一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~   作:燐2

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クリスマスギリギリ間に合った!(特にやることなかった)

因みにオール・フォー・オーバー或いはイリスのイメージモデルはアズレンの大鳳です。(声も中の人同じイメージです)



第三十話:言い訳と事故処理

 イヤなことは連鎖して起きるもの。

 財布を落としたら、中に入ったカードによって個人情報が晒されたり。

 気に入らないという理由で始まった陰口が広がって本当ではないことが本当のことのようになったり。

 失敗と後悔と怪我を負って、彼らに教えてない隠れ家で療養していると

 

『まさか、君がやられるとはね』

 

 一番声を聞きたくない者から電話がくるとか。 

 

『事のあらましは黒霧から聞いたよ』

 

 きっと『私』ならば、電話に出る事さえしなかっただろう。声を聞くたびに思い出す忌々しい声、前世で殺したはずの最も憎き相手。

 

『君が、いや………君たちがご執心なオールフォーワンの存在を』

 

 オールマイトによって五感のほとんどを失うほどの重傷を負いながらも生き長らえている悪の帝王――――『オール・フォー・ワン(お父様)』。

 

「……………何の用ですか?今回の失敗の責任は取りますが」

『今日は随分としおらしい。報告書は見たよ、随分派手に動いたそうじゃないかこれからすること(・・・・・・・・)も含めて、結果は十分だ。今は責任を問い詰めるつもりはないよ。生真面目な君のことだ……回復次第、紛失してしまった脳無も君が創り、補充するつもりだろう?』

「その予定です。………弔の怪我は?」

 

 お父様の声に苛立ちが沸いてくるのを声に込めないように抑えながら、ふと思い出したことを聞いてみるとため息混じりの返答が返ってきた。

 

『顎が砕かれているみたいだ。暫くは僕と同じ加工品しか口にできないだろうね』

「………そう、ですか」

『弔達が撤退した後の君達の活躍を見たよ。久しぶりにオールマイトが曇った顔をしたところを想像するだけで僕は満足さ』

 

 “個性”を使い僕たちが見た記憶を電子データに変換したものを動画として報告書と共に載せていたのを見たようだ。きっと、脳無二体に押さえつけられ『私』が話す内容にいつもの笑顔を歪まし絶望の色を見せたオールマイトの姿を知るだけでお父様は満足したようだ。

 まぁ、目が見えてないからいつもそばにいるドクターが、隣で説明しながら伝えたのだろう。

 

『しかし、残念だ』

「あれは僕のものだ」

 

 何を考えたか直ぐに分かった。 

 

『むぅ……ダメ?』

「僕たちが貴方と協力関係を結ぶときの条件について決めたことの一つ。オールフォーワンに手は出さない……もし破ると言うのであれば、この国を隅々まで死の大地にしてでも、お父様を殺しに行く」

『可愛い娘の想い人と話をしてみたい親心だよ』

「……………最初に弔の死体を晒す」

『それは困る、彼は僕たちの未来の“シンボル”なのだから……全く弔を拾ってきて(・・・・・)可愛がった君がそこまで言うとは、そんなに特別な存在なんだね』

 

 それにしては未だに無邪気な安い悪意しかない。確かにカリスマ性、“個性”の成長性も合わせて才能はあるだろう。しかし開花してない蕾を丁寧に育てるほどに余裕なお父様に複雑な気持ちになる。あと、僕はそこまで彼に興味はない、『私』は会ったばかりのレギオンと同じ目をしていた、と自身の慰め程度にその手を握ってしまったみたいだが(そのあと大変だったが)

 

『君にも素質があって色々と経験済みなのだからフォローを頼むよイリス』

「下手すれば潰しますが」

『その時は次を探すさ。最悪の場合、君が継げばいい』

「冗談、僕はどんな形であれ社会の中で生きていくこと自体が至極面倒、レギオンがいればそれでいい」

 

 『私』は僕と別の道と終わりを見ているが、それでも『オール・フォー・ワン(お父様)』を継ぐことは死んでもゴメンだろう。弔のように僕たちにも素質はあるだろうが、才能と活力はない。完全な死を経験してしまった影響か、前世ではあれほどあった破壊衝動は衰え、社会に対して復讐心も無ければ、革命を志す情熱の黒い炎もない。

 

 『私』も僕も、それぞれ一つの願いを残して、骸骨の身体を動かす心臓があるだけだ。

 

 

『全く、これが反抗期というものか』

 

 これ以上の話をしても意味ないと判断し、電話を強制的に切る。あまり長話をしていれば、お父様や弔にも話していない隠れ家の存在を気づくかもしれない。ベッドに倒れ込み、麻痺した右半身を睨む。『私』が放ったあの一撃の反動に眠りについた為、僕の右半身は血が抜かれたように動かない胤翼も左翼は安定するが、右翼は不安定、実力は半減している。

