一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~ 作:燐2
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「兄さん、もし私の身に何かあったら母さんをお願いね……」
「ど、どうしたの百合?」
吐きそうになるほど厳しいトレーニングを熟し、足が生まれたての小鹿のように震えが止まらないほどボロボロな僕に、足元が覚束ない疲れ果てた様子の百合は暗黒オーラを出しながら沈んだ声で僕に言う。
「目の前に黒い猫が通り過ぎ、鴉が私を見て鳴き、お気に入りのランニングシューズの紐が千切れたり良くない事がこの頃多いから………半死体で何であんな動きが出来るの……?」
「この頃元気ないなと思っていたけど、そんなことになっていたの!?」
どうやら不幸前兆のオンパレードが百合に襲っている様だった。隣にいても聞こえないぐらいの小さな声でブツブツと呟く姿と落ち込んでいるのは始めて見たかも……。
「なんか適当な理由付けて休みたかったけど、これでも私はクラス委員長だしそんな理由で休む訳にもいかないし……」
こ、これは重傷だ。こういうちょっと落ち込んだ時に僕より先に慰めようと百合の服から出てくる毘天(蜈蚣の名前)達も出てこない事から相当追い込まれているようだ。なにより百合が自分から弱い所を見せること自体、異例中の異例だ。
だから、僕は寧ろ心を強く持った。誰からも生まれてくる順番を間違えたと言われる頼りない兄貴だけどこういう時こそちゃんと元気づけさせるのは兄貴の役目だ。で、でも百合以外の異性とか精々あいさつ程度しかないし、こういう時なんて言えばいいんだ……!!
「……兄さん、危ないよ」
へぇ?。あいたっ!!
「考え事するのはいいけど、ちゃんと前を見て歩こうね……ん?」
電柱に頭から当たってしまい痛みに唸る僕に呆れつつ百合は別の方向に視線を向けると、巨大な人の姿が暴れていた―――ヴィラン!?その一撃を華麗に避けたのは人気急上昇中の若手実力派ヒーロー、シンリンカムイ!?
「……どうでもいいや」
「え?一緒に見ていかないの!?」
「それより教室で一眠りしたい………昨日も追い回されていたし」
「そ、それなら僕も行くよ。百合が心配だし」
そういうと百合は目を丸くする。
「この頃“オールフォーワン”が色々やっている所為でこの街、犯罪件数下がりっぱなしだし、こういう現場見ておいた方がいいよ兄さん」
「あとでまとめ動画とかネットで上がるだろうし、そんなことより百合が心配だから」
ちょうど二か月前、家族だからという理由で僕を助けてくれた百合に比べたら全然大したことないだろうけど、それでも僕は大切な妹を放って置く事が出来なかった。
「……ありがと、兄さん」
少しだけ頬を赤くしながら百合の小さな声に笑顔で返しながら僕達は一緒に学校へ足を進ませる。
今日から中学三年生、特に変わることがない学校生活も受験という選択を考え始めなければならない時期だ。
◆◇◆
眠たくなるような始業式が終わり教室に戻り席に着く僕達に、先生が進路希望のプリントを渡そうとしたがそれを投げた。理由は簡単、みんながヒーロー科を受ける事を知っていたからだ。既に一回目の調査でほとんどの人がどこの学校にいく迷いはあってもヒーロー科へ行くことが決まっていた。クラスのみんなが和気藹々と自分たちの個性を使いながら騒ぐ中、幼馴染である――――かっちゃんが声を上げた。
「せんせぇ―――「皆」とか一緒くたにすんなよ!俺はこんな“没個性”共と仲良く底辺なんか行かねーんだからよ」
皆からのブーイングの嵐、更に先先が雄英高志願であることを伝えると一同は驚愕の前に口を閉じた。そんな中でもかっちゃんは更に煽るように机の上へと立ち上がる。
「模試じゃA判定!!俺はこの中学唯一の雄英圏内!!あのオールマイトが逃がしたオールフォーワンをぶっ殺して俺はトップヒーローと成り、必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!!」
“オールフォーワン”それは二年前からこの街を中心に出没する
