美鈴は、鳳翔から無線機を借りて麗美に通信を入れた後、麗美がいる提督室に向かおうとしたが、疲労の色が隠せない鳳翔の状態が気になっていた。
美鈴「鳳翔さん、だいぶお疲れのようですが本当に大丈夫ですか?」
鳳翔「ふふっ、出撃している皆さんのために、ここから索敵をしているのですが敵を見つけられなくて……」
気丈に振る舞おうとする鳳翔ではあったが、その表情からは疲労や焦りが隠せない状態であった。
鳳翔「私は大丈夫ですから、提督は准将の下へ……」
鳳翔は、美鈴を麗美の下に行くように促す途中で疲労からフラついてしまい、美鈴は咄嗟に鳳翔を抱きかかえる。
美鈴「鳳翔さん!」
後ろから抱きしめるような形になった美鈴は、改めて鳳翔が息も絶え絶えな状態であることに気がつく。
美鈴「こんな状態なら、鳳翔さんが倒れてしまいますよ!」
美鈴は、思わず鳳翔を抱く手に力がこもる。
鳳翔「もう何時間も索敵をしているのに、深海棲艦の艦隊を発見出来ないんです……、みんなが、みんなが戦場に出ているというのに……」
鳳翔の艦載機は、本来戦闘用であり索敵に特化した機能が無いため、偵察機を使用した索敵に比べると格段にその難易度は上がっていた。
その事は、麗美も鳳翔もわかっていた事ではあったが、麗美が想像していた以上に鳳翔が生真面目で仲間たちを想う気持ちが強すぎたため、通常の空母系艦娘では考えられないような長時間・広範囲で索敵を行い続けていたのである。
それによって鳳翔は、自分の体力の限界を超えて艦載機を運用してしまっており、まだ動ける状態でないと聞かされていた、美鈴の元気な姿を見たことに安堵したことによって急に自身の疲労を自覚したのであった。
美鈴「鳳翔さん、私も休んで元気になったんです、鳳翔さんも少し休もう!」
鳳翔「しかし、仲間たちが今まさに深海棲艦と対峙しているんです、私が敵の正確な情報を掴んでみんなに報告しないと……」
美鈴「でも、ここで鳳翔さんが倒れたら!!」
鳳翔「私はまだ大丈夫です!それにもし出撃している誰かが、私が見つけられたはずの敵によって墜とされたりでもしたら……」
美鈴「くっ、それは……」
仲間を想う気持ちが強い美鈴は、鳳翔の仲間を想う気持ちに押されてしまいそうになってしまう。
しかし、ここでこのまま鳳翔に索敵を続けさせれば、確実に鳳翔が疲労で倒れてしまうのは明らかであった。
美鈴「まだ、完全じゃないから上手くいくかわからないけど……」
美鈴は、手のひらに『気』を集めて鳳翔の体力を回復させるために自身の『気』を送ろうとするが、まだ上手く気を集中することが出来ない。
しかし、以前に比べて確実に美鈴の体内に『気』が巡らされているのは事実であるため、『気』を鳳翔に分け与えること自体は可能であると美鈴は実感していた。
美鈴「これならどうだ!!」
『気』を一点集中して送ることが出来ないと悟った美鈴は、自分の体全体を使って鳳翔に『気』を送ろうと考えた。
このようなことをするのは、美鈴自身初めてであり鳳翔に自身の体を出来るだけ密着させて少しでも『気』を鳳翔に送ることだけを考えた。
その結果、美鈴は鳳翔が抵抗出来ないほど力強く抱きしめる形となり、何の説明も受けていない鳳翔は突然の事に驚いてしまう。
鳳翔「て、提督!?」
背後からとはいえ、鳳翔は美鈴のぬくもりや吐息を感じると、段々と恥じらいのようなものを感じてきて、鳳翔の顔はみるみる真っ赤に染まっていった。
美鈴「急にごめんなさい、上手く出来ないかもしれないけど、もう少しこのままで……」
『気』を送ることに集中していた美鈴は、鳳翔の耳元で囁くように動かないように依頼すると、鳳翔はより一層顔を真っ赤にしてしまう。
