一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~ 作:燐2
兄さんや母さんから逃げるように私は雄英高校に足を運び自分の机に上半身を投げ出すようにして目を閉じた。
あのニュースを聞いた瞬間、胸の中に燃え盛るような感情があった。
何度も前世で繰り返した報復を繰りかえしてきた時に蘇る黒い怒り。しかし、その熱を手足に送るように力を込めて静かに空っぽの心を冷やす。それなりの付き合いだったので先生という人格は知っている悪いことをするような人ではないのに、どうしてヴィランに拉致されたのか、だ。
今考えれるのは三通り。
まず私の町のチンピラヴィランが面白がって先生を誘拐した。この場合は今捜索に回している毘天によってもうすぐ場所を特定できるはず。
二つ目は別の町にいるヴィランがやってきて先生を誘拐した。先生の"個性"は一般的なもので珍しくはない、もしかしたら先生の家族や友人関係が切欠になった場合はあるが可能性としては低い。
三つめは―――――見てはいけないものを見てしまったか。こうなると捜索場所は山の中か海の中での
「ねぇねぇねぇ!!!百合ちゃん!!」
「………なに、写原さん」
「ご、ごめん………いやなことあった?」
顔を上げるといつものカメラを持ったまま写原さんは居心地悪そうな顔をしていた。
「私そんな、顔してる?」
「今にも人殺しちゃいそうな顔をしてるよ」
………私もまだまだなぁ。一般人に分かるぐらいに感情が表に出るなんて、演技でもなく素の状態でだ、マスターがいたならばため息交じりで赤点を言い渡されていただろうなぁ。
「ごめん、大丈夫だから用事はなに?学級委員長としてかな?」
少し憂鬱な気分で私は写原さんのほうに体を向けた。普通科担任のミッドナイト先生がどう決めましょうか?と言うと全員がクラス全員がこちらを向いて、面接で有利になるかなと中学での事も言っていたことを先生も覚えていたらしく、やりたいかと聞かれた。断ろうとしたが、隣の席の目をキラキラされている写原さんがいつの間にか調べていた私の情報を出しながら推薦した結果、みんなが期待を込めて(面倒ごとを擦り付けれる意味も含めて)私を見てきたので、とても気軽に断れる雰囲気じゃないので委員長になってしまいました。
「ううん、推薦活動」
首を横に振る写原さんに頭を傾げる。
「実は私オールフォーワンの大大大ファンなの!!」
私の体に冷たい風が通り過ぎた気がした。
「へ、へぇ………」
思わず苦笑いでそう返した。私の微妙な反応とは裏腹に写原さんのマシンガントークが炸裂する。
「今話題沸騰中のオールフォーワン!全てが謎に包まれ"個性"を無限にコピーする"個性"という世界中の専門家たちにも類を見ないと言われる超々激レアな"個性"を持ち!性別不明!というか体を改造しているのか身長も体格も目撃されるごとに変わりその共通点といえば背には巨大な蜈蚣を四体生やしていること!様々な街を縦横無尽に駆け回りプロヒーローたちが苦戦するような数々の凶悪なヴィランをいとも簡単に退治した逞しい姿!一部の評論家は視覚的な最悪のヴィランだと言うが!!私はかっこいいと思う!!その実力はオールマイトに匹敵するとまで言われ!顔は隠しているもののその言動からは聖人と言わんばかりの気品と温かみがある言動から子供から大人まで人気があり!活動時間は平日は深夜!週末は朝昼夜の時間帯で広い範囲で目撃されているためその正体は社会人と推測されているよ!!」
「へ、へぇ……ソウナンデスネ」
あまりの熱意に思わず片言になった。
少しだけ安心した、流石に学生とは思われていないみたいで。
「でも一説では俺たちとそんなに変わらないって噂があるぜ」
「そうそう、活動期間って言っても別に学生でも通るんだ。実はこの高校にいるとかな」
ふぁ!?
