コンコン
龍星鎮守府内にある医務室のドアを誰かがノックする。
明石「どーぞ」
医務室にいた明石が返事をすると、ガチャリと医務室のドアが開かれる。
明石「紅月提督でしたか、ウチの提督はまだ寝たままですよ」
医務室のベットで横たわる美鈴の姿を見て、麗美は心配そうな表情をしている。
明石「まさか鎮守府に着任して早々の仕事が、提督の修理だとは思いませんでしたよ」
麗美「やっぱり怪我は酷いの?」
明石「怪我ですか?特に怪我は無いですよ」
明石の飄々とした返事に、麗美は怪訝そうな表情を見せる。
麗美「では、提督の修理というのはどういうことなの?」
明石「あぁ、まだ皆さんに説明していませんでしたね」
明石はそう言うと、ベットに横たわる美鈴に近寄る。
明石「紅月提督は、今まで何かスポーツとかをしたことはありますか?」
麗美「スポーツ?部活動とかで本格的にやったりしたことは無いけど……」
明石「そうですか……、では、普段あまり運動していないなら、急に運動したりして筋肉痛になったりしたことはありますか?」
麗美「それならあるわね、学生の頃に誘われてゴルフに行ったときに一日かけて18ホール回った時は、300以上も叩いちゃって全身筋肉痛よ……」
明石「300ですか!? コース平均16打以上?」
麗美「母の実家のゴルフ場を貸し切ったのよ……、私は、最後まで投げ出さずにやりきったのよ!」
明石「(紅月提督は運動苦手なのかなぁ?)」
麗美「一応最高スコアは65だけど、深海棲艦が現れてからはやっていないわねぇ……」
明石「65ってトッププロレベルでは?」
麗美「まぁ、ゴルフ歴は3ヶ月くらいだし……、って美鈴の話はどうなったのかしら?」
明石「あぁー、そうでした……」
明石は、麗美の思わぬゴルフの話に夢中になりかけていたが、本題に戻ることにした。
明石「紅月提督も経験あるでしょうが、急に激しい運動をすると疲労が溜まったり、筋肉痛になったりしてしまいますよね」
麗美「それは聞いたわね」
明石「特に、自分の体の限界を超えるような運動をしてしまったりすると、しばらく動けなくなったりして大変ですよね」
麗美「それはそうね……」
明石「町井田中尉の輸送艦ミディアの直上で、深海棲艦の爆撃機が急降下爆撃を仕掛けようとしたとき、ウチの提督は『気』とかって言う不思議な力を使って紅月提督たちを救いましたよね」
麗美「『気』がどんなモノかよくわからないけど、町井田中尉や深雪は『気』の力だって言っていたわね」
明石「私の専門は人間じゃ無いので、正確なことはわからないですが、ウチの提督の『気』と言う力はものすごくエネルギー消費が多いんですよ」
麗美「『能力』と『器』のバランスが悪いというのかしら?」
明石「う~ん、まぁそういった所でしょうかね~」
麗美「艦娘で言うのなら、駆逐艦が戦艦の艤装を装備して46cm三連装砲を撃つみたいな感じかしら?」
明石「あぁ、それが的確な表現ですね!普通の人間の体には、あの『気』の力はオーバースペック過ぎるんです!」
麗美「美鈴には、これ以上『気』を使わせるべきでは無いわね……」
麗美が、腕を組んで思案していると、明石が言葉を続ける。
明石「『気』の力自体は、昔から自然界にあるモノと考えられてましたし、特に人間に害する力でも無いんですけどねぇ~」
麗美「それはどういうことかしら?」
明石「ウチの提督が、『気』をもっと上手くコントロール出来るようになるか、何らかの道具を使って『気』を制御出来れば良いんだと思いますよ」
麗美「コントロール……、制御する道具……」
明石「後者に関しては、技術者としての意見で人間に当てはめるモノでは無いかもしれませんが……」
麗美「とにかく、美鈴は私の親友なのよ、無茶はさせないで欲しいわね……」
明石「私だって、ウチの提督のことはまだよく知りませんが、好意的には感じてますから早く元気になって欲しいですよ」
医務室内で麗美と明石は、美鈴の『気』の力について自分たちなりの解釈を話していたが、美鈴が目を覚ますことは無かった。
医務室の前では、龍星鎮守府の艦娘たちが美鈴を心配して集まっていた。
金剛「提督が心配デース!お見舞いくらいさせて欲しいデース!」
深雪「大きな怪我は無いんだろう?顔くらい見せてくれよ!」
医務室のドアの前で制止する町井田に、艦娘たちが詰め寄っている。
町井田「美鈴は、命には別状は無い!今は麗美と明石がミディアの医療スタッフと容態を確認中だから面会は後からにするんだ!」
金剛「じゃあ、私も医療スタッフとして部屋に入りマース!」
