華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第16話 華人小娘と紅月の艦娘

   パチパチパチパチ

 

 美鈴は、大浴場ですぐにお湯が使えるように大急ぎでまきの火を熾していた。

 

美鈴「金剛が、『1時間以内に帰るから、お風呂の準備お願いしますネー』って言ってたから、急いでまきを割ってお湯を沸かしてるけど……」

 

 美鈴は、汗だくになりながら火を熾すために、竹の筒で息を吹きかけながら火種に空気を送り込む。

 

美鈴「けがをしてる娘もいるかもしれないから、修復材の準備もしておいた方が良いかなぁ」

 

 通常の鎮守府では、艦娘用の浴場では入渠用の修復効果のある湯が使われているが、急造である龍星鎮守府では、蛇口をひねれば入渠用のお湯が出る新型の設備はまだ無く、通常の湯船に入浴剤のような物を入れて入渠用の浴槽を作るという、旧式の入渠設備であった。

 しかし、この大浴場には複数の湯船があるので、美鈴や深海棲艦からのダメージを受けていない艦娘が使用する通常の湯船と、入渠目的の艦娘が使用する湯船が用意できるので、今の所特に問題は無かった。

 

美鈴「やっぱり、今回も大きなけがをしちゃった娘もいるのかなぁ……」

 

 これまでも深海棲艦との戦闘で、深雪が重傷を負ったところを何度か見ており、心配は絶えない。

 ましてや、今回は帰還まで時間がかかっているため、激しい戦闘が予想されるので戦況がわからないというのも不安をかき立てるのである。

 

美鈴「艦娘同士が使っている、『無線機』ってやつを私も持っていたら戦闘中のみんなと会話ができるんだけどなぁ……」

 

 無線機自体の台数も2台と少ない龍星鎮守府では、今回はパトロールに出ていた深雪と雪風が1台持ち歩いており、壊れないように被弾率が極めて少ない雪風が装備していた。 もう一台は、増援部隊の旗艦である天龍が持ち出していたため、鎮守府にいる美鈴は戦況を把握できずいたのである。

 

美鈴「妖精さんに頼めば、無線機を作ったりできるのかなぁ……」

 

 鎮守府にある無線機は、以前町井田が置いていった補給物資の中にあったものであるが、脅威の技術力を持つ妖精さんたちなら、無線機を作れるかもしれないと思う美鈴であった。

 

 

 美鈴が大浴場のお湯を沸かし終えて、見張り台へ行き艦娘たちが帰還してこないか確認しようと双眼鏡をのぞき込むと、鳳翔に肩を貸して進む金剛、紺色の略帽の少女に肩を貸している雪風、深雪や白雪と同じセーラー服を着た少女に肩を貸している白雪の姿を見つけた。

 

美鈴「あっ!あそこに鳳翔さんや金剛たちが見えるわ!!」

 

 さらに、その後方を見てみると、深雪が腰に刀を差す白い和服の女性や、赤っぽいセーラー服の少女とともに、天龍を気遣いながら進んでいる様子が見えた。

 

美鈴「深雪や天龍も、一応無事みたいね」

 

 美鈴は、見慣れない艦娘と思われる少女や女性とともに、鎮守府へ帰還しようとしている艦娘たちの姿を確認し、安心する一方で負傷している艦娘の姿を見て申し訳ない気持ちで一杯になった。

 

美鈴「雪風と白雪が連れている娘たちは、きっと助けた艦娘たちだと思うけど、鳳翔さんと天龍はけががひどそうね……、助けた娘たちもけがしちゃってるし……」

 

 基本的に気の優しい美鈴にとって、仲間の傷ついた姿は心が痛むのである。

 

美鈴「私も、『気』が自由に使えるようになれば、少しはみんなと戦えるのに……」

 

 最近の美鈴は、教えを請う深雪や雪風に太極拳の型を教える傍らで、『気』を練る練習を行っている。

 この世界に来てから、通常の人間と同様になったことからか、『気』を自由に扱うことができなくなっているが、深雪と初めて出会ったとき、イ級の攻撃から深雪を救おうとした瞬間に『気』を扱えたので、完全に『気』を失ったわけでは無いと思うのであった。

 

 

 帰投する艦娘たちを出迎えるため、美鈴は海岸へ向かう。

 

