一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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約二か月ぶりの更新です。アズレンとかモンハンとかアズレンとかモンハンとかポケモンとか頭の中で思い浮かんでもこれをどう文章にすればいいのか悩んでいたらこんなになりました。すんません


第二十八話:思い出すこと

 ――――全員集マレ!!

 

 人外の存在が無理やり人の言葉を発した。それは一つではなく、地面の色が分からなくなるほどの蜈蚣の大軍から合唱の如く響いた。

 

 超人社会と言えでも、人語を理解、人間並みの知能を持ち、人の言葉を話す、『個性』すら使う蜈蚣達はどこに行っても見ることは無いだろう。しかし、その存在は確かに目の前に存在し、命の危機から救ってくれた。故に彼らは迷うことなく回復中の酷い怪我をした二人を守る様に一つの塊となった。

 

 

 その瞬間、あらゆる音が消えたように、世界は静寂になった。

 次に想像を絶するほどの雷霆(らいてい)が落ちたような爆音と共にUSJの天井が、団扇で煽られた木の葉のように浮かんだ。押し出された空間が元に戻る様に天井も壁すらも粉砕されていく。まるで巨人の手によってUSJが無理やり小さくされているような現象だった。そして、圧縮された空間による破壊の圧力により、施設の全てを回るだけで午後の授業が終わってしまいそうな広さをしていたUSJは悲鳴に聞こえた破砕音と共に爆散した。

 

 彼ら――――1年A組があまりの轟音に朦朧としながら目にした光景は、まるで流星が落ちたような惨状、見上げる青空の先にブラックホールがUSJだった残骸を吸収していているように空に浮かんでいる物だった。

 

「………なぁ、俺たち夢でも見ているのか?こんなのアニメとか漫画の世界だろ」

「は、はははは……いくら頬つねっても痛いだけで目が覚めねぇ。可笑しいな、きっと起きたらオイラ達まだバスで移動中の筈だぜ?」

「まさに終焉戦争(ラグナロク)の終わりを告げる黄昏のようだな」

 

 心が溶け込んでしまうような非現実的な光景に誰もが正気を失ったように見入ってしまう。それほどまでに彼らから見えるものは幻想的であった。

 

「USJ、無くなちゃった」

 

 胸から溢れる形状できない感情に笑うものがいた、泣くものがいた、感情が表情から消えたものがいた。

 

『現実逃避ヲスルナ小童共』

「「「「痛ッ!!!!」」」」

 

 虚ろな目をしていた彼らに対して毘天達は容赦なく足を噛んだ。全員に電流でに走ったような痛みに跳びあがり、生気が目に満ちた。何人かが目元に涙を溜めながら毘天達を睨むが、足を切断された生徒一名、体に風穴を開けられた教師、両目を抉られた教師の治療に参加していない少ない毘天達はUSJの跡地に向かって進み始める。

 

「お、おい、どこに行くんだ?」

『……………オ前達ハソイツ等ヲ残シテココカラ離レテオケ、暫クスルトゴ主人ガ打チ上ゲタ瓦礫ノ山ガ落チテクルゾ』

「なっ!?そんなことしたら委員長とか危ないじゃん!!」

『今ハ治療中ダ。下手ニ動カスト危ナイダロウ、心配スルナ。先程、毘天ラガ到着シタ』

 

 心配することはないと、言い切るように毘天達は動き出す。その速度は遅くまるで、見たくないものを見に行くような重い足取りのように見えた。感じたのは深い深い悲しみ。

 

 そして、思い出したのは毘天達が先ほどまで言っていた内容だった。諸刃の必殺の『個性』を使うことをオールフォーワンが決意したことを。重々しくなる空気の中で彼―――爆豪が口を開いたのか。

 

「……んだのか?」

『………分カラン』

「それじゃ、今すぐ探しに―――」

 

 蛙水の言葉が最後まで開くことは無かった。

 目が合った。彼らが感じたのは心臓が掴まれたような威圧感。

 毘天達が一斉に悲しく嘆くように、口を開いた。

 

『ゴ主人、我々ハ理解出来マセンデシタ。コノ様ナ小童共ノ為二、命ヲ人生ヲ未来モ使イツクシテ―――――守ル価値ガアッタノカ(・・・・・・・・・・)?』

 

 返事が返ってこないのは分かっているのに、空気に溶けるような囁きにその場にいた19人(・・・)の胸の中には一つの言葉が支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無力だな、俺たち」

 

 

―――●○●―――

 

 

 

 僕は破壊尽くされ原型が無くなったUSJの中を走っていた。

 どうして、こんなことをしているのだと思う。

 

 オールマイトが心配だった。それもある。

 みんなと一緒にいるべきだ。それが正しい。

 まだヴィランが潜んでいるかもしれない。逃げた方がいい

 オールフォーワンのことが知りたい。そうとも言える、違うとも言える。

 

 僕の胸の中に色んな感情が混ざり合って、方向性が全く定まらない。僕がここにいても危ないだけ、足場は安定しない、いつ瓦礫が崩れても可笑しくない、空に打ち上げられたUSJの一部だったものが落ちてきて最悪死んでしまうかもしれない。

 

 それでも僕は必死に彼女を探した。

 漠然と映像越しで見たオールフォーワンに対して、どうしてヴィランであることを選んだのか、どうして素晴らしいことが出来るのにヒーローになろうとしなかったのか、話を聞く限り宿敵と思える人と対話できる可能性もあるような言動だったのに。とそんな疑問ぐらいしか思い浮かばなかった。

