華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第26話 ダイヤモンドは砕けない

    ズダダダダダ  ズダダダダダ

 

 魚雷の航跡波はみるみる金剛に迫ってくるが、今の状況ではすべての魚雷を回避することは不可能と判断した金剛は、少しでも直撃を防ぐために咄嗟に機銃を魚雷に向けて連射していた。

 

金剛「少しでも魚雷を手前で爆発させれれば……」

 

 しかし、高速で向かってくる魚雷に対しての焦りもあり、魚雷を撃ち落とすことが出来ない。

 

    ドゴォォォン

 

金剛「あぁあっ!」

 

 2発の魚雷が金剛に命中し、咄嗟にとっていた防御態勢のおかげで体へのダメージは少なかったが、主砲を含めた艤装の一部が破損してしまった。

 

金剛「Shit!私の大切な装備が!」

 

 金剛は、魚雷が放たれた方向から魚雷を撃ったのが軽巡ホ級であると確認し、残っている主砲で反撃を試みようとした。

 

金剛「よくもやってくれたネ、倍返しデース!!」

 

 主砲を構えて射撃体勢に入った時、金剛の体は思わぬ方向に移動を始めてしまう。

 

金剛「えっ、前に進めない……」

 

 金剛の艤装のダメージは、主砲以外にも動力部にまで達しており、推力が低下してしまった上に舵がきかなくなっていたのである。

 

金剛「思うように動けない……、しかし敵に気づかれたらつけ込まれてしまいマス……」

 

 金剛はなんとか主砲の照準を取り直し、ホ級に向けて砲撃を行う。

 

金剛「残っている主砲2基4門……、全砲門!Fire!!」

 

 金剛の必死の砲撃は、逃げるホ級を捉えて大破炎上させることに成功する。

 

金剛「これで、ホ級は動けないネ……、でも舵がきかない私も天龍たちに合流出来そうにないデス……」

 

 舵がきかずに推力の低下した金剛は、この場に留まるわけにもいかず低速ながら東方向へと移動を開始する。

 

金剛「このまま進めば少しは鎮守府に近づけるけど、方角的に帰れないネ……」

 

 金剛は、戦艦ル級と駆逐艦ロ級の2体に追撃を受けながら鎮守府や美鈴の事を思い浮かべると共に、艦娘となる前に過去の大戦で共に戦った姉妹艦のことを思い出していた。

 

金剛「比叡、榛名、霧島……、この姿になってからは、まだ会えていなかったけど、貴女たちもこの世界のどこかにいるのですカ?」

 

 金剛は、自分と同じく艦娘として生まれ変わっているであろう姉妹艦たちの事を思い浮かべていた。

 

金剛「今の姿になった貴女たちに、一度で良いから会ってみたかったデス……」

 

 

 

 

 その頃、龍星鎮守府では、美鈴が提督室に到着していた。

 

麗美「めーりん、本当にもう大丈夫なの!?」

 

美鈴「はい、もうすっかり元気ですよ!」

 

麗美「よかったわ……、でも今の状況はあまり良いものではないわ……」

 

 麗美は、現在判明している戦況を美鈴に説明する。

 

美鈴「なるほど、准将は来たるべく反攻作戦に向けて紅月鎮守府へ帰還する必要があるんですね」

 

麗美「そうなの、まぁ紅月鎮守府への航路になる北東方面の深海棲艦たちは、日向やウチの鎮守府からの増援部隊で対応中だから問題は無いと思うの」

 

美鈴「しかし、鎮守府の北方面に詳細がまだわかっていない敵艦隊がいて、南西方面ではウチの艦娘たちが深海棲艦の機動部隊と交戦中と言うことですか……」

 

麗美「そうなの、しかも無線機の故障か電波妨害かわからないけど、無線機が通じなくなってしまっていて金剛や天龍に連絡が出来ないのよ……」

 

美鈴「無事だと良いんですが……」

 

麗美「鳳翔が頑張って艦載機で捜索してくれているけど、索敵機が無い状況ではなかなか厳しいし、疲れも溜まっているようだったから少し休むように言ったんだけどちゃんと休みを取っているかしら……」