鳳翔「て、提督、こんな場所では……」
鳳翔は、恥ずかしさのあまり絞り出すように声を出す。
その時、美鈴の全身から少しずつ鳳翔に『気』が送り込まれてきた。
美鈴「うん、もう少し、このままで……」
美鈴の囁きに、鳳翔は返事も出来ないくらい恥ずかしがっていると、段々と体が暖まってくる感じがし、疲れが消えていくのを感じていた。
美鈴「よし、上手くいったみたいだね」
『気』を鳳翔に送ることに成功した美鈴は、鳳翔から手を離して鳳翔の正面に移動する。
鳳翔「……こ、これは?」
急に体力の回復を実感した鳳翔は、キョトンとした表情で美鈴の顔を見ている。
疲労の消えた鳳翔の表情を確認した美鈴は、鳳翔に爽やかな笑顔を見せる。
美鈴「実は、私の『気』の力が少しずつ戻ってきたみたいで、鳳翔さんにも少し『気』を送ったんですよ」
鳳翔「な、なるほど……、そういう意味だったんですね、ありがとうございます」
美鈴の言葉に、これまでの美鈴の行動の意味を理解した鳳翔は、気恥ずかしさを感じながら美鈴に頭を下げる。
美鈴「本当なら、手をかざすくらいで『気』を送れるんですが、まだ本調子じゃ無くて抱きついてしまうようなことして、申し訳ありません」
気恥ずかしそうに謝る美鈴の様子を見た鳳翔は、自然と笑みがこぼれてきた。
その時、物陰から2人の様子を見ている者がいた……
明石「どうしよう……、提督が鳳翔さんを抱きしめている所を見ちゃったよ」
走って行く美鈴を追ってきていた明石であった。
明石「ま、まさか、提督と鳳翔さんがあんな関係だったなんて……」
『気』を送るために、美鈴が鳳翔を抱くような格好になっていた時に、ようやく美鈴に追いついた明石は、咄嗟に物陰に隠れていたのである。
明石「でも、提督も鳳翔さんも女性だよね……、ああいうのって良くないよね……」
完全に勘違いしてしまった、明石は動揺を隠せず美鈴たちに声をかけることが出来ず物陰から出て行くことが出来なくなってしまっていた。
すると、そんな明石に気がついた美鈴が明石の下に近寄ってきた。
美鈴「あれ?明石はどうしてこんな所に隠れているの?」
明石「!!」
不意に声をかけられた明石は、驚きのあまり一瞬声を失っていた。
鳳翔「あら、明石さんでしたか」
美鈴に引き続き、鳳翔にも声をかけられた明石は気まずそうに物陰から出てきた。
明石「す、すみません!お二人がお楽しみ中だと気がつかずに……」
美鈴「お楽しみ中?」
明石「お二人があんなご関係だと知らなかったもので……」
申し訳なさそうに謝罪する明石に、何を言っているのか理解していない美鈴と、顔を真っ赤にして恥ずかしがる鳳翔が対照的であった。
鳳翔「あ、明石さん、あれは提督が倒れそうだった私のためにですね……」
あたふたと説明を始める鳳翔を余所に、美鈴は爽やかな笑顔で答える。
美鈴「そうそう、鳳翔さんが凄く疲れていたから私の『気』を送ってたんだよ」
明石「『気』ですか?」
美鈴「そうそう、『気』は攻撃だけじゃ無く回復にも応用出来るからね」
鳳翔「そうなんです、おかげですっかり元気を取り戻せました」
明石「抱き合っていたのは、その『気』を送るための儀式ですか!?」
鳳翔「だ、抱き合っていただなんて……」
鳳翔は、更に顔を真っ赤にして下を向いてしまう。
美鈴「本当は、軽く手をかざすくらいでも『気』は送れるんだけど、私の『気』がまだ本調子じゃなくてね~」
恥ずかしがる鳳翔と対照的に、爽やかな笑顔で語る美鈴を見た明石は、『気』を送って鳳翔を回復させていたと語る美鈴の言うことには嘘偽りが無い事は理解できたが。