町井田「ダメだ、空襲がさっきの一度だけとは限らないんだぞ!この鎮守府の主力のお前がいなくてどうするんだ!!」
金剛「うぅ~、でも、そうですよネ~」
天龍「確かにそうだけど、みんな美鈴が目を覚ましていないって聞いて心配しているんだ、どんな状況かだけでも教えてくれよ」
鳳翔「あんな不思議な力を使っていたんですから、相当お体に負担がかかっているのでは無いか心配なんです……」
町井田「心配なのはわかるが……、私だって心配だが……」
艦娘たちに食い下がられて、町井田が困り始めた時、医務室のドアがガチャリと開き、麗美が出てきた。
麗美「貴方たち、もう少し静かに出来ないの?」
白雪「紅月准将、提督は大丈夫なのでしょうか?」
雪風「しれぇは目を覚ましましたか?」
医務室から出てきた瞬間に、龍星鎮守府の艦娘たちから質問攻めにあった麗美は、どれだけ美鈴が艦娘たちに好かれているかが理解出来た。
麗美「安心しなさい、美鈴は疲れて寝ているだけよ」
深雪「本当かよ?」
麗美「私の言うことが信用出来ないかしら?」
金剛「No!紅月提督の目は嘘をついてる目じゃないデスネー」
麗美「信じてもらえるかしら?」
雪風「しれぇは、本当に寝ているだけですか?」
麗美「皆も見たでしょうけど、美鈴は怪我とかしていたかしら?」
鳳翔「深雪さんが海岸に運んできたときも、皆で医務室に運び込んだ時も、怪我は無さそうでしたね」
麗美「そうね、美鈴のただ私たちを助けるために目一杯頑張ってくれただけ、それで疲れ切って寝ているだけよ」
天龍「確かに、呼吸や脈も安定していたしなぁ……」
麗美「だから、こんなところで騒がしくして美鈴の睡眠の妨害をしちゃダメなのよ」
深雪「疲れて寝てるなら、ぐっすり休ませてあげないとな」
麗美「わかったなら、貴方たちも休めるときには休まないとダメよ、少し食堂で休憩するわよ」
そう言うと、麗美は食堂へ向かって歩いて行く。
麗美「まだ、私の持ってきた甘味があるわ、お茶でも飲みながら食べるわよ」
麗美は、龍星鎮守府の艦娘たちに声をかけると1人で食堂に向かって行くが、艦娘たちはどうして良いかわからずに立ち尽くしている。
金剛「(きっと、紅月提督は私たちを励ましてくれてマース)」
金剛「(ここは私も、お姉さんとして皆を元気づけなきゃダメな時デース)」
麗美の気遣いに気がついた金剛は、麗美の言葉を信じて皆を鼓舞しようと考えた。
金剛「Wow!また間宮の甘味があったんデスネー!みなさーんTea Timeは大事にしないとネー!!」
金剛は、明るく振る舞い麗美のお茶会に参加しようと龍星鎮守府の艦娘たちを引き連れて麗美についてきた。
麗美「(戦艦金剛……、明るくリーダシップをとれる彼女の存在は、この鎮守府にとって大きいわね)」
麗美は、龍星鎮守府の艦娘たちを引き連れて食堂でのティータイムに興じていた。
金剛「う~ん、やっぱり紅月提督が持ってきた紅茶は、すごく美味しいデース!」
麗美「ふふっ、本当は帰りに飲む分の茶葉だったのだけど、このままじゃ帰れないし皆に飲んでもらおうと思ったのよ」
深雪「そうだったのか、ありがとうな」
深雪は、ガツガツとあんみつを食べながら麗美にお礼を言う。
天龍「甘いものは、疲労回復に良いと言うしチビたちも嬉しそうに食べてるし、ありがたいな」
深雪に負けじと、ガツガツとあんみつを食べながら天龍も麗美に声をかける。
雪風「ははは、天龍さんが一番嬉しそうに食べてます!」
天龍「何だって!お、オレはガキじゃねえんだからおやつに夢中になったりは……」
鳳翔「でも、間宮のあんみつは女子に人気と聞きますし、美味しいですね」
天龍「ま、まぁ、美味いものは美味いんだ!」
白雪「天龍さんは甘いものが好き……メモメモ」
天龍「白雪!へ、変なことをメモるな!!」
麗美は、龍星鎮守府のやりとりを見ながら安心した表情で微笑んでいた。
麗美「(メーリンが目を覚まさなくて、ここの子たちの士気が心配だったけど、元気になったみたいだしなんとかなりそうね……)」
金剛「(みんなの士気の低下が心配でしたが、紅月提督の計らいでなんとか皆元気になってくれまシタ……、やっぱり紅月提督はやり手の指揮官デスネ)」
金剛は、麗美のティーカップに紅茶を注ぎながら『東洋のカリスマ』紅月麗美を尊敬のまなざしで見ていた。
大淀「はい、こちら龍星鎮守府です」
麗美たちが食堂で歓談している時、提督室に配備された無線機に通信が入った。
女性の声「こちらは紅月鎮守府の加賀よ、紅月提督はそちらにいらっしゃいますか」
大淀「はい、鎮守府内にはいらっしゃいますがお呼びしますか?」
