一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~ 作:燐2
『魔剣抜刀・レーヴァテイン』
【創造】によって創られた可燃性の液体を【バーナー】によって炎と共に放出することで立ち昇ったのは巨大な炎の柱。社会の常識を覆す多数の“個性”による同時使用によって絶大な質量とマグマの如き炎熱による破壊力はUSJの天井すら楽々と切り裂き、悪魔のような笑みを浮かべ、炎の魔剣に触れる全てを焼き切りオールマイト達目掛けて振り下ろされた。
対してオールマイトとオールフォーワンはピンチだ。
大振り故に遅く、何もなければ二人とも持ち前の力で難なく避ける事は出来るだろう。しかし、死を恐れない怪人二体によって動きを封じられていた。オールフォーワンと戦闘している脳無と呼ばれる怪人はあらゆる衝撃を吸収する“個性”とオールマイト級の怪力の一撃に物ともしない耐久力と傷を負っても即座に閉じてしまう再生力。オールマイトと戦闘しているのはイリスによって生み出された量産型の脳無、自らの体の大きさを操作できる“個性”を中心にオールマイトと同等のパワーによって追い詰められていく二人。
「―――ッ!!」
迫りくる脳無達と自分たちを滅殺する炎の柱にオールフォーワンが取った行動はシンプルだった。
あれがこちらに触れる前に吹き飛ばす。
脳無にワザと殴られ、その衝撃で距離を取った。
背後の四体の毘天達を前に、肩から腕を覆うほどの多数の毘天達が皮膚から顔を出し、左手が白く染まる。【ブラッドハザード】により腕を改造、それは幼馴染である爆豪よりコピーした【爆破】を手のひらだけではなく、腕そのものを媒体として起爆させた。
【ブラッドハザード】+【爆破×
真っ白な閃光が世界を白く染め、大気が震えるほどの轟音が響いた。
胤翼を防御姿勢にすることで、僅かにイリスは後退させられた。盾のように前方に展開していた赤い翼を広げると、そこには。
「オールフォーワン――――左腕、が!」
「……安い物ですよ。あれを振り切っていたならば今頃私達どころか外の人たちまで伸びてましたから」
あぁ、やっぱりとした顔でイリスは目を細めた。
左腕を突き出すような姿勢で、オールフォーワンは答えていた。そこにあるはずのものは
「レーヴァテインは液体によって形状を保っている。それを纏う炎ごと吹き飛ばすなんて、無茶しますわね」
「脳無とオール・フォー・オーバーを同時に攻撃するなんてこれぐらいしか思いつかなかったから……」
オールフォーワンと交戦していた脳無二号は、あの閃光で僅かに動きが止まった、その隙にオールマイトの一撃によって後方の壁に、脳無一号も【ショック吸収】があるものの爆風によって壁に激突はされていないが、遠くへ吹き飛ばされていた。
「………それで、貴女はその様ですか」
オールフォーワンは足元が水溜まりに見えるほどに血を吐いた。
「他者の“個性”を無尽蔵に使うのは【オール・フォー・ワン】か私の“個性”、その血を持つ者にしか許されない事。普通の蟲ならば両手で数えるほどの“個性”を持つだけで糸の切れた人形のようになる。あなたはそこまでの負荷には余裕で耐えられるでしょう【ブラッドハザード】もありますし………しかし、多数の個性を同時に行使すれば、その反動は体を引き裂くでしょう」
返ってくる返事は今にも倒れそうな体を気合で無理やり保つことに必死な荒い息遣い。今までの戦いで相当な量の出血もあって意識も朦朧としているだろう、今のオールフォーワンの身体は増強系の“個性”を多数使う前提で改良したもの、なのに別系統の“個性”を多重使用してしまえば体内の個性因子が反発して、常人なら既に発狂するほどの激痛が容赦なく痛めつけるだろう。
「べらべらと!私もいることを忘れないでほしいな!!」
このままだとオールフォーワンが死ぬ、と判断した速攻をかけたオールマイトは影すら残らないほどの速さでイリスとの距離を詰めた。脳無達がこちらに駆けつけてくるが遅い。あの赤い翼の展開を許さないほど、完全に間合いに入ったオールマイトの必殺の一撃は――――
