一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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※作者がお酒飲みながら好きなモノだけ詰め込んだ闇鍋です。
※緑谷母は最強になってます
※仮面ライダービルドは全話録画するぐらい面白かった。




UA100000記念:ベストマッチな奴ら 後編

 時間は一気に飛んで雄英高校の試験当日、幼稚園の時に約束して別れた懐かしい友達は僕を見ると『強くなったかよ』と言ってきて僕は『君より強くなっているかもね』と返すとかっちゃんは鼻で笑い『お前は一生、俺の下だ』と買い言葉、売り言葉を口にして、最後に互いにわずかに笑みを浮かべて、それ以上の言葉は不要と別れた。周囲の人たちは『お、王道だ』と呟いていたけど、どういう意味なのかな?

 因みに焦凍くんと百合はヒーロー科推薦枠に入っているのでこの場にいない。僕も受ける事は出来たけど残念ながら落ちてしまった、零明姉さんがくれた個性は爆発力はあっても安定性がネックなんだよね……。

 

 始まる実地試験は、仮想ヴィランを倒して得られたポイントの累計を競うまるでゲームのような内容だった。

 試験会場は残念ながらかっちゃんと一緒じゃなかったけど、あの後躓いた時に個性で助けてくれた女の子が居たのでもう一度、ありがとうと伝えようと足を進ませた瞬間、スタートという掛け声に反射神経で体が動いた。零明姉さんから家族を守るために、と譲ってくれたのは【思いの強さをパワーに変換する個性】。言ってしまえば強く念じられるほどに出力が上がり、身体能力を向上させることが出来る個性だ。極限まで念じればたった一振りだけだがオールマイト級の力を発揮できるとエンデヴァーからお墨付だ。欠点としては僕の心理状態によって出力の高低が激しいので、揺るぎない無尽蔵の精神力が重要だと零明姉さんと百合は言っていた。

 

 昂る心の熱を体中に流し込むように個性を発動した僕は、一気に同じ受験者を追い越していき仮想ヴィランを次々と倒していく。試験当日に零明姉さんから色んな系統の個性を一時的に貸してあげますわ、と言われたが僕はそれを断った。なんだかズルをしているような感覚もあったし、『零明姉さんから最初にもらった最高の個性で僕は僕に挑戦したい』と言うとため息を一つ、『そういえばこういうの弟くんは嫌いでしたわね、せいぜい頑張りなさい』と背中を押してくれた。

 

 試験の終盤、そこらのビルより二回りも大きい、倒す意味もない妨害ロボットが現れた。みんなが逃げていく中で僕だけが気づいていたのかもしれない、『転んじゃったら縁起悪いもんね』と助けてくれた女の子が瓦礫に足が挟まって動けないままでいるところを。

 

「もう大丈夫、僕が来た!!」

 

 既に彼女の前の前には仮想ヴィランの巨体を支えるための足が接近している。近づいて直ぐに瓦礫でも撤去して逃げても間に合わない。なら、僕が出来る事は決まっている。

 憧れのヒーローの台詞を自分を昂らせるために叫んだ。一気に身体能力が肉体の限界を超えて向上する、ぶちぶちと筋肉が悲鳴を上げるが知ったことではない、僕はヒーローになるためにここに来たのだから!!地面が砕けるほどの力で上空に体が跳び、仮想ヴィランが頭部に狙いを絞って強く拳を握る。

 

SMASH(スマッシュ)!!!」

 

 僕の肉体破壊を条件に放った禁断の一撃に巨大仮想ヴィランの頭部はめり込み、ゆっくりと周囲の建物を押しつぶしながら倒れていく。そこで精神力が尽きてしまい僕は意識を失い、目が覚めてみれば雄英高校の保健室、僕を見下ろす怒った顔を百合と零明姉さんの姿。

 

「にーいーさーんー?」

「ご、ごめん!!」

 

