一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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ずっとスランプ状態でなんとか出来ました。
まさか、この全体の構想にぴったりの曲が見つかるとは……。
いつも感想、評価ありがとうございます。


第二十七話:■■のために

 突如として空気が変わった。

 

 死肉の焦げた臭いが満ちた空間に巨大な鉄槌が振り下ろされた様な衝撃が轟いた。二体の脳無によって地面に拘束され冷汗を流すオールマイトも表情に愉悦の色を見せたイリスも、その場全てを支配する絶大な威圧感に思考が一瞬止まった。巨人が寝返りを打ったような地鳴りの先には、陥没した地面に立っている別人の如きオールフォーワンの姿。

 

「(何かしらの個性を使用したのか……だが、どうしてだ?私は彼女の個性を知らないはずなのに、知っている!?)」

 

 まるで地獄の扉が開かれたように言葉にならない怨嗟の()が世界を侵食していく。悪霊があの世に引きずり込もうと身体を掴むようにオールフォーワンの姿が深淵の如き黒い紫電を纏っている。闇そのものになろうとしている姿に不思議とまるで人生を共に歩んできた相棒のような親しみに戸惑うオールマイトに対して、釘の刺さった藁人形を見るような忌々しそうにイリスは口を滑らせた。

 

「見えていますか、レギオン。それは……呪い(・・)ですわよ」

「叔父様が最後に残したもの、お父様の手中に残った家族の縁、貴女に何度も生と死を繰り返せた歪んだ負の結晶、『私』達を殺した個性で『僕』達をもう一度殺そうとしますか?」

「(こいつ等いったい何を話して……!!)」

 

 ありえない、その言葉がオールマイトの思考を埋め尽くした。

 個性というものは親から子へ引き継ぐことは常識だ。故に『オール・フォー・オーバー』のような存在に驚愕はしたが納得は出来た。だが、オールマイトの個性だった『ワン・フォー・オール』は違う、あれは引き継がれるものでなく、受け継がれていくものだ――――そう、聖火の如く。

 

 しかし、あれは違う。

 同じ物なのに、そのはずなのに。

 焼べられた(おもい)が違う。

 

「■■■■■ッ―――………」

 

 ぐしゃ、と。

 べしゃ、と。

 その力に耐えきれたず、体がぐしゃぐしゃになる。

 

 【ブラッド・ハザード】+【分解】+【再構成】

 

 

 何事もなかったように直される。

 一歩進むたびに体は崩壊していく。

 まるで食材を探すようにレギオンが左右に顔を動かすと、焼却された屍山に無垢な瞳を向けた。その次の瞬間には無くなっていたはずの右腕は歪な形で再構成された。

 

 

「……ッ、触れずに蟲達の死体を分解して自らの体の一部に……!」

「『私』、呆けている場合じゃない『呪い』の中身がどんどん溢れて使える個性が急激に増えていく。ここで僕たちを殺してそのまま負荷で死ぬつもり――――!!」

 

 今までの妖艶の笑みは既に無く。胤翼を羽ばたかせ急速に後方に下がった瞬間、イリスが居た場所には剛腕の薙ぎ払いが空を裂いた。

 

「既に毘天が仕込まれていましたか、もう脳無は使えませんわね」

 

 連れてきた方の脳無一号が作り出された脳無二号を拳で殴り飛ばし、オールマイトを抱えレギオンの後方へ跳躍した。

 

「ゲホゲホ!オールフォーワン、その個性……は」

 

 自由になった体で血交じりの咳をしながらオールマイトは、今まさに再生と崩壊を繰り返して、どんどん人間離れになっていく事に威圧感が増していくオールフォーワンを見た。

 

『急イデ、ココヲ離レルゾ』

「待て!私は……って、君喋れたのかい!?」

『今、此奴ノアラユル神経系ニ侵入シテ操ッテイル。無駄話ハ出来ナイゾ』

 

 先ほどまでオールマイトの鉄拳を何度も受けても表情一つも変えなかった脳無の身体の節々から蜈蚣達が顔を出す。その悍ましい姿に思わず青ざめるオールマイト。

 

『(……ゴ主人ナラ、目ヲ輝カセル筈ダガナ)』

 

 少しナイーブな気持ちになっている脳無(毘天達)はゆっくりと背後を確認する(・・・・・・・)ように、移動してるイリスに気が付いた。

 