「いやお前らありえねぇよ。もしそうなら、あの速すぎる男ことウィングヒーロー『ホークス』なみに速いってことになるぞ?ってオールマイトに匹敵する実力ってどこ情報よ、それ」
「オールマイトと何度か戦って逃げきれているから、互角と思われているんじゃない?」
いつの間にか私を中心に人だかりが出来ていた。みんなが
「それにしても写原さんってオールフォーワンに詳しいね?もしかしてファンクラブ入っているの?」
「ふふふふ聞いちゃう?それを聞くということは貴様ら覚悟は出来ているだろう!」
ファンクラブ!?なにそれ知らない。
口調を変えるほどに大袈裟に写原さんに財布から豪華なカードを抜き取り、みんなに見せたそこには非公式オールフォーワンファンクラブ会員番号9番と記入されていた。
「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
仰天の喝采を上げるクラスのみんな。
私はもう現実逃避したかった。
「マジか!?最近会員が1000人超えたファンクラブだぞ!?ほぼ初期メンバーじゃん!」
「俺持ってるけど500番……」
「私700番、テレビで話題になったあたりから一気に伸びたよね」
「……30番持ってる」
全員がその声をした方へ向くと紫色の立った髪と徹夜明けを連想させる濃い隈をした男の人が立っていた、その手には確かに会員カードが握られていたけれど騒ぐことはなく身構えて警戒していた。私は昔
「心操さんもファンなの?」
「昔、チンピラに絡まれた時に助けてもらった」
「ね、ねぇ、大丈夫なの?」
「"個性"のこと?別に気にしないよ、ヒーローを目指すような人が"洗脳"なんて気軽に使わないよ」
「……知っていたのか?」
「ここに入ってから、まず感じたのは俺は私はここじゃなくてヒーロー科に入りたかったって目をした人たち多かったから、ね?」
ミッドナイト先生の普通科の予定するスケジュールとか校則とか聞いたときに『優秀な成績を出したものはヒーロー科編入も検討してくれるわ』の一言にどれだけの人が目を輝かせたか、私は問いかけながらみんなを見渡すと何人かは苦虫を嚙み潰したような顔をする。ネットでは雄英高校の普通科はヒーロー科を落ちた集まりなんて心無い批評を見たことがある。まぁ、そんなこと言うやつは大体消費するだけの暇人だから、気にはしないけど同じような内容を見てしまった人もこの中にはいるだろうな。
「お前は……ヒーロー科を受けなかったのか」
「ははは、私の"個性"は自己紹介の時聞いたでしょ?蜈蚣を引き寄せる大したことない物だよ。それより心操さんの"個性"のほうがすごいと思う」
え?そうなの?って顔をするクラスメイトに私は頷く。ヴィラン向き"個性"と言われてきたであろう心操さんを見つめながら語り始める。あの時は少し励ましてさようならしちゃったからね、今あの時言えなかったことを言おう。
「一対一なら個性発動した時点でほぼ詰み。一対多なら一人洗脳して盾にしたり情報抜いて奇襲する用意をしやすい。多対多なら更に厄介、声を変えれるような道具を用意して洗脳を何度もする。縦え全て失敗に終わっても相手に会話に対する恐怖心を抱かせる。そうなると心操さん一人だけで多くのヴィラン達の注意と不和を買うことができる。私がヴィランなら多少の被害を被ってでも確実に潰しにいくレベルかな。存在しているだけで場を抑制されるから」
みんなが感心するような反応をする。似たような"個性"なら前世でたくさん使っていたから、これぐらいはね。
「個性は手足と同じ、少し違う視点で見れば出来ることがたくさんある」
「どうやってそんな考え方ができるようになるかな?」
「誰でもいいからたくさんのヒーローの"個性"を調べて彼らがどうやって戦っているかを調べてみるといいよ。真の強者は"個性"をうまく使う努力と考察を止めないものだ。言ってなかったけど私には兄さんがいるんだけど、個性発現が中学三年の春の時で、そこから死に物狂いで努力して今ヒーロー科A組にいるから」
「「「「うそぉぉぉぉ!?!?」」」」
全員の絶叫に近い声を上がり、周りから次々質問がくる。
どんな訓練をしたかとか、日々どんな勉強の仕方をしたとか、自分の"個性"ならどんなことができるとか、私は聖徳太子じゃないからと落ち着かせながら一人一人に返そうとしたところでミッドナイト先生がやってきて朝のホームルームが始まる。ちなみにその日の休憩時間は兄さんのことや"個性"の活用方法、伸ばし方などクラスのみんなの質問に答える時間に費やした。"個性"が原因で少しみんなと距離を置かれていた心操さんも、同じヒーロー科試験を落ちた同類と傷の舐め合いではないが、同じ屈辱と味わった人たちを中心にクラスのみんなと話せるようになった。
安心したといえば、オールフォーワンの話題をこれ以上聞かずに済んだこと。酷評されることをしていると私は思っている、本来してはいけないことをしていると思っている、どれだけ感謝されようが私がしてきてしまった罪悪感と後悔が晴れることはないむしろ責められているような気がして気持ちが悪い、まるでヒーローのように称賛されるようなことを言われると吐き気がする。
そんな私も今日は本当に驚くことがあった。
あの兄さんが爆豪さんを相手に一人で
本当は爆豪VS出久の戦闘シーンをがっつり書こうと色々考えたけど無理でした。自分の文才の無さに泣けてくる……。
因みに爆豪に勝っても試合には負けてます。原作とは違ってこっちの出久はまともに振るえる力があるせいでちょっと心に余裕がありすぎるので、100%の力を気軽に使いません。(というか使ったら百合が"鬼"になる)
次回はダイジェストでどうやって勝ったとか書きたいなぁ、というかいつになったらちょっと伏線してた八百万と百合との出会いを書けるんだろうか。