MEGA MAN XーInfinite code Stratos day of Ω&Σ 作:アマゾンズ
零がゼロと共に自爆、拉致
エックス、鈴と共に
クラス代表による対抗戦。その優勝クラスに渡される商品はデザートフリーパス半年間。
十代の女の子ともなれば、それは豪華な権利だろう。半年間とはいえど無料で沢山のスイーツを堪能できるのだから。
その為に零はクラスメート達から優勝して欲しいと、プレッシャーになる言葉をかけていた。
何事においても一位や優勝というものは偉業であり、目指すものである。そう簡単に優勝できれば、努力はいらない。
相手は殆どが代表候補生や強豪だろう。それでも自分に出来る最大限の事をしようと練習や特訓をイレギュラーハンターの二人と行うのであった。
◇
特訓を行うのは良かったのだが、その練習内容が零にとってハードを通り越してベリーハードな特訓であった。
無理もない。二人は元はレプリロイド、人間に最も近い機械である。生身の肉体とは違って長時間の稼働が可能なのだ。
ましてや、エックスは第17部隊・・最前線へと赴く部隊の隊長であり、更にゼロは特殊0部隊という戦闘も諜報活動も行う部隊の隊長だ。
そう、隊長なのだ。エックスは優しく指導しているが、人間にとっては簡単な訓練でもハードである。
加えてゼロは実戦的な指導を旨とし、100%の成績を出さないと決して合格とは言わない。
優しさ故の厳しさと生き残る為の厳しさ、この二つの厳しさに耐えなければならないのだ。
「は・・はぁ・・はぁ!ふ、二人共、俺もう・・・ダメ」
『仕方ないな、休憩にしよう』
『おいおい、たかが多角攻撃を避ける訓練を30分だぞ?へばり過ぎじゃないのか?』
『ゼロ、零はレプリロイドじゃなくて人間なんだ。無理させたら意味がないよ』
『・・・そうだったな。レプリロイドしか鍛えた事が無くて、人間に合わせる感覚がわからなくてな』
「大丈夫だよ・・・エックスやゼロの活動限界の十分の一くらいが人間の限界だから」
『不便なもんだな?』
「それが人間だよ」
レプリロイドの感性はレプリロイドにしか分からない。人間の感性は人間にしかわからない。
だが、お互いに否定はしていない。レプリロイドにとって人間は救うもの、人間にとってレプリロイドは友人という認識だ。
だが、それは理想の中の理想、レプリロイドを都合の良い道具とみなす権力者や、イレギュラーとなったレプリロイド達は揃ってこの一言を漏らしていたらしい。
『どうして、都合の良い道具としか見ていない人間を自分達が守らなければならないのか?』と。
その考えと思いが改善されることはないが、弱める事は出来る。それだけが唯一のお互いを結んでいる糸なのだ。
◇
そして、試合当日。目の前には幼馴染の鈴とライブメタルM、即ちマーティが鈴の近くで浮かんでいる。
だが、これは試合。手加減する気はないし、それは失礼に値するだろう。目の前には既に準備を済ませており、ロックオンに似たモードを展開しようとしていた。
「零、こうして手合わせするのは初めてだけど、手加減なんてしないからね?マーティ!!」
『任せなさい!』
ISを展開した鈴にマーティはロックオンした零と同じように、追加装備を装着させる。鈴の判断力とマーティの戦闘力が融合したモードであり、女性系ロックマンと言っても過言ではない。
「エックス!」
『うん、行こう!』
「ロックオン!エックス!!」
零が展開したのはエックスモード・ファーストアーマー装備形態だ。とは言っても今現在ではフットパーツのみでダッシュしか出来ない。
「!それがアンタのISって事ね」
『エックスの姿で戦いを挑んでくるなんて、アタイにケンカ売ってんのかい?』
「とにかく、試合は試合だから!」
試合開始のブザーが鳴り響き、鈴は真っ向勝負を挑むべき突撃してくる。だが、零はそのまま挑むほど無謀な行動はしない。
正々堂々といっても実力差があるのは明白。だからこそ、相手の土俵に入ることはしない。
「ティアーズ・ビット!」
「機体の色が変わった!?」
零の機体の色が同じ青だが、暗色に近い青色に変化し、その周りには三つのビット兵器のようなものが零を守り、囲むように飛び回っている。
「ビット兵器!?そんな武装はなかったはずよ!?」
鈴の疑問は最もだろう。零のISにビット兵器はもちろん装備されてはいない。だが、零のもつライブメタル・エックスには特殊な機能があった。
それが特殊武器獲得である。エックスは自分の世界ではあらゆるレプリロイドの始祖であり、その設計思想を流用して、あらゆるレプリロイドが開発されていった。
「しまった!瞬間加速を使った影響で切り替えが!」
『アタイがやってやる!歯を食いしばりなよ!?鈴』
「!ぐうううう!?」
