金剛「お呼びと言われてやって来ましター!」
鳳翔「お呼びでしょうか?」
町井田「この顔ぶれ……、作戦会議かしら?」
日向「……まぁ、そうなるな」
龍星鎮守府の会議室に、麗美が招集を指示した町井田、日向、金剛、鳳翔が集まっていた。
麗美「皆、集まったようね……」
会議室の奥には紅月麗美が椅子に座って待機していた。
金剛「紅月提督、ご用ですカ?」
麗美「皆に集まってもらったのは、他では無いわ」
麗美はそう言うと立ち上がり、会議室の奥に進んで行く。
町井田「このタイミングでの招集となると、何らかの作戦会議でしょうか?」
鳳翔「皆さんお呼びしてきましょうか?」
麗美「ここに来てもらったメンバーは、私的に選抜させてもらったわ」
日向「部隊の隊長級と言うところかな?」
金剛「チームリーダーですカ」
麗美は、会議室の最前まで進むと手を叩いた。
麗美「大淀、例のモノを持ってきて」
麗美の合図と共に、大淀が会議室にホワイトボードを押しながら入ってくる。
大淀「はい、失礼します」
大淀は、ホワイトボードを麗美の隣まで運んでくるとそのままホワイトボードの横で待機する。
大淀が運んできたホワイトボードには、手書きで丁寧に書き込まれた龍星鎮守府周辺の海図が描かれていた。
麗美「時間が無くて、ちゃんとした図面を用意出来なくて大急ぎで描いたから、わかりにくかったらごめんなさいね」
麗美は、ホワイトボードに描かれた手書きの海図について一言詫びると、招集したメンバーたちをホワイトボード前に集まるように促した。
金剛「これは、鎮守府周辺のMAPですネー」
鳳翔「すごい、こんなに正確な海図を手書きで描かれたのですか?」
金剛と鳳翔は、麗美が描いた海図を見て感心していると、麗美は不思議そうに小首をかしげる。
町井田「紅月准将は、昔から海図を描くのが得意なんだ」
鳳翔「絵としてもお上手ですが、詳しい地形や海域も把握されているようで驚きました」
日向「ウチの提督は、伊達にこの若さで将軍になった訳じゃ無いのさ」
麗美たちが、会議室で作戦会議を行っているころ、残りの龍星鎮守府の艦娘たちは明石の依頼で、鎮守府周辺に倉庫に保管されていた艦娘用の機銃や対空砲を設置していた。
明石「皆さん、手伝ってもらってありがとうございます!」
深雪「仲間だろ、お礼なんか良いって良いって!」
白雪「しかし、予備の艤装を並べてどうするのですか?」
明石「そ、それは……」
白雪の質問に、明石が口籠もると、天龍が察した表情で口を挟んだ。
天龍「町井田中尉が言ってた、空襲に対する備えだろ?」
明石「う……、そうです」
雪風「備えなら、雪風たちが艤装を装備して、ずっと海上警備をしていればどうでしょうか?」
天龍「オレたちが警戒するのは当然だ!だけど明石がやっているのは万が一オレたちが突破された時の備えだろ?」
深雪「突破された時の備え?」
天龍に話を振られると、明石は少し青ざめた表情をしながらうなずいた。
明石「はい……、私と大淀はメインの艤装がまだ整備中で海上には出れませんが、陸上で対空支援をするくらいなら出来ると思って用意しているんです」
天龍「地上で、固定砲台として鎮守府を防衛しようって言うことなんだな?」
明石「はい、私は戦闘向きの艦娘じゃ無いんで砲戦は苦手ですが……」
深雪「そっか、明石のためにも島の手前で敵航空部隊をやっつけないとな」
明石「あはは……、出来ればそれでお願いします」
白雪「機銃とか、町井田中尉のミディアに搭載して使ってもらったりは出来ないんですか?」
明石「使えることは使えるだろうけど、艦娘の艤装用だからサイズも小さいし、人間が使っても本来の性能は発揮出来ないんですよ」
天龍「聞いたかとがあるな、確か人間が使っても拳銃以下くらいの性能になって、深海棲艦には全然効果無いんだったな」
