一度死んだ私のヒーローアカデミア~Centipede Queen~ 作:燐2
ややこしいですが原作のオール・フォー・ワンは・を付けていますが百合の場合は・を付けていません。
5/17これからの展開を考えて、内容を大幅に変更しました。
「先生、彼女の元々の個性が凡そ分かったぞ」
暗い不気味な部屋で薬臭のする白衣をした老人がその手に携帯機器を持ちながら入室した。そこは様々な医療機器に繋がれた一人の顔が無い男性が、ソファに体を預け、眼前の幾つもあるディスプレイの映像を
「ドクター、思ったより時間がかかったね。それほどに彼女の存在は特異なのかい?」
「……彼女から摂取した僅かな血液だけでも、数十の別々の個性因子が入っておったわい。あれは今製造中のハイエンド脳無が霞むほどの人間を超えた超常の存在じゃな。先生のようなオール・フォー・オーバーのような複数の個性因子に体が適合しているような性質を持っていなければ、とっくの昔に死んでいるわい」
「ふむ……報告書と映像を確認すると僕達のような性質を持っているような感じでないようだけど」
「個性多重使用あとじゃな」
ドクターと呼ばれた老人が手元の携帯機器を操作して、問題の場面を再生する。多数の個性を発動して地形変えるほどの絶大なる力で空気の弾丸を打ち出す一撃を同等の力で相殺するシーンだ。そこからオールフォーワンは数重にも及ぶ個性を長年使い慣れたよ行使した後に血を吐き、オール・フォー・オーバーを相手にしながら、雄英高校の生徒をその体で守って見せた。皮膚が引き裂かれ、肉が抉られ、骨は砕かれながらもその瞳の光は一切霞むことはなく、人並み外れた回復力と精神力で不死身の如く何度も立ち上がる姿は畏怖すら感じさせた。
「仮説だが、彼女本来の個性は肉体を弄ることじゃ。変幻自在に体の中身或いは外すら改造することによってあらゆるものに適応する
「………驚くべき情報だ」
憎き怨敵であるオールマイトによって負傷した傷跡は未だにオール・フォー・ワンの身体に深々と刻まれた。ストックしていた“個性”も視覚や嗅覚も失い、全盛期に比べ劣ってしまったこの忌々しい体を治せる可能性を彼女達が秘めていることに思わず舌を巻いた。
「伝手でな、オール・フォー・オーバーによって負傷されたヒーロー達には致命傷により一時は心肺停止された者、両足を切断された者や眼球を抉られた者が病院に運ばれた際に検査したカルテを特別に見せてもらったのだ」
「公式では重傷だが命に別状なし、と流れていたね」
「そうじゃ、彼らが病院に搬送された時には既に殺されたヒーローは蘇生された、切断された生徒の両足はくっ付けられていた。両目を失ったと思われたヒーローは視力は僅かに落ちたそうだが他には全く問題がなかったそうじゃ」
「………凄まじい」
陳腐な言葉しか口から出ないほどにオール・フォー・ワンの想像の上を行く能力の持ち主だと考えを改めた。
「彼女の個性は他者にも使用可能じゃ、何かしらの条件があるだろう。しかし、それを多数の蜈蚣を媒介にすることでクリアしておる。しかも蜈蚣そのものが恐らく傷を生めるコーティング剤のように体そのものを分解、再構築して切断面を繋げた――――一番蜈蚣によって傷を埋められた両足を切断された生徒の拒絶反応は出てない」
体には外から入ってきた細菌やウィルスに対して殺傷し、排除する防衛機構がある。体の一部、或いは臓器を移植した場合もそれは働き、それを抑える薬などを使って徐々に慣らしていくことが普通だ。オール・フォー・ワンも失った体を移植して治そうとドクターに協力を仰いだが、自身の特殊な個性に適応できる体が見つかることは今の段階で見つかっていない。
「彼女の改造する個性は血液型は当然として、もっと深いところまで変える事ができる。対象を解析して、拒絶反応が出ないようにその本人に合わせた細胞を創り出す。それが出来なければ、あの三人は死んでおる」
