一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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第十一話:雄英高校

 何時の間にか私はそこにいた。

 死臭漂う灰色の廃墟、前世で幾度もなく這いずりながら見てきた光景、マスターに出会った運命の場所。この国では、まずありえない滅びの嵐が過ぎ去った残痕が、強く刻まれている終わってしまった世界の中で足を進ませた、何度も前世の私が辿った道を、夢の中の世界を。

 

『ねぇ、レギオン』

 

 酸性を含む白い霧の中を懐かしい声がした。妖艶な耳に粘着するように残る甘い声、漆黒の闇の如き中に煌々と輝く黄金の双眸、黒曜石の如き光沢を放つ美しい長い髪、どんな高名な絵描きでも彼女の全てを書き写すことは不可能だと血涙を流しながら自らの腕を叩き折るほどの魔性の容姿。彼女はマスターと同じ黒い服装を好み、”個性”の副産物であるこの世の物とは思えない赤い極彩色の翼を広げる様は、正に人の皮を被った悪魔と呼ばれる所以だった。

 

『今日は月が綺麗よ』

 

 胤翼(いんよく)と呼ばれる個性因子と血肉によって形成された翼が空を無造作に裂いた。遠雷の轟音と衝撃波は溺れてしまうほどの死臭、眼下の建物すべてを別の空間へと消した。人智を超えた存在、この世を造り直す為に現れた天魔、《災禍の魔王》―――――彼女はそう呼ばれ畏怖された。同性の私も見惚れる程の美しい笑みをして淡い月の光が濡らした幻想的な光景の中で彼女の口が動く。

 

『お父様は、もう死んだ?』

 

 その時の私は答える。『死んだ』と。

 悪の帝王と呼ばれた男は、たった一つの”個性”を残して、目の前の彼女が全て奪い去った。それだけではない、名声も部下も財宝も組織も全て乗っ取ったのだ。たった一つ残された”個性”と遺志は私が受け継いでしまった。

 

『私を怨んでない?』

 

 私は沈黙した。涙に濡れた瞳で、握りしめた拳で。

 私に何も言う資格なんてない、私の命は彼女のためにあるもの、そうやって教育されてきたのだから、その為に私の人生はあり、そう期待され信頼されたのだから。殺してしまった、止めることは出来なかった、私に残された守る物はマスターの遺志だけだ。

 

『……凄くいい顔しているわ、お父様が居なくなったから今度は私だけが貴女に与えられる、奪う事が出来る。ふふふふふふ』

 

 深淵に潜む魔女のような笑い声で、瞬間移動したと錯覚するような速さで私の目の前に現れ優しく抱擁した。耳元で脳髄まで犯す様な透き通る声が響く。

 

計画(プラン)を始めましょう。この”個性”という呪いに蝕まれた世界を元通りにして、あらゆる不合理を排除して、始めから人類をやり直す為に。ねぇ―――レギオン?いえ違うわね、私ではなく継いだのは貴女だもの、オール・フォー・ワン』

 

 

 

 

 さぁ、二人で神様になりましょう。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「……久しぶりに見た」

 

 目が覚めると見慣れた私の部屋の天井だった。枕元に置いてある携帯端末で時間を確認、寝過ごしてしまった。これじゃ朝の鍛錬には行けそうにない。またオールフォーワンとしての活動時にオールマイトに見つかってしまって追いかけ回された。会った当初は血眼になって追跡してきたが、この頃はどうも様子がおかしい、捕まえるつもりはない、話がしたいと言ってくるようになった。

 

『ゴ主人、起キタカ?飯ヲクレ、ハーヤークッ』

「分かった、分かったから”個性”無しでいきなり鼻とか耳から入るのはやめて」

 

 よいしょと眠気を訴える体を起こしながら、数百は居るだろう毘天達のご飯を用意する。本当の総数で言えばこの十倍はいるのだが、全員のご飯を用意するのは社会人でもない私には厳しく、バイトも学校と親が許可してくれないので何日か交代でご飯を上げている。他の毘天は各自裏山にでも行って狩ってこい、だけど生態系に異常が出来る程の暴食はダメだと禁止している。後人間見たら逃げる事、攻撃してきたら反撃許すと言った感じだ。市販で売っている様な殺虫剤如きでは死なないが、余り本気を出してくるとこちらも相応の反撃をしてしまい、”個性”を持った蜈蚣という存在が世間に広まったら更に大変な事になるので、あくまで普通の蜈蚣で出来る範囲でお願いしている。

 

『『『『『『ウマウマウマ!!』』』』』』

「……あははは」

 

 流石に人間の味覚じゃ繁殖させている餌(ゴ〇ブリ)の味は分からないが、満足しているので良しとしよう。クローゼットに仕舞ったまだ袖を通していない今日から通う雄英高校の制服を着て自室を出ると、同じタイミングでまだ寝巻の兄さんが部屋から顔を出した。目下には、はっきりと黒い隈が見えた。

 

「お、おはよう、百合……」

「おはよう、兄さん。早速だけど今すぐシャワー浴びてきた方がいいよ」

 

 ほ、ほんとう?と目を白黒させていたので洗面台まで押していく。遠足が楽しみで眠れない小学生か!と内心思ったが、今日はほぼ一年ずっと目指したいた高校の入学式で、良く緊張する兄さんの事だ、少しは気持ちが分かるので今日は何も言わないでおこう。

 

「ちゃんとネクタイ結べる?身綺麗にしないと精神は引き締められないよ」

「う、うん分かってる……」

「ティッシュとハンカチはバッグの中に入れてる?」

「ちゃんと入れてるよ」

「なら良し、着替え用意してさっぱりしておいで、私は母さんとご飯作るから」

 

