海上にて、艦娘たちが戦闘を開始しようとしているころ、医務室のベッドで横になっていた美鈴は寝付けずにいた。
美鈴「なんだか、嫌な予感がするんだよなぁ……」
美鈴は、ベッドに横になったまま周囲を見渡すが、先ほどまで美鈴が起き上がったりしないように見張っていた白衣を着た妖精さんの姿が無い。
美鈴「妖精さんがいない……」
美鈴は、体に倦怠感は感じるものの、『気』の影響か体中に感じていた痛みは大分無くなっており、起き上がることや歩くことも出来そうな感じがしていた。
美鈴「みんなに心配かけてるだろうし、顔でも見せに行かないと……」
美鈴は、ベッドから抜け出して立ち上がると、自分の体をくまなく確認したが、特に怪我や異常は無く痛みも残っていなかった。
美鈴「うん、快調快調!少しお昼は過ぎたみたいだけど、食堂に誰かいるかな?」
美鈴は、艦娘たちを探しながら、空腹を感じたため食堂へ向かうこととした。
医務室から食堂へ向かう美鈴は、いつもなら聞こえてくるであろう艦娘たちの声が聞こえない事に気がついた。
美鈴「空襲もあったし、また戦闘に出ているのかなぁ?」
そう考えた美鈴は、周囲をよく見てみると朝の時点では無かったはずの艦娘用の艤装が鎮守府周辺に設置されていることに気がついた。
美鈴「あれは?たしか倉庫にしまってあった予備の艤装じゃ?」
明石たちが、対空用に設置していた艤装に気がついた美鈴は、対空砲に近づいて確認しようとしたが、突然誰かの気配を感じた。
美鈴は、とっさに気配を感じた方向を確認すると、設置された艤装の確認をする明石がいた。
美鈴「この艤装はどうしたの?」
美鈴は、ちょうど鎮守府の艦娘たちを探していた事もあり、真剣に艤装を確認していた明石に声をかける。
明石「どうしたのって……」
明石は、艤装を確認しながら何気なく返事をしようとしたが、急に驚いた様子で美鈴が声をかけた方向に顔を向けた。
明石「て、提督!?」
明石の驚いた表情を見て、先ほどまで寝たきりになっていた自分が急に現れたから、驚かしてしまったのだろうと考えた美鈴は、苦笑いを浮かべながら明石に軽く手を振った。
美鈴「迷惑かけていたと思うけど、私はもう大丈夫ですよ」
明石「えぇ!? 数日は安静にしていないといけない状態だったのに!!」
美鈴「ははは、昔から健康だけが取り柄なもので……」
明石「(まさか、『気』の力で治癒力が常人とは比べものにならないくらい高まっているのでしょうか?)」
美鈴「ん、どうしたの難しい顔して?」
美鈴の急な回復に、『気』の影響があるのでは無いかと考え込んだ明石の顔を見て、美鈴は心配そうな表情を見せる。
麗美と大淀は、本来の主が不在の龍星鎮守府提督室で、無線機で各艦隊の戦況を確認していた。
大淀「こちら大淀、金剛さん、戦況はいかがでしょうか?」
金剛「うーん、深海棲艦の軽巡や駆逐艦とは何度か戦闘をしてますが、まだ空母は発見出来て無いネー」
大淀「損傷はありませんか?」
天龍「大丈夫だ!チビたちも練度が上がってるし軽巡くらいなら問題ないぜ!」
天龍の返事を聞いた麗美は、無線に入らないような小さな声で大淀に耳打ちする。
麗美「頼もしいわね、こちらも鳳翔が周辺海域の索敵を継続してくれているから何かわかったらまた連絡すると伝えてちょうだい」
麗美の指示に頷いた大淀は、無線機での通信を続けた。
大淀「了解しました、金剛隊は周辺海域の索敵を継続して下さい、こちらも鳳翔さんが艦載機で周辺の索敵を継続していますので、何かあればすぐに連絡します」
金剛「了解デース!」
金剛たちとの通信を終えた、麗美たちは町井田に通信を入れる。
大淀「町井田中尉、戦況を報告して下さい」
町井田「何度か深海棲艦の小隊と交戦しているが、まだ本隊とは遭遇していないようだ」
大淀「損傷はありませんか?」
町井田「今のところ駆逐艦や軽巡を中心とした小規模の艦隊としか交戦していない、日向と最上の瑞雲隊がほとんど撃退してくれているから、現状では目立った損傷は無いな」
町井田の報告を聞いた麗美は、満足そうな表情をしながら小声で大淀に話しかける。
麗美「出撃前に日向からの要請で、瑞雲の搭載数を14機から25機に増設した甲斐があったわね」
大淀「最上さんの瑞雲と合わせて合計36機の瑞雲隊ですからね」
麗美「さすがにヲ級相手には分が悪いけど、ヌ級くらいなら制空権をとれるはずよ」
自信に満ちた発言をしながらも、油断している様子の無い表情の麗美を見た大淀は、町井田への通信を続けた。