明石「はい、深海棲艦の艦載機相手なら通常兵器もある程度有効ですが、人間がわざわざ艦娘用の重い艤装を使うよりも、人間用のライフルでも使った方がよっぽど効率が良いんですよ」
雪風「しれぇも、前に艤装を試し打ちしてましたが、素手の方が強そうでした!」
明石「素手の方が強いって、何者ですか?」
深雪「美鈴は拳法の達人だから、鉄砲を撃つよりも格闘戦の方が強そうだな」
天龍「この前、剣術の訓練に付き合ってもらったときも、変わった動きだったけどなかなか強かったぜ!」
明石「人間の提督が、艦娘と一緒に剣の訓練ですか?」
鳳翔「私も前に弓術の訓練をしていたときに、提督が来られて参加してましたが、弓の腕前もなかなかでしたよ」
白雪「体力作りのランニングや、短距離走も一緒にやってくれますが、スタミナもスピードも本気を出されると勝てないですね」
明石「剣術も弓術も出来て、艦娘よりも身体能力の高い人間なんて……」
明石は、艦娘たちから聞いた美鈴の話を聞いて驚きを隠せない様子であった。
深雪「確かに美鈴は凄いよな、スタイルも金剛さん並みに良いし、料理も鳳翔さん並みに上手いし!」
天龍「人間にしておくには惜しいってヤツだな!」
天龍たちは、美鈴の回復を待ち望みながら空襲に備えた準備を続けていた。
金剛「そんな!深海棲艦がそんな大規模に動いているのですカ!?」
会議室内に、金剛の悲鳴のような声が響き渡る。
麗美「一年前に日本海軍が行った大反攻作戦以降は、この海域にこれほどの規模の深海棲艦が出現した事は無かったのだけどね」
町井田「ヲ級からの空襲を受けた鎮守府も、この龍星鎮守府以外にもあると言うことか……」
麗美「ウチの鎮守府には、優秀な基地航空隊や空母艦娘たちがいるから今のところ被害は無いみたいだけど、本土の大本営もこの状況を無視出来ないみたいで、『敵航空部隊を撃沈せよ』との軍令が下される予定なのよ」
町井田「なるほど、私の所にはまだ詳しい指令は来ていないけど、将軍クラスには事前に通達されるんだな……」
鳳翔「しかし、正規空母のヲ級が10体以上、大型戦艦のル級も同程度予想される戦力なんて……」
麗美「この海域の各鎮守府の連携が重要になってくる作戦ね」
町井田「この海域を統括しているのは……」
麗美「そう、紅月鎮守府の紅月麗美なのよ……」
金剛「と言うことは、紅月提督は自分の鎮守府に帰らなければならないのですネ」
麗美「そう、周辺鎮守府の指揮を執るためにもうすぐ私は戻らなければならない……」
麗美は、言葉を一度止めてホワイトボードに凸型の印を多数書き込む。
麗美「加賀からの情報だと、すでに龍星鎮守府周辺にも多数の深海棲艦の艦隊が確認されているの」
麗美が書き込んだ深海棲艦の艦隊は、龍星鎮守府の北東側に展開されていた。
日向「これは、まるで我々が鎮守府に帰還するのを妨害するような位置に艦隊がいるな……」
麗美「そう、私たちが鎮守府に帰還するためにはこの艦隊を叩かなければならないの、敵の規模はおそらく、ヲ級やル級が4体以上、その他駆逐艦や巡洋艦クラスが約20体と言うところかしら」
日向「私と最上、それと第六駆逐隊だけではなかなか苦しいな……」
金剛「大丈夫!私たちも手伝いマース!」
麗美たちのやりとりを聞いていた金剛は、率先して援軍を申し出る。
鳳翔「空襲の原因のヲ級がそこにいるなら、打って出て撃破することが鎮守府や休憩中の提督のためになるでしょうし、私も行くべきかと思います!」
麗美「たしかに、それは魅力的な提案ではあるけど、貴方たちには他にやってもらうことがあるわ」
麗美は、そう言うとホワイトボードの中心に描かれた龍星鎮守府が所在する島の南西方向からの矢印を描いた。
町井田「これは!?」
麗美「今朝の空襲で、敵航空機が最初に発見されたのは南西方向……」
日向「我々が向かいたい、紅月鎮守府とは正反対の方角だな……」