「……やりますわよ、『僕』」

「もし耐え忍んで殺せたら、『僕』の目的は果たされ『私』の目的は泡と消える」

「―――――こうなることを読んでましたわね?」

「………さぁ、どうだか」

 

 【筋骨発条化】+【瞬発力×■■】+【膂力増強×■■】+【肥大化】+【増殖】。

 

「『全能は我が手中にあり(オールインワン)』を使うなら、『僕』は協力してあげよう」

「『私』は協力しませんわ。長生きできなくなりますわ。それはレギオンのためにならない」

「甘いわ『僕』の半身。これが一番簡単なことなのに」

 

 

 【ブラッド・ハザード】+【オール・フォー・オーバー】+【鎌鼬】+【大気圧縮】+【風流操作×20】+【回転×10】。

 

 

 オールフォーワンの右手が自身の背より巨大な拳の形を形成される。膨大なエネルギーが込められているのが感じられ、少しでも気を抜いてしまえば吹き飛ばされそうになるほどに。

 相対するイリスは胤翼を合わせ一つの手にすると、巨大なドームのUSJが全体の風が渦を巻きながら耳を劈くような異音を響かせながら見えるほどの風の塊が圧縮されていく。

 オールマイトの脳裏には平和の象徴と言われる前の記憶が鮮明に蘇る。贓物をまき散らしながら、憎き奴に最後の一撃を与えるあの時の緊張感、焦燥感、恐怖が。

 

『……コレハ、不味イ』

「あぁ、これはもう止められない。お互いにここで最後にするつもりだ」

 

 よく見るとイリスの耳や鼻から血が流れていた。確かに胤翼を介することで個性同時発動の負担を減らすことは出来る。しかし、それでも限度と言うものが当然あり、一定の水準を超えてしまえば制御するためのコンピューター()がオーバーヒートを起こす。

 

『違ウ!!オ前ソレデモ―――ココ(・・)ノ教師カ!?』

「何を言って……」

 

 毘天の言葉に思考が動く。今の立ち位置に、イリスの背後に何があるのかを。

 

『ゴ主人ノ今ノ中途半端ナパワーデモ、数キロ先ハ消エルゾ(・・・・・・・・・)!!!』

「ッ!!!」

 

 今まさに授業中で多数の教師と先生がいる本校、その前にイリスは今更気が付いた?と言わんばかりに笑みを浮かべた。

 直ぐにオールマイトはレギオンの身体を止めようと動くが、脳無に乗り移った毘天たちがそれを止めた。

 

「なにをする!?」

『オール・フォー・オーバー様ノアレガ撃タレタラ、コノ周辺ガ塵ト化スゾ!!』

「だとしても、最小限の被害で……!」

『オ前ガ英雄ラシク死ヌノハドウデモイイ!!ダガ、オ前ノ後継者(・・・・・・)ハ無事デ済マナイゾ!!』

「―――――あ」

 

 まだ力を受け継いで一年も経たず、オールマイトの予想をはるかに上回る形で逞しく強くなっていく愛弟子の姿に剛腕に対抗とする体が止まった。まだ名前も知らない数百人とこれから多くの命を助けれる素質をもつヒーローの卵たち数十人、その両方がオールマイトの両肩にあった。

 

『ゴ主人!ゴ主人!……アァ、ダメダ。【ワン・フォー・オール・アンリミテッド】ノ一撃ノタメニ五感モ捨テテイルノカ応答シナイ!!』

「わ、私は……!!」

 

 両方とも救いたい。しかし、既に限界を超えたこの身体で何が出来る。何が――――

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 人が死ぬ直前になると、過去のことを鮮明に思い出すことが出来ると聞いたことがある。

 それはどんな気分になるだろう、忘れてしまったことを思い出すことは時に苦痛を伴うことがあるだろう、しかしそれが温かい思い出なら、例えば大事な人との約束とか、家族との何気ない日々とか……。

 前世では走馬灯を見ることは無かった。ただ狂ってしまった大事な人を止めるのに必死で、いつ死んだのかすら分からない。

 今生では、見えた。生まれた日の泣きながら感謝する父さんと汗ばんだ憔悴した顔ながら宝石のような輝きにも見せた笑顔で私達を抱えた母さん、その隣では鼓膜が可笑しくなるじゃないくらい泣き叫ぶ兄さん。

 

 

 まるで時間がガムみたいに伸びたような感覚。今の私はイリスを殺すための一撃のために体の機能のリソースを全て注いでいる。確実に殺せる自信があり、心に安堵は……無かった。

