トントントントン
朝、美鈴が目を覚ますと鎮守府(仮)の調理場から物音が聞こえてきた。
美鈴「朝か……、そろそろ朝ごはんを準備しないと」
美鈴は起き上がると、同じ部屋で寝ている艦娘たちの様子を確認する。
美鈴「深雪と雪風はまだ寝ているか、天龍は今日も早朝トレーニングかな?」
美鈴「白雪も起きてるみたいだな……」
美鈴が艦娘達の布団を確認していると、一つだけ丁寧に畳まれていた布団があった。
美鈴「あれは鳳翔さんのか、やっぱり見た目通りキチンとした人なんだなぁ~」
トントントントン
顔を洗いに行こうとした美鈴は、調理場から聞こえる物音に気が付いた。
美鈴「そういえば、さっきから何の音だろう?妖精さんが何か作っているのかな?」
美鈴は、洗面台に向かうため調理場の方に歩いていくと調理場から何やら味噌や焼き魚のいい香りがすることに気が付いた。
美鈴「くんくん、この香りは?」
美鈴は、香りにつられて調理場を覗き込むと割烹着を着た鳳翔が手慣れた手付きで料理をしている姿が見えた。
美鈴「あっ……、鳳翔さんだ……」
美鈴のつぶやきに気が付いた鳳翔は、振り向いて美鈴を確認すると会釈をして微笑んできた。
鳳翔「提督、おはようございます」
美鈴「あっ、おはようございます」
鳳翔「もうすぐ朝食の用意ができますので、もうしばらくお待ち下さいね」
美鈴「あっ……、はい」
美鈴は、鳳翔と会話をしているうちに、自分が寝巻き姿で、髪も寝癖のままだということに気が付いて洗面台に向かった。
美鈴「いつも朝ごはんは、私が作っていたけど……」
美鈴は、自分が深海棲艦との戦闘に参加できないからと、艦娘たちの身の回りの世話は出来るだけしようと思い、食事や掃除は全て自分でやっていた。
美鈴「鳳翔さんを見ていると、何かお母さんって感じがするなぁ」
鳳翔と美鈴の母親が似ていると言うわけでは無いのだが、どことなく鳳翔の雰囲気に母性を感じる美鈴であった。
顔を洗って寝癖を直し着替えを終えた美鈴が、朝食の準備をしていた鳳翔の手伝いをしようと調理場へ向かうと、鳳翔はすでに朝食の配膳まで完了していた。
鳳翔「提督、朝食の準備ができましたよ」
美鈴が食卓テーブルに目を移すと、そこには『卵焼き』、『味噌汁』、『焼き魚』、『ご飯』が並べられていた。
美鈴「これ、全部鳳翔さんが……」
鳳翔「何か、お嫌いなものとかありましたか?」
美鈴「いえ、凄いなぁと感心していただけです」
鳳翔「天龍さんや白雪ちゃんも、ジョギングから帰って来ましたし、まだ寝てる子たちを起こしてきますね」
美鈴「(鳳翔さん、『 妻』感半端ない……)」
美鈴が、鳳翔の家庭的な面に感心していると、天龍と白雪がタオルで汗を拭いながら部屋に入ってきた。
天龍「ふぅ……、白雪もだいぶついてこれるようになったじゃないか」
白雪「ついていくのが、やっとでした……」
天龍「でも、朝から体力づくりなんて偉いじゃないか」
美鈴「ふたりとも、朝からお疲れさま」
天龍「おっ、美鈴!」
白雪「司令官、おはようございます」
天龍と白雪が美鈴に挨拶すると、二人は朝食に気がつく。
天龍「おっ、今日は焼き魚に味噌汁か、朝から凄いじゃないか!」
白雪「今日は和食なんですね、司令官いつもありがとうございます」
美鈴「いやいや、作ったの私じゃないよ」
天龍「えっ、違うのか?」
美鈴「目を覚ましたら、鳳翔さんが作ってくれてた」
白雪「そういえば、私達が起きた時には鳳翔さんも起きてましたね」