 

 けど、実際に会って見て、どうしようもない違和感があった。

 どうしてか僕はオールフォーワンに対して既知感があったのだ。初めてな筈なのに、街ですれ違ったとか、昔どこかで会ったとか、そんなものではい。毎日顔を合わせているような、まるで家族と触れ合っているような心の近さを感じてしまった。

 

 だからこそ、オールフォーワンの笑顔を僕は受け入れることは出来なかった。

 

 

 

 死にたいと思える程の激痛が僅かに和らいだ時に浮かべる安堵のような笑み。

 

 

 

 僕はその壊れた笑顔(・・・・・)を見たことがある。小さい頃に一度だけ、忘れてしまうほどに記憶が薄れてしまっていたけど、はっきりと思い出した。

 

『ゆり、どこかいたいの?』

『………わたしわらっているよ』

『なんかちがう!いまにもたおれちゃいそう!』

『あのにいさん?だいじなふくをどうしてわたしにかぶせるの?』

『だいじょう!おにいちゃんがぜったいにゆりをまもるよ!!』

 

 生まれた時から隣にいた。僕が喧嘩に負けた時は怒ってくれた、僕が困ったときは何度も助けてくれた、僕がみんなと違うと仲間外れされた時も傍に居てくれた。

 

「……思い返せば、昔の僕って最悪だな」

 

 けど僕は『無個性』で、妹は『個性』が使えた。周囲と何度も比べられ、それを理由に虐められ、それを百合に何度も助けてもらった。それが悔しくて苦しくて僕は逃げだしたんだ。なんでもできる百合をこれ以上見ないように、自らの夢を殻にして閉じこもったんだ。

 

 どうしてオールフォーワンを見ると昔のことを思い出してしまうか分からない。だけど、僕の心の中では既にオールフォーワンは家族のような特別な人になっていた。―――――だけど、生まれながら誰もが平等でないように現実は無慈悲に語り続けてくる。

 

 やっと見つけたソレを理解する前に僕は胃の中の物全部、吐いた。

 血と肉の塊に浮かぶ多数の動く気配のない蜈蚣達、周囲は風船が爆裂したような生々しい血痕によって汚れていた。それが元々人であった事だということを理解して納得するまでの時間は、針地獄のような苦しみだった。

 

「緑谷少年ッ!!」

 

 瓦礫が大きく崩れる音と共に僕の隣に着地した。僕が見ている惨状をオールマイトは手を口に当てて顔を震わせた。

 

「………ここは、危ない。直ぐに私と一緒にここから出よう」

「オールマイト、一ついいですか?」

 

 僕の肩を掴む温かい手、いつもだったらオールマイトの言葉に従っていただろう。でも、僕は両手を握りしめて、涙も鼻水も無様に流しながら自分でもよく分からないほどの震えた声で口を動かす。

 

「ヒーローになるって、こんな悲しいことを背負い続けるんですか……!!」

「…………その通りだとも―――戦うことを選ぶということは、こうなることも覚悟しなければならない」

 

 僕は再認識させられた。助けてもらった安堵を何もできなかった無力さを恐ろしく冷たい死を生き残ってしまった痛みを。僕がオールマイトから引き継いだ『ワン・フォー・オール』の所有者達もこんなことを繰り返して、それでもと立ち上がっただろう。だからこそ、あれほどの力を得ることが出来たのだ、燃え滾る聖火を更に大きくするために体と思いをその火に体を預けて。

 

「……私は君を後継者として命を賭けて育てる、私がそうであったように。しかし、その隣にいつも私は居られない。とても険しく辛い道になるだろう――――すまない。私は、甘かった」

 

 心から申し訳ないようにオールマイトは雑誌やテレビで見たことがないほどに太陽の如き笑みの表情を悲愴に歪ませながら腰を落として、その手が汚れる事を気にもせず、オールフォーワンの優しく頬を撫でた。その隣には怪人がいたことに驚いたが、体の節々から蜈蚣達が顔を出しているのを見ると直感的にもう敵ではなく、蜈蚣達の手によって支配下に置かれているのだと理解した。

 

「「緑谷ーー!!」」

 

 みんなの声がする。振り向くと教師たちもいた。

 

「立ち上がれ緑谷少年、これを皆に見せるわけにはいかない」

「………はい」

 

 最後になるかもしれないオールフォーワンの顔をもう一度見る。二度と忘れないように心に刻み付ける為に――――ぴくり、と頬が動いた。

 

「………え」

『『『………………へ?』』』

 

 蜈蚣の怪人は信じられないようにオールフォーワンの上に手を広げると体内にいたであろう蜈蚣達が溢れて出て、血だらけの臓器の上に降りると浸透するように傷の中に入っていき、顔を出したと思えば互いに〇、✖と言い合い僕らを見つめた。

 

『………ナントカナルカモシレン』

  

 オールマイトも僕も唖然としてしたが、蜈蚣達は大きく叫んだ。

 

『頼ム!!ゴ主人ヲ助ケテクレ!!!』

「「何をすればいい!!?」」

 

 即座に僕たちは言い放つ。燃え尽きていたと思っていた命は、まるで奇跡のように息を吹き返して確かに目の前に合った。 

 

 




次回で一応USJ消滅編は終わりの予定、後日談とか色々ありますが、更新速度は一か月に一回とか完結いつになるだろうと思いながら少しずつ書いていきます。期待しないで待っててくれたら幸いです。
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