ドゴォォォン ドゴォォォン ドゴォォォン
戦艦ル級の、執拗な追跡・砲撃が続いていた。
深雪「はぁ、はぁ、まだ来るのかよぉ~」
天龍「情けねぇ、オレがこんな状態じゃなければ……」
大破し深雪に曳航されている天龍は、自分の現状を悔やんでいた。
深雪「雪風たちが鎮守府についたら、助けに戻ってくるからそれまでの辛抱だよ」
天龍「美鈴のことだ、きっとまた建造してるに違いないから、援軍も増えるはずだぜ」
実際に、艦娘たちが出撃中に建造を始めたのは、鳳翔が建造されたときのみなのだが、出撃前に建造を始めて戦闘中に完成し、救援に駆けつけた天龍の印象が強いのか、天龍と深雪の中では美鈴は建造好きだというイメージが定着していた。
ちなみに、この2人はまだ知らないが、本当に今回も美鈴は建造を行っているので、2人のイメージは間違いではない。
天龍「しかし、敵がル級1隻だけで良かったぜ、足の速い駆逐艦や巡洋艦クラスが生き残っていたら、オレたちだけじゃなく鳳翔さんたちも追撃を受けていたかもしれないからな」
深雪「ル級たちに遭遇する前、重巡の艦隊にいたチ級は大破して撤退したし、ル級の艦隊にいたチ級もイ級2隻もやっつけれたからな~」
そのとき、天龍の顔が青ざめていた。
天龍「おい……、ル級の艦隊って、他にいたのチ級とイ級2隻だけだったか?」
深雪「えっ?雪風が目視したときも、鳳翔さんの艦載機からの連絡でも……」
天龍の質問で、記憶を思い起こした深雪も一瞬言葉を失った。
天龍・深雪「軽巡のヘ級が生き残っている……」
その頃、大破した鳳翔と暁を曳航中の、雪風たちは天龍たちから既に数キロ離れた地点を航行中であった。
白雪「この調子だと、想定より早く鎮守府へ帰還できそうですね」
鳳翔「私はこんな調子ですが、白雪さんと吹雪さんのおかげで順調に進めています」
吹雪「白雪ちゃんと私は姉妹ですから、身長差も体格差もないから曳航もスムーズです」
鳳翔「ただ……、何かしら、何か嫌な予感がするの……」
ふと鳳翔が、不安を口にしたとき、暁を曳航して鳳翔たちに追従していた雪風から緊急連絡が入った。
雪風「大変です!後方から深海棲艦1隻が接近してきます!!」
暁「まさか、ル級なの?」
吹雪「そんなぁ、深雪ちゃんたちがやられちゃったの?」
雪風「ル級じゃないです!もっと早い!巡洋艦クラスです!!」
雪風の報告を聞いた鳳翔は、一瞬で顔を青ざめた。
鳳翔「私としたことが、うかつでした……」
白雪「鳳翔さん?」
鳳翔「艦載機からの敵艦隊の報告では、ル級、チ級、へ級、イ級2隻の確認報告がありました」
白雪「私たちが撃退したのは、チ級とイ級2隻……」
暁「へ級をやっつけてないじゃない!!」
吹雪「そ、そんなっ!ダメですぅ!」
雪風「雪風も、双眼鏡で見てたはずなのに……」
鳳翔「爆撃と水雷戦の二段構えの攻撃で見落としていました……」
通常時であれば、駆逐艦の艦娘たちは深海棲艦の軽巡に速力で劣ることはなく、へ級を振り切ることができたかもしれないが、大破艦2隻を曳航中であるため速力が出せない状態であり、軽巡ヘ級がみるみる近づいてきていた。
雪風「深海棲艦を視認!軽巡ヘ級です!!」
雪風たちがヘ級の追撃を受けていたころ、龍星鎮守府の提督室で艦娘たちの帰りを待っていた美鈴のもとに建造完了の知らせが入った。
美鈴「そういえば、もう建造開始してから4時間位していたなぁ」
美鈴「みんなの帰りも遅くて心配だし、新しい艦娘さんに見に行ってもらおうかなぁ」
戦場の様子が分からない美鈴は、とりあえず工廠に向かい建造された艦娘と会うことにした。
美鈴「そういえば、建造したときに建造予定時間を聞いてなかったし、今までこんなにかかったことなかったなぁ~」
天龍が建造されたときは1時間、鳳翔が建造されたときは2時間と、完成する艦娘によって建造時間異なることはわかっていた。
また、町井田からもらった建造の資料でも、大型の艦船になるほど建造時間がかかるというようなことが書かれていたので、今回のように4時間くらい建造に時間がかかったということは、かなりの艦娘が完成したのであろう。
美鈴「きっとウワサの、戦艦や正規空母って娘が来てくれたんだ!」
美鈴は、意気揚々と工廠へと向かっていった。
ドゴォォォン ドゴォォォン ドゴォォォン
深雪「くっそー、このままじゃル級に追いつかれちゃうぜ」
天龍「くっ……、そろそろ覚悟を決めるか……」
深雪「天龍さん、『オレを置いて逃げろ!』とかっていうのは無しだからな」
天龍「深雪……」
深雪「苦しいときも、つらいときも仲間がいれば乗り越えられるんだ、誰かが犠牲になって生き残るなんて無しだよ……」
天龍「くっ……、それはそうだけど……」
天龍は、思わず天を仰いだそのとき、上空から複数のプロペラ音が聞こえた気がした。