美鈴達が鳳翔の朝食について話をしていると、寝室から鳳翔に連れられて深雪と雪風も起きてきた。
深雪「これ、鳳翔さんが作ったの?」
雪風「すごく美味しそうです!」
全員が食卓にあつまると、朝食に気が付いた深雪と雪風が鳳翔に感心する声を掛ける。
鳳翔「さぁ、冷めないうちに皆で食べましょう」
美鈴「そうですね、それじゃあ皆いただきます!」
艦娘一同「いただきます!」
鳳翔の朝食は見た目の出来栄えもさることながら味も一級品であった。
美鈴「お……、美味しい!!」
深雪「美鈴の料理も美味しいけど、鳳翔さんの料理はなんかおふくろの味がする」
白雪「本当、なんか安心する味がする」
雪風「すごく美味しいです!!」
鳳翔「ふふっ、喜んでもらえたなら嬉しいです」
天龍「鳳翔さん、おかわりはある?」
ガツガツと食べていた天龍が、恥ずかしそうにおかわりを確認すると、鳳翔がにこやかにおかわりを差し出す。
鳳翔「みんな育ち盛りでしょうから、いっぱいありますよ」
天龍「お……、おぅ!もらっとくぜ!」
鳳翔からおかわりを受け取った天龍は、またガツガツとご飯を食べていた。
鳳翔「提督も、駆逐艦の子たちもまだまだおかわりはありますよ」
一同「おかわり!!」
鳳翔の朝食を終え、白雪と雪風は鳳翔と一緒に食事の後片付けを手伝い、天龍と深雪は美鈴と一緒に鎮守府の建築作業を手伝うことにした。
鎮守府は、妖精さんが工廠でどんどん製造してくれたレンガを使って建築したもので、20名程度が生活出来る小型の施設ではあるが、今の美鈴たちには十分すぎる規模であった。
美鈴「提督室に個室、食堂、お風呂、娯楽室……、色々作ったなぁ~」
天龍「美鈴と妖精さんたちで、よくこんな立派に作ったなぁ」
深雪「確かにたまに手伝ったけど、ほとんど美鈴達が作ってたよな」
美鈴「ほとんど妖精さん達がやってくれて、私はどういう風に作るか意見を求められてたくらいだよ」
建物や、家具などもほとんど妖精さん達が作ってくれていて、美鈴達は鎮守府の顔となる看板を作ることとしていた。
天龍「美鈴、この板なんか看板に良くねぇか?」
美鈴「うん、いい雰囲気の板だね、木目も綺麗だし」
深雪「さっそく、この板に鎮守府の名前を入れて作っちゃおうぜ!」
天龍「おぅ、じゃあ美鈴!頼むぜ!!」
美鈴「うん!……あっ、どうしよう……」
天龍「どうしたんだ?」
美鈴「鎮守府の名前、決めてなかったよね……」
天龍・深雪「あっ……」
美鈴は、鎮守府(仮)に戻り、艦娘を全員招集し緊急会議を開いた。
美鈴「皆に集まってもらったのは、この鎮守府の今後を左右する重要な話があるんだ……」
天龍「オレもこんな大事なことをすっかり忘れてしまっていたとはな……」
深雪「みんな真剣に聞いてくれよ」
美鈴達は、鎮守府(仮)で後片付けをしていた鳳翔たちに神妙な面持ちで語りかける。
鳳翔「とても重要なお話みたいですね」
白雪「なっ……な、な、なんでしょうか……」
雪風「なんでしょう?」
事のいきさつを知らない鳳翔達は、心配そうに美鈴達を見つめる。
天龍「ちっくしょう、オレがいながらなんでこんな大事な事を見落としていたんだ!」
深雪「みんな……、落ち着いて美鈴の話を聞いて欲しいんだ……」
ゴクリ
美鈴達の緊張感あふれる雰囲気に、鳳翔達は生唾を飲み込む。
美鈴「みんな……、本当にごめんなさい!」
美鈴「今まで、この鎮守府の名前を決めていなかった!!」
美鈴の一言に、鳳翔と雪風は思わずズッコケそうになる。
