一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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暑すぎ、それ以上に言葉が見つからない。


第八話:積み重ねた結果

 遂に来た雄英高校、パンフレットで見たけれど見上げる程に大きい校舎だ、軽く周囲を見渡しても警備のために見せている物、隠している物がたくさんある。清掃もしっかり出来ている、これは前の学校みたいに気軽に毘天を張り巡らすことは難しい。なにより、この場所に足を進めていくほどに隣の兄さんは緊張しすぎなのか、ロボットのようなカクカクの動きをしている。大丈夫だろうか。

 

「兄さん、兄さん」

「な、ななななななななななんななに?」

「“な”がゲシュタルト崩壊してるけど、大丈夫?こういう時って手に“の”って書くと落ち着くらしいよ、書いてあげようか?」

 

 兄さんの手を握ろうとした時、どけ!と響く声の方に向くと爆豪さんがいた。

 

「…おはよう」

「お、おはようかっちゃん今日はお互いがん……」

 

 爆豪さんは何も言わず私達を通り過ぎていく、大きな声だったのでいつの間にか同じ受験生の視線が集まっており、テレビで一応出ていた私達は注目されていた。いつになったらあの時の事が忘れて貰えるんだろうか、今思えば入院していた時に気軽に記者からのインタビューに答えるべきじゃなかった、とか後悔してため息が出る。

 

「あの日から爆豪さん、兄さんに何かしてこなかったよね?」

「う、うん」

 

 それは良かった。しかし、兄さんと爆豪さんは同じヒーロー科、もし同じクラスになったら大変かもしれない。片方マシにはなったけど過激な発言が多いし、片方それに対して特に言い返さないから、互いに面と向かって話したことない筈だから。心配はするが、私は介入するつもりはない、流石に血が出るような喧嘩なら止めに入るが、私も知らない二人の間にある問題は二人で解決してほしい。

 

「そうそうヒーローというのは実力、精神的な意味で問われる存在だから直接本人の素質を目で見る面接がないってことは……実技に混ざっている可能性があるから気を付けてね」

「そ、それはどういうこと?」

「ヒーローとはなにをする者(・・・・・・)なのか、それを今一度飲みこんで考えてね。それじゃ、受験場所が違うから」

 

 バイバイと兄さんから離れる。ここから貴方が主役、私の予想通りなら兄さんのある行動一つで合格の有無が確定的になる。

 

 

◆◇◆

 

 

 実技試験はプロヒーロー『プレゼント・マイク』が説明してくれた。入試要項通り、10分間の模擬市街地演習で、三種類の仮想ヴィランを各々なりの“個性”で行動不能にしてポイント稼ぐのが目的だ。しかし渡されたプリントには仮想ヴィランは四種類と記載されている。そのことに同じ受験者が質問すると、それは0ポイントのお邪魔キャラと言う訳だ。最後に『プレゼント・マイク』は声を高らかに雄英高校の”校訓”をプレゼントしてくれた。

 

 かの英雄ナポレオン=ボナパルト”は言った。「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく物」、Plus Ultra(更に向こうへ)”と。

 

 

「広っ」

 

 試験場での移動の為に乗り込んだバスから降りると誰かが呟きそれに全員が頷いた。僕達の目の前には幾つもの巨大なビルが立ち上る都会の街並みそのものを区切ったような場所だった。流石天下の雄英高校かとびっくりしながら、動きやすい着替えを済ませた僕は、百合と母さんが話し合って、少しでも手足(・・)の負担が軽減できるようにとバイクに乗っている人が使っているような腕と膝をカバーできるプロテクターをきつく装着する。百合も忙しい筈なのにスパーリング付き合ってくれたおかげで、だいぶ形になってきた筈だ。

 

「うう、緊張してきたぁ……!!」

 

 えっと、この場合は掌に”の”って書くんだっけ?

