コンコンコンコン
美鈴は、妖精さん達と鎮守府の建設作業を行っていた。
美鈴「だいぶ形になってきたねぇ」
美鈴が一緒に作業をしていた妖精さん達に声をかけると、妖精さん達は一様に笑顔で美鈴に答える。
カーン カーン
その時、見張り台から鐘の音が聞こえてきた。
艦娘達が不在の間、見張りを代行していた妖精さんからの合図の鐘だった。
美鈴「そろそろ天龍達が帰ってきたかな?」
美鈴は作業の手を止め、見張り台へ駆けて行った。
見張り台に登り、妖精さんが指差す方向に双眼鏡を向けると、隊列を揃えて帰還してくる天龍達の姿が見えた。
美鈴「誰も怪我とかしてなさそうだ」
美鈴は、天龍達を出迎えるため海岸へ向かった。
深雪「それにしても出迎えの艦隊もすごかったなぁ~」
天龍「戦艦に重巡洋艦、正規空母までいたからなぁ!」
白雪「長門さん、妙高さん、翔鶴さん、日本海軍の主力艦隊でしたね」
雪風「皆さん強そうでした!」
沖縄沖で、町井田の輸送艦を日本海軍の艦隊に引き継いだ時に見た主力艦隊の感想で盛り上がる天龍達。
美鈴が待つ島まであともう一息と言うところで、艦隊の先頭にいた雪風が島の様子を双眼鏡で確認すると海岸で緑色の服に赤いロングヘアーの人影が見えた。
雪風「あっ、しれぇが海岸で待ってます!!」
天龍「美鈴のやつ、わざわざ出迎えかよ!」
深雪「そんな事を言う割には、嬉しそうじゃん」
天龍「わ、悪いかよ!」
白雪「司令官は優しい人ですよね」
深雪「みんなで美鈴のところまで競争だぜぇ~」
雪風「雪風は負けません!」
天龍「オレの速さが気になるか?世界水準軽く超えてるからなぁ~!」
白雪「頑張っていきましょう」
天龍「そう来なくっちゃなぁ、スタートだっ!」
天龍の合図で4人は一斉に島に向かって駆け出して行った。
海岸に迎えに来ていた美鈴は、天龍達が猛スピードで島に向かってくるのが見えた。
美鈴「あれ、みんなどうしたんだろ?」
深雪を先頭に、白雪、雪風、天龍の順に大きな波しぶきを立てながら駆けてくる艦娘たち。
美鈴「……まさか、何か緊急事態か!?」
美鈴「深海棲艦が攻めて来るとか!?」
美鈴が思わず身構えていると、艦娘たちが全員で美鈴に向かって手を振ってくる。
美鈴「あれ?なんか違うみたいだなぁ……、考え過ぎてたかな?」
美鈴は艦娘たちに手を振り返すことにした。
深雪「おーい、めいりーん!!」
雪風「しれぇー、雪風帰投しましたー!!」
白雪「作戦終了しましたー!」
天龍「よっしゃぁっ!全員無事に戻ったぞー!!」
海岸で手を振る美鈴に気が付いた艦娘たちは、更にスピードを上げる。
深雪「深雪さま一番乗りだぜ~!」
天龍「まだまだぁ!天龍様のお通りだぁ!!」
先頭の深雪に対して、天龍が最後方から追い上げて来る。
雪風「負けるわけにはいきません!!」
白雪「ま、まだ……、や、やれます!!」
雪風と白雪も負けじと追いすがり、4人はほぼ横一線に並ぶ状態になっていた。
美鈴「もしかして、競争しているのかな?」
艦娘たちの様子を見ていた美鈴は、天龍達が競争している事に気が付いた。
美鈴「こうして見ると、みんな結構早いなぁ~」
美鈴「艦娘って元々は軍艦だって言ってたけど、船の速度差とかってあるのかなぁ?」
美鈴は、一人で色々考えながら競争している艦娘たちを見守っていた。
雪風「幸運の女神のキスを感じちゃいます!」
艦娘たちのレースは雪風の勝利に終わった。
天龍「はぁ、はぁ、やるじゃねぇかチビ共も……」
深雪「途中で飛ばし過ぎた、失敗したぜ、チクショ~!」
天龍と深雪はお互いにかなり早い位置スパートをかけ、お互いに抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げていたが、あまりにも激しく競い合っていたため、お互いにスタミナが切れてしまい失速してしまった。
白雪「うぅ、もう少しだったのですが……」
天龍と深雪が失速した後、先頭に立ったのは白雪だったが、ゴール間際に突然の強風によりバランスを崩してしまい失速してしまったところを雪風に追い抜かれてしまった。
美鈴「運も実力のうちって言われるけど、いい勝負だったと思うよ」
雪風「しれぇ、ありがとうございます!」
島の海岸で美鈴は、帰還した天龍達から町井田中尉の輸送艦が無事に迎えの艦隊と合流したと報告を受け、特に深海棲艦との戦闘もなく帰還できたという話を聞いていると、工廠の方角からラッパの音が聞こえてきた。
パッパパッパ パッパッパ パーン
美鈴「妖精さんのラッパだ」
深雪「建造終了の合図だよな?」
美鈴「みんなが出かけている間に、妖精さんに建造をお願いしていたんだよ」
天龍「新参者の登場か、楽しみだな」
雪風「どんな人が来るでしょうか?」
美鈴「町井田中尉からもらった資料を見ながら、空母の艦娘を狙って見たんだけど」
白雪「中尉の輸送艦も、ここに来る途中で深海棲艦の空母から攻撃を受けましたし、今後は制空権という意味でも味方の空母が必要になりますしね」