大淀「先ほど、紅月鎮守府から援軍に向かっている第二艦隊からの通信があり、間もなく中尉たちがいる海域に突入するとのことです」
町井田「紅月鎮守府自慢の機動部隊の到着と言うことだな」
町井田の発言を聞いた麗美は、若干視線を落としながら小声で呟いた。
麗美「ウチの機動部隊は、まだあの頃の一航戦には遠く及ばないわ……」
美鈴は、明石から現在の状況を聞き、鎮守府の周辺に展開している深海棲艦の艦隊を撃退するために艦娘たちが出撃中であることや、更なる鎮守府への空襲に備え、動力部の艤装が無くて海に出られない明石や大淀が陸上から対空射撃が出来るように対空砲や機銃を並べ、明石がそれを確認していたことを知った。
美鈴「それなら私にも良い考えがあるよ」
明石「良い考えですか?」
美鈴「とにかく人手が必要だということはわかりました!」
明石「なにかツテでもあるんですか?」
美鈴「工廠に行ってきますね!!」
美鈴は、明石に告げると工廠に向かって走り出した。
明石「工廠?そうか!!」
明石は、美鈴が工廠で建造を行おうとしていることに気がついて追いかけようとしたが、気がつくと美鈴はかなり前を走っており、明石の足では追いつけそうも無いスピードであった。
明石「さっきまで、動くことも出来ないくらい消耗していたのに、なんであんなに走れるの~!?」
明石の悲鳴のような声が、島内に響き渡った。
鳳翔「……ん、今何か聞こえたような?」
島の高台から艦載機を放ち索敵を行っていた鳳翔は、明石の声に反応した。
鳳翔「この声は、鎮守府内からですね……、明石さんでしょうか?」
鳳翔は、鎮守府を一瞥すると再び意識を集中し索敵中の艦載機からの報告に耳を傾ける。
鳳翔「まだ、深海棲艦の機動部隊を発見出来ないですか……」
艦載機からの報告を聞いた鳳翔は、思わずため息を漏らす。
鳳翔「早く、機動部隊を発見して金剛さんたちに連絡をしないといけないのに……」
長時間、連続的に艦載機を飛ばし続けていた鳳翔は額から大量の汗を流していた。
鳳翔「甘えたことを言っている場合ではありませんが、さすがに疲れてきましたね……」
鳳翔は、手ぬぐいで汗を拭いながら索敵を続けた。
鎮守府の南西方面に出撃していた金剛たちは、新たな艦影を発見した。
天龍「前方、気をつけた方が良いぜ……と、オレの電探が言ってるな」
金剛「Oh!敵影ですカー?」
天龍「オレの装備は世界水準軽く超えてるからなぁ~」
白雪「ふふふ」
深雪「怖いな」
白雪と深雪が、旧型装備ながら奮闘している天龍に敬意を表しながら天龍の決め台詞のパロディに興じていると、天龍が示す方向に双眼鏡を向けて観察していた雪風が敵影を視認する。
雪風「天龍さん、敵を確認しました!」
天龍「よし、空母はいるか?」
雪風「えぇと……、ル級と思われる大型艦が1、軽巡クラスが2、駆逐艦クラスが2と……」
金剛「と、何ですカー?」
雪風「もう1体いますが……、あれは?」
天龍「なんだ?ちょっと貸してみろ」
雪風「はい、お願いします!」
雪風は、愛用の双眼鏡を天龍に手渡し観測を依頼する。
天龍「どれどれ……」
天龍は、雪風の双眼鏡を覗き込むと、敵艦隊の状況を確認する。
天龍「あれは……、空母だ!!」
金剛「ヲ級ですカ!?」
天龍「いや、あれは軽空母のヌ級だ!!」
金剛「軽空母がいるということは、機動部隊が近くにいるかもしれないデス!」
白雪「大淀さんに連絡しましょう!!」
ザザッ ザザザッ
龍星鎮守府提督室の無線機に、雑音混じりの通信が入った。
金剛「鎮守府!鎮守府!大淀聞こえますカ?」
大淀「はい、少し雑音が混じってますが概ね良好です」
金剛「…っと見つ…たネ、け…空母…級がル…うと……」
金剛からの無線の感度がだんだん悪くなっていく。
麗美「なに?空母を見つけたの?」
大淀「若干、感度が悪くて聞き取りづらいですが、空母とル級を見つけたと聞こえましたが……」
大淀は、金剛に再度報告を求めることにした。
大淀「金剛さん、無線感度が悪くなっています、ヲ級を発見したのですか?」
金剛「えっ?……淀、なん…すか、聞こ…な…デース」
大淀「空母発見ですか?ヲ級ですか?」
天龍「おい……、大……、聞こえ……ぞ!」
大淀「天龍さん、感度不良です場所を変えられますか?」
天龍「うわ…、見つ……た、こ……り交戦……」
金剛隊からの無線は、雑音に飲み込まれるように途切れてしまった。
麗美「聞こえにくかったけど、空母を発見し交戦しているみたいね……」
大淀「はい、おそらくル級も発見している様子ですがいかがしましょう?」
麗美「正確な情報が欲しいわね……、鳳翔に艦載機で偵察してもらうわ!」
