ザザァァァン
美鈴「やっぱり大きいなぁ~」
金剛「まるで動く鎮守府デスネー」
白雪「私も、この船に乗ってこの島に来ましたが、すごく立派な船でしたよ」
金剛「Wow!白雪はこんなすごい船で着任したデスカー、Princessみたいネー!」
天龍「プリンセス白雪……、白雪姫か、いいじゃねぇか!」
白雪「そ、そんな大層な者じゃありません……」
海岸まで出迎えに来ていた美鈴たちは、海岸に停泊した輸送艦を眺めながら談笑していた。
ガラガラガラガラ
輸送艦の錨が降ろされると、警護についていた艦娘数名が美鈴たちに気づいた様子で、こちらを見ていた。
雪風「あっ、あそこにいるのは暁ですよ!」
深雪「ホントだ!おぉ~い、暁ぃ~!!」
暁を発見した、深雪と雪風は大きく手を振り暁の名前を呼ぶ。
深雪たちに気がついた暁は、笑顔で手を振り返してきたが、すぐに手を下ろしてしまう。
暁「あ、あんなに大きく手を振るなんて子供みたいじゃない、暁はレディーなんだからあんな真似はしないんだから……」
最上「ん?どうしたんだい暁、友達が呼んでいるよ」
最上に声をかけられた暁は、照れくさそうな表情をしている。
最上「ボクは、みんなに挨拶してくるよ」
最上は、照れる暁を余所に大きく手を振って深雪たちに答える。
最上「おーい、みんな元気だったー?」
深雪「あっ、最上さーん!!」
雪風「最上さんも来てたんですねー!」
最上は手を振りながら、深雪たちの所へ駆けていった。
暁「あっ……、し、仕方ないわねレディーたる者、挨拶も大事よね」
暁は、最上の後をすました感じで歩いて追いかけていた。
輸送艦から、町井田中尉と紅い軍服の女性が降り、美鈴の下へ歩いて来た。
町井田「久しぶりね、美鈴提督」
美鈴「町井田さん、お久しぶりです!」
美鈴は、町井田に挨拶をした後、紅い軍服の女性に思わず目を奪われた。
ウェーブのかかった青と銀の中間のようなセミロングの髪に、紅く大きな瞳、白く透き通るような肌、その容姿はまるでレミリア・スカーレットの様であった。
美鈴「(お嬢様?いや、お嬢様にしては背が大きいような……)」
その女性は、見た感じ10代後半から20歳くらいで、美鈴と同年代くらいの様にも見えた。
町井田「紹介するわ、この方がさっき話した紅月麗美准将よ」
麗美「貴女が噂の、紅き龍ね……、なるほどいい目をしているわね」
美鈴「れ、レミリアお嬢様……?」
麗美「レミリアか……、懐かしい名を知っているのね」
町井田「レミリア?」
麗美「もしかして貴女、私の過去を知っているのかしら?」
美鈴「過去?」
麗美「そう、あれはこの世に深海棲艦が現れる前……」
麗美「私は、ヨーロッパへ留学していたのよ」
町井田「たしか、紅月准将の母方は東ヨーロッパの出身でしたね」
麗美「そう、過去にルーマニアのトランシルヴァニア地方を治めていた名家の出だと聞いているわ」
町井田「紅月准将がよく言っている、ドラキュラ伯爵の子孫というお話ですね」
麗美「可怜!公の場以外では麗美、もしくはレミィで良いって言ってるでしょ!!」
町井田「しかし、美鈴がいるし……」
麗美「女子トークなんだから、気楽にいきましょう」
町井田「わかったわよ……」
麗美「美鈴、ごめんね話が逸れたわね……」
美鈴「はぁ……」
麗美「ドラキュラ伯爵の血を色濃く受け継いでいたとされる、私の曾祖母の名がレミリアと言うのよ」
町井田「私は何度も聞かされた話ね……、しかし。なぜ美鈴は麗美の曾お婆ちゃんの名前を?」
美鈴「それは……」
話の流れや、大人びた容姿から言って、麗美は美鈴が知るレミリア・スカーレットではなさそうだが、『ドラキュラ伯爵の末裔』、『曾祖母の名がレミリア』と言う話が真実であれば、何らかのつながりがありそうな気がした。
美鈴「以前、門番として働いていたお屋敷の主の名がレミリア様と言いまして、なんとなく見た目が似ていたもので……」
麗美「あら、奇遇ね……、私も昔飼っていた犬の名前がメイリンって言うのよ……」
美鈴「い、犬ですか?」
麗美「そう、チャウチャウっていう大きな犬で、赤毛で優しくて可愛らしい番犬だったのよ」
美鈴「赤毛の番犬って……」
麗美「門番だった、赤い髪の貴女に似てるわねぇ」
町井田「麗美、犬と一緒にしたら失礼でしょ!」
麗美「あっ、ごめんなさい、悪気は無いのよ……」
美鈴「いえ、私も犬は大好きですから!!」
麗美「そうなんだ、貴女の名前を聞いた時からメイリンの事を思い出してなんか嬉しくなっちゃって!!」
