放課後、俺はいつものように松田と元浜と一緒に帰っていた。するとおもむろに松田が嘆き始めた。
「なんで俺には彼女がいないんだ! 俺はこんな野郎共と帰るつもりはないのに!」
「それはこっちのセリフだ! なあ松田、イッセー、俺達がこの駒王学園に入った理由はなんだ?」
「女子が多い学園で、ウハウハハーレムを作るためだ!」
「その通りだ! なのに何故彼女が出来ていないんだ!? しかも最近は避けられる始末!」
「俺達が所かまわずエロ全開で話していたからだろうな……」
「なっ……! もう遅いというのか?」
「恐らく」
「神は死んだ!」
ああ、本当に俺はもう桃色の学園生活を送ることは出来ないんだろうか、と考えていると、こちらにやってくる女の子がいた。
「あのっ、兵藤一誠君ですよね?」
その子に最初に抱いた印象は『漆黒の髪』が綺麗だなと思った。
「ああ、兵藤一誠は俺だけど?」
「私、天野夕麻っていいます。前に見かけた時から格好いいなって思ってました。付き合って下さい!」
世界が、止まった……
「なにーーーっ! イッセーに告白する子がいるなんて!」
「有り得ないっ! これは何かの冗談だ!」
酷いなお前ら!?とりあえずこの二人は殴って黙らせておいた。
「本当に俺でいいの?」
「はい、付き合って貰えますか?」
「喜んでえええええっ!」
我が世の春が来たあああっ!
◇◇◇◇◇
黒歌が堕天使の気配を感じた翌日の放課後、俺はリアスと話をしていた。
「本当に堕天使の気配がしたのね?」
「分かんない。いた気配がした気がするっていう程度にゃ」
「随分と曖昧な返事ね」
「どちらにせよ、警戒をしておく必要がありますわ。リアス、夜のパトロールを増やすべきでは?」
「それもそうね。黒歌、あなたも協力してくれないかしら? 仙術で気を探った方が効率がいいわ」
「いいけどレオスは……」
「大丈夫だよ、黒歌。もし堕天使に襲われても逃げるくらいは出きるよ」
そう、いつまでも黒歌たちに頼ってなんかいられない。普段の生活で迷惑をかけているのに、さらに命まで守ってもらうなど、そんな情けないこと出きるわけがない。
「レオス、危なくなったら直ぐに魔法陣で呼んで下さいね? いつでも駆けつけますわ。」
「分かった、朱乃。」
「本当ですわね? 私、レオスがいなくなったら生きていけませんわ」
いつも俺のことを心配してくれる朱乃。心配されてばかりの俺は情けなくなる……
「兄さんと朱乃先輩はラブラブですね」
「レオス君、僕も直ぐに駆けつけるからね」
白音、冷やかさないでくれ。
あと佑斗、心配してくれるのは有り難いが、男が言うと少しきもいぞ。
◇◇◇◇◇
俺は一人で帰っていた。
あれからリアス達は夜のパトロールなどについて話し始めたので、俺は部室を後にしたのだ。
そして、俺は今とてつもなく悔しく、絶望している。
リアス達が相談し始めてから、俺と彼女達との間の壁を間違いなく俺は感じた。
『力を持つもの』と『持たないもの』の差だ。
右腕を動かせない俺は、彼女達に必要とされない、寧ろ邪魔なだけだ。それが悔しくてしょうがない。
この右腕が動きさえすれば!
あの時呪いを受けなければ!
……いや、嘆いてもどうしようもないことだ。それに、この腕を悪く言うと朱乃を責めているようで気が引ける。
『レオス、希望を持って。絶望しては駄目』
……ん?今何か聞こえたような気がした。
周りを見渡すが、俺に話しかけた人はいない。
一体誰が話しかけて来たのだろうか。俺の名前を知っていたし。
「それにしても、『希望を持て』か……そんなの、今の俺には無理に決まっているじゃないか」
感傷に浸っていると、ふと見覚えのある顔を見つけた。
「あれは兵藤じゃないか。でも隣の女の子は誰だ?」
兵藤の隣にはとても楽しそうにしている女の子がいた。
兵藤たちを見ていると、兵藤がこちらに気づいたようで、こちらに歩いてきた。
「レオス先輩じゃないっすか。今日は朱乃先輩たちと一緒じゃないんすか?」
「やあ兵藤。今日は俺一人なんだ。
それにしても隣の女の子は誰だい?」
「ああ、この子は天野夕麻ちゃん。俺の彼女ッス!