鳳翔「風向きを考えたとしても、わざわざ島の反対側まで向かうというのも妙な話ですね……」
麗美「美鈴提督の気になる寝言について、町井田中尉が明石から報告を受けているのよ」
町井田「明石の報告によると、美鈴提督はうなされながら『ダメだ……、また飛行機が攻めてくる……、そっちからだけじゃない……、後ろからも……』と言っていたようだ」
金剛「提督が、私たちに何かを教えてくれているですカ?」
麗美「美鈴提督は、予言者やエスパーじゃないとは思うけど、今朝のあの力を見せられたら、信じてみたくならないかしら?」
麗美は、そう言うとホワイトボードに描かれた龍星鎮守府の南東側に複数の凸型の印を描き込んだ。
麗美「深海棲艦たちは、以前と比べて計画的な行動をとることが多い気がするの」
町井田「陽動、伏兵、奇襲……、確かに戦略的な行動をとることが増えてきていますね」
麗美「今朝の空襲にしても、現時点で紅月鎮守府のある北東方向で大規模な部隊展開をしているのも、敵の戦略行動と見ると言うのが私の考えなのだけど、皆はどう思うかしら?」
町井田「確かに、紅月提督の言うとおり、今朝の空襲に失敗した敵が、今度は北東側に我々を引きつけ、龍星鎮守府へ第二次攻撃を仕掛けるというのが妥当な考えでしょうか?」
鳳翔「しかし、その作戦もある意味定石通りではないでしょうか?」
金剛「朝の空襲も、北東側の行動もフェイントかもしれないデス!」
日向「と、なると本命は一体何なんだ?」
麗美の説明を聞いて、金剛や鳳翔は自分たちの考えを発言していくのを見ながら麗美は満足そうに微笑んでいる。
金剛「紅月提督、なんだかスマイルになってるけど、どうしましたカ?」
麗美「ふふふ、私の目に狂いは無かったわ……」
金剛に声をかけられた麗美は、ニヤリと笑みを浮かべながら、赤と緑のマジックを取り出してホワイトボードに次々と凸型の印を描き込んでいく。
麗美「私も、鳳翔や金剛が考えているように敵は第三次攻撃まであると予想しているの」
町井田「ずいぶん用意周到だな……」
麗美「敵は、おそらく紅月鎮守府へ帰還しようとする私たちをおびき出すために大規模な艦隊を北東側に配置しているわ」
麗美はそう言うと、龍星鎮守府の周りに描いた赤色の凸型を7個北東側の海域に進めるように矢印を引く。
麗美「まずは、日向を中心に最上、第六駆逐隊と町井田中尉のミディアは私たちが紅月鎮守府へ向かうように装って北東に向かって欲しいの」
町井田「紅月提督はミディアに同乗しないのですか?」
麗美「そうね、私はここに残るけど町井田中尉にはあたかもミディアに私が乗艦しているように装ってもらうことになるわ」
麗美は龍星鎮守府の南西方向を中心に、緑色のマジックで半円を描く。
麗美「日向たちが出撃した後に、鳳翔にはこの方角に艦載機を飛ばして索敵してもらいたいの」
鳳翔「今朝、空襲を仕掛けてきたヲ級を探すのですね?」
麗美「そう、おそらくまだこの海域にいるはずだから、鳳翔が敵艦隊を発見したらすぐに金剛は天龍や駆逐隊と一緒にこの艦隊の殲滅に向かって欲しいの」
金剛「Wow!責任重大ですネー!!」
鳳翔「私は、鎮守府の防衛でしょうか?」
麗美は更に、北東に向かった凸型のうち5個を龍星鎮守府方向へ矢印を引いて移動させる。
麗美「鳳翔には、鎮守府周辺の索敵と防衛をお願いするけど、敵の規模もわからないから、ここは町井田中尉と第六駆逐隊には、一度龍星鎮守府へ戻ってきてもらうわ」
町井田「大艦隊を、日向と最上だけで相手させるのですか!?」
麗美「大丈夫、すでに紅月鎮守府の加賀に援軍として第二艦隊を向けるように指示しているから、町井田中尉たちが転進するころには合流出来るはずよ」
鳳翔「金剛さんたちの部隊は、空母相手に航空戦力も無しに大丈夫でしょうか?」
麗美「そこは、私も気がかりなのだけど……」