 

「ののののののの……」

「そこ!試験会場でも言ったが諄いぞ!!」

 

 咎める声音に思わず体が震える。僕の肩に触れたのは『プレゼント・マイク』の登場に思わず癖でボソボソと私語を呟いて、怒ってきた眼鏡をかけた男の人だ。

 

「精神統一を図っている人も多くいる中で、周囲の集中力を妨げる行いは即刻やめろ!何だ?妨害目的で受験しているのか?」

「おいおいアイツ、たしかヘドロの時、何も出来なかった奴だぜ」

「あぁ!あれか、はは注意されて萎縮しちゃってるよ」

「少なくとも一人はライバル減ったんじゃね?」

 

 なんだかラッキーって思われてそう。確かに少し離れた場所で考える「ハイ、スタート!」ん?

 

どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!試験は既に始まってんぞッ!!

 

 え?えぇええ!?いきなり!!?ってみんなもう行ってる!!

 

「落ち着け、落ち着け、あの10か月を思い出せ!!」

 

 春は毎日のように筋肉痛に苦しみ、夏は一日に何度も吐いて、秋は一度腕を壊して入院して、冬は何度も百合とスパーリングした日々を!!

 

 

『兄さんの“個性”は自らの肉体すら破壊する強烈なパワー、それを制御するのは今のところは無理』

『…そんなに落ち込まないで、今のところはでしょ?学校行って、受験勉強しながら、兄さんを指導してくれているプロヒーローさんのノルマを達成していたらそんなに時間が残されていない、かといってこれ以上無理したらどっかで体壊して、実技で落ちて筆記で落ちたら目も当てられないからね』

『この前街で会った兄さんと同じ増強型“個性”のプロヒーロー、デステゴロさんにちょっとアドバイスを貰ったんだ。圧倒的なパワーに大切な事は“手加減”だって』

『相手が同じような“個性”ならともかく、ヒーローはヴィランを倒すのも大切な仕事の一つだけど、もし殺してしまえばヴィランと同じだ。だからこそ、手加減。一撃、或いは連続攻撃で確実に意識だけを潰す、つまり出力に区切りを作れないかな?この辺りまでなら体は壊れないってライン維持しつつ、それを全身に纏うイメージで……』

『うんうん、それを常に出来るようにね。なんでいきなりチョップしてきたかって?これで解除されたでしょ、この程度で集中力を解いちゃダメ、早く巡らせて尚且つ維持が課題、上限向上は直ぐに出来なくても、それならいつでも出来る訓練だから』

 

 

 

『一緒に雄英高校、行けるといいね』

「――――ワン・フォー・オール・フルカウル、3%(・・)!!!」

 

 もう何度もやった溢れ出る力を全身に纏い、地面を蹴った。

 

「なッ!!?」

「は、速いって!!」

 

 一気に跳躍して景色が変わる。緊張からの震えは既に止まっていた。

 入試要項では仮想ヴィランを倒せという内容だけど、その総数も配置も書いていなかった。つまり、この会場に“どこ”に“どれだけいる”か僕達は教えられていない。ポイントになる仮想ヴィランをどれだけ早く見つけて、移動して、倒して、冷静に判断出来るかの早い者勝ちだ!!

 

「標的捕捉!!ブッ殺ス!!」

 

 路地裏から出てきたのは仮想ヴィランは1Pの奴だ!アームに取り付けられたシールドで防御される前に地面を思いっきり蹴って、その加速のまま殴る!

 その一撃は仮想ヴィランの腹部を捉えビルの壁に陥没するまで吹っ飛んだ!火花を上げなら行動不能、これで1Pゲット!

 

「いける、いけるぞ!!」

 

 あの時とは違う、僕はちゃんと戦える!!オールマイトから授けられた“個性”と百合のアドバイスを元に僕の体に合う様に調整した“フルカウル”。

 小さい頃からかっちゃんと喧嘩したら負けたことがないぐらいに慣れていた百合からは脚を使った技、オールマイトから拳を使った技を教えてもらった。まだ理想に程遠いけれども、それでも昔のような傍観するだけの立場じゃない!