 

 兄さん、大丈夫かな?私が居なくて大丈夫かな?そんな毎日のように考えたことが思い浮かんだ。オールフォーワンとして活動し始めた時から遺書は書いてある。家族との思い出を残しておこうとみんなに上手いと言われた絵とか毎日書いている日記とか一緒に自室の机に引き出しに入れている。

 

 ………仕方ないよね。この世界の人類(・・)を守るためだもの。

 たった一つの命を失い、一つの家族が仮に壊れてしまっても、これから続く全体の未来に大きな変化は起きない。

 

 ………あれ?何かを忘れているような気がする。

 自分に言い聞かせてきたことだったような気がするけど、なんだかどうでもよくなった。

 

 私が死ぬ、人類のために死ぬ。

 これほど満足する死に方もない。

 

 

 ………だから、どうして拳が震える。これで終わるなのに、私に人間らしい人生なんて必要なんて要らないのに。

 そうだ、イリスの顔を見よう。殺す相手が見えるなら、やる気も上がるはずだ。少しだけリソースを割いてしまうけど眼球の一つくらい許容範囲内の筈だ。

 

 良し、見えた。イリスの胤翼の中には小さな台風があった。激しく渦巻き周囲の物を破壊の限りを尽くす暴虐の爪牙が今まさに放たれそうだ。私は正拳を体と平行になるように構えている。力の充填は完了しているこれだけあれば必ずイリスを殺せる、そして私はその反動で死ぬ。これでいい、これこそ、正しき私だけの終末だ。………あぁ、どうしたんだよ、私の身体、見る機能を治したはずなのに、泣く(・・)機能まで直したつもりないのに、どうして。

 

『――――察しなさい』

 

 それがイリスの言葉だった。涙の所為でよく見えなかったけど、そう喋っているのは見えた。

 脳内の情報が多くのピースとなって一気に集まって一つの絵を作った。そこにはどうして入学したいのか忘れてしまった雄英高校の本校があった。………あぁ、そうか今握っている拳の中にはそんなものがあったのか。私がこのまま攻撃すれば、イリスとみんなを殺すことになるのか。

 

『ねぇねぇ、みんなで写真を撮ろうよ!!』

『突然どうしたの?』

『だって私達あの雄英高校に入れたんだよ!きっとこの中から有名人が生まれてたらものすごくプレミアつくでしょ!?』

『………どうせ行事で撮るだろう、意味ねぇよ』

『心操くん!大事なのは日常の中で自然体にいることなんだよ!それにほらこのクラスって復活枠だし!私や百合ちゃんみたいに興味ない人もいるけど、みんなヒーロー科狙っているでしょ?もしかしたらすぐに今クラスからいなくなるかもしれないし、ならこの時にこの場所にいたって記録を残しておくって凄くいいことだと思うの』

『で、本音は?』

『プ レ ミ ア』

『『『はい、みんな解散です』』』

『そんなーー!!』

 

 さっき走馬灯を見た所為か、みんなとの記憶が昨日のように思い出してしまう。前世で何度も見てきた理不尽に死んでいく命、人類の未来のために必要な犠牲だと『私達』は痛くても飲み込むしかなかった。個性所有者に自由を求める連中を皆殺しにて毘天達の餌にして戦力を増やしてきた。そんな生き方で、無個性者を保護し続けてイリスに個性を奪ってもらって隷属として加えてきて人を集めて理想郷を作って――――

 

 

「斬魔嵐翔『ディエス・イレ』!!!!」

 

 時間が来た。もうイリスも私も止まらない。殺して死ぬか死んで殺しにいくかの選択。

 私より先にオールマイトが私の前を駆けた――――が、そこは既に空気を弾力を与えているのでオールマイトの顔はサランラップをひっつけたみたいな超密着した大変お面白い絵を見せてもらって、後方に吹っ飛んで毘天が操る脳無がキャッチした。

 

「ッ!!―――オールフォーワン!!!!」

「大……丈夫……私、が………ここに……いる………!」

 

 最後は笑顔で送って、ありったけの個性を発動してそれを【ワン・フォー・オール・アンリミテッド】に乗せて

 

 

CLEVELAND(クリーブランド) SMASH(スマッシュ)

 

 

 私の拳は、天を貫いた(・・・・・)

 




自分で書いておいてあれだけどUSJ、君はいい場所だったよ。
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