 はーいと欠伸混じりのあいさつをして、服を脱いで洗濯機に放り込んでいる兄さんの体は一年前と比べて全体的に引き締まった。まだまだワン・フォー・オールを完全に扱えるまでのレベルに達してはいないが、それでもあの努力を続けていけば、いつか辿りつけるだろう。

 

「母さん、おはよう」

「おはよう百合、新しい制服姿、超可愛いわ……出久は?」

「色々あったみたいで寝不足気味だったからシャワー浴びさせることにしたよ。まだ時間に余裕あるみたいだし」

 

 そういえば母さんもいつもより早起きしてたみたいだ。私が手伝う間もなく、既に朝食は出来上がっており、盛り付けられた皿を食卓に並べる事ぐらいしかやることが無かった。椅子に座って兄さんを待っていると母さんが神妙な面持ちで口を開いた。

 

「ねぇ、百合。私はちゃんと貴方達の母親でいられているかしら」

「……どうしたの突然?」

「一年前、出久が学校の先輩に暴力振るわれそうになった事件、本当なら私がきちんとしなきゃいけないのに、何時の間にか百合が相手側の両親に交渉して、私は頷くことぐらいしか出来なかったわ。そこから貴方と出久の仲が良くなったのは凄く嬉しかった。私は昔から出久がヒーローになる夢に走る姿を陰から見守る事しか出来なかった、”無個性”として産んでしまった私はずっと諦めて、けど百合は最後まで出久のことを見てくれた」

 

 いざ兄さんが本当にヒーロー科に行くと決まって色々と思う事が溢れて来たんだろう、母さんは懺悔するように語った。

 

「百合の応援が無かったら、出久は雄英高校に落ちていたかもしれない。それほどまでに貴女の存在は出久にとって大きいのよ。貴方は自分の事や出来る事に対して無神経すぎるところがあるから分からないかもしれないけど、それに対して……私は」

「大丈夫だよ、母さんが私たち二人を愛してくれているってこと、ずっと知っている。だから私は安心して前に出れる。そんな悲観することない、ありがとう母さん」

「百合ぃぃぃぃ……」

 

 あーもう、親子含めて泣き虫だよ本当に。ここにはいないけど出張先で毎日体調を気にしてくれているお父さん、ちょっと臆病だけど芯はしっかりしている母さん、頼りないように見えて本当は誰よりも心に消えぬ炎のような意思を持っている兄さん。

 

『お前は俺を完璧にするための道具だぁぁ!!』

『解放させて、私を解放させてよぉぉぉぉ!!!』

 

 ………自分の為に理想の”個性”を生み出す為に多くの人に手を出したアイツや、私を産んだショックで精神が壊れ怪しい宗教に嵌って私を”生贄”に奉げようとしたアイツとか、温かい家族なんて夢物語だと思っていたけど、私は貴方達の下に産まれて本当に幸福だ。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「しかし、広いな……」

 

 場所は変わって遂にやってきました雄英高校、四つのビルがヒーローのHにどこからでも見えるような構造だ。合格通知と一緒に入っていたパンフレットに載っている学校の校長先生がまるでマスコットキャラの如く、設備の説明や学校の場所について教えてくれている。一緒に来た兄さんとは既に別れ、私は自分の新しいクラスである普通科1-Cの部屋へとやってきた。窓からは既に何人かの影が見える。

 

「よし、行こうか」

 

 ちょっとだけの緊張、これから共に三年間切磋琢磨する生徒達がどんな人達か楽しみに思いながら無駄にでかいドア(多分異能型の”個性”持ちを配慮してのこと)を開けると同時にカシャっと携帯端末に内蔵されたカメラのシャッター音がした。

 

「初めまして!!」

「……は、初めまして」

 

 明るい山吹色の髪をした活発を体で表現したような少女が私にニコニコしながら手を伸ばす。友愛の握手なのだろうか、とりあえず差し出されたその手を握る。

 

「私は写原(しゃはら) 念音(ねね)!!貴女の名前を聞かせて!」

「緑谷百合、よろしく」

「おー!?アンビリバボー!!貴女もしかして”ヘドロ事件”時、”個性”を使わず二人の男の子を助けたヒーロー!!?」

 

 彼女の高い声にオーバーリアクションに一斉にクラスの目が私に集まった。そして皆口々に私を見ながらあの時の事を話し出した。みんなニュース見ているんだな、と広がってしまった熱は収まる様子を見せず、私の手を握ってブンブン振り回す写原さんをどうやって止めようかと考えていると鞭を地面に叩きつける乾いた音が教室に響き渡り、視線は全て私の後ろに立つ女性に向けられる。

 

「はい、これで静かになったわね。有名人を前に騒ぎたい気持ちもあるけれど、貴方達は今日から高校生、大人の階段を一歩登ったのよ、少しは落ち着いた行動をするように」

 

 全身白いタイツの上に黒いレディースファッション、凸凹のはっきりとしたグラビアアイドルのような肉体美、クラスの一人が彼女を指さして興奮しながら叫んだ。

 

「貴方は18禁ヒーロー”ミッドナイト”!!」

「そう!そしてこのクラスの担任を務めるわ、みんなよろしくね!!」

 

 うぉぉぉぉ!!!とクラスが揺れるような叫び(主に男性)、私の手を握っていた写原さんは妖艶なポーズを決めるミッドナイト……先生を撮りまくる。その姿を見て後で売ってくれ!と男達、突然のプロヒーローの姿に涙を流す者達、私はふぅとため息を吐いて濃いなぁと思った。

 

 

 




タイトル詐欺だと思う人……俺だよ。
何か気づいたら書いてて、気づいたら雄英高校の描写がどんどん後になった結果がこれだよ!!

MHWやって、FGOやって、アズレンやって、小説書いて毎日とても忙しい!!!

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