一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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注意※吐き気を催す邪悪がいます。


第二十話:絶望

「オール・フォー・オーバーやりすぎです。計画では最低でも三人生還させると言ったのは貴女ですよ」

 

 まるで新しい玩具を手に入れて振り回す子供のように、奪ったばかりの個性の試運転として【ブラッド・ハザード】によって胤翼を巨大な異形の手のように変化させ、汗腺と似た器官を形成することで放った特大の爆破砲は地面が抉れるほどの熱と破壊力だった。黒霧はもし自身がその場にいたらと悪い予想が浮かんでしまい背筋が冷える恐れを感じながら焦り顔でイリスを咎めた。

 

「……少し予想が外れましたわ」

「なんですと?」

「【ブラックホール】で爆風を吸い込まれました、全員生きておりますわ」

 

 黒霧からすれば巨大な爆煙が原因で、ヒーロー達の姿を目視できなかったがイリスは目を細め、蛇のように唇を舐めた。黒い煙は渦を巻きながら吸い取られていき景色が晴れていく。多少爆熱にコスチュームが焦げていたが、元から宇宙服のような重装甲の姿なのもあって無傷に等しいだろう、両手を前方に向けて指先から吸収し終えた13号、そして彼らの背後にいた全員も怪我は何時もなかった。地面に叩きつけられ衝撃で吐血して意識がない切島以外の話だが。

 

「皆さん怪我はありませんか!?」

「大丈夫、です」

「死ぬかと思った……!」

「流石13号先生や!」

 

 口々に安否の報告を耳に傾けながら13号は目の前のヴィラン二人に意識を集中した。一人は霧のような姿で物理攻撃の効き目が無いに等しいに加えて、好きな場所に移動するためのゲートを作り出すことが出来る。もう一人は今まで出会ったヴィランの中で嘗てないほど凄まじい黒い威圧感を醸し出した異形の手を赤い双翼に戻して、こちらを見定める黄金の瞳があった。

 

「………委員長、私に賭けてくれませんか?」

 

 ヒーローとしての予感が、あの禍々しい翼に対して最大の警報を鳴らす。それでも常にこの事態を解決させる最善を考えなければならない、冷静に状況を整理する。まず自分たちの背後にある広場では必死にヴィラン達と交戦している相澤、目の前のヴィランの個性によってUSJの非常口全ては封じられたと考えていい、こんな騒ぎが起きているにも関わらずこの建物内に配置されている幾つもの警報器が一つも鳴らないことからこの状況は外には知られることはない、唯一の希望はヴィラン達の背後にある出入り口を閉じた鉄屑の山、【ブラックホール】によってその大半は塵となっており少し登れば外に出れる程度の空洞が出来ている。

 

 13号はこのクラスの中で一番速い人材を見つめた。委員長でもある飯田の存在を、その個性は【エンジン】であり、恐らくこの場では誰よりも速いはずだ。悟られないように後退しながら出来るだけ小さな声で13号は飯田に話しかける。

 

「あの二人のヴィランは僕がなんとか動きを止めて見せます、その間に学校に向かって駆けてこの事を伝えてください」

「しかし、クラスメイトを置いていくなど委員長の風上にも……!!」

「既に怪我人が出てしまっています、爆豪くんも何か様子がおかしい。この状況を知っているのは今僕たちしかいません、応援を呼んでください―――一刻の猶予もありません、君に託します」

 

 それでも、しかしと口を濁す飯田にクラスメイト達が背中を押す。

 

「流石に雄英高校全体の警報は止まれないはずだ、あいつらが事を起こしているのもUSJの中だけ!」

「外に出られたら追っちゃこれねぇよ!お前の足ならあいつ等をぶち抜けるはずだ!」

 

 砂藤や瀬呂が震える手で拳を握り、勇気づけるように飯田を叩く。

 

「食堂の時みたくサポートなら私達、超頑張るから!!」

「轟くん、君の氷で素早くあの二人を囲える?一瞬でもいい13号先生の個性の影響が及ばない時間が出来れば、あとは飯田くんが一気に行ってくれるから!」

「………任せろ」

「委員長、俺は死ぬならおっぱいの中で死にたいんだ……!頼むよマジで!!」

 

 全員が飯田を応援してくれている、いつの間にか震えが止まり脳裏に浮かんだのは先ほど13号先生が語ってくれた個性を使って人を助ける事、それは誰よりも速く駆けつけて不安な人々を助ける憧れの兄のこと思い出させた。

 

「……一秒でも早くたどり着いて見せる」

 

 その瞳は情熱の火を灯して、この危機的な状況を絶対に打開させて見せると決意が決まった。

 

「オール・フォー・オーバー、どうやら逃げる算段が出来てしまったようですよ?なぜ黙って見ているのですか?このエリート高校に入学した実力者たちです、油断はできません貴女がやらなければ私が……」

「黒霧、私は見たいんですよ。愚かな蟲達の必死の足掻きを……あくまで私たちの目的は彼らの死ではないのですから……さぁ、楽しませてくださいませ、ゲームを始める前のちょっとした余興ですわ」

「見せてあげますよ、貴方達を打ち倒すヒーローの力を!!!」

 

 まず動いたのは13号だった。先ほどの爆破を吸収し尽くしたように両手をヴィラン達に向けて指先のパーツの全てが開いて、そこから全てを塵に還す強力な【ブラックホール】達が解放された。

 

「その個性、強力ですが好みではありませんわ」

「そんなこと言っている場合ですか!!?」

 

 黒霧の体が徐々に吸い込まれていき、イリスは翼を鞭のようにして胴体に巻き付け、翼をアンカーのように先端を尖らせて地面に突き刺した。

 