 

美鈴「それについては、私が『気』を送って回復しているので、今は元気になっていますよ」

 

麗美「『気』で元気?ふふっ、なかなか上手いこと言うじゃない……」

 

 その時、提督室に一本の通信が入った。

 

 

 

 

大淀「はい、こちら司令室の大淀です」

 

 通信を入れてきたのは、索敵中の鳳翔であった。

 

鳳翔「こちら鳳翔です、艦載機たちが天龍さんたちを発見しました!」

 

大淀「本当ですか!皆さんご無事でしょうか?」

 

鳳翔「これより接触してみようと思いますが、一人、二人、三人……」

 

麗美「どうしたのかしら?」

 

鳳翔「金剛さんの姿が確認出来ません!!」

 

美鈴「どういうことなの?」

 

鳳翔「しかし天龍さんたちは、みんな元気な様子です、別行動でしょうか?」

 

大淀「確認出来ませんか?」

 

鳳翔「艦載機で接触を試みます!」

 

麗美「無線が無理なら、モールス信号とかでなんとか会話をしてみて」

 

鳳翔「わかりました、やってみます」

 

 そう答えると、鳳翔は交信を終了した。

 

麗美「金剛は気になるけど、とりあえずは朗報ね」

 

美鈴「はい、建造中の艦娘たちが完成したら増援も送れるでしょうし!」

 

麗美「そうね……、って建造中の艦娘!?」

 

 麗美は、美鈴が艦娘を建造中であると聞いて驚きを見せる。

 

美鈴「はい、明石が建造ドックを修理してくれていたみたいで、一気に2つのドックで建造してもらっています!」

 

 麗美は、美鈴の発言を聞いて驚きと喜びをあわせたような表情になる。

 

麗美「そうか、この鎮守府の提督である美鈴がいれば建造ドックを使用出来たわね……」

 

美鈴「えへへ、仲間が増えるのは嬉しいので、資材が溜まったらよく建造したりしています!」

 

麗美「建造予定時間とか聞いているかしら?」

 

美鈴「完成艦娘の予想ですね、明石にも聞きましたが4時間くらいと、1時間くらいだと工廠の妖精さんが教えてくれました!」

 

麗美「4時間と言うと戦艦か正規空母クラスだし、1時間だと巡洋艦クラスね!」

 

美鈴「戦艦狙いの方が4時間だったので、たぶん戦艦と巡洋艦の艦娘が来てくれるはずです!」

 

麗美「今は少しでも戦力が欲しいわね、早く完成させて来てくれないかしら」

 

美鈴「でもまだ、建造開始したばかりなので……」

 

 美鈴は、申し訳なさそうに麗美に答えた。

 

 

 

 

大淀「たしか、先日いただいた補給物資の中に、高速建造材が一つあったような……」

 

 美鈴と麗美の会話を聞いていた大淀が、美鈴に高速建造材の存在を指摘する。

 

美鈴「こうそくけんぞうざい?」

 

 美鈴は、初めて聞いた言葉に疑問を浮かべ、それに気がついた麗美は美鈴に説明を始める。

 

麗美「高速建造材とは、艦娘の建造時間を短縮して瞬時に建造完了に出来る道具ね」

 

美鈴「すぐに傷を治せる高速修復材みたいに、それを使えば建造時間も待たなくて良いのですか!?」

 

麗美「まぁ、そう言うことね」

 

 美鈴が、麗美の説明を理解して驚いている時、美鈴を追って走って来ていた明石がようやく提督室に到着しドアを開けて中に入ってきた。

 

明石「はぁはぁ、提督ったら足が速すぎですよ~」

 

 明石は、非戦闘系艦娘であるため他の艦娘に比べれば走力に劣るところがあるが、通常の人間には負けないくらいの走力は持っていた。

 しかし、元々駆逐艦クラスの艦娘にも負けないくらいの走力を持っている美鈴には、どうやっても追いつけないのであった。

 

大淀「大丈夫?水ならあるけど飲む?」

 

明石「はぁはぁ、ありがとう」

 

