一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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一時はランキング4位とか5位とか8位に載っていたのを見た時、私のガラスハートが『ひぎィ!?』となりました。丸一にくらいパソコンの前に立ちながら自分が書いているのはひょっとして面白いのか(目がグルグル)と思い、プロットなんて作らずその場のノリで書いているのに、とか色々考えましたがまぁ楽しければいいやと開き直り中、評価感想ありがとうございます!!


第七話:知る故に

 僕、緑谷出久には家族に隠している秘密があります。

 あのヘドロ事件の後、僕はあのオールマイト直々に後継者にならないかと誘われた。“無個性”だとずっと笑われてきた僕がヒーローになれる、“個性”を受け継ぐに値する心を持っていると。

 

 僕は即答した、お願いしますと。

 一瞬だけど永遠にも感じた過去が脳裏を過った。

 僕に出来るのか、僕がオールマイトの後継者に本当になれるのか、そもそも僕はやり遂げる事が出来るだろうか。

 だけどかっちゃんの言葉、百合の言葉が全てを吹き飛ばした。

 

『妹の陰でコソコソしていたお前が今更何をやれるんだ!!?』

 

『トップヒーローを目指す者が、弱者(・・)に対することはこれですか』

 

 二か月前から必死に百合の自己鍛錬する背を追ってきた。自画自賛だけど昔と比べて体が鍛えられて身体能力が向上したことが嬉しかった。でも、ヘドロ事件で出来たことは走っただけだ。僕とかっちゃんを助ける為に大怪我してギプスをやっと外せたことに喜んだ百合の右手の関節には痛々しい手術痕が残っていた。

 それを見た時、あぁ、僕はなんて弱い(・・)んだと、守る側であるヒーローではなく只の一般人である守られる側にまだ居るのだと痛感させられた。心の底から悔しかった。

 

 オールマイトが僕専用トレーニングプランを作ってくれると聞いたとき、僕は百合と一緒にやってきた内容を伝えると、それを含めたプランに調整してくれるそうだ。

 

「緑谷少女と会った時、私の高校世代を思い出すほど鍛え抜かれた体だと思ったが、鍛練を小学生の頃から?」

「母さん曰く幼稚園児の頃から既に筋トレを始めていたらしいですよ」

 

 記憶の中でも百合は気づいたら僕より遅く寝て早く起きて、走って筋トレして、学校行って帰ったらすぐに走って筋トレして、また勉強して寝るという生活をずっとしてきた。休みの日も基本的に友達とどこかへ遊びに行く時も含めて、家にいる時は少ないぐらいだ。

 

「ふむ、それだけしているのにヒーローを目指している訳ではないのか」

「周囲に散々言われてますけど、私の“個性”はヒーローに向いていないだとか、他人より身近にいる人を優先したいとか、そもそも皆が求めるヒーロー像と私が目指しているヒーロー像が違うとか」

 

 あぁ、そういえばこんなことを言っていたな。

 

全てはただ一つの為に(オール・フォー・ワン)、それが百合の信念、だからなりたくないじゃなくてなれないって」

「なるほど、遠征せず地元を守る専属ヒーローとしての考え方を更に範囲を狭くした感じか」

 

 骨と皮膚だけの貧相な体、テレビでよく知る剛強の肉体ではない。本人曰くとあるヴィランの襲撃で負った重傷によるものが原因で、力を入れてしまえば折れてしまいそうなゾンビのような姿をトゥルーフォームと自称している姿だ。僕も知った時は驚いたけど、逆に言えばどんなヴィランでも倒せると無意識に思い込んでいたオールマイトにあれほどの怪我を負わせることが出来る存在がいるということだ。

 

「あの、百合から聞いたんですけどオールマイトはお見舞行ってくれたんですよね?ありがとうございます」

「なに大したことないさ、しかし未来の後輩になるかもしれないと思ったが……そうかヒーローにはならないのか」

 

 少しだけ残念なそうだった。今こうやってオールマイトの後継者になるべく体を鍛えているが、思想が違っていれば百合が受け継いでいたかもしれないと思うと納得できる、寧ろ心のどこかで百合の方が相応しいのではないかと思う所もある。

 

「どちらを選ぶとなれば私は同じように緑谷少年を後継者に選んでいたよ」

「え!?」

「顔に書いているよ、緑谷少女の方が良かったのではないかと」

 

 驚愕する僕にオールマイトは君は分かりやすいなと零しながら立ち上がる。

 

「確かに君と比べて器は彼女のほうが完成している、私の“個性”を受け継いでも問題なく行使できるだろう……だが君も見ただろう、あの血の凍るような表情を」

「…………はい」

 

 あれを初めて見たのは暴力未遂事件―――だと思ったのが、時間が経って思い出したことがある。四歳の頃、かっちゃんが虐めている同じ歳の子供を庇ったことがあった。相手は“個性”を持った三人、僕は”無個性”でたった一人、勿論これでもかと言わんばかりにボコボコにされた時、騒ぎを聞きつけたのだろう百合がやって来て三人が蛇に睨まれた蛙のように止まった。その時、意識が朦朧としてて何があったのか詳しくは覚えてはいない。ただ、かっちゃんを含めた三人の痛々しい悲鳴と涙声を漏らしながら逃げる背を睨む姿は、僕をあの先輩達から助けてくれた百合の瞳と重なった。

 

「長くヒーローをしているとね、色んな物を見てしまう。ただ己の快楽のために“個性”を使って善良な市民を傷付けるそんな奴とは別に、善悪関係なく己の使命を成し遂げる為ならば、他者も自分さえも平気で天秤に置くことが出来る意志を」