明石「(意識しまくってる鳳翔さんとは別に、あんなアッケラカンとしている提督は、精神的に幼いだけか、天然のたらしかのどっちかだろうなぁ……)」
などと、色々と思うところがある様子であった。
そのころ、鎮守府と通信が途絶えてしまった金剛隊は、金剛の判断により部隊を天龍、深雪、雪風、白雪の4名による水雷戦隊と分け、深海棲艦の艦隊に対して陽動を行っていた。
金剛「先手必勝デース!撃ちます!Fire!!」
金剛は、単独で深海棲艦の艦隊に突入し目立つように砲撃を仕掛ける。
ぐぉぉぉん
金剛の砲撃は軽巡ヘ級に直撃し、へ級1体を仕留める事に成功する。
金剛「Yes!幸先良いデスネー!」
しかし、金剛の砲撃により金剛の存在に気がついた深海戦艦の艦隊は、反撃を仕掛けてくる。
金剛「ふふっ、敵は私に気がついたみたいネ!」
軽空母ヌ級は、金剛の奇襲によって発艦に手間取っているのか艦載機を発艦出来ずにいる様子であり、残りの軽巡ホ級1体と駆逐艦ロ級2体の水雷戦隊が、金剛の方向に向かって来る。
金剛「敵の水雷戦隊が来たネ、ル級はまだ来ないですカ?」
金剛は、ヌ級の側から動かないル級に第2射の照準を合わせる。
金剛「水雷戦隊だけで、私を仕留めるつもりですカ?金剛型をなめないで欲しいデース!」
金剛は、敵の水雷戦隊から距離をとるために後退しながらも、ル級に向けて砲撃を仕掛ける。
ドゴォォォン!
金剛の砲撃は、ル級を捉えるも直撃とまではいかずに小破止まりであったが、この砲撃に怒ったのか、ル級も金剛に向かって航行を始めた。
金剛「ふっ、かかったですネ~、もっと私を追ってくるデース!」
深海棲艦の水雷戦隊と戦艦ル級の追撃を確認した金剛は、反転し鎮守府方向へ移動を始める。
金剛の動きに、撤退を開始したと判断したル級と水雷戦隊は、金剛が味方と合流する前に撃破しようと追撃を行ってきた。
雪風「ル級と敵水雷戦隊は金剛さんを追って、ヌ級から離れていきます!」
天龍「やるじゃねぇか!」
深雪「さすが戦艦ともなると、しっかり頭を使った作戦が出来るなぁ~」
白雪「私たちじゃ、ここまで上手く出来るかわからないね」
金剛の指示により、深海棲艦の艦隊がいた南側のポイントに移動し待機していた天龍たちは、金剛が敵の陽動に成功し、軽空母ヌ級が孤立した状況を確認した。
天龍「よし、このくらい離れれば頃合いだな、天龍水雷戦隊、出撃するぜ!」
深雪・雪風・白雪「了解!!」
天龍の号令により、4人はヌ級に向けて最大戦速で突撃を仕掛ける。
ぐぐっ
天龍たちの突撃に気がついたヌ級は、大慌てで艦載機を発艦させようとしていた。
天龍「今頃気がついたか?おっせぇんだよ!!」
天龍は、ヌ級の発艦を牽制するために機銃を連射する。
ぐぉっ
ヌ級は、天龍の機銃に動揺するも、数機の艦載機を発艦してきた。
白雪「数が少ないですね?」
深雪「天龍さんの機銃にビビって、発艦に失敗したんだ」
天龍「数は少ないけど、攻撃してくるぞ!油断するんじゃねぇぞ!!」
天龍の警告と同時に10機程度の艦載機が、天龍たちに向かって突っ込んでくるが、味方の航空支援は無い状態なので、自分たちで撃ち落とさなければならない状況である。
深雪「高角砲の出番だぜ!」
深雪は、対空用に装備していた『10cm連装高角砲』で対空射撃を行うが、高速移動する艦載機に命中させるのは難しく、なかなか撃墜することが出来ない。
雪風「深雪、援護します!」
雪風は、夜戦用に装備していた『探照灯』を敵の艦載機に向けて照射し、目をくらます。
深雪「おっ、動きが鈍くなったな!」