 明石は、大淀から手渡されたコップの水を一気に飲み干すと、ようやく一息ついた様子であった。

 

美鈴「あっ、明石、ちょうど良いところに……」

 

明石「げっ、またどこかに移動するんですか!?」

 

 明石は、美鈴に声をかけられると、また走らされると思い、思わず一歩後ずさりをする。

 

美鈴「建造についてなんだけど……」

 

明石「なんだ、私の得意分野の話ですね、何でしょう?」

 

美鈴「倉庫に高速建造材が一つあるみたいで、今建造中の艦娘の一人をすぐにでも完成させられるみたいなんだけど……」

 

明石「お~、高速建造材があったなら使えば良かったですね!」

 

美鈴「これから、取りに行って使いたいんだけど、一人じゃわからないから一緒に来てくれないかなぁ?」

 

明石「ぁぁぁ……、やっぱりまた走るんですね?」

 

 ガックリと頭を下げる明石に、申し訳なさそうに手を合わせる美鈴と、優しく背中を叩く大淀の姿を見ながら麗美は一人でこう思っていた。

 

麗美「(今度来るときには、明石にオートバイでも差し入れしてあげよう……)」

 

 

 

 

 ヌ級を撃退した天龍たちは、金剛との合流地点に向かっていた。

 

深雪「航空攻撃が無くなったから、後の脅威はル級だけだなぁ~」

 

雪風「でも、こっちにも正規空母ヲ級がいるという話でしたよね」

 

天龍「今戦ってる部隊以外にも、敵の艦隊がいる可能性は高いな……」

 

 天龍たちが話をしながら行軍していると、白雪が上空に何かを発見した。

 

白雪「北東方向から、接近する飛行物体があります!」

 

 白雪が指さす方向には、航空機の編隊らしきものが接近してくる状況であった。

 

雪風「敵の航空部隊ですか!?」

 

 雪風は、素早く主砲を航空部隊に向けて戦闘態勢をとる。

 

天龍「雪風、待ちな!」

 

 天龍は、雪風の前に出て右手を雪風の前に出して制止する。

 

天龍「聞こえるぜ……、このプロペラ音は零式艦上戦闘機だ!」

 

 天龍は、接近する航空機が『零式艦上戦闘機』だと指摘し、様子を見ることにすると、先頭の機体から発光信号があった。

 

    『ワレ ホウショウ キカンラ ノ ブジ ヲ カクニン シタ』

 

 天龍は、発光信号を読み取ると、雪風に返信を指示する。

 

天龍「雪風、鳳翔さんの零戦に返信してくれ」

 

雪風「了解しました!」

 

 雪風が、探照灯で発光信号を返すと、更に発光信号が送られてくる。

 

    『コンゴウ ノ カクニン ガ デキナイ ブジ カ』

 

天龍「金剛は、陽動中で今から合流地点に合流予定だと答えてくれ」

 

雪風「任せて下さい!」

 

 雪風が、再び発光信号で返信すると、更に返信があった。

 

    『リョウカイ コチラモ カクニン ニ ムカウ』

 

天龍「無線機が使えないからありがたいな!」

 

深雪「こっちの無事も連絡出来たし、とりあえず一安心か」

 

 鳳翔の艦載機たちは、1機を残して金剛の無事を確認するために東方向へ向かって行った。

 

白雪「零戦が1機残ってくれていますね」

 

天龍「通信役として鳳翔さんが残してくれたんだな!」

 

 

 

 

 美鈴と明石が、建造ドックで建造中の艦娘を倉庫にある『高速建造材』で完成させるために倉庫へと向かっている途中、麗美から明石の無線機に通信が入った。

 

明石「はい、こちら明石です!」

 

麗美「私よ、近くに美鈴提督はいるかしら?」

 

明石「あっ、はい今呼びます!」

 

 そう言うと、明石は大声で前を走る美鈴に声をかける

 

明石「てーとく、紅月准将から通信ですよー!!」

 

 明石の声に気がついた美鈴は、振り返ってものすごい早さで駆け戻ってくる。

 

明石「はい、無線機です」

 