個性は全くの謎に包まれた“オールフォーワン”をぶっ殺す(マジじゃないと思う)事で“オールマイト”を超えると宣言しているように見えたが、先生の一言にかっちゃんが止まる。
「そういえば、緑谷兄妹も雄英志望だぞ。兄はヒーロー科、妹は普通科。因みに妹の方は爆豪と一緒で文句なしのA判定だ」
その時、僕は光速(気持ち的な意味)で両手で頭を覆い隠した。絶対に碌でもない事が起きると。始まったのはクラスのみんなからのバカにするような笑い声、それなりに勉強は出来てもかっちゃんや百合と比べると劣るレベルだ。“無個性”だからと人は笑う、確かにそれはどうしようもないことだ。でも思い出したのは夕焼けの空の下、誰もが諦めろと言った僕の夢を受け止めてくれた百合の姿だった。
「なるんだ!!前例がないだけで、僕は絶対に「こらデク!!」うわっ!?」
目の前で爆発で起きた、その衝撃で僕は思わず転げ落ちる。顔を上げると機嫌を悪くしたように頭を斜めにしながら見下ろし、手から爆発後の煙を立ち上がらせているかっちゃんの姿。
「“没個性”どころか何も持ってない“無個性”のテメェが何で俺と同じ土俵に立ってんだよ!!?あの忌々しい蜈蚣女もだ!!」
僕の必死の制止の言葉に耳を貸さず、じりじりと距離を詰めてくるかっちゃんが怖かった。後ずさりをするとあっという間に壁にぶつかる、あの時のように。
「べ、別に張り合おうとかそんなの全然考えていないんだ!ち、小さい頃からの目標で……百合も応援してくれるし………」
「何がやってみないとだ!?記念受験かよ!しかもあの蜈蚣女がお前を!?ついに蜈蚣で頭を可笑しくなったのかよあの女!!ははははっは!!!」
かっちゃんが笑う、みんなが笑い始める。奥歯に力が入る。
「マジかよ、あの百合が!?勝己の言うとおり春ボケか?」
「あんなに頭いいのに実は兄にベタ甘なのね!頭大丈夫かしら」
「百合もこんな奴に期待するなんてどうかしてるぜ」
黙れ。
「あぁ?」
「黙れって言ってんだよ!!!」
思わず自分でもびっくりするほど声が出た。
「僕の事は幾らでもバカにすればいいさ!!でも百合は毎日朝と晩必ずトレーニングして土日は一日中汗まみれになりながら夜遅くまで勉強をずっと頑張って君達よりずっとずっっと―――凄い人なんだ!!」
頭がぐらぐらする、足が震える、喉が枯れる。でも、口は動かせるし声も出せる。
「笑うなよ!僕の最高の妹をバカにするなよ!!!」
言い切るとボンッ!と、僕の真横で爆発が起きて焼けるような熱さに頬が焼けそうになる。
「調子のるなデク―――今まで妹の影でコソコソしていたお前がいまさら何をやれるんだ!!?」
静かになった教室で嫌になる程にかっちゃんの声が響く。その事実に僕は言い返せる言葉が無かった。
◆◇◆
兄さんは変わった、毎日そう思う様になった。正直なところ、兄さんに渡したトレーニング表はいきなり全部出来ないだろうなと思った。だけど、何度も足が絡まって転んだら起き上がって、走る姿勢はゾンビのようになりながら、唇を真っ青にしながら、どれだけ遅れようとも私に着いてきた。その姿勢は私に一つの勘違いを消した、憧れでヒーローというのは出来ないものだと私は思っていた。
『本当のヒーローというのは、どんな状況でも折れない、そうさせるだけの暗い過去があり、それが原典として原動力となる』と思っていたのだ。
最近は違う、兄さんに習った様々なヒーローを調べて、何故ヒーローになろうとしたのか単純で深い、この内容に多くのプロヒーローたちの答えを聞いた。確かに私が思った通り、幾つかは過去何らかの事件に巻き込まれ大切な何かを失ったのが原因で、自分と同じ者をこれ以上生み出さないようする決意を秘めた者達もいた。けど、ヒーローの中には最初は憧れで、けど様々な事を学び本物になった人たちもいた。
「憧れも本気で夢焦がれ、努力し続ければ本物になる……か」
兄さんもそうなのだろう。いや、そうなろうとしているのか。
無茶して、体壊して、大事な時期に本領発揮できないようにトレーニング表を調整しようと考えて、放課後兄さんを迎えに行こうとしたとき、どうもみんなの様子がちょっとおかしい事に気付く。クラスメイトは私を見てクスクスと笑うのだ
