一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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気付けば多くの評価、お気に入り件数100件も越えて嬉しい限りです。
自分のような文才でどこまで行けるか分かりませんが、少しずつ更新頑張ります。


第四話:なんとかみせた

『君は本当に爆豪くんの首を絞めたのかい?いや、違うだろ?私は君の模範的な学校生活をいつも見ているのだから』

 

 あいさつ程度しか接点がない先生が私の何もかも知っている様な口ぶりで喋る。

 

『そうだとも、それは何かの間違いだろう?あの雄英高校のA判定を頂けるほどに君は優秀なのだから』

 

 私と一緒にきた爆豪さんの取り巻きは想像と現実の差に絶句している。

 

『もし、そんなことがあったとしても、それは爆豪くんを通して正式な訴えがないと私達は動けないよ』

 

 私の担任である先生を見ると苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

『これは君達の間の問題だ。君たち二人が話し合いなさい』

 

 自分たちは、なにもしない、聞いていない、関わらないと言っているように聞こえる。

 

『君達はこの学校の希望なのだよ。いいね?しっかりと勉強して雄英高校で活躍しなさい。そこの君もバカな事を広めないように!これから君達は大事な時期、余計な問題はない(・・・・・・・・)ほうがいいだろう?』

 

 その時、先生たちの目は怒る事もなく呆れている様子もなかった。あるとすれば怠惰の色と微かな恐怖だ。

 爆豪さんのことだ、きっと自分だけが雄英高校に合格することで、私達が通う折寺中学校から唯一の合格者という箔を付けたいのだろう。それは学校側も同じ、ただの一般中学校が誇れるといえば“誰が”、“どこ”の高難度の高校へ輩出したかだ。

 

 学校側も生徒が集まらないと困る。豊富な予算による大規模な設備や、その土地特有の歴史等、親若しくは生徒達がこの学校へ行きたいという理由を作るには、誰もが知っている様な確かな実績があればいい広告塔になる。だから、特に私と爆豪さんは特別扱いされるのだ。いつか君達の名声を私達に貸してくれと……そんな所かな。

 

「お前、本当に中学三年生か?」

「失敬な、貴方が担当するクラスの委員長ですよ」

 

 いや、まぁ、そうだけどなぁ……、と複雑な心境なのだろうか頭を乱雑に掻いているのは職員室を後にした時、周囲の先生たちを無視してやって来てくれたであろう問題が発生する前若しくは円滑に解消するためにいつも呼ぶ一番まともな先生だと思っている人だ。

 

「良くある話だと思いますよ?パワースポットとか科学的根拠がないのに人が集まるのと同じような仕組みですよ、彼らだってこの学校が有名になればいろんな意味でいい気分が味わえるんですから」

「はぁ……なんか、すまんな」

「いえいえ、いつもお世話になっていますから」

 

 今の私より倍は生きているだろう、先生は自然な態度で頭を下げた。そういう姿勢に好感が持てたから私は貴方を信用して頼っているのです。

 

「もし私が有名人になって、貴方が所属している学校で生徒に話をしてほしいって依頼が来たら私喜んで受けますよ」

「有名人か、……他の奴も何度も言ったと思うがヒーローになるつもりはないんだな?」

「蜈蚣を呼ぶだけの“個性”ですよ、恐ろしくても強いとは言えないでしょう」

 

 オールフォーワンとして活動している時は存分に私と毘天の個性を多く使用しているが、大きすぎる力はいつか災いを呼ぶ。それを受け止めるのが私だけならいいが、兄さんや母さん、出張中の父さんの身が危なくなる可能性を考えれば、この秘密は誰にも言わず墓まで持って行った方がいい。いつでも居なくなってもいいように二年前オールフォーワンとして活動する時から遺書は机の中に入れている。

 

「―――思うんだが個性が強かろうが弱かろうが、ヒーローになれる奴はヒーローと呼ばれるようになってる。そういうものだと思う」

 

 それはそうだ、努力して強くなったからと言ってそれはヒーローと呼ばれる存在ではない。誰かの痛みの声に立ち上がれるような高潔の精神が必要だ。

 

「お前の人生だ。別に強制する気もない、勝手に否定する気もない、ただ教師として言わせてもらうなら……どんな理由があろうとも、人を棄ててまでやる行いの末は、何を救おうが外道そのものだ。覚えておいてほしい」