 

「お父様がレギオンに興味を持つことは仕方がないこと。………守らないと」

 

 もし、お父様がレギオンに接触する事態になればゲームオーバーだ。

 レギオンは、お父様の命令に対して絶対に断ることが出来ない――――そういう風に“教育”されている。

 毘天羅の存在も知られてはいけないし、『ワン・フォー・オール・アンリミテッド』も非常に不味い、お父様の傷も僕たちは出来ないが、レギオンの『ブラッド・ハザード』なら全快に近い状態まで治せる。

 

「さて、最後は全て僕が貰うが。あの無能共も今回の事件でレギオンの正体ぐらい勘付くだろうが……保険でも掛けておくか」

 

 駒の一人に連絡を入れる為に、電話を掛ける。

 オールマイト、想像したより弱体化していたが、お父様の意識を逸らすには十分使えるだろう。

 

「待っててねユリ(・・)……今度は、今度こそは失敗しないよ」

 

 レギオン本人すら忘れてしまったその名前を口にして彼女を呼び出す。

 今からすることは蟲共に餌を上げる事で少々不安な所があるが、一番の脅威であるお父様を対処しなければならない。それは僕も『私』も利害は一致している。

 直ぐに相手は、活発的な明るい声で電話に出た。

 

「オールマイトに招待状を送りたい、やってくれるね?」

 

 ……さて、『私』は今回の回りくどいゲームに可能性を見たいと言っていたが、今更奴らに何を期待しているのだろう。どうせ、何も変わりはしない。自分たちに出来ない事が出来ると言うだけで、レギオンに全てを放り投げて自分たちは正しいことをしたと綺麗な顔で何も知らない顔で毎日を過ごす。………そんな腐った奴らは人間ではない、ただの蟲だ。 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 その日、数々のプロヒーローを輩出してきた長い歴史を持つ雄英高校は前例がないほどの大規模の損害を被った。

 午後の授業中に隔離された大型訓練場所で起こったヴィランの襲撃によって、教師生徒も含めて危険に晒され、何人もの生徒が軽くない傷を負い、教師の中には致死状態になるものまで出た後にUSJ消滅事件と呼ばれるものだ。

 

 雄英高校に在中しているプロヒーローと警察関係者も集まっての緊急会議、その内容はセキュリティ強化案、襲ってきたヴィランに対する調査報告を合わせた重要な事案だ。

 

「オールマイトの推測通りなら死柄木弔の思想もある程度、予想できるとして……問題はオール・フォー・オーバーか」

「オールマイトですら相手にならないなんて……信じられません」

 

 重苦しいため息と共に吐き出されたスナイプにセメントスが信じられないと頭を左右に振る。電子機器類はヴィランの“個性”によって使用不可にされている以上、当事者たちの言葉だけが真実の証明になってしまう。集まる視線、腕が折れギプスを付けたオールマイトは目を沈めながら言葉を発する。

 

「事実さ……あの時の私では到底敵う相手じゃない。彼女にとっても私は多少手古摺るモブキャラと言った感じだろう」

 

 過去の事件によって戦闘時間が制限され、やせ細った体と疲れ果てた声は、とてもナンバーワンヒーローと呼ばれる存在とは思えないほどに小さい物だった。オールマイトの証言によってその実力の片鱗を知った教師達も頭を抱える。

 

「そのオール・フォー・オーバーについてだけど、実は情報があるんだ」

 

 この場にいる唯一の警察関係者に教師たちは半目で見た。

 

「……それは真っ先に言うべき情報だ。そうでないということはあまり良くない事なのか?」

 

 ブラドキングの言葉に塚内の表情は青く、その手に持つ書類は力を込めすぎたのか震えて歪む。 

 

「そうだね、国内に情報が無かったから、思い切って海外にいる知り合いに聞いたら血相変えて書類を送ってきて言われたよ―――直ぐにその国から脱出しろ、と」

「話してくれ、そう言われてはいそうですかと逃げる訳にはいかない!俺たちは人民を守るヒーローなのだから」

「……分かった、覚悟を決めて聞いてくれ………コードネーム『魔王』の一片を」

 

 塚内は自身の感情を吐き出すように呼吸をして話し始める。

 その存在が確認できればヒーロー並びに警察、軍も殺害を許可される特別指定ヴィラン。

 出現は十年以上前としてされ、主に海沿いを移動することが知られており、正確な姿と“個性”は一切不明、その原因だが常に周囲に磁場を発生しており写真や動画にも一切残らず、姿を見たと思われる人物は行方不明、或いは殺害されている。

 

