俺は一人で学校から帰っていると女性が走っているのを見た。
およそ走るのには似つかわしくない、きちんと整った格好で脇目も振らずに走ってるのが目についたのだ。
するとその女性には見覚えがあるのに気がついた。
「……? あれは兵藤の彼女の…、天野夕麻だったか?」
さらによく見ると泣いているではないか。
もしや兵藤の奴が初デートで盛って、彼女を泣かせたのでは、と思った。
もしそうならば兵藤には説教をしなければならないな、と思いながらも彼女を追いかけ、話しかけた。
「なあ! 天野さん!」
「っ! あなたは…!」
肩をビクッと震わせこちらを向いた彼女は、なんとか自分を覚えてくれていたようだ。
「その…、今日は兵藤とデートだったんじゃ?」
泣いている原因かもしれない兵藤の名をだすのはどうかと思ったが、聞かなければ話は分からない。
俺はそういう男だ。
「そのっ…、私っ! ぐすっ」
そう言って彼女は再び泣き出してしまった。
どうやら地雷を踏んでしまったようだ…。分かっていたが。
◇◇◇◇◇
彼女が落ち着くまで、そこら辺のベンチに座った。
とは言ったものの、
「ごめんなさいっ、ごめんなさい…!」
いかんせんさっきからこの調子なのだ。
何に謝っているのやら。
「なあ、何があったかは知らないが、落ち着い……っ!」
なんだ!? 堕天使の気配!?
いつも朱乃がいるから堕天使の気配は分かるつもりだ。
カラスの匂いがする。
でもどこから………………
あ、こいつ堕天使だ
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤッバい!なんで堕天使がこんな所にいるんだよ!
くそ、ここまで近づかないと気づかないとは馬鹿か俺!
どうする?気付かれたら、非力な俺は瞬殺だ!
早く逃げなければ!
するとなんの運命の悪戯だろうか。
一羽のカラスが、俺達が座っているベンチの上の木にとまり、焦っていた俺はつい口を滑らせてしまった。
「あっ、カラス……」
彼女はグルンッとこっちを見た。
「えっ、いまなんて……?」
ナイーブになっていた彼女には『カラス』という単語にさえ反応するようになっていたのだった。
ここでさらに俺は馬鹿をやらかしたのだ。
「えっ、あのっ、いやそういう意味じゃなくて!」
「そういう意味ってどういうことですか!」
やらかした。完全にやらかしたわ。
正直俺はもう死んだと思った。が、
「あなた、そっちの人だったんですね!
くっ…!」
と言って彼女は逃げてしまたのだった。
「……………。
なんとか生き残ったなあ。」
気付くと、俺は大量の汗をかいていたよ。
◇◇◇◇◇
今日は何かがおかしい。
朝から気分は悪いし、昨日の記憶がこんらんしてるし。
特に異常だと感じたのは皆が俺の彼女、『天野夕麻』を覚えていないことだった。
「なあ松田、元浜! もういいから! ふざけていないで俺に彼女がいたことを思いだしてくれよ!」
「ぶははははは! ふざけてんのはお前だろ、イッセー! お前に彼女なんか出来るわけねーって!」
「そうそう。 はぁ、ついにイッセーは童貞をこじらせ過ぎて頭がおかしくなってしまったか…」
と、さっきからこんな感じなのだ。
「だだだ、誰が童貞だ! 本当に彼女がいたんだって!」
「まぁまぁ、この哀れな迷える羊には助けが必要だと思わないかい?松田氏」
「全くそのとおりだ、ジェントル元浜。 さあ迷えるイッセーよ、これを受け取るがいい」
松田が取り出したのは、
『幼い妹~だめっ!私たち兄妹だよ!~』
ただのアダルティーなゲームだった。
「ふんっ!」
「「ぎゃああああ!なにすんだてめえええ!」」
血涙を流す二人をよそに、俺は夕麻ちゃんのことを考えていた。
本当に誰も覚えていないのか…?
そもそも俺は昨日の夕方から何をしていたのか覚えていない。
そう思うと本当に俺に彼女がいたのか、自分自身に自信が持てなくなってきた。
あの二人はアホだし…。他に夕麻ちゃんを見たのは……
レオス先輩だ!そういえばあの時レオス先輩が俺をからかっていたはず!
