ギィィィ……
倉庫に到着した美鈴と明石は、倉庫の大扉を開いた。
美鈴「いつの間にか、倉庫の扉がこんな金属製の立派な物になっていたんだね~」
明石「これから、どんどんアイテムや保管する艤装が増えてくるでしょうから、私と妖精さんたちで作ったんですよ」
美鈴「これなら多少の攻撃でもビクともしないね!」
明石「一応、深海棲艦に攻め込まれても、ある程度耐えられるようには作っています」
美鈴「深海棲艦って陸上にあがれるの?」
明石「量産タイプのほとんどは上陸出来ないですが、人型に近い上位種には上陸可能な深海棲艦もいるみたいですよ」
美鈴「そ、そうなんだ……」
美鈴と明石は、大淀が倉庫で見かけたという高速建造材を探し始める。
美鈴「う~ん、どこにあるのかなぁ~」
美鈴は、長めのホースのような物がついた大型の消火器のような物を手に取りながら周りを見渡している。
明石「大淀のことだから、変なところにしまったりしていないはずですけどね~」
美鈴と少し離れたところで手分けをして探している明石も、予備の艤装の周りを探し回っている。
美鈴「ところでさぁ~、明石」
明石「はい、何でしょう」
美鈴「この消火器は何で赤色じゃ無いのかなぁ?」
美鈴は手に持った消火器のような物を持ち上げて、明石に見せようとする。
明石「消火器の色って、昔は消火器に関する法令で25パーセント以上赤くしなきゃいけないって決まっていたみたいですが、最近はその法令も変わって、家庭用の消火器なら赤じゃ無くても良くなったみたいですよ」
美鈴「へー、そーなのかー」
明石「でも、鎮守府って家庭じゃ無いから赤くないのって変ですね?」
明石はそう言うと、美鈴の方へ振り向き美鈴が持ち上げている消火器のような物を確認する。
明石「あーーーーっ!!」
明石は急に大声を出し、美鈴が持ち上げていた大型の消火器のような物を指さす。
明石「それですよ提督!それが高速建造材ですよぉ!!」
美鈴「えぇ~!?」
そもそも高速建造材がどのような形の物なのか、どのように使用するのかがわからなくて明石に同行を求めていた美鈴であったが、思わぬ形で高速建造材を発見し、急いで工廠に向かうことにした。
ブロロロロォォォ
天龍たちとの接触に成功した鳳翔の零戦21型は、深海棲艦を陽動しているはずの金剛を捜索するため、天龍たちがいる海域の東方向を飛行中であった。
鳳翔「艦載機から逐次報告が来ますが、金剛さんの姿は無いですね……」
鎮守府の高台から巧みに艦載機をコントロールする鳳翔は、冷静に10機の零戦を操っている。
鳳翔「金剛さんは複数の深海棲艦と交戦中のはず、発見出来れば援護の九九式艦爆を発艦させることも出来るのですが……」
先ほどまでの鳳翔なら、仲間の発見を急ぐあまり焦る気持ちが前面に出ていたのだが、美鈴から『気』をもらい受けて体力が回復してからは、不思議とスッキリした気持ちになり体だけではなく頭も冴えている感覚があった。
鳳翔「提督の力を分けてもらってから、何だか調子が良くなってきた感じがしますね……」
鳳翔の好調さは、捜索のため出撃中の零戦21型にも影響を与えているのか、パイロットである妖精さんたちの調子も上がってきていた。
鳳翔「報告をくれている妖精さんたちの士気も上がってきてくれているみたいですね」
航空母艦である鳳翔は、艦載機のパイロットたちにとっての指揮官であり、艦娘にとっての提督と同様の存在である。
提督と深い絆で結ばれた艦娘が能力以上の力を発揮出来るという報告があるが、まさに空母艦娘と艦載機を操縦する妖精さんも同様で、空母艦娘と妖精さんが互いに信頼しあえている状態であれば、艦載機を操縦する妖精さんたちも普段以上の実力を発揮出来るという報告もある。
鳳翔「何だか艦載機を操縦する妖精さんたちが、まるで熟練パイロットのような頼もしさを感じますね……、これなら必ず金剛さんを発見してくれるはずです」
指揮官の指揮に安心して従えるパイロット、今の鳳翔と艦載機のパイロットである妖精さんたちは、まさにその域に達していた。
