華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第28話 華人小娘と大和撫子

    - 鳳翔による、金剛発見の知らせのわずか前 -

 

明石「提督~、もう少しゆっくり走って下さいよぉ~」

 

 倉庫で高速建造材を見つけた美鈴と明石は、工廠に向かって走っていた。

 

 倉庫から工廠までは距離にして数百メートルと言うところであるが、大急ぎで走る美鈴に追いつくことが出来ない明石は、泣きそうな声で美鈴を呼んでいた。

 

美鈴「早く高速修復材で新しい艦娘を完成させなきゃいけないんだよ、明石も急いで~」

 

 両手に高速建造材を抱えながら走る美鈴は、数十メートル後ろから追いかけてくる明石を急かしながらも、走る速度を緩めて明石が追いつくのを待っていた。

 

明石「はぁはぁ、提督は何でそんなに早いんですか~」

 

美鈴「えっ、そう?普通だと思うけど?」

 

明石「両手で荷物を持ちながら走っているのに、艦娘より早いなんて普通じゃないですよ~」

 

美鈴「この状態なら、深雪や白雪には勝てないと思うよ~」

 

明石「比較基準が、航行速度38ノット級の駆逐艦ですか……」

 

 自身の足の速さについて、鎮守府でも1、2を争う吹雪型の二人を引き合いに出す美鈴に対して、明石は呆れながら言葉を返す。

 

 そうこうしているうちに、美鈴と明石は2名の艦娘を建造中の工廠へ到着した。

 

美鈴「よーし、工廠についたね!」

 

 美鈴が疲れて肩で息をしている明石に明るく声をかけていると、工廠の前から作業服を着た妖精さんが美鈴に気がつき歩み寄ってきた。

 

妖精さん『テイトク、カンセイニハ、モウスコシ、ジカンガカカルヨ』

 

明石「後どれくらいですか?」

 

妖精さん『1バンドックガ、3ジカンチョット、2バンドックガ、40フンクライ』

 

明石「建造開始から40分くらい経っていますから、2番ドックの建造時間は1時間20分くらいですか……」

 

美鈴「天龍の時より、少し時間がかかるねぇ」

 

明石「もしかしたら、2番ドックは重巡が出来るかもしれませんね!」

 

 明石は、2番工廠の建造時間から、完成する艦娘が重巡洋艦の可能性があることを美鈴に説明する。

 

美鈴「重巡かぁ、まだウチにはいない艦種だね」

 

明石「提督が知っているところでは、紅月鎮守府の最上が重巡クラスの艦娘ですね」

 

美鈴「と言うことは、男の子っぽい娘が来るのかな?」

 

明石「それは最上だけです!!」

 

 

 

 

美鈴「それはそうと、高速建造材はどうやって使えば良いのかなぁ?」

 

 美鈴は、手に持っていた高速建造材を見ながら明石に尋ねる。

 

明石「それは妖精さんに渡すと、工廠の中で一気に艦娘を完成させてくれますよ」

 

美鈴「そうなんだ、じゃあ妖精さんお願いします!」

 

 美鈴は高速建造材のホースを妖精さんに差し出すと、妖精さんは両手でホースを掴む。

 

妖精さん『ドッチノドックデ、ツカエバイイノ?』

 

美鈴「今回は、戦艦を作っている1番でお願いします!」

 

妖精さん『ソレジャア、タンクヲ1バンドックノマエニ、オイテネ』

 

美鈴「は~い」

 

 美鈴は妖精さんに言われたとおり、1番工廠の扉の前に高速建造材のタンクを置いた。

 

    トントン

 

 作業服の妖精さんが工廠のドアをノックすると、工廠のドアが開いて中からヘルメットをかぶった妖精さんが顔を出した。

 

 作業服の妖精さんが、高速建造材のホースを見せるとヘルメットの妖精さんが作業服の妖精さんを工廠内に招き入れ、作業服の妖精さんが工廠内で高速修復材のホースを構える。

 

    ごぉぉぉぉぉっ!!

 

 作業服の妖精さんが手に持った、高速建造材のホースから大きな炎が上がる。

 

美鈴「うわぁ!」

 

 突然吹き出した大きな炎に、美鈴は思わず大きな声を上げてしまう。

 

明石「初めて見る人には衝撃ですよね~」

 

 驚く美鈴とは対照的に、明石は終始落ち着いて様子を見ていた。

 

    ギィィィィ……

 

 作業服の妖精さんが高速修復材を使用し終えると、ヘルメットの妖精さんが再び工廠の扉を閉め、中から何やら機械が動くような音が聞こえてきた。

 

明石「もう少しで完成しますよ!」

 

 明石が美鈴に声をかけていると、作業服の妖精さんが美鈴へ扉の前まで来るように手招きしてきた。

 

美鈴「もう完成したんだね」

 