大淀「わかりました、鳳翔さんに連絡を……」
大淀が、鳳翔の無線機に連絡を入れようとした時、急に無線機に通信が入る。
町井田「鎮守府!龍星鎮守府!、聞こえるか」
大淀「はい、大淀です!」
町井田「敵の機動部隊に発見された!これより戦闘に入る!!」
大淀「そちらもですか、わかりました!」
町井田「そちらもということは、金剛たちも見つけたのか?」
大淀「先ほど不明瞭ながら空母発見の連絡がありました、そちらの規模はわかりますか?」
町井田「詳細は確認中だが、少なくともヲ級2のル級2、あとは軽空母クラスもいるようだ」
大淀「了解しました、援軍も間もなく合流出来るはずですので無理はされないようお願いします!」
町井田「了解!交信終了!」
町井田からの通信が終了し、麗美が大淀に指示を出す。
麗美「ウチの艦隊は、援軍も来るし町井田中尉もいるから大丈夫よ。 それよりも、金剛隊の方が気になるわ、鳳翔に連絡を取って!」
大淀「はい、先ほどの偵察指示ですね」
大淀は、鳳翔へ金剛隊がいる海域の偵察を指示するために鳳翔の無線機を呼び出した。
その頃、美鈴は工廠に到着していた。
作業服の妖精さん『提督、お久しぶりです!』
美鈴「ふふ、こっちの妖精さんの声も何だかわかるようになってきたわ」
美鈴は、声にはならないが工廠の妖精さんの声も頭の中で聞こえる実感があった。
美鈴「早速だけど、艦娘の建造をお願いしたいの」
作業服の妖精さん『資材はどうしますか?』
美鈴は、金剛を建造した時と同じ資材数を妖精さんに提示した。
作業服の妖精さん『戦艦ねらいかな?頑張りますね!』
美鈴「ヨロシクオネガイシマース!」
美鈴は金剛の真似をしながら、大型艦が出来るように願掛けをした。
工廠の妖精さんたちが資材を工廠内に運搬中、美鈴の後を追って走っていた明石が工廠にたどり着いた。
明石「はぁはぁ、提督は足が速いですね……」
美鈴「あ、明石も追って来ていたんだね」
明石は、妖精さんたちが工廠内に資材を運び込んでいる様子を見て、美鈴が早速建造を開始した事に気がついた。
明石「さっそく、建造を開始したんですね」
美鈴「前回と同じく戦艦狙いで資源を選択してみたんだけど」
明石「もう2艦目の戦艦狙いですか~、豪勢ですね」
美鈴「伊勢さんの航空戦艦とか強そうで憧れます!」
明石「(そういう提督は、空飛ぶ航空提督ですか?)」
明石と会話中に、美鈴は工廠の建造ドックの横にあった、壊れたもう一つの扉が修繕されている事に気がついた。
美鈴「あれ?壊れていたこっちの扉が直っている!」
美鈴の指摘を受けて、思い出したかのように明石が説明を始めた。
明石「あぁ、そうでした!着任してから工廠に来てみたら建造ドックが1個壊れていたので、メンテナンスしておきましたよ」
美鈴「直してくれたんですか?」
明石「このくらいの修理ならお任せ下さい!」
美鈴「ところで建造ドックが直ると、何か良いことがあるんですか?」
美鈴の質問に、明石は一瞬ビックリしたような表情をしたが、美鈴が提督になって日が浅いことを思い出して、説明を始めた。
明石「建造ドックが増えると、同時に建造出来る艦娘の人数を増やせるんですよ」
美鈴「と言うことは、今まで一人ずつしか建造出来なかったけど、いっぺんに2人建造出来るって事ですか!?」
明石「はい、そうなりますね!」
美鈴「そ、それじゃぁ……」
美鈴は、早速もう1人建造しようとしていたので、明石は忠告を入れる。
明石「戦艦ばかり作っちゃダメですよ!まだ鎮守府も小さいですしバランスを考えましょう!!」
美鈴「バランスですか、それじゃあ……」
美鈴は、妖精さんに鳳翔を建造したときと同じ空母を狙う量の資材を提示した。
明石「(この鎮守府の規模で、これ以上戦艦や空母というのも大袈裟ですが、今は確かに空母が必要な状況ですね……)」
美鈴は、妖精さんたちを手伝い建造ドックに資材を運び込むと、妖精さんが建造予定時間を告げてくれるのを待つのであった……
本家の艦隊これくしょんが第二期になり、出撃海域も1-1から再スタートになり気持ち的に『強くてニューゲーム』な感じがする今日この頃です。
何となく、この龍星鎮守府の様に深雪や雪風、天龍(すでに改二ですが)、白雪、鳳翔などを使って攻略していくと言う楽しみ方をしていますが、唯一のケッコンカッコカリ艦の金剛を使うとものすごく安定します! 格が違います(笑)
話はこの『華人小娘と愉快な艦娘たち』に戻りますが、今回からようやく主人公(美鈴)が復活します!!
そして、伝統の出撃中の建造も……