 まずは、金剛、鳳翔、雪風、白雪が吹雪と暁を引き連れて海岸へ戻ってきた。

 

金剛「戦果Resultがあがったヨー!」

 

美鈴「えっ?旋回上手があがったよ?」

 

 金剛のネイティブすぎる英語に、美鈴は謎の単語を口走る。

 

鳳翔「いたた……、提督、何とか生還することが出来ました……」

 

美鈴「鳳翔さん!ひどいけがじゃないですか!!」

 

鳳翔「私よりも、この娘を早く入渠させてあげてください……」

 

 大破した鳳翔を気遣う美鈴に対し、鳳翔は暁を先に入渠させるように促す。

 

美鈴「この娘は、救助した艦娘ね……、ひどいけがじゃない……大丈夫?」

 

暁「暁はへっちゃらだから、レディーの鳳翔さんを先に……」

 

 大破しながらも、互いに気遣い先に入渠するように促し合う鳳翔と暁を見た美鈴は、2人に大浴場に入渠用の薬剤を入れて準備中だと説明する。

 

白雪「たくさん入れるから、吹雪ちゃんも入渠した方が良いよ」

 

吹雪「うん、艤装の修理もお願いします……」

 

美鈴「うわぁ、装備もボロボロ……」

 

 美鈴は、破損した吹雪の艤装を手に取り破損箇所を眺める。

 

 当然、美鈴は艤装の修理などできないので、修理は妖精さんにお願いすることになる。

 

 

 大破した鳳翔や暁たちの入渠したころ、海岸に天龍を曳航した深雪たちが帰還してきた。

 

深雪「帰ってきたぁー!」

 

最上「ここが君たちの鎮守府かー、そんなに大きくないけど良いところだね」

 

 深雪たちが海岸に上がると、鎮守府から美鈴と雪風が駆け寄ってきた。

 

美鈴「天龍!大丈夫?」

 

雪風「入渠の準備はできています!!」

 

天龍「オレ様がこんなざまじゃ、カッコつかねぇなぁ~」

 

 大破していた天龍は、深雪に肩で背負われながらも軽口をたたく。

 

美鈴「天龍も大破してるって聞いて心配してたけど、その様子なら大丈夫そうだね」

 

天龍「修理が終わったらまだ戦えるからな、オレを第一線から下げるなっての!」

 

 天龍が美鈴と話していると、日向が美鈴に近付いてきた。

 

日向「貴女がこの鎮守府の提督かな?」

 

美鈴「はい、そうですけど」

 

 急に声をかけられた、美鈴は思わず姿勢を正す。

 

美鈴「(この雰囲気、只者では無い気がするわ……)」

 

 緊張する美鈴に、日向は右手を差し出し握手を求める。

 

日向「このたびは、我が紅月鎮守府の吹雪と暁を救助していただき感謝する」

 

美鈴「こうげつ鎮守府?」

 

最上「日向さん、提督さんが緊張してるじゃないですか、まずは軽く自己紹介をしましょうよ」

 

 美鈴の微妙な警戒心を感じ取った最上が、日向に声を掛ける。

 

日向「あぁ、そう言えば名乗りもしていなかったな……」

 

日向「私は、紅月鎮守府の紅月麗美(こうげつ れみ)提督の秘書官で伊勢型戦艦2番艦の航空戦艦日向だ、お見知りおきを」

 

最上「ボクは、同じく紅月鎮守府所属の最上型重巡洋艦1番艦の航空巡洋艦最上さ、よろしくね!」

 

美鈴「私の名前は、紅美鈴!この鎮守府の提督です」

 

 美鈴と、日向たちは簡単に自己紹介と挨拶を交わした。

 

 

美鈴「ところで、『こうげつ』というのは、どういう字を書くんですか?」

 

最上「紅(くれない)に月で紅月さ、提督の名字なんだけど珍しいよね」

 

美鈴「紅い月……」

 

日向「紅い月か、紅月提督も同じ表現をするが、流行っているのか?」

 

美鈴「貴女の提督の名前は、『こうげつれみ』さんって言いましたよね……」

 

日向「そうだが、何か?」

 

美鈴「(紅い月のレミ……、まさかレミリアお嬢様が?……いや、考え過ぎかな?)」

 

