一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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何で皆さんそんなにポンポン更新できるんだよ……


第十三話:越えなければならない壁

 事件というのは人が起こす災害。

 それを守り救うのはヒーローの仕事。

 けど、風が吹くような唐突の出来事はどうにもならなくて。

 結論から言えば、僕達が通っていた中学校の教師をしていた人が行方不明になった。僕もお世話になったことがある百合のクラスの担任だった人だ。関係者によると無断欠勤するような人ではないのに、突然仕事場に来なくなったということで、電話しても応答はない。家族にも連絡したが、誰も行方を知らず、住んでいたアパートも確認されたが、どこに行ったか手がかりもなく、遺書もなく、最終的に謎の失踪ということで片付けられた。

 それを知ったのは何気ない朝の出来事、毎日のようにテレビで放映されるヴィラン出現によって起こされる事件の数々の中にそれは流れた。

 

「――――――」

 

 それを見た百合の表情は凍った。

 

「ゆ、百合……?」

 

 何処までも冷たい瞳で、まるで人形のように表情は変わらない。初めて見るであろう横で朝食の準備をしていた母さんは蛇に睨まれた蛙のように止まった。頭のいい百合は学校で起きた生徒では解決できない大きな事があると先生にやらねばいけない状況へ誘導して”お願い”をすることがあって、行方不明になった先生には特に頼っていて仲が良かった。

 

「……大丈夫だよ。兄さん、母さん」

 

 近寄りがたい雰囲気のまま感情を押し殺す様な平穏な口調で百合は喋る。

 

「こういう時こそヒーローや警察がいるから」

「そ、そうよね、早く見つかるといいわね」

「大丈夫だよ!この町ってヒーローランキングの中でも100位以内に入っているヒーローいるから直ぐに見つかるよ!」

「………そうだね」

 

 少しだけ表情を柔らかくする百合に母さんは安心するように胸に手を置いたが、僕は見てしまった一瞬その横顔の恐ろしい憎悪に燃える瞳は、同じ日に産まれた僕が一度も見たことが無い漆黒の意志が映っていた。

 それからはいつもの朝、という訳ではない。中学校は徒歩で通える距離だったけど、雄英高校は家から遠いので交通機関を利用しなければならないので、早く家を出なければ間に合わない。

 何時もと同じように朝食を取って、百合は寝る前に明日の準備をしっかりとするので、さっさと自室に戻って早々に家から出ようとした、いつなら急かしてくるけど待ってくれるのに今日は、僕の分のお弁当箱だけ残して百合は何も言わず行ってしまった。

 

「久しぶりに見たわ、あの怖い顔……」

「え、母さん見たこと有ったの?」

「……あの時は貴方は横ではしゃいでいたから気が付かなかったのね」

 

 母さんは、哀感の顔で語り始める。

 それは、百合が初めてヒーロー(オールマイト)という存在を知った時の話だ。僕の記憶の中では百合は完璧であり、何もかも一人で出来てしまうかっちゃんと同じ天才タイプで、どんな状況でも姿勢を乱さず最善の手段を選ぶことが出来る人なのだが、生まれた当初は死んでいるのではないかと思われる程に無気力で、泣くこともなく、ご飯すら真面に食べようとせず、医者からはまるで鬱病だと言われたこともあるぐらいに、放って置けば直ぐに死ぬぐらいに生きる事を放棄した(・・・・・・・・・)赤子だった。

 

「毎日が、必死だったわ」

 

 母さんの言葉は、僕には想像が出来ない程、重かった。

 

「今の百合は何も言わなくても全部やってくれる手のかからない子よ。でも昔は目を離したらそのまま消えてしまうような弱弱しい子だったわ、まるで別の世界からやってきて、私達とは根底から違う存在だと悟っている様な虚ろな目で、何も言わず何もしない子だった。けどヒーローをテレビで見た時、初めてあの子が感情を見せたの」

 

 最初は驚愕、そして救われた人のよう安堵の表情から、理不尽の怒りに震えて、今にも泣きそうな顔色へと転々と変わっていった。その時から百合は変わった、家族を大事にするようになり、家事をする様になり、毎日体を鍛えるようになり、”個性”が発現したと蜈蚣を飼うようになった。

 

「ずっとね、百合には私達家族に言えない何か(・・)があるって色々聞いてみたこともあってけど、話してくれなかった」

 

 僕は頭を強く叩かれた衝撃が合った。全然気がつかなかった、ずっと僕達兄妹は比較され続けられた。良く助けれてくれたのに、何も求めようとしない百合が怖くて、周囲の目が鬱陶しくて今でこそ仲良くなれたけど、昔は僕から百合に干渉することがほとんどなかった。百合には闇があるってことをずっと母さんは知っていたのに、僕が知ったのは最近の出来事なのだ。

 

「百合は器用だから、きっとあんな顔しても直ぐに切り替え出来るでしょうけど……出久、百合のことお願いね、この頃少しずつ昔に戻っている気がするから」

「うん、任せてよ!!」

 

 初めて母さんからの百合の事をお願いと言われた事に驚いたが僕は力強く頷いた。

 オールマイトから力を授かり、昔のようにただヒーローの活躍を見るだけの僕じゃない!僕は――――ヒーローになるんだ!妹ぐらい助けられなくてどうするんだ!!