 学校側の連絡を受けて急いでやって来た二人。百合に封印指定した技をどうして使ったんだと怒られて、零明姉さんはせめて自分で着地するぐらいの余力ぐらい残しておきなさい、あの饅頭のような顔をした女の子が助けてくれたのよ、と注意を受けながら僕たち三人は肩を並べて家へと帰った。数日後、僕は雄英高校に合格した。三人で同じ学校に通う誰にも言ってない密かな夢が叶った瞬間だった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 雄英高校に入ってまだ数日だけで濃い体験を幾つも体験した、新しい環境で友達ができた、ライバルが増えた。だけど、ここはヒーロー科で、ヴィランにとっては脅威となる存在を育成する組織だ。数日前に起きたマスコミ侵入事件に推薦枠として1-B組に入った百合と同じく経営科に推薦枠で入学した零明姉さんは、これは近々荒れると予想していたが、今ヒーロー科1-A組はピンチに陥っていた。

 

「―――平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

 学校から離れたUSJでまさかのヴィラン襲撃。

 人の形をした黒い霧のヴィランによって僕たちは分断された。落とされた水難ゾーンの巨大なプールの中でサメのような姿をしたヴィランに襲われて危なかったが、蛙吸さんに助けられ、同じく彼女に助けられた峰田くんと共に力を合わせてヴィランの動きを封じながら、窮地を脱出できた。二人は止められたけど、邪魔になるようなことを考えていないが、僕たちを逃がすために囮になった相澤先生が不安になり体が動いてしまった。僕のヒーローコスチュームの腰のベルトに収められた細長いポケットから取り出したのは、零明姉さんと百合がとある特撮番組を元に設計した変身アイテム灰色と深紅のメタリック塗装された『プライドライバー』を握りしめて、これを渡されたことを思い出した

 

『I・アイランドの知り合いに依頼して作った私たち三人の変身アイテム、変身するための中身は今私の胤翼の中で生成中で多分体育祭前までには間に合うわ』

『……因みに零明姉さんに付き合ってくれた知り合いって?』

『デヴィット・シールドというお方ですわ』

『ノーベル個性賞を受賞した“個性”研究のトップランナー!?オールマイトのアメリカ時代の相棒で、オールマイトのヒーローコスチューム、ヤングエイジ、ブロンズエイジ、シルバーエイジ、そしてゴールデンエイジ!!それらすべてを制作した天才発明家!!?』

『………凄い早口ですわね。えぇ、かなり無茶な注文でしたが、オールマイトのことを喋ると喜んでやってくれましたわ』

『…………脅してないよね、あと今度サイン貰ってきて』

『しませんわよ、勝手に(・・・)頑張ってくれているだけですわ、サインは今度貰ってきてあげますわ』

 

 まさか、零明姉さんがとんでもない大物と知り合いになったとは思いもしなかったけど。

 

「緑谷、なんだよそれ一昔のなりきり変身玩具か?」

「……その形、たしか弟たちが似たような番組を見ていたわね……なんだったかしら、たしか仮面ライダーと言っていたわね」

「仮面ライダービルドっていう番組だよ。これはその僕の姉と妹が中身を自己解釈して設計して作られた模造品だよ」

「なんだよそれ、オマエ変身できるのか!?」

「いや、中身がまだできていないからこれだけじゃ何の意味もないよ」

「ダメじゃん!!!」

 

 けど、これはあの二人が作ったものだ。その目を輝かせながら語ってきた零明姉さんから仕組みも聞かされている。

 

「これ、実は常に位置確認している機能が有って、ヴィランによって通信機器がダメになっているならこれも当然切られているんだ」

「………え?それって……まさか!」

「少なくても、何か異常が起きたことは外に流れている」

 

 僕の言葉に峰田くんが目を輝かせた。問題はあの二人がどう動くかだけど、ちゃんと先生達を呼んでくるだろうか?あの二人が揃った時の個性勝負なら、天と地がひっくり返ることでも起きない限りは絶対に無理で、強すぎるから他人に頼ることってあまりしないから普通に二人だけでこっちに駆けつけてきそう。

 

「応援はもうすぐで来ると思うから、僕たちは少しでも相澤先生が撤退するときに手助けになるように動こう」

「ケロケロ、直接戦闘になりそうなら直ぐに撤退する条件ならいいわ」

「うう……緑谷、嘘ついたら一生呪ってやるからなぁ!」

 