加賀「そう、この時間だとお茶をしていると思うけど、緊急の連絡があるので頼めるかしら?」
大淀「呼び出ししてみますので、少しお待ちくださいね」
大淀は、一旦通信を切ると麗美がいる食堂へ向かった。
大淀が食堂に着くと、ちょうどティータイムを終えた一同が後片付けを行っていた。
大淀「紅月提督、よろしいでしょうか?」
麗美「あら、何かしら?」
大淀「紅月鎮守府の加賀さんから、紅月提督に連絡があると無線連絡がありました」
麗美「ふむ、今回の件に関することかしら……、すぐ行くわ」
大淀「ありがとうございます」
鳳翔「後は、私たちで片付けておきますね」
麗美「助かるわ、ありがとう」
麗美は、食堂の後片付けを鳳翔たちに任せると、大淀に案内され提督室へ向かう。
麗美「(急なことで、特に指示は出せてなかったけど、あの子たちなら何か情報をキャッチしてくれているはず……)」
美鈴「うぅ……」
医務室で寝ている美鈴が、呻くように声を漏らす。
明石「提督、気がついたのかしら」
美鈴「ダメだ……、また飛行機が攻めてくる……」
美鈴は苦しそうに寝言を言っている。
明石「どうしよう、うなされているみたいだけど……」
美鈴「うぅ……、そっちからだけじゃない……、後ろからも……」
美鈴は、寝汗が酷かったので、明石はタオルで体を拭き取ってあげることにした。
明石「大丈夫ですよー、紅月提督も残ってくれてますし、今は安心してお休みしてて下さいねー」
明石は、うなされている美鈴の額の汗を拭き取りながら声をかける。
しばらくすると、美鈴は再び静かに寝息を立てながら眠りについた。
明石「悪い夢でも見ているのか、何かの危険を察知しているのか……」
明石「一応、報告しておいた方が良いかも……」
明石は、美鈴がうなされながら語った寝言について、医務室の外で待機していた町井田に報告することにした。
その頃、麗美と大淀は龍星鎮守府の提督室にたどり着き、新しく配備された無線機で紅月鎮守府を呼び出した。
吹雪「こ、こちら紅月鎮守府です!」
麗美「吹雪ね、私よ」
吹雪「し、司令官!少々お待ちください加賀さんをお呼びします!」
麗美「頼んだわね」
麗美が無線機の前で待っていると、少し呼吸を乱した加賀が無線に出た。
加賀「はぁはぁ、提督、すみませんお待たせしました」
麗美「どうしたの、あなたが息を乱しているなんて」
加賀「実は、遠征中の伊勢からヲ級数体を含む深海棲艦の空母機動部隊が接近しているとの報告があり、瑞鶴や龍壌へ鎮守府周辺の索敵を指示していたのですが……」
麗美「深海棲艦の空母機動部隊……」
加賀「紅月鎮守府はまだ無事ですが、周辺鎮守府で深海棲艦の航空部隊による攻撃を受けたとの情報が入っていました」
麗美「やはりね、この龍星鎮守府もヲ級よるものと思われる、深海棲艦の航空部隊約80機の空襲があったのよ」
加賀「なんですって、提督はご無事ですか?」
麗美「龍星鎮守府の紅美鈴提督のおかげで、大きな損害は無かったわ」
加賀「そうでしたか……」
麗美「大本営からは何か指示は来ているかしら?」
加賀「はい、この海域全体の鎮守府へこれより発布させる予定の指示として『敵空母部隊を撃沈せよ』とのことです」
麗美「なるほどね、私もそちらに戻る必要がありそうね……」
加賀「しかし、深海棲艦の空母機動部隊が複数確認されていますし、日向や最上はともかく訓練中の第六駆逐隊だけの戦力では、町井田中尉の輸送艦を護衛しながらの帰還は厳しいのでは?」
麗美「そうね、加賀の判断で第二艦隊を編成してこちらに派遣してもらえないかしら?」
加賀「航空部隊の運用が必要ですね……、急ぎ手配して救援に向かいます」
麗美「頼んだわね」
麗美は、通信を終えると大淀に、町井田、日向、金剛、鳳翔の4名を提督室へ呼び出すように指示を出す。
麗美「さぁ、龍が目覚めるまでは私がここを守ってみせるわよ!!」
今回から、本家『艦隊これくしょん』の1-4『南西諸島防衛線』をモチーフとしたストーリーが開始されそうな気がします。
まぁ、イベントでも無いのに深海棲艦の空襲があるとかなかなかな展開ですが、友軍部隊もいるのでしょうから良いのでは無いかなと自己解決しています。
本家『艦隊これくしょん』も予定では間もなくFlash版が終了しHTML5版の第二期がスタート予定であったり、友軍艦隊が実装されるとの噂もあったりと気になる状況ですね。
私は現在『柱島泊地』所属ですが、『佐世保鎮守府』へ出した異動願はどうなるのかなぁと気になる毎日です(笑)
追記
平成30年8月1日の人事異動で『佐世保鎮守府』へ異動となりました!!