「そんなものが……?」

「平たく言うと復讐心、或いは大切な人との約束を果たす為とかね。敵に回すと“個性”に関係なく一番危ない存在になる、死んでも終れない(・・・・・・・・)不滅の意志は私の”個性”であっても絶対に砕けない物だからね」

 

 ナンバーワンヒーローとしての言葉の重み、というものだろうか。そして、疑問なんて思いつかない程に納得した。

 

「あの歳であんな目をする者を私は見たことがない。だから私は緑谷少女に個性を譲渡するのは危険だと判断した。確かに多くの人を助け、ヴィランを倒してくれるだろうが、だが目的の為ならば何をやってしまうのか……想像が出来ない」

「……大丈夫です」

 

 僕はまだ頼りない胸を張ってオールマイトにはっきりと伝える。

 

「もし、間違ったことをしてしまいそうな時は僕が止めて見せます。僕は百合の兄貴なんですから」

「……そうか、そうだよな。私の後を継ぐんだ、妹一人ぐらい危なくなったら止めて見せろよ緑谷少年!!」

「はい!!」

 

 双子の兄妹として生まれたけど僕は百合と向き合うことが出来なかった時間が多すぎる。だけど過去を振り返っても後悔しても、何も生まれないのなら今と未来を大事にしよう。オールマイトの言葉で改めて理解した百合の心の闇をいつか受け止めて、笑顔にするために僕は走り出した。まずはオールマイトの“個性”を受け継ぐ為に体を鍛えて、雄英高校ヒーロー科を合格して百合と一緒の学校に行くために!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 今日は二月の二十六日。遂にこの時が来てしまったのだと、母さんは嬉しいような苦しいような、受験する私達二人より緊張した硬い顔だった。流石にそんな人に包丁は持たせられないと私は無理やりテレビでも見ていてと兄さんと協力して母さんをソファに座らせて、朝食を作り食べて、昨日の夜にアイロン掛けしておいた制服に手を通す。

 

「が、がんばってきなさい。どんな結果になってもわ、私は貴方達を誇りに思うわ!!」

「「……いってきます!」」

 

 それはちょっと言い過ぎで早すぎではないかと私達は内心突っ込みをいれながら、こういう所が母さんらしい。外に出て、私達は歩き出す。かなり時間に余裕を持って出かけたからゆっくりでも大丈夫だ

 

「ふぅ……」

 

 何度も兄さんは胸に手を当てて深呼吸をしている。あのヘドロ事件より数日後、プロヒーローに気に入られ特別トレーニングプランを受ける様になった兄さんは、10か月という遠いようであっという間な時間で見違える程に肉体が鍛え上げられた。私は元々模試判定Aなので過去問をやりながら、日夜使えそうな”個性”を手に入れヴィランと戦い経験を積んでいたら、どうもこの街をオールマイトがロックオンしたようで、何もしないまま逃げる日々が続いたので土日だけ“オールフォーワン”として活動することを決め、県を跨ぐほど遠い場所へ行ってヴィラン退治に精を出す日々だった(それでも来るときは来るが)。

 

「ちゃんと想像通りに“個性”使えそう?」

「うん、百合のお蔭で色々出来そうなことが増えたよ」

「まだまだ付け焼刃だから、無茶をしないでね」

 

 驚くことに一か月と半月ほど前、兄さんに“個性”が発現した。と言って腕をぶっ壊して入院した兄さんの笑う姿は記憶に新しい物だ。どうも増強系の“個性”でその強大すぎるパワーの反動で痛めたらしい。

 勿論こっそり兄さんの“個性”を調べてさせてもらった。“ワン・フォー・オール”、私が前世でマスターに最後に貰った“個性”、マスターが殺したマスターの弟さんの“個性”、前世で私が最後に使って死んだ“個性”だ。

 

「…………ふぅ」

「あはは、百合も緊張してる?」

 

 なぜ、兄さんがその”個性”を持っているのか、一番怪しいのは兄さんを鍛えたというプロヒーローの存在なのだが多忙のため会えず、念のために兄さんに前世のマスターの姿を模写して見せたが知らないと言っていたので、本来の正しい使い方で譲渡された“ワン・フォー・オール”なのだろうか、それともオールマイトと初めて邂逅した時に言われた“オール・フォー・ワン”は私の知っているマスターでなくとも、同じ個性を持った誰かで、何らかの目的で知らぬ間に兄さんに与えた物なのか、と様々な疑問で頭が一杯になって痛いんです。

 

「……そうですね、緊張してます」

 

 主にこれから先、ヴィランは必ず動き出す。良い“個性”を手に入れれたおかげで毘天達の数も安定して増やすことが出来る(数が数なので餌代が凄いんです)のでフェーズⅢになれるほどの軍隊は整った。フェーズⅣはまだまだ先、あれはなるだけなら簡単だが人間に戻れない条件で“ワン・フォー・オール・アンリミデッド”を使いこなすための形態だ。制御する為には、まだまだ“個性”が足りない。

 

「一緒に、頑張ろう百合!!」

「…………はい」

 

 こっちは頭の中が心配の花畑となっているのを知らず、兄さんはぎこちない笑顔をする。それを見ていると、独り立ちできるのはいつになるのだろうかと、心配になってくるし、支えないといけないって思いも湧き出てくる。しかし……

 

「意外に早いかもしれない」

 

 兄さんに聞こえない声で、決意できていない意志で私は未来を憂う。

 緑谷百合を捨てるのは、割とすぐそこまで来ているのかもしれないと。

 




百合色々勘違い中。
下手にオールマイトと百合を合わせてしまって百合が兄が後継者と知ってしまったら色々終わってしまうので、どうやろうとした結果がこれだよ!!
共存個性レギオンと一番相性いいのは”凝血”と思って色々考えたらあれ?”ワン・フォー・オール”のほうがヤバイという結論に至ったこの頃。
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