 

 広場には多くの仮想ヴィランがいたが、それ以上にそれを狙う同じ受験者が多かった。協力してポイントが分割されるなんて言われていないから、そう考えると一人だけでどれだけの仮想ヴィランを倒せるかだ!探知系の“個性”を持っていない僕はとにかく単独で動き回り、人が少ない路地裏でまだこちらに気付いてないロボット集団を発見した。

 

VIRGINIA(ヴァージニア) SMASH(スマッシュ)!!」

 

 強化された身体能力で跳ぶように飛び蹴り。二体を貫通して、腕と足のプロテクターが滑り止めを役目をしてくれたおかげで強引に体勢を整え、こちらに武器を構えようとしている仮想ヴィランをジクザクに高速で動くことで、照準が定まらず混乱している内に距離は詰まった。

 

SMASH(スマッシュ)!!」

 

 これで46P!!無茶に上限以上の力を出してしまえば筋肉が千切れたり、骨が折れたりしてしまうから無理は出来ないから、見つけたら飛び出して速攻で一つ一つ倒していくしかない。体を壊すほどの出力を上げれば殲滅できるぐらいの破壊力を出せるけど、10分間動き回らないといけない内容で、一番高ポイントの仮想ヴィランでも3Pしかない!それが都合よく集まっている所なんてないし、このまま確実にやって『ドンッ!!』……え?

 

 見てしまったのはプリントにも載っていた0Pの仮想ヴィラン、周囲のビルより一回りも二回りも大きく、僕が倒してきた仮想ヴィランなんて蟻のような大きさだ。

 

「……逃げる!!」

 

 試験の内容からしても倒す必要なんてない!!一切メリットなんてない仮想ヴィランを相手にする必要なんて……

 

『ヒーローとはなにをする者(・・・・・・)なのか、それを今一度飲みこんで考えてね』

「あ……」

 

 脳裏に浮かんだ言葉に僕の足が止まった。みんなは逃げていく。心のどこかで一緒に逃げてしまえと語る僕がいる。だけど、それはヒーローの行いなのか?自分より強いヴィランが現れたから逃げるを選択するヒーローは果たしてヒーローと名乗れるのか?

 

「違うッ!!!」

 

 そうじゃないだろう緑谷出久!!オールマイトに授けられた“個性”がある、あの夕暮れに誓ったはずだ!百合がヒーローになれると言ってくれて沢山の事を教えてくれた、色んなことを一緒に考えてくれた!!そんな二人に胸を張って笑顔を絶やさないヒーローになる為に僕がする行動は逃げることじゃないはずだ!

 路地裏から出て状況を確認する。みんな逃げ出している中で僕は見た。百合と別れた直後、こけそうになった時に助けてくれた女の子が瓦礫に足を取られて動けない姿を。あと一歩進めば押し潰せるほどに接近していた巨大仮想ヴィランの姿。

 

『転んじゃったら縁起悪いもんね』

「――――今、助ける!!」

 

 直ぐに瓦礫を退けて抱えて逃げるのは不可能、今の3%で巨大仮想ヴィランを倒すことは出来ない。そんなことは僕が一番分かっている。だからフルカウルを解く。そして全ての力を足に込めて蹴る。景色が変わり、一気に目の前まで肉薄する。

 

DETROIT(デトロイト)――――」

『緑谷少年、もしもう一度100%を使うとき君はきっと誰かを助ける為に使うだろう。その時はケツの穴ぐっと引き締めて心の中でこう叫べ!!!』

 

 筋肉がブチブチと嫌な音を上げるが気にしない渾身の力で拳を握る。

 

「――――SMASH(スマッシュ)!!」

 

 巨大ヴィランは、弾けるように大きく上半身を後ろに傾け周りの建物を巻き込みながら倒れた。 

 

 




試験で力持ってたら結果は同じになるだろうけど、こうなるかな、とか思って書きました。多分この小説で初戦闘、主人公の百合の戦闘シーンはまだ先だなぁ…誤字脱字、感想評価ありがとうございます。励みになります。
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