妖精さん『オマタセシマシタ!』

 

 

 

 

 美鈴は、工廠の扉の前に立ち右手で扉に触れると、扉の奥から黄金色の光があふれてきて、奥から金剛と同じ巫女服の様な服を着た、ロングヘアーでやや銀色に近い明るめの黒髪の女性が姿を現した。

 

金剛と同じ服装の艦娘「高速戦艦、榛名、着任しました」

 

 榛名と名乗る女性は、美鈴の顔を確認し、丁寧にお辞儀をしてくる。

 

 その立ち振る舞いは、明るく皆を引っ張って行く金剛とは少し異なり、大和撫子という言葉を絵に描いたような凜々しさが感じられた。

 

榛名「あなたが提督なのね?よろしくお願い致します」

 

美鈴「はい、私がこの鎮守府の提督の紅美鈴です」

 

 美鈴も、榛名につられてお辞儀をし自己紹介をする。

 

美鈴「金剛と同じ服装と言うことは、姉妹艦というやつですか?」

 

 美鈴の口から金剛と言うワードを聞いた榛名は、目を輝かせて美鈴を見つめる。

 

榛名「金剛……、金剛お姉様も艦娘として生まれ変わっているのですか!」

 

 榛名が感激した様子で美鈴に声をかけたその時、明石が持っていた無線機に急に通信が入った。

 

鳳翔「深海棲艦と交戦中の金剛を発見!敵はル級とロ級各1体、金剛は損傷しているも健在です!!」

 

 龍星鎮守府南西側の海域で、金剛を捜索していた鳳翔から緊急連絡が入った。

 

鳳翔「金剛は援護の必要を認めます、艦爆の発艦許可を!」

 

 深海棲艦に対して単艦で交戦し、損傷を負っているという金剛への援護の必要があるという報告を受けた美鈴は、すぐさま明石から無線機を受け取り鳳翔に返信する。

 

美鈴「金剛は怪我をしているのですね、すぐに救援に向かって下さい!」

 

 美鈴は、榛名が無線の内容を聞いて心配そうな表情をしている事に気がついた。

 

美鈴「(姉妹との再会はもっと落ち着いたところでさせてあげたいけど、今はそんなことを言っている場合じゃないかな……、でも榛名は金剛の妹だし動揺して出撃どころでは……)」 

 

 着任した榛名が金剛の妹であることを知った美鈴は、着任直後に姉である金剛の危機を知らせる報告を受けて榛名が動揺すると考えていた。

 

榛名「……」

 

 しかし、榛名は取り乱すことも無く、無言でジッと美鈴の目を見据えている。

 

 まるで、出撃命令を待っているかのように。

 

美鈴「(この娘の目は、私に何かを訴えかけている?出撃指示を待っているとでも言うの!?)」

 

 美鈴は榛名のまっすぐな瞳を見て、出撃指示を出すことに躊躇していた自分を恥じた。

 

美鈴「(自分の大切な人がピンチだと聞いたら、私だって黙っていられないもんね……、早くこの娘を出撃させてあげなくちゃダメだよね……)」

 

 美鈴は、自分にそう言い聞かせるように大きく深呼吸し、榛名に語りかける。

 

美鈴「聞いたとおり、貴女のお姉さんがピンチなの、着任早々で悪いけど救援に向かってもらえるかな?」

 

榛名「はい、金剛お姉様の危機と聞いてはいてもたってもいられません……、いざ、出撃します!」

 

 榛名は美鈴の言葉を受け、ビシッとした敬礼を見せると、美鈴から手渡された無線機を受け取り出撃準備を開始する。

 

明石「榛名さん、これを金剛さんたちに届けてもらえませんか?」

 

 明石は艤装を装着中の榛名に、背中に背負っていた風呂敷を手渡す。

 

榛名「これは……」

 

明石「私と大淀で準備していたおにぎりです、出撃しているみんなに食べてもらって下さい」

 

榛名「皆さんお優しいのですね、こんなにも気を遣ってくれて」

 

 榛名は、明石から受け取ったおにぎりを受け取ると、出撃のため海岸へ駆け出して行った。

 

 

 

 

 その頃、天龍たちと行動を共にしていた、鳳翔の零戦21型を操縦する妖精さんは、金剛を発見した零戦21型を操縦する妖精さんからの通信を受け、天龍たちに発光信号を送り始める。

 

天龍「ん?妖精さんが何かを言おうとしているな?」

 

 妖精さんの発光信号に気がついた天龍たちは、発光信号の解読を始めた。

 

    『コンゴウ ハッケン ワレニ ツヅケ』

 

    『コンゴウ フショウ ジリキ コウコウ コンナン』

 

 妖精さんは、天龍たちが発光信号に気がついたことを確認すると、自らの機体で誘導を行うかのように、零戦21型を金剛発見ポイントへ向けて移動させはじめる。

 