マーティのアシストによって強引に瞬間加速の方向性を切り替えられ、その時に発生する加速重力が強すぎる為に、鈴は歯を食いしばって耐えるしかなかった。
「行け!ティアーズ・ビット!」
そんな鈴にも容赦はしない、命令コマンドを受けたビットはあやゆる三方向から鈴を狙っていく。その気配に気付いた鈴は転がる事でそれを避ける。
「そう簡単に当たると思うなぁ!」
青龍刀を二本構え、エックス名の通り、交差するように斬りかかるが、零はビットを三機集結させて高速回転するよう指示を与えて弾き返した。
「ぐっ!?ビット兵器を高速回転させて盾にした!?」
「撃つだけがビット兵器じゃないのさ。多少は傷がつくけど、応用はいくらでも利くんだから」
試合を見ていたセシリアはビット兵器が扱えること以前に、ビット兵器を実体のシールドとして利用する応用技に驚愕と同時に舌を巻いていた。
「あんな応用方法が・・・」
零はビット兵器であるティアーズ・ビットを脳波で動かしている訳ではない。特殊武器となった為に自動迎撃と防御のプログラムが組み込まれ、それによって動かしているのだ。
もっとも、エネルギーの効率が悪いために長時間の使用や先程のシールド使用によって大幅にエネルギーは削られてしまう。
「ティアーズ・ビット展開可能持続時間、残り195秒か・・・残りはバスターで!」
『そうはいかないよ!』
『!まずい、マーティは俺のクセを知ってる!』
「いっけええ!」
マーティの隠した合図で鈴は零に向けて龍砲と呼ばれる衝撃砲を放った。至近距離なために零は派手に吹き飛んでいく。
「うああああああ!ぐふっ!」
派手に吹き飛んだのは衝撃を逃がす為ではあったが、着地や激突の事を考えていなかった為にアリーナの壁へ激突してしまう。
「さっすが、マーティ!」
『どう?やるでしょ?』
零は立ち上がりつつ、腕を回す。どうやら完全なスイッチが入った様子で目つきが違う。それと同時に装甲の色が紅に変わっていた。
吹き飛ばされていた滞空時間の時にロックオンを切り替え、ゼロモードに切り替えたのだ。もちろん、ゼロが強引にだが。
「さぁ、接近戦を・・!?」
「望む・・!?」
◇
突如、天井が崩落し何かが試合を行っているアリーナに着地してきた。紫色の装甲を持ち、ISを纏っている様だが人間的なものは一切感じない。
『よう、エックス・・・ゼロォ・・・会いたかったぜ』
電子音声が響く中、エックスとゼロはその声に覚えがあった。それはA級ハンターの実力がありながら、イレギュラーに認定されたレプリロイド。
『VAVA!?』
『まさか、貴様までこの世界に来ていたとはな』
『ククク・・・いい機会だ。お前らを葬ってやる!行くぜええええ!!』
無人機、VAVAと呼ばれたISは鈴に見向きもせず零へと襲いかかってきた。巨大な腕を振りかざし、零が居た場所に巨大な穴を開けてしまう。
『ライドアーマーの腕!?』
そう、今のVAVAは愛機であったライドアーマーと一体化しているのだ。その為にスピードは無いがパワーは底知れない。
「凰ちゃん下がってて!」
「何言ってるのよ!?」
「エネルギーが残り少ないはずだよ、俺が囮になるから早く!」
『エックス、お前は凰と一緒に行け!』
『ゼロ!?』
『何やってるんだい!エックス、鈴!早く撤退だよ!』
エックスのライブメタル鈴に投げ渡し、ゼロと一体化している零はバスターを構え、VAVAと対峙する。
『来い、VAVA!』
『遊んでやる、ゼロ!』
◇
アリーナの放送室でそれを目撃した千冬は急いで生徒たちに避難するよう指示を出した。生徒達は我先にと逃げ出していったが一夏だけはアリーナの闘技場の入口を目指している。
「一夏?」
それを目撃した箒は疑問に思いながらも後を追っていく。その先には零が使っていたピットがあり、一夏は入口からその様子を覗き込んでいた。
なんとかピット内部へ逃げ込んだ鈴は甲龍のエネルギーを回復させようと躍起になる。
「早く戻らないと零が!」
『すぐには無理だ、最低でも50パーセントは回復させないと』
『もどかしいね!くそっ!』
ピットの外ではバスターのチャージ音と何かを破壊する音が響いている。鈴にとってそれは悔しさが募る音であった。
「くそぉ!あのアーマー、傷一つ付かない!!」
『ちぃ、防御力が桁違いすぎる!』
『どうした?この程度か?』
なんとかエネルギーが50パーセントまで回復しかかった瞬間、零達が吹き飛ばされ、何かで拘束するような音が響き渡った。
「零!」
『鈴!纏ってから行きな!!』
マーティの忠告を聞きつつ、エックスと共に闘技場に出るとそこにはVAVAに拘束されたゼロモードの零の姿があった。
『エックス、コイツを助けたいかそれなら小娘に己を殺すように言うんだな』
『構うな!俺に構わずやれ!!』
『威勢がいいなゼロ・・ん?』
視線を向けると零の使っていたライブメタル・エックスが鈴の隣に浮かび上がり、周りを浮遊する。
