一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~ 作:燐2
何度も見直しているのですが、眼が節穴みたいです。
USJ消滅事件と呼ばれるようになったあの事件から数日が経った。
多くのプロヒーロー達が卒業していった雄英高校の誇る施設がヴィラン襲撃により姿形すら残らない甚大な被害。狙われていたようにその場にいた雄英の生徒と教師はヴィランの策略により分散させられ、ヴィランと戦う術を教わる前から実戦を余儀なくされた。
結果は、誰がどう見てもヒーロー側の敗北に終わった。
セキュリティを掌握され、隔離されたUSJの中で暴れるヴィラン達にその場にいた『イレイザーヘッド』、『13号』のプロヒーローは重傷、残された生徒もヴィラン達の手によって分散させられ、その場に待機していた悪の手先達の手によって、少なくない傷を負った者もいた。誰もが、絶望に蝕まれたその時に現れた希望は雄英高校に在籍しているプロヒーローでもない、世間一般的にヴィランと認定されている『オールフォーワン』。いかなる手段を用いて彼らの危機を察知したのか、彼女は雄英バリアーを跳んで乗り越え、それを偶然にも目撃した『オールマイト』と共にUSJに突貫、人質にされていた生徒や教師たちを救いヴィランを見事、撃退した。しかし、ヴィランの実力は並のプロヒーローでは相手にならないほどの次元を超えた存在であり、その恐ろしい力によって襲撃に加わっていた多くのヴィランを殺戮しながら『オールフォーワン』、『オールマイト』を相手にして追い詰めた。
その戦いに何が起きたのか『オールマイト』しか最後まで見ておらず、そして彼はそのことに口を開こうとしなかった。マスコミとの面談に応じるが肝心なことが何も話そうとしない、ならばと土日なら深夜に確実に目撃されたはずの『オールフォーワン』すら姿を見せなかった。
あまりの事態の大きさに関わらず毎日のように流れる情報は断片的であり、誰もが求む情報は出てこなかった。故に世間には不安が積もっていく、故に誰もが知ろうとするあの日、何が起きたのか。
その答えは、まるで狙いをつけたように、根津校長や雄英関係者による記者会見の後に一本の動画がサイトに投稿された。説明文は白紙、
その動画の題名は――――『真実』。
◆◇◆
そこは寂れたラウンジ、日光が入らない遮光カーテンによって店の中は暗く、唯一棚に飾られた大量の酒類(世界中を巡ってイリスが入手してきたもの)が宝石を飾る様に並べられている。黒霧は個性を利用して目の前の魔嬢がお気に入りのグラスにちょうど入る氷塊を用意して、注がれる上質で味わい深いウィスキーを味わうようにピンク色の唇につけた。
「………いい腕よ、黒霧」
「感謝の極み」
日ごろから閑古鳥が鳴くような寒い風景に誰もが心酔するような魔的な笑みが咲いた。この国では酒類を飲んでもいい歳になったばかりの死柄木弔という黒霧が仕える人物が目の前にいるが、彼は子供舌なので酒類を好まずそこらで売られるようなジュースを所望する。別に不満があるわけではないが、こうやって黒霧自身もいつ学んだかを思い出せないバーテンダーとしての腕を振るえる相手は好ましいと思った。相手は一万人もの人間を殺すほどの大量殺人者故にあまり心が安らぐことはないが。
「………はぁ」
それは彼女も同じで、先ほどから隣で肌を爪で掻きむしる音に嫌悪を吐き出すようにため息を付く。
「人が風情を楽しんでいる時に不快な音を立てないで欲しい」
「どうしてオールマイトを殺さなかった?あんな社会の塵、生かしておく理由はないだろうがぁ?」
「僕も数の暴力の前には慎重になるさ」
イリスは面倒くさそうに言い放つ。「
「はぁ?お前が?慎重?一体何の言い訳だ」
「今の状態みたら分かるでしょ、右半身不随、戦力半減、命賭けてオールマイトを殺すつもりなんて最初から無かったから」
「お前は俺の手下だろうが…!!」