貴方は私に恨みでもあるんですか……

「ん?なんか言ったか」

「ないですよ(ピー)歳独身先生」

「この野郎!いいこと言ったのに!!俺が一番気にしていることをぉ!!!」

 

 殴るぞと言わんばかり(見かけだけ)に顔を猿のように真っ赤に染めながら腕を振るう先生に私はさよならーとダッシュで逃げ出した。先ほどまで鬱憤が積もった心境だったが、校門を過ぎたあたりから両手を伸ばしながら青い空に歌いたい爽快な気分だった。

 

 

◆◇◆

 

 

 禍福(かふく)(あざな)える縄の如し、と言う言葉がある。災厄と幸運とは編まれた縄のように表裏一体で代る代る巡ってくるということわざだ。前世も含めた私の人生は正にそう、悪いことあればいい事が起きたと思えばまた悪い事が起きて元通り、そうやって世界は巡っていると考えれば、よく出来たものだとため息が出てくる。

 そう、先ほどまでいい気分だったのだ。だったら次は悪い事が起こる。少し遠回りして参考書でも買いに行こうかと商店街に足を進めてみれば、突然爆発音が耳に届いて焦げた臭いが鼻孔を刺激して、近づくにつれて慌ただしい雰囲気が肌で感じられた。

 

 その時、何を思ったのか少し気になった私は野次馬に近づくと兄さんがいることに気付いた。近づくと顔色は真っ青で口に両手を当て体が震える恐慌状態なのに、周囲の人たちは連絡端末を出して写真を取ろうとする始末、明らかに他と比べて様子がおかしいと声を掛けようとしたが兄さんが大きく目を開いた瞬間、手に持っていた黒焦げの大事なノートを落して人混みの中を駆けた。

 

「えっ」

 

 落ちた角度によってノートが開かれる。そこには、もし自分がヒーローになったらというこんな姿になりたいコスチュームが書かれていた内容。ヒーローたちの制止を呼びかける必死の声を無視して、至る所に炎が立ち上り周囲が巨大な力で破壊された現場の中を兄さんは走った。その先には、悍ましい混濁の色をした粘着性の塊が何かを取り込もうと渦巻いているその中心部へと。

 

「――――毘天!!」

『ゴ主人、オールフォーワントシテ活動スル際ノ服ハ持ッテナイ。コチラニ持ッテクルトシテモ……モウ走リ始メテルカ』

 

 その時、色んな思いがあった。あのヘドロのような体をしているヴィランが何をしようとしているのか、プロヒーロー達がいるのにどうなっているのか、今兄さんはこの状況を覆す技を何一つ持っていない事は兄さん自身一番理解している筈なのになぜ動いたのか、今までずっと見ていた側だったのにどうして、野次馬の中を駆け抜けて声を上げるヒーローや警察たちも追い抜いて、兄さんの背中を追った。

 

『人ノ目多スギル。目立ツ“個性”ハ使エナイ』

「上等!!」

 

 ヴィランが手を人体ではありえない程にしなる鞭のように曲げた。その前に兄さんは背中のバッグを素早く手に持ってヴィランへの顔を狙って放り投げた。衝撃でストッパーが外れ、色んな物が溢れ出してその一つが偶然にも目に当たり、思わず怯んだ隙に兄さんは一気に距離を詰めた。

 

「かっちゃん!!」

「何で!!テメェが!!!」

 

 幼馴染の声を上げて、ヘドロに飛びついて掻き出して救出しようとするが両手で取れる量なんて爆豪さんを助けるのには、あまりに絶望的な少量のヘドロしか取れない。

 

「兄さん!!」

「百合!?どうして……」

「詳しい話はあと!今からちょっと無理するから私の体を引っ張って!!」

「な、なんでテメェらが……!!」

 

 なんか爆豪さんが言っているが無視だ。私達を見下ろす悪意の双眸が光を取り戻す前になんとかしないといけない、だから私は取り込まれる前提で爆豪さんを掴む為に右手を奴の体に突き刺した。とても硬いスライムのような気持ち悪い感触の中で、右手全部を入ったあたりで爆豪さんの胴体に手が届いた。

 