 それは勘弁してほしいなぁと返しながら、プールの隅を移動しながら中央に僕たちは近づく。

 先ほどは僕たちの個性が相手に伝わっていないことを逆手に取ることで、水面に飛び出した僕のパワーで穴を空けて峰田くんが【もぎもぎ】を投げつつ、蛙水さんの【カエル】の個性で跳躍しつつ一気にヴィラン達の上を通って水難ゾーンから逃げる。水面に強い衝撃を与えたら、広がりまた中心に収束していく原理を利用して僕たちはヴィラン達を一網打尽した、また肉体の限界を超えるパワーを使ってしまったけど入試の時と比べて出力を最低限にしたお陰で、多少腕が痺れるだけだ。

 

 そして、僕たちは相澤先生がヴィランを抑えている場所に行くと――――想像しなかった最悪の場面があった。オールマイトのような巨体をしたヴィランが相澤先生の腕を曲げていけない方向に捻じ曲げていた。まさか、相澤先生が倒されるなんて、……応援はあともう少しで来ると慢心した僕のミスだ。

 

「大変です!死柄木弔!!」

 

 慌てた様子で現れた黒い霧をしたヴィランが、リーダーらしき体中に手のパーツをつけたヴィランに話しかけた。

 

「あぁ、どうした黒霧、ちゃんと13号をやったんだろうな?」

「全員です」

 

 信じらないことが起きたように震えた声で黒霧と呼ばれたヴィランの言葉に全員の思考がストップした。

 

「あの噂の二人の奇襲によって全員逃げらました!!!」

「はぁ!?なんでこんなに早く外に情報が漏れているんだよ!!」

 

 その言葉と同時に目を開けられないほどの衝撃は走った。

 ヴィラン達の悲鳴が耳に届く場所が徐々に変わっているような不思議な感覚があり、目を開けると 

 

「怪我はなかった?兄さん」

「雄英高校も思ったよりセキュリティは大したことないわね。私たちが動いても、先生たちは誰一人として気づいてなかったわよ」

 

 赤い翼を生やして零明姉さんと背中から異常な大きさの蜈蚣を四匹も生やして怪我をしている相澤先生を抱えた百合がいた。僕たちは零明姉さんの翼の一部に捕まえれられている状態で、ヴィラン達の集団の前に移動していたのだ。

 

「お前たちが先生が言っていた、イレギュラー……!」

「さてさて、どうでしょうか?それは私達にとってどうでもいいことですわ、さて弟くんプレゼントです、受け取りなさい」

 

 零明姉さんが胤翼から取り出したのは、設計図通りに金属製のボトル缶のようなものに機械的な装飾が施され、上には三人で考えた左右に歯車のような形をした蜈蚣が、その真ん中には縦に長いクリスタル状の模様に、中央にはオールマイトをイメージした勝利のⅤ字がある赤い極彩色で彩られた僕たちのシンボルマークが刻まれていた。下には二つの接続パーツと、回してシンボルマークの絵が刻まれている正面にすることでボトル内の個性因子を活性化させることができる『マテリアルドライブOL』が備わっている、まだ未完成と言われた変身ボトルがあった。

 

「……完成、したんだ」

「まだ未完成ですわ、変身時間は一分程度で、それでもこの雑魚ども殲滅ぐらい余裕ですわ」

「言い方悪いけど試験運用のテストだね。兄さんの学友さん達この先生を抱えて少し離れていてね。大丈夫、直ぐに終わるから」

 

 渡されたソレはとても重い物だった。口には決して出さないけれど零明姉さんがこの世界で初めて得た本当の家族を守るための力、百合が朧げながらずっとなりたかった象徴に近づくために詰め込んだ物、二人が生きた狂った世界故の恐怖を砕くために求めた、輝く希望と未来への宝物を守り、明日を創る正しいと望み続ける力の結晶。

 

「……二人ともいい?」

「「いつでも、どうぞ」」

「……なんなんだ、いったい何が始まるんだ!?」

 

 『プライドライバー』をお腹に当てるだけで、左右からベルトが伸びて装着される。

 二人の前世の遺恨、虚しく壊れた世界で得た衝動をボトルに宿らして、善き今にするためのボトルを逆さに持ち、『マテリアルドライブOL』を正面に向けて、左スロットに入れる為の接続パーツを叩いた。

  

『『レェボリュゥゥション!!』

 