夕麻ちゃん、この人はレオス・アロイ先輩。
何回かお世話になったことがあるんだ。」
「はじめまして、天野夕麻です」
「なっ……!?」
「どうしたんですか、固まって」
「兵藤に彼女だって!?これは夢か?」
「レオス先輩までそんな事を言う!れっきとした俺の彼女ッスよ!」
「本当に……?」
「はい♪」
これはたまげた。
あの学園で有名なエロ三人組の兵藤に彼女が出来るなんて。黙っていればマシな奴なのにと思っていたが、こんな可愛い子を彼女にするとは。
人間、人生がどう転ぶかなんて分からないものだ。
「そうか、おめでとう兵頭。せっかくのデートを邪魔しちゃ悪いから、俺は帰るよ。
じゃあな」
そう言って俺は帰ろうとしたが、天野夕麻から普通じゃないモノを見る目、少し怯えたような視線を向けられているのに気付いた。
「どうかしたか?」
「いえっ、何でもありません」
「そうか、ごめんな。今度こそじゃあな」
知り合いの彼女を問い詰めるわけにもいかず、おとなしく帰ることにした。
あの俺を見る目、そして堕天使がいるかもしれないというこのタイミング。
思い過ごしであればいいのだが……
◇◇◇◇◇
っしゃあ! 今日は夕麻ちゃんとデートの日だ! 昨日はデートが楽しみで楽しみであまり眠れなかった。
デートのプランは長年温めてきたものがある。むふふふふ。
え、キモイ? そりゃキモくもなるってもんよ! なんたってデートだぜ?
いかんニヤけが止まらん。
「イッセー君、おまたせ!」
おっとマイハニーが来たようだ。ニヤけを止めなければ。
「おはよう夕麻ちゃん。早速だけど、行こっか」
「うん、いいよ!」
お互いにあいさつを済ませ、俺たちは早々にデートをしに行った。
◇◇◇◇◇
夕方、デートも終わり、俺と夕麻ちゃんは公園に来ていた。
デートはというと、俺自身は、水族館とかで夕麻ちゃんは楽しそうに笑ってくれていたし、そこそこ上手くいったんじゃないかと思う。
でも、夕麻ちゃんが時折見せる悲しそうな顔がどうしても気になっていた。
何か俺に悪い所とか、悩み事とかがあるんじゃないだろうか。
そう思って、思い切って聞いてみた。
「なあ夕」「ねえイッセ」
二人同時に話してしまった。
会話が止まって二人同時に話すとか、初々しいカップルかっての!
あ、俺がその初々しいカップルだったわ。
「あ、あはは……」
「イッセー君から話してくれない?」
「俺から? 分かった。
その……デートの途中で、たまに夕麻ちゃんが悲しそうな顔してたから気になってさ。」
「っ!? そんな顔してた?」
「うん、してたよ。俺なにかしちゃったかな?」
「うんうん! イッセー君は何もしてないよ!」
そう言ってくれる夕麻ちゃん。
でもこの様子だと何かあるのは確かだろう。その証拠に今も辛そうな顔をしている。
そして散々悩むような素振りを見せた後、ようやく口を開いた。
「あのね、イッセー君、お願いがあるの……」
「お願い? なにかな?」
ここで甘い雰囲気だったら「もしかしてキスのお願いか!?」なんて思ったかもしれないが、どうやらそんな感じではない。なんだろうか。
「あのね…… そのっ!」 「兵頭一誠、貴様には死んでもらおうか」
!? いつのまにか黒いスーツを着た男が後ろに立っていた。
そして驚くべきことに、その背中には黒い翼が生えていた。
でも今なんて言った?
「ドーナシーク……」
「全くレイナーレ様、あなたがこの役をやると言い始めたのですから。
手っ取り早くしてもらわないと困るのです。
この男を殺し、計画を安全に進めることが、あなたの夢に繋がるのですよ?
レイナーレ様、あとは私がやりますからもう帰って結構ですよ」
なにやら物騒な話をし始めた。俺を殺す? 計画?
一番気になるのは、このドーナシークとかいう男と、夕麻ちゃんが知り合いであるらしいことだ。
「夕麻ちゃん、どういうこと?それにレイナーレって」
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
夕麻ちゃんは謝りながらこの場を離れた。
「待って! っ!?」
ドスッという音と共に、光の槍のようなものが俺の腹を貫いていた。
なんだこれ、めちゃくちゃ痛い……!
貫かれた腹からは血がどんどん溢れてくる。ああ、意識が遠のいていく。
俺、このまま死ぬのか?
「さらばだ、少年よ。
さて、後始末をしなければ。 っ! 赤い召喚陣? ここの領地の悪魔か。
仕方がない、ここは退散させてもらう、が、少し細工をしておこうか。ククッ」
そしてあの男はどこかへ行ってしまった。
薄れ行く意識の中、紅い光が俺の視界に広がっていた……
◇◇◇◇◇
「あなた、大丈夫!?」
悪魔召喚のチラシに呼ばれ、かけつけた先には血まみれの少年がいた。
「光の槍……! 堕天使の仕業ね! 私の領地でこうも好き勝手に!」
少年の命はもう無かった。
しかし、私はこの少年に何かを感じた。
「この子……? ふふっ、不思議な力を持っているのね。
いいわ、あなたを私の眷属にしてあげるわ。新しい命に歓喜しなさい」
そうして、私は懐から駒を取り出し、この少年を眷属にした。
あー、どうも星屑12です。
まだ話に進展がなくてすいませんね。
レオス君が活躍するのはあと2話くらい先でしょうか。
あと、レイナーレの性格がこんなんになってるのは、話の都合上こうするのが一番いいと思ったんですわぁ(⌒,_ゝ⌒)
「この瞬間を待っていたんだ!」
って言って貰えるように、頑張りたいな。