天龍「ん……、空からなにか聞こえねぇか?」
深雪「えっ?」
天龍の言葉に、深雪は上空を見上げる。
ブゥゥゥゥン
深雪が耳を澄ませていると、西方向から複数のプロペラ音が聞こえてきた。
深雪「これは……、鳳翔さんの艦載機?」
天龍「いや、ちょっと音が違う……、それに鎮守府からの方角じゃない」
深雪「まさか、新手の深海棲艦!?」
深雪と天龍が、西方向の上空を 確認していると、緑色の機体にフロートのついた、鳳翔の艦載機とは違う形状の機体が見えてきた。
深雪「あの機体は?」
天龍「水上偵察機?いや、あれは!」
深雪「天龍さん、わかるのか?」
天龍「あれは、E16A『瑞雲』だ!」
深雪たちが、瑞雲の小隊に気が付いたとき、天龍に通信が入った。
女性の声「どこの所属か知らないが、追われているようだな」
天龍「艦娘か?」
女性の声「私は、紅月(こうげつ)鎮守府所属の航空戦艦日向だ、遠征中にはぐれた駆逐艦2名を探している」
深雪「それって、吹雪姉さんと暁のことか?」
日向「2人を知っているのか?」
天龍「戦闘中に負傷して、オレの仲間と一緒にうちの鎮守府へ向かってる」
別の女性の声「2人を保護してくれているんだね、ありがとう!」
天龍「あの瑞雲は、アンタたちのか?」
別の女性の声「そうだよ、あれはボクと日向さんの艦載機さ」
別の女性の声「あっ、ボクは日向さんと同じ、紅月鎮守府所属の航空巡洋艦最上さ、よろしくね!」
日向「君たちも、随分やられているようだし、ル級に追われているのか……」
天龍「はは、見ての通りさ」
日向「これも、瑞雲が導いてくれた縁だ、吹雪たちも世話になったようだし、行くぞ最上!!」
最上「航空戦艦と航空巡洋艦の実力、見せてあげるよ!!」
日向と最上からの通信が終わると、上空の瑞雲小隊がル級に向かって突撃していく。
ドガァァァン ドガァァァン
瑞雲小隊がル級に爆撃を行うと、西方向から2人の艦娘たちの姿が現れた。
日向「艦載機を放って突撃。これだ……」
最上「出るの!? そうこなくっちゃ!」
日向と最上は、瑞雲の爆撃によって中破したル級めがけて、一斉射撃を行う。
ぐぎゃぁぁぁ
日向たちの砲撃を受けたル級は、大破し悲鳴を上げている。
深雪「あれでも、まだ生きているのか!?」
日向「航空戦艦の真の力、思い知れ!」
砲撃のため、一旦退避していた瑞雲小隊が再度ル級に爆撃をしかける。
ぐぉぉぉ
再三の攻撃を受けたル級は、もがき苦しみながら海に沈んでいった。
深雪「ル級を倒したぞ!」
天龍「しかし、ヘ級の姿が見当たらない、鳳翔さんたちを追っているのか?」
ル級の撃破を確認した日向と最上は、瑞雲を収容し深雪たちに近寄ってきた。
最上「うわぁ、君随分やられてるじゃないか……」
大破して、深雪に曳航されている天龍をみた最上は、天龍を気遣った。
天龍「すまないな、オレたちは龍星鎮守府所属の軽巡洋艦天龍と」
深雪「駆逐艦の深雪さ」
日向「ふむ、天龍と深雪か、駆逐艦1隻で巡洋艦の曳航は大変だろう」
最上「ボクが手伝うよ!」
天龍「すまないな、助かる」
日向「しかし、龍星鎮守府……、聞いたことがないな……」
深雪「ついこの間、できたばかりだからなぁ~」
最上「もしかして、本土の輸送隊の町井田中尉を助けたっていう再建途中の鎮守府かな?」
天龍「あぁ、つい先日鎮守府が完成して龍星鎮守府と名乗ったんだ」
日向「そうか、吹雪たちとも合流したい、案内を頼めるかな?」
天龍「あぁ、それは大丈夫だが、ひとつ問題があってな」
最上「何だい?」
深雪「吹雪姉さんと、暁は大破した仲間たちと先行して鎮守府に帰還中なんだけど」
天龍「さっきのル級の小隊にいた、軽巡ヘ級が戦闘中にいなくなっているんだ」
最上「それって、追撃されてる可能性があるってことかい?」
日向「まずいな……、方角はわかるか?」
深雪「龍星鎮守府はあっちの方向、吹雪姉さんたちはそっち方向へ先行している」
深雪は、現在地から北東にある鎮守府方向を指さした。
日向「私の瑞雲で偵察してみよう」
天龍「無事だと良いんだが……」
日向は、艦載機である瑞雲1個小隊を発艦させ、鳳翔たちがいる方角の偵察に向かわせたのだった。
第12話から続いている、本家『艦隊これくしょん』の1-3『製油所地帯沿岸 』をモチーフとした話もこれで3話目になりました。
当初の予定では、2話で完結するつもりだった1-3ですが、なんだかんだで倍の4話を使ってしまいそうです(笑)
題名を見て分かるとおり、先日よみうりランドで行われていた、鎮守府第二次瑞雲祭りでも大人気だったあの艦載機が登場します!!
ボクは、瑞雲祭りに参加できませんでしたが、いつかは1/1のあの機体を見たいですねぇ~(pixiv投稿時の2018年6月9日のコメントです)