雪風の目くらましによって、敵艦載機の動きが鈍った一瞬を見逃さず、深雪が高角砲を連射する。
深雪「深雪スペシャルだぁー!」
雪風と深雪の連携攻撃で、半数以上撃墜された敵艦載機は撤退していった。
天龍「ヌ級を叩くなら今だ!一気に仕留めるぞ!!」
天龍は、左手で腰に差した刀を抜いて頭上に掲げ、勢いよくヌ級の方角へ振り下ろす。
天龍「遅れるんじゃねぇぞ!うっしゃぁっ!!」
天龍の号令と共に、深雪、白雪、雪風の3名が天龍に続いて突撃を仕掛ける。
天龍「硝煙の匂いが最高だなぁ、オイ!」
深雪「当ったれぇ~い!!」
白雪「狙いよし、撃ち方始め!」
雪風「雪風は沈みませんっ!!」
天龍たちは、構えた単装砲や連装砲で砲撃を仕掛けながら左右に分かれて行き、立て続けに砲撃を受けるヌ級は、逃れることが出来ないまま気がつくと天龍たちに包囲されていた。
天龍「もう逃げられないぜ……、フフフ、怖いか?」
深雪「行っくぞぉ~、もういっちょ!」
雪風「絶対、大丈夫!」
白雪「皆さん、獲物を前に舌なめずりは、三流のすることですよ!」
天龍たちは、一斉に魚雷を発射して一気に散開する。
ぐおぉぉぉぉん
四方からの雷撃に逃げ場を失っていたヌ級は、天龍たちの雷撃の直撃を受け、断末魔をあげながら海に沈んでいった。
天龍たちが、軽空母ヌ級を撃沈して勝ち鬨を上げていたころ、戦艦ル級や水雷戦隊の陽動を行っていた金剛は、敵の砲雷撃を巧みに回避しながら牽制砲撃を繰り返していた。
金剛「そろそろ天龍たちは、ヌ級をやっつけたでしょうカ……」
金剛は、何度か天龍に無線連絡を試みたが、無線機が不調なのか応答が無い。
金剛「鎮守府との交信の際も調子が悪かったネ、帰ったら明石に整備してもらわないといけないデスネ」
無線連絡は出来ないが、金剛の計算だとそろそろ天龍たちがヌ級を撃墜している頃合いであった事から、金剛は陽動をかけていた深海棲艦艦隊と交戦しつつ天龍たちとの合流を目指すことにした。
金剛「きっとあの娘たちなら、上手くやってくれたはずデース、さすがの私も1対4のままじゃ分が悪いシ、合流させてもらいマース!」
金剛は大きくUターンしながら、事前に打ち合わせしていた天龍たちとの合流予定地点へ向かうことにした。
金剛「合流の前に、少しでも敵を倒しておきたいデース」
金剛は、主砲の射程圏内にいる駆逐艦ロ級に照準を合わせる。
金剛「撃ちます!Fire~!!」
金剛の放った砲撃は、見事にロ級を捉えて2体いたロ級のうち1体の撃墜に成功する。
ピピッ ブーブーブー
ロ級の撃墜を確認したときに、金剛の艤装から警告音が鳴り始める。
金剛「えっ、魚雷!?」
金剛が慌てて周囲を見渡すと、右方向から数本の航跡波が見え始めた。
金剛「Shit!間に合わない!!」
本家『艦隊これくしょん』では、初秋イベントとしてまだ夏の雰囲気が残った艦娘たちがまだバカンスmodeな深海棲艦たちと熱い戦いを演じていますが、私のいる北海道はすっかり夏も終わり完全に秋となってしまっていて朝や晩が寒くなって来ています。
美鈴たちのいる龍星鎮守府は日本の南方にある無名の小島という脳内設定なので、まだ暖かさが残っているのでしょうか?
この物語の中での美鈴の『気』の扱いですが、私の脳内設定では基本的にドラゴンボールの『気』と同じような感じで考えています。
ドラゴンボール世界で美鈴がどのくらいの戦闘力を持ているかは知りませんが、空も飛べるし、気功波も使える(はず)なので、少なくても無印版の悟空の仲間たちくらいの実力はあるのでしょうかねぇ~
さすがに、スーパーサイヤ人とかクラスでは無いと思いますが……