「よし、爆豪さん思いっきり抵抗して兄さん私とタイミング合わ「アホかお前!!俺の体は自由に動かせるんだぞ!!」

 

 万力機で固定されたように右手は動かなくなった。脳裏で危険信号を鳴る。

 

「あともう少しなんだよ、邪魔をするなぁぁ!!」

 

 そのまま怪力で関節部分を中心にあらゆる方向に捻じ曲げられた(・・・・・・・)。一瞬右手が悲鳴を上げて、枯れた枝木が折れるような音と共に激痛が走った。ただ骨を折られた感じではない、折れた骨が皮膚を突き破った感覚だった。爆豪さんと兄さんの顔が凍りつき、ヴィランの表情が悦を見せる。

 

「甘いよ」

 

 やるなら私の手もやるべきだった。取り込みたい対象を傷付けたくない故に無意識でそうなったのだろう。ヴィランは勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべて右手の拘束が緩む、私の手は爆豪さんの服を掴んで放していない。今の拘束力は油断してこいつの見た目通り、ヘドロそのもの程度になった。だから一人で、いけた。

 

「なッ!?腕は完全に潰した筈なのに!!」

 

 驚愕するヴィランの腹から、体中ヘドロだらけの爆豪さんを取り出すことに成功した。同時に多重関節のように曲がってはいけない方向へ幾重にも変形した腕からは、骨と血肉が混ざった物が露出していた。助けた爆豪さんも兄さんも口を呆然と開けて呼吸すら忘れている様な表情で視線は私の原型を留めていない右腕に向けられる。三人でヴィランに背を向けて一緒に逃げようとするが、私は失敗したと確信した。

 

「それは、それは!俺の物だ!!!」

 

 こうなることは予想していた、だから私は私の脳を弄って痛覚を一時的に遮断した。だけど二人、兄さんと爆豪さんとの意識の差が頭に無かった。螺子が切れた人形のように動かない二人と右手が潰されている状態で一緒に逃げるのは個性で体を強化しようとも、既に振り下ろされようとしている凶器の鞭を止めることは出来ない。

 

「(せめて……!!)」

 

 力の限り後ろに飛びながら左手で兄さんを突き飛ばして、爆豪さんを引き抜くための運動エネルギーを利用してそのまま反転、ヴィランに背を向けながら盾になるように抱き締める。人質はなんとかした、プロを名乗るヒーローなら直ぐに対応するだろう、と迫りくる衝撃に心構えをした瞬間、見たくない見知った笑顔のヒーローが目の前に現れ、その偽りの強靭な肉体でヴィランの一撃を受け止めた。

 

「情けない。ヒーローでもない勇敢な少女が人質を救った所でようやく動き始めた己が……!!!」

 

 私の足が先に地面に着くようにして、背中から滑り込むように着地した私と爆豪さんの目の前には余りに大きすぎる背中、鋼鉄の如き硬さを幻視させるであろう拳を握りしめ。

 

「君に諭しておいて、己が実戦できていないなんて!!!」

 

 あぁ、終わった、後はお任せしますと安らかな気分で目を閉じた。

 

「――――――プロはいつだって命懸け!!!!」

 

 DETROIT(デトロイト) SNASH(スマッシュ)!!!!。

 

 ナンバーワンヒーロー、オールマイトの一撃を最後まで見ることなく意識は闇の中へ。目覚めたその時、何人ものヒーローや一般人に見送られながら救急車に積まれ病院へと運び込まれた。その後は色々大変な事もあったけど、一番残念なのは三年連続皆勤賞を逃してしまった事だ。

 

 




ほんと言うと、オールマイトは出さずにその場にいるヒーローだけでなんとかしたかったが無理だった……バックドラフトが水でヘドロ飛ばしつつデステゴロが薄い場所から爆豪を引っ張り出せばいけるか?シンリンカムイが体の欠損覚悟すれば一人でもいけるんじゃないか?周辺のヒーローたちの個性が分からないからいい考えが思いつかない、ということを二日間ぐらいずっと考えてやっぱ無理という結論に至った。悔しい。なので百合には腕を捻じ曲げてもらいました。

オールマイトは嫌いじゃない、ヒーローの理想形だと思います。でも……人間としてはどうなんだろうか。(某二番目なのに七がつく光の巨人の有名なセリフをオールマイトに言ってみたい)
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