思い出した俺は早速レオス先輩の所へ行こうとすると、クラスの女子が歓声が耳に入った。
「どーもー、三年生のレオスです」
「ここに兵藤くんはいるかな?」
なんと訪ねようとしたレオス先輩と憎きイケメン木場が、あちらから来てくれたのだった。
「はっ、はいっ! 変態の兵藤ならあそこにいます!」
誰が変態じゃ。
二人が俺を見つけ、こっちに話しかけてきた。
「やあ兵藤くん、ちょっといいかな?」
「へっ!俺はイケメンには用はねーよ!」
「まあまあ、そう言うな兵藤。
こっちはちょっとお前に用があるんだ。」
「用ってなんスか…」
「『天野夕麻』」
「っ! 先輩、夕麻ちゃんを覚えてるんですか! 何か今日おかしいんですよ!」
「まあ落ち着いてよ兵藤くん。
この話はここで大声で話すことはちょっとできない。
付いてきてくれるかな?」
「ついて行けば分かるのか…」
訝しげに木場を睨んだが、コクんとレオス先輩が頷いたので、俺は渋々同行することにした……
◇◇◇◇◇
俺達は兵藤に自分は悪魔だということ、兵藤が神器をもっているということ、そして神器をもっているが故に天野夕麻、もとい堕天使に狙われたのだということを説明した。
「そんな……信じられないッスよ。リアス先輩たちが悪魔で夕麻ちゃんが堕天使で、そして俺にこんな力があるなんて……」
くくっ、悪いがあの「ドラゴン波!」には笑わせて貰った。
黒歌、いつまで笑ってんだ、空気よめ。
「ええ、にわかには信じられないでしょうね。でも現実なの。あなたは私の眷属になったのよ。」
「いや~、リアス先輩の眷属になれるなら良かったかなーなんて」
なかなか能天気だな、こいつ……
「ふふっ、これからは部長と呼びなさい。
それで、本題に入りたいのだけどいい?あなたが殺された時の状況を説明して貰えるかしら。神器も発動したし、昨日のことを思い出せるはずよ」
「分かりました……
俺は夕麻ちゃんとデートをした後、公園に行きました。そして何かお願いをされて……それから……」
「兵藤、焦らずによく思い出すんだ。」
言葉を詰まらす兵藤に俺は声をかける。兵藤にどうしても思い出して欲しい。
レイナーレがどうしてあの時泣いていたのか、その真意が知りたい。
すると兵藤の口から意外な言葉が発せられた。
「そうだ……。俺は公園に行って、夕麻ちゃんに殺されたんだ!なにか光の槍で腹をぶっさされたんだ……」
「本当か、兵藤!?」
俺は驚きのあまり、身を乗り出して兵藤に問いただした。
「うわっ! 本当ッスよ。あの日俺は夕麻ちゃんに腹をぶっさされたんスよ。しかも、愉快に笑いながら……
俺、騙されていたのか…」
愉快に笑いながら…?
おかしい。俺が泣いている天野夕麻に出会ったのは、恐らく兵藤が刺された後だろう。
あの天野夕麻の涙は何だったのか…
「決まりね。 私の領地で堕天使が好き勝手やっていることが判明したわ。 すぐに対応しなければいけないわね…」
「待ってくれリアス。 まずは捕まえて話を」
「なぜ? 現に奴らの行いは発覚した。釈明の余地はないわ。
それとも、レオスは堕天使を庇う理由があるの?」
「ぐっ……」
殺された本人が証言をし、そして、この領地の主がこう言う限りどうにもしようがない……
「ま、堕天使の件はとりあえずこれでおしまいね。
いまからイッセーには悪魔の仕事を覚えて貰わなくちゃ。
レオス達はもういいわよ」
「……分かった。」
俺はもやもやした気持ちを抱えながら、おとなしく帰る事しか出来なかった……
えー、皆様、あけましておめでとうございます。
お久しぶりですね。
久しぶりの投稿なのに話の進展があまりないというね。
しかも、原作と展開ちがうし。
自分、話をサクサク進めて行きたいので、ストーリー展開を結構変えるとおもいます。
一巻も次で終わるんじゃないかな。アーシアの話とかぶっ飛ばします。
今年もよろしくお願いします。<(_ _)>