 隣の百合が恥ずかしそうな赤い顔をした、ボトル缶から発せられた二人のこんな低い声を聞いたの初めてだよ。あとちょっとうるさい壮大なBGMは、零明姉さんが作曲したんだ視界を向けたら意味深くウィンクしてきたから。

 回転させながら左手から右手に持ち直して、二つの接続パーツを『プライドライバー』の二つの接続ソケットに差し込んだ。

 

『『オーバーレギオン!!!』』

 

 そして左手のレバーを回すと、ベルトから中身の入ってない二つのパイプが地面を沿うように走り、ボトル内に収縮されていた血を思わせる液体がパイプの中を巡り、回転しながら起動するような音を立てながらプラモデルのランナーのようなファクトリーが僕を挟むようにして完成する。更に左右にいた零明姉さんと百合の体が赤い瘴気の様なものへと変化して、DNAのような螺旋状が描く円を前後のファクトリーから更に挟み込むように展開する。

 

『 Are you ready?』

「「「変身ッッッ!!!」」」

 

 左右の腕を一瞬交差して構えると、ランナーが僕を挟み込んで装着、更に零明姉さんと百合の二つが装甲のような姿へと変わり僕を更に覆う。

 

『刮目せよ三位一体の最強ファイター!

オーバーレギオン!!

マジヤベェーイチョーヤベェーイ!!!』

 

 完了した姿、甲殻類のような装甲のように見える赤い外套を纏い、生物的な要素が見れるが騎士のようなヘルムの左右には鬼のような角が後ろから生えており、装甲は夜天のように漆黒、全体的に見れば西洋の悪魔のような姿をしていた。

 

「これが、三人で一つの仮面ライダープライド、オーバーレギオン……」

『オマケもいるけどこれが百合と一緒になった感覚……うへへへへ』

『……姉さん気持ち悪い』

 

 せっかくの晴れ舞台なのに閉まらないなぁ……。

 

「変身ヒーロー気取りか、脳無やれ」

『言った通りこれ一分が限界だから気を付けて!』

 

 分かっていると言う前に相澤先生の腕を捻じ曲げたヴィランが襲い掛かってきた。三人と意識が共有されている僕たちは一瞬で相澤先生の個性を物ともしない力を素で持っているのか、それとも異形型の個性を持っているのか思考が巡り、どちらであっても一分という時間なので周囲の状況も合わせ小手先の技術で攻めるより、単純なパワーで攻めるやり方がいいと結論をだした。

 

『弟くん!』

 

 攻めりくる最初の一撃を受け流し、脳裏に描いた実現したいことを可能する個性は共有意識内で常に伝達されており、二人が保有する個性たちを使って、夢を現実にしてくれる。僕は脳無と呼ばれたヴィランの続いてくる二撃目を片手で受け止めることが出来た。

 

「……オールマイトと真正面から殴り合える性能してるんだよなぁ、なんで片手でしかも一歩も動いてないんだよアイツ!!?」

『オーバーサイド!!オーバーフィニッシュ!!!』

 

 レバーを一回転すると零明姉さんの厳つい声が発せられる。同時に触れた奴のヴィランの個性を奪いながら、麻痺毒を流し込み、動けなくなったところで幾重にも増強型の個性によって極限まで強化された一撃がヴィランの腹部に叩き込んだ。更に【筋肉発条化】と【振動共振】により破壊的衝撃が指先まで浸透させられたヴィランは、音速でその場から消え失せ、ヴィラン達の遥か後方まで吹き飛んだ。

 

『まだ慣れませんわね【ショック吸収】は盗れましたが、【超再生】はまだですわ』

「まずは頭数を減らすよ、百合お願い!!」

『任せて兄さん』

『オーバーサイド!!レギオンサイド!!レギオンフィニッシュ!!!』

 

 レバーを二回転すると零明姉さんから百合の猛々しい声が響いた。胤翼が背中から溢れると同時に血の玉となり分散した。力を込めて地面を殴るとその衝撃が地面を切り裂くように前方に走ると同時に空中に浮かんだ小さな胤翼から氷の槍雨が、風の弾丸が、灼熱の炎が、高電力の雷撃が、まるで流星群のようにヴィラン達に降り注ぎ大爆発を引き起こす。

 