「そしてオール・フォー・オーバーという一人によって行方不明或いは殺害された数は―――一万人以上だそうだ」

「い、一万!?」

 

 多くの教師達は、あまりの悍ましい内容に絶句する。

 たった一人で災害級の被害を引き起こし、姿を見た物はいない。

 

「今回の襲撃事件、オールマイトを含め1-A組の生徒たちが唯一彼女の姿を真面に見て生き残ったんだ」

「……ちょっと待て、海沿いを移動すると言って、さっき国内で調べたら分からないって言っていたよな」

「その通り、この国でオール・フォー・オーバーの出現したのは初めてだ」

「これから先、更なる被害が及ぶ可能性があるってことか!」

「数か月前に軍とヒーロー達の共同チームを組みオール・フォー・オーバーの進行ルートを予測して戦闘になったが、数分も持たず全滅したそうだ」

 

 まさに化物を退治するような話だ。

 

「……唯一の対抗手段はオールフォーワンだったのね」

「しかし、彼女のあの怪我は……!」

「思い出しただけで意識がブラックアウトしそうになるんだけど、聞いた話によると怪人の身体をオールフォーワンに移植するって言っていたそうだな」

 

 教師たちの脳裏に過ったのは、四肢と体に仕込まれた火薬が爆破したように生きているとは思えないほどの惨状のオールフォーワンだ。普通の人間なら既に死んでいただろうが、蜈蚣達と生徒達によって命を紡いだ。

 

「オール・フォー・オーバーに迫るためにはオールフォーワンと接触しなけばならないのか」

「そのオールフォーワンも謎だらけ、これは時間がかかりそうだ」

「しかし、こうしている間にも………!」

 

 会議は難航、それもそのはずだ。

 最初から最悪の情報しかないのだから。

 唯一教師達が理解しているのは、今のまま状況が進めば生徒達どころかこの国そのものが危険だと言うこと。

 

「…………色んな意見が飛び交っているところ申し訳ないけど、みんな落ち着かないかい?」

「校長先生……」

 

 人でない身でありながら“個性”を持つ根津校長は手を叩き、不安と恐怖が充満する部屋をリセットするように促す。

 

「セキュリティの強化、生徒の安全の確保がまず最優先事項だ。この会議はあくまで問題点を皆で理解、共有することだ。今すぐに対応できることではなく、被害が拡大する可能性を危惧し直ぐに行動に移らなければ気持ちも分かるけど、今は耐えるときだよ」

 

 諫める優しい声に教師達が、興奮のあまり立ち上がっていた姿勢からゆっくりと席に体を預ける。

 

「あの蜈蚣―――毘天羅と名乗っていたね。彼が僕たちに渡してくれたもう一体の怪人を解析すれば、オール・フォー・オーバーの“個性”についても何かわかるかもしれない」

 

 あの時、毘天羅は見えない何かを操る“個性”を使い瓦礫の山と化したUSJの中から怪人、脳無と呼ばれる存在を掬うように教師達の前に「今のこいつは初期化している状態だ」と放置した後、口から触手のようなものを出して、オールフォーワンと蜈蚣達を回収し空を泳ぐように飛んでいき姿を消した。

 

「……明日は偉い人たちも大勢やってくる。今日はここまでにしよう」

 

 国家機密指定されるであろう毘天羅、病院に運び込まれた教師や生徒たちの身の安全、今も鳴り続いているだろう生徒の関係者からの電話や、未だに外で騒ぎ立てるマスコミ達の対応に頭を抱える。

 

「……校長がそう言うのあれば」

「ありがとう、何度も言うけど今は耐え時だ。色んな悪評が流れると思うけど、こんな時こそ変わらないままの姿で、みんなの不安を大人の僕たちが取り除こうじゃないか」

「「「はい!」」」

 

 こうして、緊急会議はひとまず終わり教師達は各々会議室から出ていく。

 その中で、オールマイト、リカバリーガール――――ミッドナイトが呼び止められた。

 

「すまないね、呼び止めてしまって」

「いえ、しかしどうして私たちだけ?」

「オールマイト先生や根津校長、リカバリーガール先生は長い付き合いがあるとは聞きましたから、私少し場違いな感じがしますけど」

 

 そう言いミッドナイトは居づらそうに言葉を濁すが、根津は腕を組んで何度か悩むように唸るだけで、何もしゃべらない。

 

「何か分かったのなら早く言いなさい、みんな疲れているのよ根津校長」

 

 その態度にリカバリーガールが咎める、それに押されるように覚悟を決め根津はしっかりとした目でミッドナイトを見た。とても嫌な予感がした。

 

 

 

 

「実はね、オールフォーワンの正体が分かったんだ。この学校の生徒だ」

 

 

 

 




ノリって怖い。
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