『鈴、マーティ』
「力を貸して、二人共!」
二つのライブメタルをロックオンし、VAVAと向き合う鈴。だが、それに動じた様子は相手にはない。
『・・・ふん』
VAVAの表情を表すのならば、遊んでやる・・・といった感じだろう。鈴は積極果敢に向かっていくが、初めてロックオンしたエックスの仕様に振り回され、慣れない射撃武器を上手く扱えず、苦戦を強いられた。
そんな中、鈴を助けようとする一つの影が彼女の横を横切った。白式・Σを纏った一夏だ。
「てめえぇ!機械のくせに鈴に手を上げるなァァ!」
『ん?コイツ・・・ククク、そういう事か』
「何をブツブツ・・・!?機体が、ISの動きが鈍い!?」
今現在、シグマの意志は眠っている。自分の力だけでISを動かしているが、シグマが力を貸したときの様な動きが出来なかった。
『くだらん・・・!』
「なっ・・!?ぐああああ!?」
VAVAはストレートパンチを一発、一夏へと撃ち込んだ。ライドアーマーと同等の威力を誇るパンチだ。いくら絶対防御で守られているとはいえ、その攻撃力を完全に殺しきる事は出来ない。
『そらそらそらそらそらぁ!』
「うぐっ!?ぐぶっ!げぶっ!」
そのまま、連続ラッシュを叩き込み続け、一夏は一発一発のパンチを受ける度に、声になっていないうめき声のようなものを上げ続けている。
『未成年にはまだ早いが・・・これが坊やへの寝酒のバーボン・・だ!!』
絶対防御用のエネルギーが枯渇した瞬間を狙って、VAVAは思い切り腹部へパンチを撃ち込んだ。
「ぐぶっ!?・・・っげぼぉぉっ!」
下手をすれば内臓破裂を起こしている可能性、運が良ければ重傷で済むと思われる一撃を一夏は受けて、吐血しながら吹き飛ばされた。
無論、自分の寄り代を彼が死なせる訳がなく、一夏は気絶してしまったが、その状態で傷を癒しにかかる。
VAVAは暗号を飛ばした信号によってそれを知った為に、このような攻撃を取ったのだ。
◇
『やはり、つまらん・・・だが、潰して』
「う・・ぐ・・おおおおお!」
『!?』
拘束しておいたはずのゼロをロックオンした零が、拘束から抜け出そうとしている。拘束を破ると同時にVAVAへと飛びつき、しっかりと取り付いて離れない。
[推奨BGM ロックマンXより『ZEROのテーマ(仮称)』]
『ぐ!貴様、また!離せ!』
「凰ちゃん・・・!!俺が出来るのはこんな事ぐらいだよ!」
『エックス、お前は鈴と一緒に行け!』
バスターが最大出力でチャージされていき、それを超至近距離で撃ち放つ。だが、それは撃ったというよりも自爆したという方が正しい。
『ゼロ、ゼローーーー!!』
「零ーーー!!」
自爆を受けたVAVAの装甲は破損しており、攻撃を受けきれる状態ではない。だが、戦闘力は失っていない様子だ。
『ふん、何度も飽きずによくやるものだな。さぁ・・今度こそ覚悟はいいか?』
VAVAが戦闘を開始しようとした瞬間、鈴がロックオンしたエックスのファーストアーマーを完全状態で装着し、叫びをあげた。
「うわああああああああああああああ!!」
自分が弱かったせいだ、私が弱くなければ、早く逃げていれば、そうすれば、彼は零は自爆しないで済んだはずなのに。
鈴は自分自身が許せなかった。悲しい事も、相手が憎いと思う心、己に対して溢れ出る怒りすらも、あらゆる感情が溢れ出て叫ばずにはいられなかった。
「許せない許せない許せない!アンタ以上に私自身が許せない!!」
『粋がるのだけは一人前だな?行くぞ!』
VAVAは突進してくるが、鈴は両手を腰に構え、発勁を撃ち込むような体勢を取っている。
『くぅだいてやるぅーーー!』
「わあああああ!波動ーーー拳ーーー!!」
鈴が感情を吐き出すかのように放った気弾のようなもの、それはVAVAを飲み込み、一撃で倒してしまった。
『Ga・・・バKa・・Na・・・俺・・・Ha』
「とっとと、スクラップになれ!」
ロックオンを解除し、甲龍の衝撃砲でVAVAにトドメを刺すと零が横たわっている場所に急いだ。
「零!!」
「凰ちゃん・・・ごめ・・ん」
「喋らないで!すぐに医務室に運ぶから!!」
「・・・」
零を運ぼうとした瞬間、謎のISのようなものが現れ、ロックオンしたままの零を担ぎ上げてしまった。
「この子は私達が預かるわね」
「!零を離しなさいよ!!」
「いやよ、彼は最高の検体なんだから、じゃあね」
女のようだったが、彼女が転移すると同時に零は居なくなってしまい、鈴は再び叫んだ。
「零を返せええええ!!」
だが、その声が聞こえる訳がなく、鈴は地面を殴りつけ、大声で泣いたのであった。
遅くなってすみません!
熱中症やら、疲れやらで構想できず遅くなってしまいました。
なんとか、頑張りますので、長い目で見てください。
真面目に熱中症はきついです。