雪風「もーっ、驚かせないで下さい!」
しかし何故か白雪はガクガクと震えだした。
白雪「……あ、あわわわ……」
変に緊張しすぎたのか、白雪はパニックに陥り取り乱す。
鳳翔「し、白雪ちゃん落ち着いて!」
白雪「名前が……、私の名前は?」
鳳翔「白雪ちゃん、貴女の名前は『白雪』よ、白雪姫の『白雪』よ!」
白雪「姫……?じゃあ貴女はかぐや姫?」
雪風「雪風は、雪風です!!」
白雪「じゃあ、貴方が王子様?」
深雪「白雪姉さん、落ち着いて私は深雪だよ!」
白雪「あ、あなたは伊達藤次郎藤原朝臣政宗?」
天龍「それって、独眼竜の伊達政宗のことか?」
天龍「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」
鳳翔「遊んでいる場合じゃないでしょう!白雪ちゃん正気になって~」
数分後、白雪が正気に戻ると美鈴、天龍、深雪は鳳翔からお説教を受け、白雪に土下座で謝った。
鳳翔「しかし、鎮守府の名前が決まっていないというのも不便ですねぇ」
美鈴「今まで、この仮の鎮守府で暮らしていて名前を気にしたことがなくて……」
天龍「すっかり忘れていたんだ……、名前」
鳳翔「普通は地名とかをつけるのが通例ですが……」
美鈴「この島、名前が無いらしいんです」
鳳翔「困りましたねぇ……」
深雪「美鈴鎮守府とかじゃダメなの?」
美鈴「自分の名前はなんか嫌だ……」
雪風「しれぇの好きな物の名前とかにしたらどうでしょう?」
美鈴「好きなものかぁ……」
天龍「帽子についてる、龍って書いてある星とか好きなんじゃないか?」
美鈴「龍鎮守府……、星鎮守府……、う~ん、どうでしょう?」
鎮守府の名前について一同話し合っていると、美鈴がふと閃いた。
美鈴「龍と星で、龍星ってどうかな?流星ともかけているんだけど」
天龍「龍星か、良いじゃないか?」
深雪「美鈴らしくて良いと思うぞ!」
白雪「何だか、綺麗な響きですね」
雪風「雪風も良いと思います!」
鳳翔「『龍星』……、国が栄えるという『隆盛』とも結びつきそうで縁起が良さそうですね」
美鈴「なるほど、そう考えると我ながら良いかなと」
美鈴は、用意した板に筆で『龍星鎮守府』と書き込んだ。
その日の夕方、完成した鎮守府の正面出入り口に用意した鎮守府の看板を取り付け、ついに紅美鈴率いる『龍星鎮守府』が完成したのであった。
この日の晩は、美鈴が腕をふるった中華料理、鳳翔が皆のためにと作った海鮮ちらし寿司などご馳走が用意され、妖精さんも全員招待して食堂で鎮守府建造パーティーが行われた。
艦娘達も、妖精さんもこの鎮守府では同じ仲間である。
美鈴はこの光景を見て、幻想郷にいた頃に紅魔館でレミリアがお屋敷で働く妖精メイドも全員集めて開催した自分自身の誕生日パーティーを思い出した。
美鈴「この鎮守府の主は、私なんだ……。皆の笑顔は私が守らなきゃいけないんだ……」
楽しく談笑したり、食事をしたり、言葉が通じなくても身振り手振りでコミュニケーションをとり笑顔になる艦娘と妖精さん達の表情を見て、美鈴は決意を新たにしたのであった。
ついに鎮守府が完成しました!
個人的な設定では、手作りのため艦娘が20人くらい住めるくらいの規模を想定していますが、多分そのうち手狭になっていくと思いますので、そのうちゲームのように『母港拡張』をしていくと思います。
もちろん、手作りでね!
PS.ゲームの母校拡張は誰がやっているのでしょう?妖精さんでしょうかね。