 

 

 

 だけど、その時、未熟な僕は知らなかった。

 それが、どれだけ過酷な道であることを。

 前世の因縁がどれだけ百合を呪っているかを。

 報復を繰り返してきた黒き戦火の力を(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

―――○●○―――

 

 

 

 被服控除という入学前に個性届と身体情報を提出すると学校専属のサポート会社が要望に合わせてコスチュームを用意してくれる素敵な制度、母さんと百合が用意してくれたジャンプスーツと手足の負担を減らすためのプロテクターを改良し、僕にヒーローになる切欠をくれたオールマイトをイメージしたユニフォームを纏って僕はグラウンド・βへやってきた。目的は勿論――――

 

「始めようか有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 遂にヒーローとして最も重要と言っても過言ではない内容の訓練だ。みんなカッコイイユニフォームだ。

 

「あ、デクくん!?かっこいいね、地に足ついた感じ!」

「麗日さ……!?」

 

 思わず仮面の上から鼻を抑えそうになった。麗日さんのユニフォームは宇宙飛行士のようなヘルメットが特徴的だ、しかし、スーツは体のラインがはっきりと分かるもので百合とは違う凹凸がはっきりした体に顔が沸騰しそうだ。因みにデクというのはかっちゃんがつけた蔑称なんだけど、「頑張れ、って感じの響きで好きだ私」という新境地を示してくれたので、もうデクでいいやということでそのままにしている。因みにこれを百合が聞いたら、クスクス笑いながら、いい人がいてよかった是非とも兄をよろしくって頼まなきゃとまるで僕の保護者のように喜んでいた。

 

「ヒーロー科、最高」

「えぇ!?」

 

 何時の間にか僕の隣にいた峰田くんが親指を立てていた。

 

「オールマイト先生、ここは入試の演習場ですが、あの時のように市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

 この声は飯田くんだ、風を裂くようなフルアーマーで速く動ける”個性”を最大限発揮するために理に適っているカッコイイユニフォームだ。

 

「いいや、その二歩先に踏む込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!」

 

 オールマイトが教えてくた。ヴィラン退治は主に屋外で見られるけれど、統計で言えば屋内の方が凶悪敵ヴィラン出現率は高いんだと。確かに屋外ではチンピラ程度のヴィランはただ暴れるだけで、避難は屋内より遥かに容易だし人質を取られた時の危険性もいくらかマシになる。屋内だと最悪の場合、誰がヴィランなのか分からないまま逃げられてしまう可能性もある。……っと、ちゃんとオールマイトの話を聞かないと。

 

 状況設定はヴィランがアジトである五階建てのビルの中に核兵器を隠していてヒーローはそれを処理する。

 ヒーロー側の勝利条件は制限時間内にヴィランを捕まえるか核兵器を回収する。

 ヴィラン側の勝利条件は制限時間内にヒーローを捕まえるか核兵器を守る事。

 そして、コンビ及び対戦相手はくじだ。このことに飯田くんは驚いたけど、プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることが多いからそういうことじゃないかなと言うと直ぐに納得して謝罪の言葉と共に頭を下げた。真面目だなぁ。

 

「すごい!縁があるねデク君!!よろしくね!」

「う、うん!よろしく麗日さん」

 

 僕のパートナーは麗日さんだった、異性と話した事あまりないけれど、大丈夫かな?ちゃんと合わせられるかな……。

 

「続いて、最初の対戦相手はこいつらだ!!」

 

 オールマイトが取り出したくじはヒーローチームA、これは僕達のチームだ。

 そしてヴィラン役で対戦相手はDチーム、飯田くんと―――かっちゃんのチームだ。

 オールマイトから説明を受け、先に核兵器を置く場所を決める為にヴィランチームは先にビルの中に入っていき、姿が見えなくなる瞬間、かっちゃんは僕を見て舌を打った。

 

「……今はビルの見取り図を覚えないと」

 

 渡されたプリントの内容を頭に叩き込んでいると麗日さんが話しかけてくる。

 

「大丈夫!?手が震えているよ?」

「ごめん、ちょっと武者震いで」

「爆豪さん、デクくんをバカにしている人なんだっけ?」

 

 確かに昔を思い出してみれば酷い記憶しかない。

 百合に何度付き合いを考えて、と言われた事か。

 目標も、自信も、体力も、”個性”も僕よりも何倍も凄くて、勝負なんて成り立たないぐらいに僕より凄い人だった(・・・)

 

「……嫌な奴なんだけど凄い奴なんだ。ずっと追ってきた。昔ならどう足掻いても負ける、でも今なら―――勝てるかもしれない(・・・・・・・・・)

 

 オールマイトのようなトップヒーローになるなら絶対に超えなければならない人だ。

 

「―――男のインネンってヤツだね!!カッコイイじゃん!」

「あ、ゴメン麗日さんには関係ないのに……」

「私達コンビだから気にしない!一緒に頑張ろう!!」

 

 麗日さんは凄いなぁ、こんなに明るくてはっきりと物事を言ってくるような人、百合以外に見たことないよ(僕の人間関係狭すぎなのも原因)。

 

「………よし!」

 

 仮面を外して両頬を叩いて気合を入れる。今思えば同じ歳とは思えない百合が教えてくれた戦闘技術(・・・・)を活かして勝利を掴んでみせるぞ!!

 

 

 

 

 

 

 




因みにこの出久君、フルカウル使えるお蔭で個性把握テストでは優秀な成績で特に相澤先生に言われていません。その所為で峰田君は生きた心地がしなかったでしょうけど。
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