町井田「麗美は小さな頃から犬が大好きで、犬とばっかり遊んでいたおかげで、友達が少なかったらしいのよ……」
麗美「そして、この髪にこの目の色だから、子供の頃から外人だって言われたりして、周りから浮いていたのよ」
町井田「この国際化の時代に、ハーフやクォーターなんか当たり前なのにね」
麗美「可怜は、そう言うの気にしないでくれるから助かるわ」
美鈴「なんか、私も麗美さんと同じような経験あるから、わかります」
麗美「その話、可怜から聞いたわ……、貴女とは良い友達になれる気がするわね」
町井田「麗美は、同じような境遇にあったと言うことと、紅美鈴という名前を聞いた途端、興味を持ったみたいで、会いたい会いたいってうるさかったのよ」
麗美「それが、たまたま遠征中に艦隊からはぐれた、ウチの暁と吹雪を助けてくれた艦娘たちの提督だというのだからね……、全くよく出来た運命よ」
町井田「すっかり話は逸れてしまったが、今回ここに来た理由は麗美を連れてきた事では無いのよ」
麗美「あぁ、そうだったわね!」
美鈴「鎮守府の視察ですか?」
町井田「個人的にそれもあるけど、本土から龍星鎮守府への増員の艦娘を連れてきたのよ」
美鈴「白雪みたいな娘ですか?」
町井田「艦娘ではあるけど、白雪みたいな実戦要員じゃ無くて鎮守府の活動をサポートする艦娘たちね」
麗美「大本営に無理言って、優秀な娘たちを連れてきたわよ!」
美鈴「サポート要員ですか?」
麗美「貴女の鎮守府には足りなかった人材たちよ!」
麗美はそう言うと、輸送艦から下りてきた2人の女性たちに手招きをする。
麗美「貴方たち、こっちに来なさい!」
麗美が声をかけた女性たちは、2人ともセーラー服に袴のようなスカートという服装で、1人は黒いロングヘアーに緑色のヘアバンドを着け、眼鏡をかけた知的そうな女性と、もう1人は桃色のロングヘヤーを赤いリボンで束ねた活発そうな女性であった。
町井田「黒髪の艦娘が通信手の大淀、もう1人が整備士の明石だ」
町井田の紹介を受けると、大淀と呼ばれた黒髪の艦娘が美鈴に頭を下げた。
大淀「軽巡大淀です、どうぞよろしくお願いいたします」
続けて、明石と呼ばれた桃色の髪の艦娘も美鈴に頭を下げた。
明石「工作艦の明石です、艤装の修理や艦娘のケアはお任せください!」
大淀と明石の挨拶を受けた美鈴は、2人に握手を求めながら挨拶をする。
美鈴「私は紅美鈴です!大淀さん、明石さんよろしくお願いしますね!!」
2人は順番に美鈴と握手をすると、なんだか安心した表情を見せた。
町井田「この2人は、艦娘だけど戦闘用の艤装の開発が間に合っていないから、戦闘には出せないが、サポートとしては一流だからと麗美が以前から目をかけていたんだ」
麗美「本当は、ウチで引き抜こうと思ったんだけど、この鎮守府こそ通信手や整備士が必要でしょ?」
美鈴「確かに、今までは妖精さんに頼りっぱなしでしたし……」
麗美「そうよ、来るときも可怜が無線を入れたのに返事も無くて、妖精さんからモールス信号で返信された時はビックリしたわよ!」
美鈴「あの時は、みんな出払ってて留守番をしてくれていた妖精さんが……」
町井田「今度からは、大淀がいるから大丈夫ね」
大淀「通信や艦隊運営は、お任せください」
大淀は、あらためて美鈴に頭を下げる。
麗美「それと、暁たちから聞くと、ここの艦娘に練度が高いのに改装や改造されずに、実力が発揮出来ていない娘もいるらしいじゃない」
美鈴「改装?」
町井田「艤装を改装して精度を上げたり、練度が高まった艦娘の艤装に改造を施して能力の底上げをすることが出来るのよ」
美鈴「そんなことが出来るのですか?」
町井田「根本的に艤装を改造するから、使い勝手が変わって一時的に熟練度が下がるけど、基本性能が向上するから、使いこなせば艦娘の能力向上を図れるわ」
麗美「艦娘によっては、ウチの日向や最上みたいに航空戦艦や航空巡洋艦へクラスチェンジできる娘もいるのよ」
美鈴「そうなんですか!?」
明石「ちょっと、ここの娘を見てましたが、何人か改造できる練度になってそうな娘もいましたね~」
麗美「改造を有効に使えば、艦娘たちの潜在能力が上がって、眠っていた真の力を目覚めさせることが出来るのよ!!」
美鈴「なんか、格好いいですね!」
麗美「艦娘の眠りし真の力を解放させることが、この穢れし世界を救う鎮魂歌(レクイエム)となるのよ!」