「あの爆豪にビビらさせていたのに妹のことになると一気にムキになったよあいつ」
「笑うなよ、僕の最高の妹をバカにするなよってさ!シスコンかよ」
陰口なら、もうちょっと静かにお願いしたいものだ。
それにしても爆豪さんに立ち向かったのは四歳の時が最後だ。
「……はぁ、全く兄さんは」
廊下で私を見ながら笑っている集団にちょっと耳を傾ければ、大体何があったのかは想像ができた。最近の兄さんは成長したなぁと思うと少しだけ口元が緩くなってしまう。何故だかとてもいい気分になっていた、今日の夜またあのヒーローに会ってしまっても余裕で逃げれるくらい自信が沸く程に、そして私は兄さんの教室の扉を開けようと―――――
「お前でも“個性”が手に入るかもしれないとっておきの方法を教えてやるよ――――来世は“個性”が宿ると信じて屋上からのワンチャンダイブ!!」
――――――は?。
「誰が入って―――いっ!?」
「か、勝己やばいよ!!」
「あぁ?どうし……た?」
教室に入って、状況を見る。爆豪さんとよく見るその二人の取り巻き。奥には何かを放り投げられたように窓から手を出していた兄さん。
「な、なんだよ。こいつが俺の道を――――がっ!?」
それ以上、爆豪さんの声を聞きたくなかった。だから
「……爆豪さん、あなたは兄さんと同じヒーローに憧れていましたね。昔のことですがよく覚えていますよ、駄菓子屋でオールマイトのカードを引いた時、凄く嬉しそうだったから」
制服に隠れていた蜈蚣達が一斉に私の手を通して爆豪さんに移って、その身を使って両手を封じる。
「ヒーローを……それもトップヒーローを目指す者が、弱者に対することは
「おいやめろって!!勝己の顔真っ青になってるって!!」
「お、おれ先生呼んでくる!!」
取り巻き二人が何か言っているが理解できない。腕限定だが、私の個性と毘天の個性で強化されたフェーズⅠは人の首程度は簡単に握りつぶせる。
……あぁ、思い出すな。前世ではお前のような生まれながらの勝ち組が、必死に生きようとした奴を嘲笑いながら惨殺していたなぁ!!!強い個性があるからって理由で!!人間の皮を被った悪魔のような奴らが本来あるべき人の理を歪めて!!!だからそんな世の中を憂いて私の親友は世界をあるべき姿へ戻そうとして―――――
「やめて!!」
兄さんが私の腕を掴んで叫んだ。
「僕は大丈夫だから、怪我してないから、ちょっと言い合いになっただけだから……」
兄さん。
「かっちゃんを解放して、百合のそんな顔見たくないから」
……………分かった。
「げほ、ごほッ、て、テメェ……!!!」
「次は無いと思え」
手を離して倒れ込んで苦しむ爆豪さんだけに聞こえる様に伝えると肩を震わせた。兄さんに感謝するんだな、と心の中で呟き毘天達に指示を出して最も危ない両腕も解放して私の元へ帰ってくる。
「………ごめん、兄さん」
「ううん、ありがとう心配してくれて一緒に帰ろう百合?」
「先に帰っていて、私が先生に事情説明するから」
先ほどの取り巻きが先生を連れて帰ってくる姿を毘天によって確認できた。振り向くと既に爆豪さんともう一人の取り巻きも姿を消していたが、事情は説明できる人が残っておいた方がいいだろう。
「なら僕も……」
「いいから先に帰っていて、暫くこの顔治りそうにないから」
兄さんが血の凍るような表情で怖いと言ったのは前世では普通の私の顔。兄さんは見たくないと言ったけれどまだ私の中にそうさせる激情はまだ治まりそうにない。
「………分かった」
「ありがとう兄さん」
どうなるんだろう。最悪の場合、兄さんと同じ高校に行けなくなるかも、そう考えるとこちらを気にしながら帰って行く兄さんを見ながら少し悲しくなった。
初期のかっちゃんってこんな感じですよね……?と今日は二話ぐらい投稿できるかなと思いましたが無理でした!!ここまで書くのに多分倍ぐらい書いて「ないわー」と消したりしてます。
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7/13推薦は速くても6月ごろ、この時期はまだ三年になったばかりの4月なのでこの時点で推薦貰っているのは変だと思ったので少し削除