それは、つまり他者の身体を解析すれば、蜈蚣を媒介してそれと同じ物を創り出す。失った臓器も、皮膚すらも元通りにすることが出来る。
「く、くくくく、はははっは!!!」
「先生!?」
気が狂ったようにオール・フォー・ワンは笑いだした。あの場で本気を出していないオール・フォー・オーバーでも、プロヒーローでは足で蟻を踏み潰す程の実力差がある相手をしながら、三人の重傷者を治癒しながら、大勢の人間を庇いながら、脱出経路を確保、合流したオールマイトに対しても決して油断せずに冷静に戦力として加味して立ち回っている。最後には己の命を賭して放った一撃で見事に巨悪を打ち破った。
あの絶望的な盤面から、彼女は己と使役しているちっぽけな蜈蚣の力で全てを救い、守り抜いたのだ。
ありふれた英雄劇を見ているようだった。
確かな実力と義務を胸に何処までも行く。
誰もが絶対的な善の存在と称える偉業。
なのに、オール・フォー・ワンが個性を通して見るオールフォーワンの姿はそういうことをやることを教え込めれた一種の洗脳を受けた愚者に見えたのだ。
まるで、狂った二人の脚本家によって綴られた狂気と愛の
「あぁ、突然笑いだして悪いねドクター。少し面白いことを思いついた」
「突然のことでびっくりしたぞ。しかし、彼女をどうする?ワシとしてはあらゆる手を使って手に入れたい検体じゃ、そのためにはオール・フォー・オーバーをなんとかしないといけないが奴め、いつの間にか彼女と同じマンションに住み始めているようじゃ、手を出した瞬間あちらはこちらを潰しにくるぞ」
「……あぁ、今は放置していいよ」
その発言にドクターは困惑した。興味が尽きない様子のままオール・フォー・ワンは現状維持を決めたのだ。己の傷を治せる可能性があるものをそのままにしておく判断したことに理解が出来ない。
「先生、その理由は?」
「彼女―――………緑谷百合は遠くない未来で自己破滅する。しかし、そのタイミングはオール・フォー・オーバーを監視していたら分かることだ。彼女の二つの人格の中の『僕』と名乗る者なら、簡単な条件で僕の傷を治してオール・フォー・オーバーも僕達の善き隣人になってくれるさ」
「あれだけの力を持ちながら、自己破滅の道を選ぶ?うむ……ワシには到底理解できない、先生は彼女が欲しくないのか?もし彼女を脳無に改造できればこの世を支配出来るかもしれぬのに」
「欲しいさ、しかし一番楽な方法があるなら、そちらを選ぶさ。それにオール・フォー・オーバーの存在は弔にいい影響を受けるよ。今は放置しておくのがいいさ、僕たちが何もしなくても、二人のオール・フォー・オーバーは仲が悪いからね。あれは時間が経つに連れて勝手に傷つけあって消耗していく」
ドクターを下がらせオール・フォー・ワンは一人思考の海を泳いでいた。もし、一つの身体に二つの人格を持つオール・フォー・オーバーが互いに手を組めば一切手を出せないだろう。しかし、互いに見ている未来が違う上に彼女達はどちらかの足を引っ張り合いをして、実力者は凄まじく頭も回るが、あの妖艶な表情の裏では常に余裕がない状態のままだ。静かにその瞬間を狙えば―――………。
「問題は緑谷百合がオール・フォー・オーバー以外の人物に影響を受けて本質が変わるか、という点だが。あれほどの深い歪みを変えられる者が果たしているかどうか、だね。まぁ、あのオールマイトは決して彼女を救えは出来ないだろうけど」
もし、彼女を変える事が出来るなら、それはきっと、緑谷百合の深淵に身を落としてながらも這い上がり、全てを受け入れる事が出来たものだけだ。
原作読んでオール・フォー・ワンって絶対弟のこと大好きなんだろうなと思った。はっきりとは分からないけど弟さん監禁されて兄か兄の部下に色々お世話してもらっていたと思うこの頃。