「轟くん!!」

「凍りつけ……!!」

 

 その瞬間を逃すことなく緑谷の指示で、轟の足から生み出された氷結の山が瞬く間にヴィラン達の左右と後ろを捉え、ドーム状に形成させる。勿論、前方は空いたままであり、二人は【ブラックホール】の吸収力に逃れないのにプラスして、周囲に張られた氷の壁によって更に逃げ場を失う。 

 

「「行って(行け)飯田(委員長)!!!」」

「任せてくれ!!」

 

 足の脹脛から生えたマフラーから火が噴き出す、ヒーローになると誓ったその日から鍛錬を重ねてきた最善の走り方で飯田は一気に加速。

 

「―――これは逃げられますわね」

 

 イリスは細い木の枝サイズの血の鞭で強引に自分たちの横を通り過ぎようとした飯田に向かって振るうが、虚空を裂くだけだ。氷の壁によって飯田の姿が見えなくなる、鉄屑の山を駆ける音がする。ヒーロー達は勝利を確信した、応援を呼びオールマイトが駆けつけてヴィランを一網打尽にしてくれるという希望は飯田の悲鳴(・・)と共に引き裂かれた。

 

「私、こう見えて傲慢するときはしっかりと準備した後ですわよ」

「な、なに……!?」

「そこの蟲、強い個性を持っていてもそれ以外が失敗ですわね」

 

 今にも翼を地面に突き刺した状態のまま【ブラックホール】に吸い込まれそうな状態のまま、視線をヒーロー達から離し、期待外れと言わんばかりにため息を吐いた、その瞬間、13号の腹から鋭い血色の大きな刃が生えた。

 

「13、号、先生?」

「そ、……んな、地中、を掘り進ん、で……!!」

「私の翼の範囲は血さえあれば無限に伸ばせますので、私が胤翼を地面に刺した時点で察せなかった時点で……貴方は最低ランクですわ」

 

 13号の背後、その地面から生えた形状変化、硬質化した刃は背から突き刺さり、腹部とコスチュームすら貫通した。【ブラックホール】が止まる、体が動かなる、脊髄(・・)を貫かれた事実を理解した、その正確さ判断力、自分たちを欺く演技力に最初から手のひらで踊らされていた事を朦朧として意識の中で理解し、13号は絶望が心を染めながら意識を失った。

 

「う、ウソ……い、いや………!」

「あら?蟲が死ぬのは初めて(・・・・・・・・・)見られますか?それはダメですわよ、貴方達がヒーローとやらになれば嫌でも見るものですから、いい勉強になられましたわね」

 

 クスクスと悪魔のように微笑みながら、抜かれた血の刃は地中に戻っていく。全身の力が抜けた状態で支えを失い地面に倒れ、血の水たまりが先ほどまでヒーローとして大事なことを教えてくれた13号を中心に広がっていく。1-A組全員の時間が止まったように、誰も動かない。その静寂を引き裂く悲鳴が聞こえるまでは。

 

「離せ、離せぇぇぇ!!!」

「そうそう私は金属を操作出来ますわ、だから貴方達が仲良く会議をしている時に作ったトラバサミが私の予想通りのルートに嵌ってくれましたわ、全くこれから楽しいゲームの前に逃げようとする悪い足は――――」

「やめろ……やめろぉぉぉぉ!!!」

 

 一番速く再起動したのは緑谷だった。個性を発動させることも忘れて手を伸ばし駆けだした。鉄屑の山を元に個性から作り出されたトラバサミに右足を挟まれて転げ落ちてしまった飯田の場所を見ずに、切島を叩き落したように血の鞭が、氷の檻を溶かすように貫通して飯田の足を巻き付いて持ち上げた。もう一方の血の鞭は形を変え、基点を中心に刃と刃を左右に伸ばし()のような形状へと変わって暴れる足に左右の刃が挟まれる。

 

「―――ちょきん」

 

 緑谷の伸ばした手は届いた。

 落ちる飯田を受け止めることにギリギリで成功した。

 

「……………あ」 

「クスクスクスクス」

 

 目の前の悪魔が笑う。

 背から落ちる態勢だったので、飯田は見えなかったけど分かっていた。

 緑谷は、位置の所為で、はっきりと見えてしまった。

 

「……ぼ、僕の」

「なんて無様で無力で無駄なんでしょうか、ヒーローとやら」

 

 視線の先、持ち主から切り落とされた足が、緑谷の顔目掛けて落ちる。顔面に衝撃と痛み、鼻腔に生々しい血の匂いが感じられ、コロコロと転がり真っ赤な道を作り出していく。

 

「僕、の、足がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「うあ、あああああああああああああああああ!!!」

 

 発狂。

 発狂。

 発狂。

 発狂。

 発狂。

 

「……ッ、悪趣味ですよオール・フォー・オーバー」

「子供が小さな蟲の手足をちょっとだけ力を込めて抜いた、誰にだってこんな経験があると思いますが……これもこれからのゲームを楽しくするための大事なことですわ?」

「虫唾が走りますよ、早く貴女と死柄木弔が考えたゲームを開始してください」

「クスクス、嫌われちゃいましたわ。さて、ゲームの説明しましょう」

 

 あるものは目の前の現実を嘘だと夢だと壊れたラジオのよう同じことを何度も呟くと。今にも憎悪の目で殺してやると狂い駆けてきそうなものもいる。隣人と抱きしめ合って泣くことしか出来ないものもいる。その中でイリスは微笑みながら説明を開始する。

 

 

 

 

「まずは簡単に一言、貴方達頑張って殺し合って生き残ってくださいませ」

 

 

 

 

  




残念今回は収穫ゼロ。
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