 明石は携帯式の小型無線機を本体ごと美鈴に手渡し、美鈴は麗美との通信を開始する。

 

美鈴「はい美鈴です!」

 

麗美「めーりん、また明石を置き去りにして走っているんじゃ無いの?」

 

美鈴「あっ!さっきよりもゆっくりめに走ってたつもりだったのですが……」

 

 その台詞を聞いた明石は、思わずショックを受ける。

 

明石「(そんな、私は全力で追いかけていたのに……)」

 

 目の前で肩を落とす明石を見て、美鈴は自分の失言に気がつく。

 

麗美「あなたねぇ、そんなことを明石の聞こえるところで言ったらダメよ」

 

美鈴「あわわ、目の前にいた明石が落ち込んじゃいました……」

 

麗美「あちゃ~、あとでちゃんと謝りなさいよ」

 

美鈴「すいません」

 

麗美「それはともかく、鳳翔から天龍たちと接触出来たとの連絡があったわ」

 

美鈴「金剛はどうでしたか?」

 

麗美「敵の陽動を単艦で行っているらしいのだけど、とりあえず鳳翔の艦載機たちで確認に向かったらしいわ」

 

美鈴「そうでしたか、金剛も無事だと良いんですが」

 

麗美「そうね、そっちは援軍を出せるように高速建造の件、頼んだわよ!」

 

美鈴「わかりました、また何かわかったら教えて下さいね!」

 

 美鈴は麗美との通信し、無線機を明石に手渡す。

 

美鈴「倉庫までもう少し、みんなが心配だから急いで行こう!!」

 

 美鈴は、明石の肩を軽く叩くと再び走り始めた。

 

明石「今度、時間があったら電動自転車でも作らなきゃなぁ……」

 

 明石は泣きそうな声でそう呟きながら、走って行く美鈴の背中を追った。

 

 

 

 

 舵がきかなくなってしまった金剛は、低下した速力の中で追ってくる戦艦ル級と駆逐艦ロ級を巧みに牽制しつつなんとか攻撃をしのいでいる状態であった。

 

金剛「自力での帰還は絶望的……、でもきっと仲間が来てくれマス」

 

 通信も出来ず、天龍たちとの合流ポイントからもどんどん離れてしまっている状況ではあるが、金剛はまだ諦めていなかった。

 

金剛「可能性は低いかもしれませんガ、鳳翔も索敵をしてくれているなら運良く見つけてくれるかもしれないネ……」

 

    ズガガガガ

 

 近接してこようとするロ級に機銃を掃射し、足止めすると主砲をロ級に向ける。

 

金剛「日本語で言う金剛石は、ダイアモンドと言うと聞いたことがあるネ」

 

    ドゴォォォォォン

 

 ル級が主砲を放つと、金剛は減速しながら稼働可能な主砲を右方向に向ける

 

    ドゴォォォン

 

 主砲を放った反動で、金剛の体が強制的に左方向に移動する。

 

 金剛へ直撃コースで飛来していたル級の砲弾は、金剛の右後方へ着弾する。

 

金剛「ダイヤモンドは、世界で一番輝き一番硬い宝石ネ」

 

 金剛は、再び速力を上げてル級と距離をとろうとする。

 

金剛「私はそんな宝石の名をいただいて、太平洋戦域で活躍した金剛型一番艦ネ、まだまだこんなところで沈むわけにはいかないデース!!」

 

 顔を上げてル級とロ級の行動を見据える金剛、その目はまだまだ力を失っていなかった。




 今回の題名は、アニメ化や実写映画化もした某人気不思議な冒険漫画の第四部のサブタイトルと同じだと言うことは秘密なのですが、本当は前回のタイトルにしようとしたところ思ったよりも展開が進まず今回のタイトルになりました。

 金剛を出演させた段階でいつかは使おうと考えていたタイトルなのでやっと使う機会が来たというか、もう使っちゃったかというか不思議な感情です。



 あと、作中では描いていなかったですが、前話で美鈴に『気』をもらって元気になった鳳翔さんはキラ付けも完了したような絶好調状態まで回復している脳内設定があったりしています……(百合要素は全く考えていませんが)
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