町井田「(また、麗美の厨二病が出始めてきたわね……)」
その日の晩、大淀と明石の歓迎会を兼ね、麗美と町井田、輸送艦の護衛についていた紅月鎮守府の艦娘を招いた夕食会が開かれた。
輸送艦の護衛についていた艦娘は、紅月鎮守府の秘書艦である日向、すでに顔見知りである最上に暁、暁と同じ服装の少女が3名で、1人は銀色のロングヘアーの冷静そうな少女と、茶色のボブヘアーの活発そうな少女、薄茶色の髪を後ろでアップヘアーにして束ねた気弱そうな少女であった。
大淀「龍星鎮守府の艦娘の方々は、初めましてですね。私は軽巡洋艦の大淀です」
大淀「本日付で龍星鎮守府に着任し、艦隊運営や、本土との連絡等のサポートをさせていただきます。皆さん、よろしくお願いいたしますね」
天龍「オレと同じ軽巡か、ライバル登場だな」
美鈴「訳あって、大淀さんは艤装の開発が間に合っていないようなので、鎮守府のサポートをしてもらうことになったの」
鳳翔「そうなのですか、でも真面目そうな方で頼りになりそうですね」
白雪「大将タイプの天龍さんと違い、委員長タイプな感じですね」
明石「私は工作艦の明石です!艤装の整備や改装が得意よ。みんなよろしくね!」
金剛「Wow!整備が得意な艦娘なんて珍しいデスネー!」
町井田「彼女がいてくれれば、練度が上がった艦娘の艤装を改造することが出来るのよ」
天龍「それは凄いな!オレの世界水準を軽く超えた装備がさらにパワーアップできるのかよ!!」
白雪「(昔の世界水準を超えた艤装が、少しでも近代化改装出来たら良いですね……)」
大淀と明石が自己紹介を終えると、続けて麗美が前に出てきた。
麗美「今日は、お招きいただいてありがとう。私は紅月鎮守府提督の紅月麗美よ」
深雪「あの人が、『東洋のカリスマ』紅月麗美提督か……」
雪風「綺麗な人ですね」
麗美「この鎮守府の皆には、すでにウチの娘たちが世話になっているから、町井田中尉の輸送艦の護衛を兼ねて、お礼を言うためにお邪魔させていただいたわ」
鳳翔「わざわざお礼に来るなんて、なんだか義理堅くて良い方みたいですね」
天龍「軍の幹部なのにわざわざ自分から出向いてくるとはな、気に入ったぜ!」
金剛「提督と同じくらいの歳なのに、将軍なんて凄いデスネー!」
麗美「今日は、感謝と友好の印に、艦娘に人気の間宮のスイーツと最高級の紅茶を準備しているから、食後にみんなでいただきましょう」
白雪「間宮さんのスイーツ!?」
金剛「最高級の紅茶!?」
麗美の手土産に、白雪と金剛が食い気味に反応した。
麗美の挨拶が終了した後、暁がまだ面識の無い艦娘3人を引き連れて美鈴たちの下にやってきた。
暁「美鈴提督、ごきげんようです!」
美鈴「暁ちゃんも元気そうで何よりだよ」
美鈴は、思わず暁の頭をなでる。
暁「頭をなでなでしないでよ!もう子供じゃなくて一人前のレディーなのよ!!」
暁が、顔を真っ赤にしながら美鈴にやめるように訴えるが、言葉とは裏腹に嫌そうな感じは無い。
鳳翔「暁さん、お久しぶりです。そちらの皆さんは暁さんのご姉妹ですか?」
暁「あっ、鳳翔さん……」
鳳翔に声をかけられた暁は、更に顔を真っ赤にして動きが止まった。
銀髪の少女「暁型2番艦の響だよ、姉の暁がお世話になったみたいだね、スパスイーバ」
ボブヘアーの少女「暁型3番艦の雷よ、貴女が鳳翔さんね、暁がいつも自慢げに話してるわ!」
鳳翔「暁さんが?」
雷「最高のレディーがいるって、いつも鳳翔さんのこと話しているのよ!」
暁「雷!余計なこと言わないでよ!!」
暁は、雷を黙らせようと詰め寄る。
アップヘアーの少女「暁ちゃん、雷ちゃん、喧嘩はダメなのですー!」
響「暁たちは響が止めるから、電はちゃんと挨拶をしなよ」
アップヘアーの少女「はわわっ、自己紹介がまだだったのですー」
アップヘアーの少女「暁型4番艦の電です、皆さんよろしくなのです!」
深雪「暁型ってことは、みんな特Ⅲ型か……妹みたいなものだな」
白雪「なんだかみんな、可愛いわね」
美鈴が作った中華料理、鳳翔の和食、金剛が作った英国風カレーなどが振る舞われて、龍星鎮守府の食堂で和やかな歓迎会が始まった……
最近、色々あって更新が遅れていましたがなんとか18話が完成しました。
今回も、戦闘は無しで会話メインの話となっていますが、しばらくは戦闘は無いかもしれません。
そろそろ過去編を書いて、美鈴が主体となるストーリーになっていく予定ですが、予定は未定なのでまだわかりませんね(笑)