「それを了承したのは『私』であって僕ではない」
屁理屈だと弔の黒い眼光が更に鋭さを増すが、彼女はそよ風のようにワインを楽しんだ。
「レギオンに会ってきたけど、君に対してはかなり辛辣な評価だったよ。雑、だってさ」
「はぁ?………あぁ!?お前あのクソチートの居場所知ってるのかよ!!?」
「知っているとも、彼女はあまり他者に迷惑を掛けないように嘘をついたけど、今は傷ついた体を治している。今日ぐらいから復帰するんじゃないかな?」
既に彼女の電話番号も直接見ているので、毎日のように電話をしている。困った声でけれど絶対に止めてと言わない優しさで相手をしてくれる。何時か、何時か、望みが叶うことを夢見て。
しかし、桃色の雰囲気を待とう恋する乙女のような様子を面白いくない表情で黒霧はまさか今回の計画は全て、彼女の逢引のために歪められたのではないかと問う。
「………オール・フォー・オーバー、まさか今回の襲撃は全て貴女の計画に入っていたのですか?」
「餌は固まっていた方がいいでしょ?」
その言葉と共に発動条件を揃えれば、どんな物質でも崩壊する個性が殺意を露わにして彼女に襲い掛かる。
『個性強制介入』+『惰力増加』+『ブラッドハザード』
「―――――治してあげた顎の次は手を砕かれたい?」
弔の凶器となる伸びた手を見ずにイリスの胤翼が
「オール・フォー・オーバー!!」
直ぐに黒霧が制止を呼びかけるが、イリスは耳を貸さない。
「貴方は弱い。力も個性も意志すらも、だから
「ッッッッ!!」
逃げられないと判断したのか、もう片方の手で襲い掛かろうとするが、行動する前に胤翼によって封じられる。
「これでも僕は君を心配しているよ。嘘つき、卑怯者、貴方のような悪い子供は本当に悪い大人の格好の餌食になる。それを防いでいるのはお父様のお陰、貴方が不自由なく生きていられるのはお父様のお陰、好きなことが出来るのはお父様のお陰、考え続けろ死柄木弔――――お前しか出来ない全てを」
畏怖を感じさせる暗い黄金の双眸を前に沸騰していた怒りも憎悪も沈黙していった。ただ、家族のような近い存在に叱りつけられ、ばつが悪い表情で死柄木弔は舌打ちをして、顔を見られないようにフードを深く被り外に出た。
「………いいのですか?」
「僕にとって死柄木弔という存在はどうでもいいんだよ。……ただ」
「………ただ?」
「生まれたその瞬間から、選べない個性という理不尽な病魔に侵され、翻弄され続ける蟲達の生き様は悲しくなるほど愚か――――そう思っただけさ」
イリスはそう他人行儀に言い残し、グラスに残ったワインを口の中に流し込み、黒霧に次の注文を頼んだ。
◆◇◆
私、緑谷百合の身体は激しい戦闘行動しても問題ないまで回復し、学校に再び通うことが出来るようになった。未だにUSJが粉砕された残痕は残っており、校舎の上階から見下ろせば見えてしまう距離。思い出されてしまう戦いの記憶、血と臓物を垂れ流しながらイリスを殺すために全てを焼き尽くす勢いで戦い、生きてしまった今。
兄さんから聞いた話では、個性を奪われた爆豪さんと百さん以外は全員出席できるようになったみたいで一安心だ。イリスと交渉して一時的に得た『オール・フォー・ワン』を使い個性を返せば、きっと元通りになると信じている。百さんの住所調べるのはちょっと苦労したけど、爆豪さんは一応幼馴染だから嫌でも知っている。
「ねぇねぇ、百合ちゃん百合ちゃん!!」
「人の名前、何度も呼ばなくても分かるから……写原さんどうしたの?」
「
1-A組は問題はないと思ったら、別の問題が発生しました。それも学園そのものの一大イベントの中止されるかもしれない噂だ。
「……難しいと思うよ?」
ヴィランの襲撃が有ったばかりなのもある。しかし、一番の問題はイリスがやらかしました。その内容はUSJ内の電気機器が無効化されているにも関わらず、