最上「ウチの提督を知っているのかな?」

 

美鈴「あ、いえ……、何となく知り合いに似た名前の人がいたような気がしたもので……」

 

日向「紅月という名は珍しいと思ったが、流行っているのか?」

 

最上「日向さん、名字に流行りとかは無いと思うけど……」

 

最上「まぁ、ウチの提督って海軍内では『東洋のカリスマ』と呼ばれる人だから、聞いたことがあるのかもね」

 

美鈴「はは、何かすごそうな人ですね~」

 

 まだ見ぬ、紅月麗美提督の名前の雰囲気と、『東洋のカリスマ』という通り名から、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットを強く連想する美鈴であった。

 

 

日向「しかし、この島のには『いまだ目覚めぬ龍』が舞い降りたと聞いたが、貴女のことかな?」

 

美鈴「いまだ目覚めぬ龍?」

 

最上「日向さん、それを言ってるのはウチの提督だけだから……」

 

日向「そうなのか?」

 

最上「町井田中尉から、美鈴提督の話を聞いた麗美提督が勝手に名付けただけだから、真に受けちゃダメですって」

 

深雪「『いまだ目覚めぬ龍』か、いいなぁ美鈴、カッコいいぜぇ~」

 

天龍「『天翔ける龍』と『目覚めぬ龍』か、いいコンビになれそうじゃねぇか!」

 

美鈴「『天翔ける龍』って天龍のこと?」

 

深雪「おぉう、カッコいい……」

 

天龍「な、何だよ……、悪いかよ!!」

 

最上「麗美提督と、いい勝負のネーミングセンスだねぇ~」

 

 仲間を欠くこと無く、無事に全員生還した艦娘たちとともに、和やかな雰囲気と笑顔が島内にあふれていた。

 

 

 翌朝、無事に修理を終えた吹雪と暁は、美鈴の好意により日向たちとともに燃料・弾薬の補給を受けて紅月鎮守府へ帰還するため海岸に集まっていた。

 

美鈴「短い間だったけど、みんなに会えてよかったと思うわ」

 

日向「吹雪たちの修理だけでなく、我々にも十分な補給をしてくれたことに感謝する」

 

美鈴「助けてもらったのは、私たちも同じだし気にしないでください」

 

吹雪「艤装の修理もありがとうございました、これなら紅月鎮守府まで無事に帰れそうです!」

 

白雪「吹雪ちゃんは同型艦だから、私と深雪ちゃんの艤装の予備部品が使えたから、妖精さんもすぐに修理できたみたい」

 

深雪「吹雪姉さんも、深雪さまと一緒だと思って頑張れよな!」

 

暁「鳳翔さん、あのときはレディーとして暁を守ってくれてありがと……」

 

鳳翔「暁ちゃんも、私を守ってくれましたね。感謝しています」

 

暁「(鳳翔さん、やっぱり完璧なレディーだわ、暁もいつか鳳翔さんみたいな一人前のレディーになるんだから!)」

 

雪風「皆さん、どうかご無事で!また会いたいです!!」

 

最上「アハッ!今度は合同演習とかで会えるといいね!」

 

天龍「演習か……、そのときはオレを外すなよ!」

 

金剛「演習が終わったら、次は皆でTea Timeですネー!」

 

 龍星鎮守府の艦娘も全員集合で、日向たち紅月鎮守府の面々を見送る。

 

 愛すべき戦友たちの帰還していく姿が、水平線の彼方に消えるまで、大きく手を振る美鈴と艦娘たちであった。




 前回までの 、本家『艦隊これくしょん』の1-3『製油所地帯沿岸 』をモチーフにした話の後日談です。(時間的に、始まりは後日じゃなくて当日ですが…)

 本家には、いまだ実装されていない友軍システムですが、この作品の世界観では近隣鎮守府同士でイベント時の友軍艦隊みたいな支援攻撃や、演習が行われる感じでイメージしています。

 久しぶりの、非戦闘回なので美鈴が久しぶりに話に絡んできていますし、タイトルも『華人小娘と○○○』シリーズが復活しました!

 忘れている人(特に私自身)もいたかもしれませんが、このシリーズの主人公は華人小娘・紅美鈴ですよ!!
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