一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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エアコン壊れてヤベーイ事になってました。


第九話:これからの決意

 試験が終わり、一週間という時が経過した。その間の兄さんはずっと落ち着かない様子で、誰かに電話をしようとして難しい表情をして結局電話をせずに近くに置いてあったダンベルを持って体を鍛えている。

 雄英高校に合格する為に十か月の間、まともな休日を挟むことなく常に無茶ギリギリの所まで肉体と精神を追いこんで全力疾走してきた兄さんは試験で相当無茶をしたらしくリカバリーガールに治療を受けて試験が終わっても自力で帰れない程に体力を消耗して、私は兄さんに肩を貸してタクシーを呼んで家に帰った。ヒーロー科の試験内容は後日、兄さんから聞いたが、とてもじゃないが戦闘経験なんてないであろう中学生にいきなり戦闘をしろ、なんて無茶な内容だ。

 

 しかし、同時に納得した所もある。雄英高校は最初から何もかも教えるつもりはないのだ。ある程度の戦闘力、知識、判断能力、それらを試験前から所持している前提条件で、それを持っていない物には雄英ヒーロー科の小さな門を潜る資格はないのだ。

 

「46P、ね」

「……うん、それが僕があの場で出来る全てだった」

 

 たった1~3ポイントしかいない仮想ヴィラン達を倒して、そのポイントの上位メンバーによって合格者が決められる。兄さんが得たポイントは確かに多いとは思うが、あの一般入試枠36人で倍率300倍という控えめに言って頭おかしい狭い門を兄さんが潜り抜けれたか、どうかは合格通知が来るまで分からないのだから。

 

「…………」

 

 兄さんの表情は暗い。スタートダッシュがみんなと遅れたり、思い返してみれば色々と後悔が思い浮かんでいただろう、筆記のほうは自己採点でギリギリ合格ラインには届いているのは確認したとのことだから、本当に実技試験で兄さんのライバル達がどれほど点数を稼いでいたかだ。

 

「そ、そういえば百合はどうだった?面接と筆記試験は」

 

 母さんが暗い雰囲気に耐え切れなくなったのか、話を別の方向に移そうとする。因みに母さんそれはもう言ったけど。

 

「面接は問題ないよ、普通に答えて終わった」

 

 因みに普通科も倍率は10倍以上になるほど受験者も多いので、集団面接だった。相手は世間で有名なプロヒーロー達と写真で見たけど雄英校長の根津校長、その姿と容姿はネズミ(大体幼稚園児くらいの大きさ)そのもの。異形型“個性”ではなく毘天のような人間以外で“個性”が発現した者だ。

 

「筆記試験も特に問題なし、全教科100点あるとしたら95点ぐらいだから」

「「………ははは」」

 

 兄さんと母さんは思わず苦笑い。むぅ、私だって兄さんと同じ高校行きたかったから頑張ったよ。オールフォーワンとしての活動も勿論していたから毎日遅くまで眠れなかったし、オールマイトとエンカウントしたら活動限界まで全力で隠れて逃げてを繰り返したし、大変だったんだよ。

 

『ニュースです。オールフォーワンが神野市に出没、凶悪なヴィラン達をたった一人で一網打尽しました』

「あ、また出たんだ」

 

 居間のテレビに映ったのは、偶然にも撮られてしまった私が大暴れするヴィランを倒す映像だ。街中だったから、毘天達で一般人を逃がしつつ交戦していたのだが、奴の個性は異形型の個性”オニ”、単純明快なパワーのたった一振りで瞬く間に建物を崩壊させるほどだった。プロヒーローも何人か駆けつけ一度は捕まえる事に成功するが、個性を増幅させる薬を体に撃ちこんで更に狂暴化、プロヒーローに漁夫の利で捕まえられたくなかったから背を向ける事はしないようにしていたが、奴の傍で歪んだ車の中に幼い子供とその親の恐怖に震える姿を見たら、もうやるしかないと思って突撃してしまった。

 

『凄いですね。あの怪力を真正面から受け止めながら背の蜈蚣で車を一部破壊、中に閉じ込められていた親子を救出、体の一部をヘドロ状に変化させて(・・・・・・・・・・)拘束、そのまま誰もいない場所に投げ飛ばすことで安全を確保している鮮やかです』

 

 そっと横目で兄さんと母さんを様子を見ると二人の意識は、テレビに釘付けだ。

 テレビに映っている私は背から生やしている四体の毘天の口から火を勢いよく噴き出すことで加速、大木のように巨大化した拳を避けると、ヴィランの表情は更に烈火の如く赤くなり嵐のようなラッシュを繰り出すが、既に個性“残像”によって奴の視界から姿を消しており、私を象る影達を好きなだけ殴り続ける間に既に脳天目掛けて放たれた個性“筋力増加”を重ねた回し蹴りが確実に奴の意識を刈り取った。ヴィランの巨体が倒れ、ヒーロー含め騒然とする場所で、未だに震える親子の下へ駆け寄って涙と鼻水で濡れる男の子に視線が合うようにしゃがんで頭を撫でる。