「これで殲滅できたかな?」

『いえ、まだですわ』

 

 二人、まだ立っていた。他のヴィラン達を盾にして。

 

「なんだよ、なんなんだよお前達はぁぁ!!!」

 

 半狂乱でヴィランが叫ぶと、再生途中の脳無が突貫してくる。どうやら毒に耐性がある個性も持っていたようだ。時間は残り少ないし、次で決める。レバーを三回回すと今度は僕を含めた三人の声がボトル缶から響く。

 

『オーバーサイド!!レギオンサイド!!トリプルサイド!!』

「そんなの決まっている」

『えぇ、すごく簡単なことですわ』

 

 心の熱が体中を巡りこれまで以上の力が溢れてきた、その衝動に身を任せるように走り出す。僕たちにそっくりに変化した胤翼達があらゆる個性を使い脳無の動きを抑制、最後にはその自由すら奪った。その隙に僕らは跳躍して宙を舞い、背部から激しく火炎のブーストが口を開いて推進力を激しくまき散らして突き出したキックの態勢は馬上の槍を連想させた。

 

『私たちは平和を愛することできた―――――ヒーローだ』

『オーバーレギオンスマッシュ!!!』

 

 音を置き去りにした渾身の跳び蹴りの一撃が叩き込まれる。完全に全ての個性を奪った脳無はUSJの壁を粉砕し、先ほどとは比べらないほどの距離を吹き飛んだ。これでも百合と零明姉さんの神業の如き出力調整によって死んではいないのは舌を巻くしかない。

 

「……ふ、ふざけるな。あれはオールマイト用に先生が……反則だ、チートだ………!!」

「逃げますよ死柄木 弔!!相手が悪すぎました!!」

 

 逃がすか、と体を動かそうとする前にヴィラン達は黒い霧の向こうに消えてしまっていた。最後まであの死柄木弔と呼ばれたヴィランは現実を逃避するような言葉を壊れたラジオのように口にしていた。周囲の安全を確認して、オーバーレギオンボトルをプライドライバーから抜くと僕を纏っていた装甲が液体となり、ボトル内に戻っていき、二人は赤い瘴気から元の体に戻った。

 

「さて、大本は潰したので後は簡単なゴミ掃除ですわね。ちょっとUSJ一周しながらやってきますので、百合はそこの怪我人の治癒をお願いしますわ」

「分かったよ、姉さん。怪我はしないように」

「えぇ、また後で、それにしても貴女との融合の感触だけで今日の夜の運動は10回は行けますわね、今度は肉体的な意味で接合してみませんこと!!?私ちゃんと処女のままでしてよ!!!」

「早く行ってくださいどうぞ」

 

 ゴツーンと百合の早口と同時に容赦ない拳骨の音が響く。

 

「ううう、行ってきますわ……」

 

 頭部の頂点に大きなたんこぶが作られ涙目になりながら、零明姉さんは胤翼を羽ばたかせてみんなの救出に向かった。

 今までの全てを見て放心状態の三人に近づき、ボロボロの相澤先生を痛々しそう見て血だらけの腕に唇を当てると、曲がってはいけない方向に曲がった腕が元に戻り、まるで風化したように崩れた腕の肘、顔の傷が塞がっていく。

 

「それはリカバリガール先生の個性?」

「緊急だからって姉さん、本人の許可なしで盗ってきたってここに来る道中で渡してきた……」

「………後で謝りに行って返させよう」

「勿論、私も一緒に行くよ……」

 

 零明姉さん、法律には個性を奪うことは違反とは書いていませんわとか理由で、どっかの誰からか個性を盗ってくるんだよなぁ。それを直ぐに百合がコピーして持ち主の元へ謝罪の言葉と共に返しに行くことはI・アイランドでの生活で毎日のようにしていたことらしい。

 

「ッ、お前、いやお前たちは……」

「私は1-B組の緑谷百合です。今あなたの生徒達を救出しに行ったのが私たちの姉の零明姉さんです」

「………知ってるさ、大層な個性を持っているそうだからな、いろいろ言いたいことがあるが……助かった」

 

