一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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とても短いです。
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第五話:終わらないマラソン

 個性『ヘドロ』を使い爆豪さんの体を乗っ取ろうとして商店街の一部の建物が全焼したヘドロ事件と呼ばれるようになった事件から数日が経った。

 

 私は兄さんと爆豪さんを助ける為に負った怪我は全治一か月と医者から判断され、利き手である右手がギプスで固定されていることに不都合を感じながら、地元の病院で初めての入院生活を体験した。医者曰く本来なら後遺症が残ってもおかしくない程に危険な状態だったのだが、奇跡的に多少傷痕が残る程度で済んだ。毘天達が傷と覆う様に『同化』して、『ブラッド・ハザード』により体の構成を組み替えて傷そのものを埋めることも出来るのだが、緑谷百合の個性は蜈蚣を呼ぶ“個性”として周りに認知させているので、そんなことしたら最悪の場合、私のもう一つの顔がばれる可能性が非常に高いので致命傷にならない程度に“個性”と毘天を使って治して、後は大人しく自然治癒に任せた。

 

 いつも早朝、夕方、深夜の時間帯にトレーニングしているのだが入院生活ではそれらが出来ないので非常に暇になった。昼は毎日学校の先生が持ってきてくれたプリントをやったり、母さんに家から持ってきてくれるよう頼んだ教科書等を読んで、気になる所をノートにまとめたりとみんなが学校で授業を受けている時は勉強しようと決めていたが、それでも体を自由に動かせないというのは苦痛だ。鬱憤を積もらせる毎日、ただその日はちょっと違った。

 

「やぁ、初めまして!私はオールマイト!」

 

 気配で嫌な感じはあったが、部屋に入ってきた瞬間、毘天達と共に戦闘態勢に移行しかけたのは悪くないと思う。兄さんがヒーロー目指す切っ掛けになった超有名人、誰もが知るナンバーワンヒーロー、オールマイトの私服姿だ。

 

「……初めまして、私は緑谷百合です。貴方のような人物に会えて光栄です」

 

 警戒しながらの発言にオールマイトは少し目を丸くしたが、直ぐに私が差し出した左手を握り返す。

 

「堅いなぁ、君の兄さんは私に会った時なんて、カルチャーショックを受けた様な反応だったよ」

「兄さんは小さい時から、貴方が活躍した動画を貴方の玩具を握りながら大喜びで毎日見てたぐらいに貴方に心底惚れこんでいますから」

「なるほどね!あ、これお見舞品だよ遠慮せずに食べてね」

「ありがとうございます、そこの机に置いておいてください」

 

 オールマイトからお見舞品、兄さんが聞いたら羨ましがるだろうなぁ。あっちはいつの間にかサインを貰って大喜びしながら見せてくれたけど。そんなことを思っているとオールマイトは椅子を取り出して腰を下ろした。

 

「すまない」

 

 早く帰って欲しいなと思った私に対して、オールマイトは深く深く頭を下げた。

 

「私がもっと早く駆けつけていれば、君がこんな怪我をして傷跡を残すことはなかった、すまない」

「頭を上げてください、貴方もあの場にいたヒーロー達も私は責める気はないですし、むしろ仕事を邪魔してしまったこちらこそ謝罪しなければならない立場です」

 

 オールマイトが来る数日前も、ヘドロヴィランの前に立ち往生をしていたヒーロー達が忙しい筈なのにやってきて同じように謝罪の言葉を口にした『君の傷は私達の怠慢が招いた事だ、無茶をさせてすまなかった』と彼らを代表してシンリンカムイが頭を下げた。説教が来るのかと身構えていた予想と真逆の言葉に鳩が豆鉄砲を食った様に唖然としてしまったことを思い出した。だから、私はあの時と同じように表情を柔らかくして答える。

 

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 家族もいる、友達もいる、大切にしたい自分の命もある。

 ヒーローとは、他人の命を助ける為に自身の命を賭けられる(・・・・・)存在だ。だからと言って目の前に今失う命を未来に紡ぐために自身が犠牲になることは躊躇しないものは、そもそも自身の命に興味がない奴か、人間であることが耐え切れず、人間を救うために、人間を捨てた正義の怪物だ。しかし、人間を助ける事が出来るのは人間だけだ。

 

「……そう言ってもらえるとありがたい。ただ!また同じ場面に立ち会った時はどうかヒーロー達に任せてくれないか、この街のヒーローも私も常に進歩している!!もう同じような結果にはならない筈だ!!」

 

 ……あぁ、確かに貴方は間違いなくヒーローだよ。だからこそ怖い。

 話をしている間に同時に幾つかの“個性”をこっそり使って貴方の体を見させてもらった。幾度も貴方から逃げながら見てはいたが、呼吸器官半壊、胃袋全摘、腹部に度重なる手術痕がまるで蜘蛛の巣のように張り巡らされていて、その強靭な肉体を維持するだけで想像を絶する苦しみと痛みがあるだろう。

 

 オールマイトの生体情報を元に毘天の身体を再構成することで拒絶反応が出ない新しい臓器を造りだすことが出来る。体内の弱った体も毘天達が“同化”することで補助する事ができる。長生きできない体の寿命を伸ばすことも出来る。勿論一度は憔悴(しょうすい)してしまった体だ、リハビリのための時間も必要だろうけど全盛期に近い状態までは戻すことが出来る。

  

 でも、輝く笑顔を見ながら思う。その裏で血を吐き続けながら走り続ける悲しいマラソンを終わらせてあげた方が元平和の象徴として未来の後輩たちの教育に移ったほうがいいのではないか、と。

 怪我を治せば、きっとこれまで以上に無茶をしながら走り続けるだろう。その先に多くの者の希望は確かにあるが、昔の私達のように人間として求めて当然の幸福を棄てた化物となってしまうかもしれない。だから私は太陽の如く輝く笑顔を前に口が開かない。

 

 

『貴方の傷を治せます』とオールマイトに対して簡単な一言が出ない。

 

 かつてマスターが言っていたことが脳裏に浮かぶ。

 

『不決断というのは最も醜い害悪だ』

 

 ……ごめんなさい、あんなに『教育』してくれたのに、貴方の望む『完全』になれなくて。

 

 

 

 

 




まず、ごめんなさい(土下座)
本当はオールマイトの話が終わった後、爆豪さんが見参りに来てきっちり説教しようと思ったんだけど、百合の気持ちが重すぎてこのまま爆豪さんの話に移るのは無理だと断念したので、次の話に分けます。次の話も今回みたいに短くなります。
因みに百合にとっての他人、オールマイトの”個性”と意志を継ぐ者が現れた場合、百合は喜んでオールマイトの傷を治すでしょう。しかしそれが自身の最愛の兄だと気づいたら………。
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