 

『もう大丈夫、私がいる』

 

 子供を安心させるような優しい声音、その言葉は、もう死ぬ運命を受け入れていた小さな私を救ってくれたマスターの口癖のようなもので、私と初めて会った思い出の最初の言葉でもある。

 

「……どうしたの百合?」

「母さん、何でもないよ」

「でも、初めてヒーローを見た時のような泣きそうな顔していたから」

 

 何でもないと再度言い放つ。前世では悪の帝王とか色々言われていたが、私にとってマスターは間違いなくヒーローだった、たとえ私の“個性”目当てで、使い勝手のいい駒にするためでも、それでも良かった。マスターに教わった全てが私にとって明日の希望に繋がる物だったのだから。

 

『複数の“個性”を同時に使う前例がない“個性”、更にオールフォーワンによって倒されたヴィランの証言によると、自分の“個性”をコピーされた、と言っており実際にこの映像後に再びオールフォーワンが目撃された時、体の一部がオニのように赤く巨大化してヴィランを空高く殴り飛ばした、という情報を入っております』

「“個性”をコピーする”個性”………凄い、そんなことが出来るなら全能に近い存在だ」

 

 ブツブツと私達の個性について考察を始める兄さん、映像は終了して個性研究の専門家やヒーロー研究者、元警察の署長も交えて議論が始まった。どうしてこれだけの事が出来るにも関わらずヒーローにならないのか、もしくはなれないのか、“個性”というのはオンリーワンな物を同時に使う事は危険な薬品を混ぜる事と同じで非常に危険な筈なのにそんなことが出来るのかとか。そもそも―――――私はヒーローなのかヴィランなのか。

 

「ヴィランだよ、オールフォーワンは間違いなく」

 

 時々鋭い意見が飛び交った、法外で好き勝手に“個性”を乱用する存在はどんな行いであってもヴィランだと、ヒーローが倒されてから動き始めたオールフォーワンが動かなければ更なる被害が及んだ、どんな状況であれ法は人の論理に境界を作る物であり歪められてはいけない、ならあのままあの親子が殺されていても仕方がないと済ませていいのか、それは私には答えらない、オールフォーワンは間違った事はしていないヒーローとしての当然の責務――――

 

「あ、あれ?テレビが消えた」

「どうしたのかしらまだ新品のはずよ」

「調子がおかしいのかな」

 

 毘天ナイス、そのままちょっとテレビが映らないように部品除いておいて。

 

「私、ちょっと外走ってくる」

「今の時間に?外は暗いわよ」

「ちょっとコンビニで雑誌買ってくるだけだから、兄さんアイスでも買ってこようか?」

「別にいいよ、それより遅いよ?明日でもいいんじゃないかな」

 

 今買いに行きたいと二人に強引に言い聞かせて、私は逃げる様に外を出る。目的は勿論コンビニじゃない別の場所だ。

 

「……困ったな」

 

 向かった先はゴミ箱海岸と呼ばれた市宮多古場海兵公園だった。海流的な理由で漂着物が多く、そこに付け込んだ不法投棄が好き勝手に行われたこともあって、水平線が見えない程のゴミだらけの場所はきれいさっぱりにされていた。元から一か月に一度は()に会う為に足を運んできたが遂に善良な市民、或いはヒーローが片付けてしまった。ここは、人が滅多に立ち寄らず、海に面して一番手軽に私が来れる場所だったんだけど、別の場所を探すようにしないと。

 

「毘天、周囲に人影はある?」

『暫シオ待チヲ………クリア、アリマセン』

 

 ありがとう、そう言って私は毘天達に周囲に人影が来たら直ぐに、思い浮かんだ言葉を文章にして頭に情報として伝える個性“メール”を使って報告するようにと指示を出して、解散させた。暗い夜空を映すように、黒い海、街灯の光が少しでも届かない約束の場所に足を進めると既に()は海の中で待っていてくれた。

 

「お待たせ毘天羅(・・・)

『いえ、来たばかりです、ご主人様』

 

 他の毘天とは違う片言ではない言葉と同時に海面が持ち上がった(・・・・・・・・・)。現れたのは超巨大な蜈蚣、山すら巻きつけるであろうと巨体、その牙だけでも旅行バスのよう大きく、その体は戦艦のような太さで、放たれる威圧感と常識を超えた存在は、生者というカテゴリーを外れた正真正銘の化物と断言できるものだ。

 