 いえいえと返事をしながら百合の指し伸ばした手を握り、立ち上がった相澤先生の姿に安堵のため息が出る。間に合ってよかったと。その後、正気を取り戻した峰田くんが急に怪我をしたと叫びながら百合に助けを求めてきたが傷なんて嘘だと知っているので、とてもいい笑顔で拳をちょっと鳴らすと『な、治ったぁぁ!!』と直ぐに嘘を認めてくれた。後に蛙吸さんは『緑谷くんが闇落ちした……』と言っていたが、意味が分からないなぁ。

 

 その後、直ぐにオールマイトが来てくれて、その頃には零明姉さんの手によって、USJの半分くらいのヴィランはお縄についていた。残りはオールマイトも参加して、大きな怪我はなくみんな無事に生還することが出来た。そして、百合と零明姉さんはヴィランが襲撃してきたとはいえ、詳しいことを何も言わず授業中から飛び出したことについて駆けつけてきた担任のヒーロー達に警察が来るまで怒られていた。

 

 

 そして、その日の夜に色々あって疲れた僕たち三人はベランダで星を眺めていると唐突に零明姉さんが口を開いた。

 

「私と百合は比翼の鳥ですわ」

 

 知っている、二人でヒーローのいない狂った世界と数百年立ち向かい続けて結ばれた絆は、まだ十年とちょっとしか生活を共にしてきた僕と比べられないほどに深く強くものだと言うことを。

 

「そう思っていたけれど、私たちは実は羽だけだった。体が無いまま飛んでいた愚鳥だった。その先の未来が見えないまま間違った選択肢が選ぶこともしてきてしまった結果が崩壊へと繋がってしまった」

 

 百合が悲しそうに語る。二人の最後は気が付くと、たった一人を助けるために、今まで築いてきた全てを投げ捨てるか、苦楽を共に分かち合ってきた家族のような存在を切り捨てるのかの究極の選択を選ばされた。結果はどちらも嫌だと叫び、第三の道を探そうとしたが時間は既に無く無情に全てが終わってしまった、死んでも死にきれない残酷なバッドエンド。

 

「……この世界に転生して、恵まれすぎている環境で育てられた結果、生まれた時から化物だと思っていた私は全然違うことに気づきましたわ」

「零明姉さんは結構心配性で直ぐに落ち込むし、寂しがり屋だよね」

「……………むぅ」

 

 前世では零明姉さんも百合も真面な両親じゃなかった。どちらも邪悪な外道が居た、そして誰も助けてくれない環境は、二人の心をダメな方に歪ませた。まるでそれは呪いのように長い時間の中で二人を蝕み続けた。今必死にそれを受け止め、いい方向に持っていこうとしている。

 

「百合もずっと起きたことをため込むタイプだよね、限界が来ても強く見せようとして最後は暴走しちゃう困った妹」

「……………うう」

 

 昔の二人ならそんなことはないと顔を真っ赤にしながら否定してきたと思うけど、ちゃんと自分を理解しているんだろう。僕も今回の事件でちょっと自分の命を軽視しているかもしれないと思った。僕の判断ミスが僕だけじゃない、誰かの命を脅かすことに、選択するという責任の重さを深く受け止めなければならない。

 

「零明姉さんが困ったことがあれば僕と百合が話を聞いてあげて、百合がため込み始めたら零明姉さんと僕が支えて、僕が人を助けたくて頑張っても手が届きそうになかったら」

「「私たちは弟くん(兄さん)の背中を押し出すよ」」

 

 二人はそう言って、僕の手を握った。

 

「幼いころに兄さんがくれた勇気で、私は真実に向き合えることができた、だから」

「弟くんがいなかったら私はずっと無知蒙昧のまま命と個性を奪い続けていた、だから」

「「これからも末永くよろしくね、温かい陽だまりの場所に案内してくれる私たちの体」」

 

 これはありえたかもしれない一つの世界。

 飛ぶことしか知らない鳥がたどり着いた安息の地。

 太陽のように眩しくも月のように冷たくもない境界線上の幻。

 それでも、今という尊さを胸に三人はこれからも明日をビルドする。

 

 あぁ、幸せに満ちた奇跡のような夢がこれからも続いていく。

 




安心してください!!決して本編ではこんな展開は”絶対”になりません!!!

妄想OP『To be continued…』
flumpool様
妄想ED『Be The One』
PANDORA feat. Beverly様
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