだけど」
案の定アクアが三人代表のように聞いてきたので答えようとすると。
「普通に買い出しに行って来ただけだ。めぐみんが言い方を変えて言ったんだよ」
カズマが上手いこと誤魔化せたぞといった感じでドヤ顔でこちらを見ているが、なんて事をしてくれたのでしょうか。
私の計画が!
「カズマの言う通りですよ。私がふざけて言っただけです」
正直な所、私はデートだったと思っている。
「でもゆんゆんが必死に隠そうとしていたのだがそれはどうしてだ?」
「それは、そのただの買い物に大人数で行くのは邪魔になると思ったので」
突然話をふられたゆんゆんは焦りながらも答えた。
「確かに店側に迷惑をかける事になってしまうかもしれないが、それほど焦る事も無いのではないか?」
「ゆんゆんはコミュ障なのでテンパってただけだと思います」
「・・・そうか、すまない」
ゆんゆんはアクアとダクネスから哀れみの目を向けられ泣きそうになりながら私を睨んできた。
せっかく危ない所をフォローしてあげたというのに、この仕打ちというなら私にも考えがある。
「ゆんゆんは植物なんかと友だ・・・」
「ちょっと!待って!謝るからそれ以上言わないで!」
ゆんゆんは暫くして恥ずかしくなったのか、女湯の方へ走り去っていった。
今日も私の勝ちのようだ。
「めぐみんはなんて言ったのかしら?」
「私も分からなかったな。相当聞かれたくなかった事のようだが」
アクアとダクネスは聞こえていないようですが。
「なあ、めぐみん。今の本当なのか?」
カズマはしっかり聞いていた。
「はい、変わり者のゆんゆんは、ぼっちをこじらせてそうなりました」
「そ、そうか。ゆんゆんも苦労してるんだな」
カズマは同情した様子でそう呟いた。
ゆんゆんが苦労しているの意味が分からないから何故カズマが同情しているのか理解できない。
「ねえ、ゆんゆんが先に行っちゃったけど、私達も早くお風呂に行きましょ」
「そうだな、じゃあまた後で。あっ!忘れてた!めぐみん。これ風呂代な」
「ありがとうございます。それではまたギルドで」
カズマが長風呂なので集合場所は酒場になっている。
「今日は宴会やったしギルド行かなくてよくないか?」
疲れているカズマは早く寝たそうだった。
「まだギルドでは宴会やってるのよ!そんなの眠くなるまで、行くに決まってるじゃない!」
「そうか?みんながそれでいいなら行くけど」
異論は無く、宴会に戻る事になった。
バニル討伐祝いの宴会を終えた私達は馬小屋に向かっていた。
ダクネスは家の関係で流石に馬小屋生活は許可されなかったらしく、宿の長期契約を理由に自宅に帰っている。
早く屋敷を手に入れてみんなで住みたい。
「アクア。あの芸どうやってんだ?物理的に無理だろあれ」
芸人泣かせの技術だから仕方ない。
「そんなの教える訳ないでしょ!そんなに知りたかったらカズマも宴会芸スキルを覚えればいいわ」
「いらんわ!そんな無駄スキル!」
「なによ!あんたが教えてって言うから言ってあげたのにふざけんじゃないわよ!」
また始まってしまった。
この二人は一日に一度は喧嘩しないと死ぬのではないかと思うくらい毎日喧嘩してると思う。
「ふざけてんのはそっちだろ!ただでさえスキルポイントがないのにそんな使えねえスキル覚えさせようとすんじゃねえ!」
「いいわ!もうカズマには芸見せてあげないから!」
「そう言ったからには絶対見せるなよ!お前の宴会芸見なくても何も支障はないからな!」
カズマは怒りの頂点に達したのかそのまま早足で私達と距離をとり始めた。
カズマが振り向く時に笑っていた気がするが、気の所為ではないだろう。
「言われなくても分かってるわよ!私だってカズマに見てもらわなくても問題ないわ!」
「そうか、なら良かった。お前が泣いて謝る姿が目に浮かぶ!」
カズマは捨て台詞を言って足早に去って行った。
「それはこっちのセリフよ!カズマが『お願いです!アクア様!許してください!』って言ってるとこ・・・ねぇ、ゆんゆん。カズマは?どこ行ったの?あとめぐみんも」
「カズマさんならアクアさんが話し始めるより先に馬小屋の方へ行きましたよ。めぐみんもカズマさんと一緒に行きました」
「どうしてめぐみんまで私を置いていくのよおおおおお!」
アクアが馬小屋に戻って来た時には、もうカズマは眠っていた。
あと何故かアクアが翌日ギルドで朝食まで口を利いてくれなかった。
カズマがこの間買った新しい装備のお披露目会が行われている。
「似合ってますよ。冒険者らしくなりましたね」
「ああ、様になっているぞ」
「そうか?ありがとな」
ツンデレなカズマが珍しく素直にお礼を言うなんて、前の世界では考えられない。
「そうよね。ジャージじゃ、ファンタジー感丸潰しだもんね」
「「ふぁんたじー?」」
ダクネスとゆんゆんは日本の言葉を理解できていないようだ。
取り残されている二人にカズマは気付いていない。
「装備も整ったし。早くクエスト行こうぜ!もうめぼしいクエストは探してあるから」
子供みたいにはしゃぐカズマもまた可愛い。
今夜寝る時に我慢できなくならないか心配になってきた。
「どんなクエストなんだ?カエルか?」
「そうじゃなくて。ゾンビメーカーの討伐だ。それにこのパーティーはカエルのトラウマ持ちがいるって事でカエルは基本受けないからな」
本来ウィズと初めて会うクエストだったけど、今回はすでに会ってるので話が早く済みそうだ。
「アンデッドなら私にまかせなさい!このアクア様にかかればあんなのちょちょいのちょいよ!」
アクアが盛り上がっているのを尻目に私は小声でカズマにウィズの事を話した。
「カズマ。実はゾンビメーカーは居ないので討伐クエストは受けない方がいいですよ」
前回はペナルティーを喰らったから、今回はそうはいかない。
「占いのやつか?でもゾンビが湧いてるのは事実だぞ?」
「それはウィズが近くに除霊しに行っているからで」
「なんで
ご最もな質問だと思う。
「アクアは知らないだけだと思いますが、この街のプリーストは拝金主義の人が多いらしく共同墓地は手付かずらしいです」
「それで心優しいウィズが代わりに除霊に行って、その時に周りの死体がゾンビ化するのか」
「そう言う事です。ですのでクエストを受けた事にして墓地に行って、アクアにその仕事をさせましょう」
こうしないと屋敷が手に入らないから、カズマの嫌うマッチポンプになるが、仕方ない。
「それが最善手か、分かったそうする」
意を決したカズマがアクア達に
「クエスト受注は済んでるから早く行くぞ」
「分かった(わ)」
「・・・分かりました」
ゆんゆんは初めからいたので嘘だと知っていたが、話に乗ってくれて良かった。
次週は二話投稿の予定です。
pixivでゆんゆんに関するアンケートを行っています。よろしければ投票お願いいたします。投票締切は8/19(日)です。(終了済み)
アンケートにご協力ありがとうございました。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9982923
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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