天龍「さすが美鈴、良い所に目をつけたじゃないか!」
美鈴「ははは……、ま、まあね~(お母さんが必要と思って作ったことは黙っておこう。しかも、後でよく資料を確認したけど、空母ってお母さんってことじゃ無かったし)」
美鈴達は、完成した艦娘を出迎える為に皆で工廠に向かうことにした。
工廠に着くと、妖精さんが扉の前に立っていた。
美鈴「妖精さん、建造は終了したんだね」
美鈴が妖精さんに声を掛けると、妖精さんは右手の親指を立てて「バッチリです」と言うような仕草をした。
美鈴「それでは、早速お出迎えしよう!」
美鈴が工廠の扉の前に立つと、工廠の中から光が漏れてきて内側から扉が開く。
光の中から、和服姿で後ろに束ねた黒髪の落ち着いた雰囲気の女性が現れた。
和服姿の女性「航空母艦、鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願い致します」
鳳翔と名乗った女性は、美鈴に向かってお辞儀をしてきた。
美鈴「ここの提督の紅美鈴です」
美鈴も鳳翔に頭を下げる。
鳳翔「ご丁寧にありがとうございます」
美鈴「(小柄だけど、何か母性を感じる……、やっぱり空母はお母さんだったんだ)」
天龍「鳳翔さんか、美鈴この人は世界初の航空母艦と呼ばれた人だぞ」
美鈴「世界初の!? すごい人なんですね!!」
鳳翔「最初から空母として建造されたという意味では世界初と呼ばれています。小さな艦ですが、頑張りますね」
深雪「この鎮守府にとっても、初の空母だから頼りにしてるぜ」
白雪「これからは、艦載機の開発も必要ですね」
美鈴「かんさいき……、あぁ空母に搭載されている飛行機ってやつだね」
雪風「鳳翔さんは、どこに艦載機を積んでいるんですか?」
美鈴「確かに、どこにも持っていないですよね?」
鳳翔「ふふふ……、お見せしましょうか?」
美鈴「是非!!」
鳳翔「それでは、艤装を装着してからでよろしいでしょうか」
美鈴「それでいいです」
美鈴達は海岸に移動し、艤装を装着中の鳳翔を待っていた。
鳳翔「提督、お待たせしました」
左肩に板のようなものを装着し、背中に矢筒、手に弓を携えた鳳翔が美鈴に声をかける。
美鈴「弓矢ですか?」
鳳翔「演習ということで、あそこの岩に爆撃をしますね」
鳳翔が指差す方向には、約500メートル先に小さな岩場が見えた。
美鈴「あんな遠いところですか」
天龍「空母にとっては近距離だぜ」
鳳翔「至近距離ですね」
鳳翔は弓を構えると、岩場の方向に狙いを定め矢を放った。
鳳翔「風向き、よし。航空部隊、発艦!」
真っ直ぐと飛んでいく矢が、数十メートル先で突然光り始めやがて灰色の航空機へと姿を変えた。
美鈴「矢が変身した!?」
鳳翔「これは、九九式艦上爆撃機と言う私がいま唯一搭載している艦載機です」
美鈴「これが艦載機……」
鳳翔「艦娘によっては、式神として艦載機を発艦する子もいますが、私は弓術を用いて発艦します」
美鈴「式神か……(幻想郷にも式神使いは何人もいたなぁ)」
ヒューン ドガァァァァン
美鈴達が話をしているうちに、九九艦爆が岩場に到着し爆撃を行った。
美鈴「あんな遠くに……、すごい!!」
鳳翔「命中ですね」
爆撃を成功させた九九艦爆が鳳翔に向かって戻ってくると、鳳翔は左手を肩の高さまであげて板状のものを構える。
美鈴「鳳翔さん、その板みたいなものは盾ですか?」
鳳翔「ふふっ、これは盾ではなくて飛行甲板ですよ」
美鈴「飛行甲板?」
鳳翔に接近して来た九九艦爆は、減速しながら飛行甲板に近づいてくる。
キキキィーッ
九九艦爆が鳳翔の飛行甲板に着艦し、操縦席に乗っていた妖精さんが美鈴に敬礼をしてくる。
美鈴「この飛行機は妖精さんが操縦していたの?」
鳳翔「はい、まだまだ訓練中ですが、訓練や実践で経験を積むとどんどん上達してくれます」
天龍「空母はなんと言っても攻撃の射程の長さが特徴だ、敵の射程に入る前に艦載機で先制攻撃をかけたりすることも出来るぜ」
鳳翔「艦載機を使って偵察をすることも出来ますよ」
美鈴「あるほどなぁ~」
美鈴の鎮守府に新たに加わったのは、日本の航空母艦の母と呼ばれた『はじまりの空母』鳳翔であった。
これまで航空機の運用をしたことが無いどころか、航空機の知識もほとんどない美鈴は鳳翔から航空機について色々と教わった。
軍艦時代の特徴なのか艦娘鳳翔としての性格なのか、非常に教え上手であり生徒に学問を教える『教師』、あるいは子供に教える『母親』という雰囲気を鳳翔から感じた美鈴であった。
今回着任する艦娘は、前回の美鈴の発言や建造時間で予想できた人は多いかも知れませんが、そのままあの『お艦』です!
美鈴は、明治生まれ設定なので飛行機の知識が無いということにしていますが、後から調べたらライト兄弟がプロペラ機の初飛行に成功したのが明治36年だと後から気が付きました。
まぁ、明治時代の後半だし、アメリカの話だし『いいや~』ってことにしています。