【衝撃反転】
イリスに触れた瞬間、力はそのままオールマイトへと返ってきた。殴ったほうの腕を中心に体が後方へ、轟音と共にその体は沈没した。直ぐに瓦礫となった中からオールマイトは這い上がり、最初に見たのは興味深い物を見て好奇心を表情に浮かべるイリスは嘲笑うような口調で問いを投げた。
「オールマイト、既に貴方の中には【ワン・フォー・オール】はないわね」
「――――!」
思わず息が、詰まった。
「どうして分かる、と?貴方の全盛期ならこんな
赤い双翼を羽ばたかせながら地面へと着陸するイリス、その目はオールマイトの心の中まで覗くような暗い黄金の双眸が輝いていた。
「まず最初の失敗から言いましょう――――それは私の父『オール・フォー・ワン』を仕留めそこなった事。ちゃんと死亡したか死体を確認してもいないのに、あの傷なら
まるで面白おかしい喜劇の感想を伝えるように笑いを堪えた上擦った声でイリスは続けた。
「そんなある日に貴方は突然教師になると言った。今の時代ならゆっくりと後継者を育てれると思ってのことでしょう?しかし【ワン・フォー・オール】を知るものなら直ぐに見当が付きますわよ、オールマイトは自分の様な
豊満な胸が揺れるほどに左右にスキップしながら、その瞳の先はいつもの笑顔を浮かべられないほどに緊張に固まったオールマイトの顔だ。
「で、今回の襲撃事件。“私”個人としては貴方がまだ【ワン・フォー・オール】を渡していないと睨んでいましたが、それは違った。貴方は既に火種を無くし冷えていくだけの残り火ですわ!」
「“僕”は既に譲渡済みだと予測した。【ワン・フォー・オール】には才能がいる。それは体格的な意味であり、意志の力であり、信念の重さ。なら、最初から決めて雄英高校に入学させ三年間じっくりと教える事で効率よく強く出来る」
「私達の個人的な謎々はここに答えを得ましたわ。極限下の環境に置くことでヒーローとやらは自らを守るために、仲間を救う為に全力を出さずにいられない――――
「――――――ッ!!!!」
誰かを思い出すようにイリスが目をつぶった瞬間、オールマイトはありったけの力を込めて大地を蹴った。まるで最初から答えを知ってその過程を知るためにやってきたと思うほどの推理力と知識、ここでこいつを生かして帰してしまえば――――緑谷少年とその周囲が命の危険が襲われる、と。
「
「あら、目眩ましですか」
渾身の一振りを地面に、超常のパワーを前にあらゆるものが破壊されキノコ雲のような砂煙がイリスを飲み込んだ。
「(レギオンはあの爆破で耳がやられていたのか全く動きませんでしたわね)」
どのような盟約の下で、あの蟲が【ワン・フォー・オール】を受け継いだか。見えぬ運命が殺しに来ることを知った上での譲渡なのかは家族としてそれを了承しているのか……今は考える事ではないかとイリスは目を細くして赤い翼を振り回して砂煙を吹き飛ばす。【衝撃反転】はオールマイトのような戦闘スタイルに対して便利な“個性”ではあるが、あれは力の発生点が目に見えていない状態では使えない、まずは視界確保の手段を取った。
「貴様に打撃は効かないのであれば!!」
「拘束技、そんなこと考えなくとも分かりますわ」
【オール・フォー・オーバー】+【毒棘】+【硬質化×3】
空を飛ぶ鷹のように両手を広げ急襲するオールマイト。
イリスの周囲の赤い翼が触れれば毒が体に回る棘と“個性”によって強度を増しているにも関わらず、直ぐに対応してその拳で破壊される。たとえ、傷ついて毒が体内を侵されようとも、このヴィランだけは。
「……私達は一人ではありませんわよ」
指が触れる瞬間、さらに上から落ちてきた二体の脳無にオールマイトの身体は今までの努力が無駄だと言わんばかりの力により地面に叩きつける形で自由を奪われた。