金剛「見せていただいた資料によると、紅月鎮守府の前線航空基地というのが龍星鎮守府のそばにあったようナ……」
麗美「ふふふ、この短時間でよくそこまで気がついたわね……」
町井田「基地航空部隊の支援が可能なのか?」
麗美「そこには以前から、伊勢たちが航空基地建設を行っていて先日完成したばかりなのよ」
麗美は、龍星鎮守府から北西側の地点に描かれた小島に赤い丸を描き込む。
麗美「新設の航空基地だけど、ここにはウチの優秀な航空隊長を配置しているのよ」
町井田「紅月鎮守府の航空隊長と言ったら、あの元航空自衛隊の女パイロットか?」
麗美「あの島からなら、龍星鎮守府も金剛隊も支援に迎えるわ!」
鳳翔「さすが、日本で五指に入ると言われる紅月鎮守府ですね」
金剛「紅月提督が仲間で良かったデース!!」
金剛たちが麗美の隙の無い作戦に賛辞を送るが、麗美は表情を崩すこと無く横に首を振って呟く。
麗美「でも、戦場に絶対はないのよ……」
麗美の重い言葉に、金剛たちの表情も硬くなる……
麗美「いつ、何が起こるかわからないのが戦場……、でもここにいる皆は冷静な状況判断と柔軟な指揮が執れると判断してここに招集したの」
麗美は、一人一人に近寄って声をかけてゆく。
麗美「町井田中尉は、まだ訓練中の第六駆逐隊の4人を率いて鳳翔のサポートをして欲しい」
町井田「了解しました!」
町井田は姿勢を正し、麗美に敬礼をする。
麗美「日向は、最上と2人で大変だと思うけど敵の艦隊を足止めして、増援が来たらできるだけ速やかに殲滅して龍星鎮守府の援護に回って欲しい」
日向「……まぁ、そうなるな」
日向は、腕を組んだまま静かにうなずく。
麗美「金剛と鳳翔は、本来私に指揮権は無いと思うけど、私も友人の美鈴提督を守るために全力を尽くすから、なんとか力を貸して欲しい」
鳳翔「お任せ下さい!」
鳳翔は、まっすぐに麗美を見つめてお辞儀をする。
金剛「ワタシは、一つだけ条件がありマース!」
金剛の発言に、鳳翔は驚き金剛に近寄り小声で声をかける。
鳳翔「金剛さん、紅月提督の提案に文句があるのですか?」
金剛「ん?鳳翔は私たちの提督じゃ無い人の指示にそのまま従うですカ?」
鳳翔「紅月提督は、倒れた提督の代わりに指揮を執って下さるのよ」
金剛「それはわかりますけど、私の提督は美鈴提督だけデース」
鳳翔「気持ちはわかるけど、准将様が頭を下げて歩み寄って下さっているのよ」
金剛「階級は関係ないデース、私たちは命をかけた戦いに挑むのですヨ」
鳳翔「命をかけるのは、私たちも紅月提督も一緒でしょ」
金剛「鳳翔は一つ勘違いしてるネ」
鳳翔「えっ?」
金剛「ワタシは、協力しないとも指示に従わないとも言ってませんヨー」
金剛は、麗美に歩み寄ると握手を求める仕草をしながら話しかける。
金剛「今、美鈴提督は起き上がれないくらいの状態ですが、この作戦が終わって皆無事に帰ってきたら、また皆で素敵なTea Timeがしたいデース、だからちゃんと皆が帰ってこられるように指揮を執ってくだサーイ!!」
金剛の条件を聞いた麗美は、真剣な表情をした後に満面の笑みを見せて答える。
麗美「わかったわ!貴方たちも、ウチの艦娘たちも、ミディアの乗組員も全員で帰還して今は寝ているメーリンと一緒に素敵なパーティーを開くわよ!!」
本家『艦隊これくしょん』のサーバー異動希望届を出していて、『柱島泊地』から『佐世保鎮守府』に転勤となりました。
そして、間もなくFlash版からHTML5版へと移行して第二期となるブラウザゲーム版の『艦隊これくしょん』……って全然小説の話をしていません(笑)
気がついたら、ついに今回主人公が全く出てこなくなっていますが、本来の予定では終盤で出てくる予定だったのですがねぇ~
おそらく次話では元気に登場すると思うので全世界の紅美鈴ファンの皆様お許し下さい!!