『雄英試験お疲れ様です。ご主人様のことです、当然合格でしょう』

「だと嬉しいね、体の調子はどう?」

『まだまだ傷は癒えそうにないですね、この巨体です。回復系の“個性”を持ってないのもあって時間は掛かります』

 

 毘天羅は他の毘天とは違い、前世の唯一の生き残りで“ワン・フォーオール・アンリミデッド”を持つことが出来る毘天だ。私は死んで転生という形、この毘天羅は死なずにあの戦いの影響で、この世界に転移してしまった存在。

 

『………何かありましたか?』

「ちょっとね」

 

 私は先ほどのニュースの事を伝えた。私はヒーローにはなれない、なってはいけない存在。闇の中で生まれ闇の中で生きてきた、大勢の人々を幸福にさせるために不幸にさせてしまった。

 

『変わりましたねご主人様、前世の貴方は冷酷で激烈でした。全てはオール・フォー・オーバー様を裏で暗躍させる為に』

「……私達は個性無き世界を造ろうとした。最後は世界がそれを否定した………あの後、人類はどうなったんだろうね」

 

 8割の人類を無個性にした時点で既に表裏の頭領も存在がばれている。残りの二割の人類は私達が操る人を素体にした怪人、“脳無”と呼んだ複数の“個性”を持ち、更に私が持っている制御不能まで強化してしまった物とは別に調整された“ワン・フォー・オール”を持つ脳無達の部隊と共に世界を侵略したが、最後の最後で人工的に個性を生み出す技術を人類は手にした。造りだしたのはある言葉をトリガーとし、持ち主の精神を破壊する“個性”。

 それに元から数億(・・)の個性を抱えて、幾度も改造を繰り返し人間を辞めても足りず精神的にも肉体的にも限界寸前だった私の親友で、マスターの実娘、オール・フォー・オーバーはその“個性”を奪ってしまい、発動させてしまった。

 

 恐怖と絶望と憎悪と憤怒、あらゆる負を解放した狂ったバケモノ(家族)は全人類を抹殺しようとした。数十万という脳無が世界中で殺戮を開始した。無個性という本来の人類の歩み方を始めた、私達が救ってきたと信じていた人たちは、無個性故に抵抗も出来ずみんな殺されてしまったんだろう。

 

「………あんな状況なのに、私は親友を止める方法だけを考えてしまった」

 

 誰かが救われますように、

 誰かが笑顔になれますように、

 誰かが明日に希望を持てますように、

 そんな願いを抱いて私は戦ってきたはずなのに、誰かの助けの声が聞こえていた筈なのに、最後は家族を選んでしまった。

 

 あらゆる“個性”を試して悪魔に堕ちた家族を助けようとした。

 でも出来なかった、苦しませるぐらいならもう殺すしかなかった。

 狂っても数億の個性を持つ人類が到達してはいけなかった“個性”の究極が相手だった。同じく人間を捨てた私でも死力を尽くして相打つしかなかった。

 

 

 そして私達は死んだ。

 “個性”が原因で国同士が戦争したように、私達も殺し合った。星に癒えぬ傷を負わせて。

 

「私達が歩んだ先は、殺戮でも、救済でもなかった、虚無に終わった」

 

 星の生命活動まで介入できる神の如き技のオール・フォー・オーバー。

 星に罅を入れる巨人の如き力のワン・フォー・オール・アンリミデッド。

 そんな私達二人が本気で、周囲の環境を一切考えずに、殺し合えば……何が残るって言うんだ。

 

『……ご主人様』

「もしも、もしもの話、私と同じようにオール・フォー・オーバーがこの世界に転生したとしたら……私はこの身を犠牲にしても止めないといけない」

 

 この世界は平和だ。私達があんなことをしなくても世界を安定させようとしてくれるヒーローという心強い人達がいる、誰かの為に立ち上がってくれる人たちが暗闇の中で星のように輝いてくれる。あぁ、本当に心を裂くような悔しくて悲しくて、だけど嬉しくて楽しくて。

 

「だからこそ、お願い毘天羅。私に一発……いや二発でもいいアンリミデッドの灯火を頂戴。今の私なら打てるはず」

『回復系の“個性”は確認できているだけでヒーローのみ、それも自身ではなく他人を対象するものばかり、ご主人様死にますよ最悪の場合、放つ前に』

死んでも終れない(・・・・・・・・)、大丈夫だよ私はやれるから」

 

 この世界を前世の世界と同じようにはさせない為に、きっと私はもう一度チャンスを与えられた。だから、最後まで付き合ってよ相棒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あともう少し、ふふふふ

あ、映画ヒロアカ超楽しかったです。
どうしても原作では雄英学校内での話し故に教師と生徒という関係が出来てしまっているオールマイトと緑谷出久ですが、映画はそこがちょっと違う肩を並べる戦友のような感じで感動しましたED曲ロングホープ・フィリアも最高だった。
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