ドゴォォォン ドゴォォォォォン
損傷して思うように動けない金剛は、陽動していた深海棲艦である戦艦ル級と駆逐艦ロ級と激しい砲撃戦を繰り広げていた。
金剛「もう少し、もう少し頑張れば、きっと仲間が来てくれマス……」
いまだ稼働可能な主砲2基4門と機銃で、巧みに相手の接近を退けて後退を続ける金剛であったが、徐々にダメージが大きくなってきているのは明らかであった。
金剛「せめて、ロ級を墜としてル級との一騎打ちに持ち込めれば……」
中破に近い損傷を受けている金剛にとっては、小破状態のル級とほとんど損傷の無いロ級を相手に1対2の戦いを続けるのは無謀であったが、未だに闘志が消えていない金剛はこの状況を打開する機会を探し続けていた。
金剛「少しでもいいデス、敵が隙を見せてくれれば……」
金剛は、ル級とロ級の動きをジッと観察しながら後退を続ける。
ル級もこの金剛の様子に、何かを企んでいるのでは無いかと勘ぐり無闇に接近をしてくる様子も無く、一進一退の状況が続いていた。
金剛「ル級も突っ込んで来ませんネ……、無能じゃなさそうデスが、私の損傷状況に気がついていないのなら優秀でもなさそうネ……」
金剛がル級に注意を向けていると、急にロ級が加速して金剛に向かってきた。
金剛「またデスか、飽きないネー」
金剛は機銃を掃射してロ級を牽制する。
ズダダダダダ
今までであれば、機銃の掃射に驚いたロ級は後退を繰り返していたのであるが、今回は被弾を覚悟で突っ込んで来たのである。
金剛「まさか、来るのですカ!」
機銃を受けたロ級は小破するが、そのまま金剛に接近してくる。
がぁぁぁぁ
突っ込んでくるロ級は、口を大きく開いて魚雷を発射しようとしてくるのが見えた。
金剛「玉砕覚悟デスか!?」
金剛は、慌てて主砲をロ級に向けようとするが、焦るせいか照準が定まらない。
金剛「Shit!間に合わない!!」
ブロロロロォォォ
その時、上空から航空機のエンジン音が聞こえてきた。
ズダダダダ ズダダダダ
航空機から放たれた機銃が、ロ級に数発直撃する。
ぐぉぉぉぉ
突然の攻撃に驚いたロ級は、魚雷の発射を取りやめて後退を開始する。
金剛「あの機影は……、零戦!?」
金剛の視界に飛び込んできたのは、飴色がかった灰緑色の10機の零戦21型であった。
鳳翔「深海棲艦と交戦中の金剛を発見!敵はル級とロ級各1体、金剛は損傷しているも健在です!!」
鳳翔からの、金剛発見の報が提督室の麗美や、工廠の美鈴にもたらされた。
鳳翔「金剛は援護の必要を認めます、艦爆の発艦許可を!」
鳳翔は、すでに艤装の弓を構えて九九式艦爆の発艦準備に取りかかっていた。
美鈴「金剛は怪我をしているのですね、すぐに救援に向かって下さい!」
美鈴の返答を確認した鳳翔は、素早く矢を放ち九九式艦爆8機を発艦させた。
鳳翔「艦載機の皆さん、頼みましたよ……」
金剛のいる海域に向けて飛び出した九九式艦爆隊を見守る鳳翔は、祈るように見守っていた。
工廠にいる美鈴は、目の前に立っている金剛と同じ巫女服の様な服装をした艦娘に声をかける。
美鈴「聞いたとおり、貴女のお姉さんがピンチなの、着任早々で悪いけど救援に向かってもらえるかな?」
金剛と同じ服装の艦娘「はい、金剛お姉様の危機と聞いてはいてもたってもいられません……、いざ、出撃します!」
美鈴が鳳翔から金剛発見の報告を受けたのは、工廠に到着して高速建造材を工廠の妖精さんに託して建造中の艦娘を完成させ、自己紹介を終えたばかりのタイミングであった。
金剛型であり金剛の妹にあたる彼女は、美鈴から無線機を受け取ると姉である金剛の救援に向かうべく海岸へと駆けだして行くのであった。
チリリリリン チリリリリン
提督室の事務机に設置された電話機が呼び鈴を鳴らす。
近くにいた麗美は、受話器を取り応答する。
麗美「はい、こちら龍星鎮守府提督室……」
美鈴「わぁ、本当に麗美さんの声が聞こえる!?」
受話器の向こうから、驚く美鈴の声が聞こえてくる。