イリスの残虐な行為、恐怖に震える1-A組のみんな、『オールマイト』と流血に流血を重ねた私のゾンビのような姿、あらゆるメディアで盛り上がっているものだ。世間に与えた劇薬の如き衝撃は凄まじく、あの動画が拡散された次の日には全国の犯罪発生率が2%上昇したと言えば、その影響力は計り知れない。
誰もが信じてやまない平和の象徴を真正面から相手をして常に優勢だった。もし『オールフォーワン』がいなければ殺されてしまった、と多く人が最悪の未来を想像して恐怖した。逆に平和の象徴という存在そのものがヴィラン発生の抑止力となっている絶対的な柱が傷つき弱った、と裏社会の人間たちが見逃すわけもない。あの動画を捏造だ!と叫ぶ声も勿論あるが、焼け石に水、現実に起きたとしてUSJは消滅した証拠、最後の一撃による衝撃と轟音は本校まで届き、私たちの戦う姿を無音の動画ではあってもタイトル通り『真実』だと信じ込む人が圧倒的に多かった。
「やっぱり?」
「うん」
その手にトレンドマークと化しているカメラを悲しそうに持ち上げた写原さんには申し訳が無い気持ちが一杯だ。普通はやらないよね、普通は。
「……………」
隣の席の心操さんなんて、もう半開きの口から魂でも出てしまいそうな落ち込みようだった。彼も含めてヒーロー科に受験して落ちてしまい滑り止めで普通科に在籍することになったクラスメイトは多い、雄英体育祭での結果次第ではたとえ普通科であっても、ヒーロー科に編入も検討してくることは担任のミッドナイト先生が入学ガイダンスで話していた。――――高校生活は三年、三回はチャンスがあるといえば聞こえはいいかもしれないが、ヒーロー科に編入できたとしても、それは皆より
「マジでこれからどうなるんだよ……」
「……お前も見たのか?」
「オールマイトとオールフォーワンが二人掛かりでボコボコにされるヴィランなんて存在そのものバグみたいなものだろう……」
クラスメイトの悍ましいものを見てしまい震えるような話が聞こえた。イリスあのとき全然本気じゃなかったんだよね。無駄な個性を所持しすぎて体を動かしづらそうにしてたし。私もフェーズⅢがあるけど、毘天の全戦力集めないとなれないという点においては本気を出していたけど、全力は出せなかった。
「いい気味」
「………写原さん?」
「あぁー!オールフォーワン様がどうにかしてくれないかなー!!」
いや、貴方の目の前にいるけど無理です。イリスと共に神になること約束はしたけど途中で潰えた。口には決して出さないけど。
「はーい、みんなおはよう!!」
「「「おはようございますミッドナイト先生!!」」」
教室のドアがガラッと開き、いつもと変わらない露出度Maxな服装のミッドナイト先生が入ってくる。それぞれのグループで雑談していたクラスメイト達は自分たちの席へと戻り、学級委員長(不本意ながら)の役目として皆を代表して朝礼をする。ミッドナイト先生は礼から顔を上げた私をじっと見つめ、どうしたのだろうと顔を傾けると慌ててホームルームが開始された。
「まずは突然の休校ごめんなさい。今日またみんなと会えて嬉しく思うわ。ヒーロー育成校故の弊害とか今まであるにはあったけれど今回は皆も知っている通り、今までのとは全くの別物だった」
黙ってミッドナイト先生の真剣な言葉にクラスメイトが耳を傾ける。
「今色んな不安を抱えていると思う。だけど、大丈夫!今は心無いマスコミに理不尽なことを聞かれることがあっても、悪が栄えた道理無し!私も含めてプロヒーローや警察が今と未来が良い物であるように尽力します」
はっきりと皆の心の巣食う闇を払拭させるような、輝きを感じるような声だ。前世でも、こんな人がもっと多ければ、と何度この世界で思った事か。
「そして、昨日職員会議で遂に決まった!雄英体育祭は去年の警備10倍にして開催決定よ!!!」
次回は爆豪と八百万の個性返却の予定。
体育祭、どうしようかな。正直、百合は学校行事のイベントはあまり場を引っかき回さないだろうから、出久メインの話が多くなりそう。
感想がたくさんこれば更新速くなるかも(速くなるとは言わない)