デート・ア・アストレア 世界を殺す10人の少女達 作:暇人書店員
空に閃光が走る。紫の
『………迷った時は、自分の心を信じなさい。崇矢くん。』
………“自分の心を信じる”か。確かに、俺もあいつらも戦う理由なんて無いのかもしれない。だから、唯一信じて戦えるものなんて自分の心だけなのかもしれねぇな。そうなると、俺はどうするかな。俺が信じる物、か。俺は視界の端にあるものを捉えた瞬間、地面を蹴って空を飛んでいた。
遡ること一週間程前。
モニターにしか光源がない真っ暗な艦長室で俺は一人で考え事をしていた。十六夜アリスに戦う理由を問われた時、すぐに俺は答えることが出来なかった。為さなければ為らない事であるはずだったのに気がついたら何故なのかを忘れていた。何時から俺は戦う理由を失ってしまったのだろう?そんな事を考えていると、疲れからなのかごくごく自然に俺は眠りについていた。
『崇矢お兄ちゃん、起きてくださーい!!朝ですよー!!』
「……は?」
モニターに表示されている時刻を見ると、現在6時。いつもなら家の自分の部屋で起きていんだろう時間。おそらくは…………つーか、ただ考え事してたら寝落ちしただけじゃん。はぁ……折紙が心配しているだろうし、家にかえるか。
『でもですよ、帰るってどこに帰るのですか?任務が終わるまで帰らないっていう旨の手紙、折紙さんの家に置いてきましたよね?』
時が止まったような気がした。
俺はなんとか十六夜アリスをうまく丸め込んで折紙の家の前にいる。……結局、あんな事言っておいてうまく収まる訳で。いつか説明をしないといけない訳で。どう説明するか考えていない訳で………みたいな堂々巡りの思考をしながら鍵を開けた。
「…………?」
どこかおかしい。いつもなら、折紙が飛び付いてくるはず。だが、今は朝早く。だとしても、いくらなんでも静かすぎる。いつもなら、もう起きている時間だ。俺が、リビングのドアを開けると、ダイニングテーブルの近くに折紙が倒れていた。それを見た俺は、思わず折紙の名前を叫んで、折紙に駆け寄っていた。
時刻は少し遡って崇矢が《アルテミス》で睡眠についたであろう時間。
《アルテミス》艦内の休憩スペースに私はいた。私には、肉親と言える人はいない。唯一言えるのは、零宮姉さんだけ。といっても、血は繋がっていない。ただ、DNA 配列が同じだけの言ってみればただのクローン人間、デザインベイビー。私を表す言葉は幾らでもある。兄さんは私がこの事を言うと怒るけど。実際、私はただただ命を散らすだけの生命体。
ー“戦うだけの生命体”……か、悲しくないのか?そんなこと言ってて
ー必死に生きてりゃあなんかあんだろ、戦う以外にもさ。
昔、兄さんと初めて会ったときの会話が頭を過る。どんな人でも初めて私達姉妹に会うと、顔が似ていることに怯えて顔すら合わせてくれない。それどころか、私達姉妹を罵ることだってある。だから、兄さんは変わっていた。怯えもせず私達の顔を見て話をした。
ー顔は同じでも、性格までは一緒じゃあ無いだろう。お前ら姉妹は“性格の違い”が個性じゃあねぇの?
それどころか、私達姉妹を一人の人間として扱ってくれた。例えば、私達姉妹一人一人に名前をくれたり、どんな時も私達姉妹を気にしてくれたり、模擬戦で失敗しても罵らず、励ましてくれた。兄さんは、私達を想ってくれている。………あぁそうか、兄さんは同じように折紙さんを想っているんだ。おそらく、兄さんは無意識に私達より折紙さんを想っている、愛しているんだと思う。…………うらやましいなぁ、ちょっと嫉妬してしまいそうです。