明石「あぁ、すいません、提督が無線機を新造艦娘に渡しちゃったんで工廠の電話から連絡しています」
驚く美鈴から受話器を奪い取った明石が、麗美に状況を報告する。
麗美「なるほどね、それで完成した艦娘はどうしたのかしら?」
美鈴「私に説明させて」
明石「はいはい、替わりますから引っ張らないで下さい」
受話器の向こうで、美鈴と明石が子供のように引っ張り合う声が聞こえてくる。
麗美「……くっ、ははは」
受話器の向こうから聞こえてくる、美鈴と明石の子供じみたやりとりに麗美は思わず吹き出してしまう。
大淀「どうされました?」
麗美「あぁ、工廠にいる美鈴たちからの電話よ」
麗美の回答を聞いた大淀は、なぜ美鈴からの電話で急に麗美が笑いだしたのか理解出来ずに小首をかしげてしまう。
美鈴「完成して着任したのは、金剛の妹だったんですよ!」
麗美「なるほど、金剛型と言うことはあの二人は本土にいるからあの娘ね……」
美鈴「あの二人?」
麗美「金剛型は4隻いるのだけど、すでに艦娘となって本土に2人いるのよ、だから今回着任したのは最後の一人になる訳よ」
美鈴「なるほど、その最後の一人ですが、私の無線機を持たせて金剛の救援に向かってもらいました!」
麗美「そうね、金剛や天龍たちは無線機が不通になっているから、その娘に無線機を持たせたのは良い判断ね」
ブロロロロォォォ
鳳翔の艦載機である零戦21型10機は、金剛を天龍たちのところへ誘導し始めるが、金剛は首を横に振って追従してこない。
『ワレ ホウショウ ユウグン ト ゴウリュウ サレタシ』
零戦21型を操縦する妖精さんが発光信号で金剛に呼びかけるが、金剛は悲しそうな表情をして首を横に振る。
金剛の損傷状態を確認する、零戦21型の妖精さんは金剛の足の艤装が破損していることに気がつき、深海棲艦に気づかれないように接触を試みてきた。
妖精さん『コンゴウサン、アシヲケガシテルノ?』
巧みな操縦技術で、金剛の周囲を飛び回りながら零戦21型を操縦する妖精さんの一人が声をかけてきた。
金剛「はい、舵がきかなくなって思うように進めないデス……」
妖精さん『テンリュウタチガ、ムコウニイルケド、イケナインダネ』
金剛「そうデス……、鎮守府に帰還することも出来ないデス……」
妖精さん『ナカマガ、テンリュウノトコロニイルカラ、ツレテキテモラウヨ』
妖精さんの声を聞いた金剛は、驚いたような表情を見せた。
金剛「本当デスか!?」
妖精さん『ウン、ダイジョウブダヨ、シンパイシナイデ』
金剛「Good jobデース!」
金剛の声が段々と明るくなってくるのが感じられた。
妖精さん『ホウショウサンモ、カンバクヲ、ハッカンシテクレタミタイダカラ、ゼッタイニ、タスケテミセルカラネ』
零戦21型の妖精さんは、金剛にそう告げると他の機体と合流し零戦21型10機で編隊を組んで深海棲艦を牽制し始めた。
金剛「艦上戦闘機の機銃じゃ、深海棲艦相手には分が悪いデス」
金剛は、果敢にル級に牽制を仕掛ける零戦21型を見守りながら、主砲をロ級に向けて狙いを定める。
ル級を守るように、対空攻撃を繰り返しているロ級は金剛が狙いを定めている事に気づいている様子は無く、必死に零戦21型を追い回している。
金剛「天龍がいる地点からはだいぶ離れてますし、鎮守府からの距離もまだ遠いデス……」
金剛は目を凝らしながら、動き回るロ級に狙いを定め続けていく。
金剛「援軍が間に合うかはわからないけど、妖精さんは私に希望をくれたし、なりよりも深海棲艦の隙を作ってくれたデース」
ル級とロ級が、零戦21型の牽制に気をとられた一瞬の隙を金剛は見逃さなかった。
ル級と一対一の状況を作るため、ロ級を撃墜しようと考えていた金剛にとって千載一遇のチャンスが今訪れたのである。
前回の投稿から半月以上経ってしまいました。
すっかり風邪をひいてしまい、体調を崩してしまっていました。
今回はついに高速建造材を発見し、新たな艦娘が登場しますね!!
まぁ、今回は顔見せ程度で名前も明かされませんが、隠し事が苦手なもので結構バレバレなのでしょうね(笑)