「卑怯だなんて、言ってもいいですわよ?情けない負け犬の遠吠えを貴方の口から聞けるなら、それはとてもいいことですわ。因みに私がここで貴方を殺そうが生かそうが、その全てをお父様に聞かせますわ。とても喜んでくれるか、悔しがってくれるか………それとも、私の言うことを聞いてくれる代わりに彼を殺せと言うのかしら」
クスクスと笑うイリスにオールマイトは血を吐きながら立ち上がろうとする。だが、二体の脳無によって体が持ち上がることは無い。
「私と僕なら、あの緑蟲の四肢を引き千切った絶望と苦痛の声を貴方に聞かせながらゆっくりとお父様の前で殺すというのは、いいと思いますわ。ねぇ、『平和の象徴』その消えそうな火でどう足掻いてくれます?」
イリスは悪徳に満ちた笑みを浮かべる。
オールマイトは確信した。目の前の邪悪はその実力も底なしの悪意すらも怨敵を超えるかもしれない最悪の逸材だと。
―――――◆◇◆―――――
耳が、聞こえない。
あの炎の柱を吹き飛ばそうと多重【爆破】を使った影響だ。【ブラッドハザード】で耳を閉じようとしたけれど間に合わなかったみたいだ。白黒する視界の中でイリスとオールマイトが何か喋っていた。普段であれば二人の唇を見るだけで何を話しているか分かるのに、意識がはっきりとしない所為で内容が分からない。
それに体に無茶をさせすぎた。一瞬だったが、私の中の【ワン・フォー・オール・アンリミテッド】が目を覚ました。 【爆破】の多重使用は本来ならあの炎の柱を吹き飛ばすほんの一瞬だけ使うつもりだったのに、制御が追い付かずに放ってしまった。左手の感触がない……あぁ、左手を爆弾のようにしたから、もう無いのか。
オールマイトが脳無達とイリスを相手にして戦っている。
助けなきゃ、守らなきゃ、あの人はこの時代に必要な人だから……。
みんなの希望を背負う人、平和の象徴を担う人、もしこの人がヴィランに殺されそれが世間に広まったら、私が生きた世界へとたどり着く切欠になる可能性がある。
今でもオールマイトを見ていると凄く嫌な気分になる。
初めてテレビで見た時から憎いという感情すら溢れた。
どうして
私の様な中途半端ものじゃなくて、貴方ならもっと上手く人を助けられた、守れた。
私は許せなかった。理不尽だとずっと叫びたかった。
私にとって貴方はどうしようもなく残酷なほどに理想のヒーローだった。
この世界に生れ落ちて、私のような大罪人が居てはいけない温かい陽だまりの家族のもとで育ててもらった。その恩に私が出来ることはなんだろう、とずっと考えてきた。明日のために社会のために今の私のような危険物に居場所なんてない方がいいと考えてきた。
だから最初から私の生は長くなくていい、流れ星の様な刹那の時間だけでいいのだ。
イレギュラーである私のできる事なんて、同じイレギュラーと共倒れするしかないんだ。そうすれば元通りだ、もしかしたら私達が何もしなくても私たちの世界のようになるのかもしれない。けど、その危険性は今は無くていい。
私にとってヒーローとは星のようだ。
それは小さな光かもしれないけど、暗い場所で彷徨う誰かの道を善き場所へ導いてくれる。
明けない夜はない、と地面を見る人たちに光を見せてくれる。
私の手は真っ赤な手。
理想のために現実を殺し続けた殺戮者。
今更誰かの道標となるための星になる資格はない。
だけど、だけど!!
いつか、誰かの命と心が理不尽な悪意に襲われた時に立ち上がり、救う為に戦い、戦って救う。
そんな誰かの未来のヒーローのために戦いを選ぶことぐらい私は出来るはずだ!!
だから、だから―――――――私に力を貸せ
そう心で願った刹那、意識は反転する。
生々しい赤の世界、屍山の墓場、鮮血のような赤い空。
伽藍洞の目から無限に流血する沢山のワタシ達が手を伸ばす。
私は、それを躊躇なく握った。
反省、前編後編に分ける予定を前編中編後編に分けても終わらなかった。すいませんでした(土下座)
書きたいこと書いていたらこうなってしまいました!!!イリスをチートにしすぎた!!とかこのままじゃみんな死ぬ!とか勝手に指が動いてしまって、これ何回書き直したんだっけ……。
次回で決着は必ずつけます!