天龍「お前たち、妖精さんの機体について行くぞ!」

 

白雪「金剛さん、大丈夫でしょうか……」

 

深雪「自力航行困難ってヤバいんじゃねぇか?」

 

雪風「金剛さんは簡単にはやられないはずです、金剛さんを信じましょう!」

 

 天龍たちは、零戦21型を追いかけながら全速力で金剛がいる海域に向けて移動を開始する。

 

    『チンジュフカラ カンバクタイヲ ハッカン』

 

    『コウゴウ ケンザイナルモ ソンショウ カクダイ』

 

 妖精さんは、無線機が使えない天龍たちのために連絡を受けた内容を、逐次発光信号で天龍たちへ知らせてくれている。

 

白雪「金剛さんの損傷が拡大しているですって……」

 

深雪「でも、鳳翔さんも艦爆を向けてくれたみたいだ」

 

雪風「妖精さん、速度を維持しながら発光信号も送り続けてくれているんですね」

 

天龍「妖精さんも、仲間のために頑張ってくれているんだ、オレたちも負けてられねぇじゃねぇか!」

 

 天龍たちは、零戦21型の導くまま大海原を駆け抜けていくのであった。

 

 

 

 

    ズガガガ ズガガガ

 

 金剛を発見した零戦21型隊は、機銃のみの武装であるがなんとか友軍が到着するまで深海棲艦たちを引きつけようと、決死の牽制を続けていた。

 

 しかし、威力の低い機銃では戦艦ル級の装甲に傷をつけることも出来ず、ル級とロ級の対空攻撃は激しさを増す一方であった。

 

金剛「妖精さんたちが作ってくれたChance、逃すわけにはいかないデス……」

 

 金剛は、主砲36.5㎝連装砲の照準を、命中させれば確実に撃破出来るはずの駆逐艦ロ級に向けて慎重に狙いを定める。

 

 しかし、ロ級は零戦21型を追い回しているため、絶えず動き回っておりなかなか照準が合わせられない。

 

金剛「むぅぅ、なかなかLock On出来ないネ……」

 

 この機を逃せば、2体の深海棲艦にジリジリと追い詰められていくのは確実であり、確実にロ級を墜としておく必要があった金剛は、段々と焦りを感じていた。

 

 金剛の焦りに気がついたのか、先ほど金剛に声をかけてきた妖精さんは単機で隊列を離れてロ級を牽制し始めた。

 

金剛「あの機体は、さっき私に声をかけてくれた妖精さんの……?」

 

 ロ級の牽制を続けていた妖精さんは、ロ級の動きを止めようと機銃を乱射する。

 

    ズガガガ ズガガ ズガガ ズガ…… 

 

 しかし、途中で機銃が止まってしまう。

 

金剛「弾切れデスか!?」

 

 機銃の弾薬が切れてしまった零戦21型は、ロ級の対空砲火にさらされてしまう。

 

    ガツン

 

 ロ級の対空砲火が、零戦21型の右翼を撃ち抜き、機体は一気にバランスを失って墜落を開始してゆく。

 

 目障りな零戦21型を墜としたと、ロ級が気を抜いたその時

 

    ドゴォォォン

 

 金剛の放った36.5㎝連装砲の砲弾が、ロ級に直撃しロ級は海に沈んでいく。

 

 

 

 

    ドガァァァン

 

 金剛を救うために、単機で決死の覚悟でロ級を攻撃した零戦21型は、勢いよく海面に落下し爆散した。

 

金剛「ロ級を墜として、敵はル級だけになりましタ……」

 

 金剛は、零戦21型が墜落した海面に視線を落とし、目にはうっすらと涙を浮かべていた。

 

金剛「でも、ワタシが早くロ級を撃てなかったせいで、あの妖精さんは……」

 

 自分がもっと早くロ級を撃墜出来ていれば、ロ級を引きつけるために零戦21型1機が単独行動をとる必要もなく、撃墜されることも無かったと考え金剛は自責の念にかられていた。

 

    ポカン

 

 うつむく金剛の頭に、何かがぶつかった。

 

金剛「ん?」

 

 金剛は、咄嗟に右手で頭にぶつかったモノを受け止めると、それは小さなゴーグルであった。

 

金剛「これは?」

 

 金剛は思わず空を見上げると、そこにはパラシュートで落下してくる零戦21型の妖精さんの姿があった。

 

金剛「Oh!」

 

妖精さん『ダイジョウブ、チャント、イキテルヨ』

 

 妖精さんは、パラシュートで落下しながら金剛に手を振る。

 

妖精さん『キタイハ、ヤラレチャッタケド、チャント、イキテイルカラ、ダイジョウブ』

 

金剛「さすが妖精さんですネー」

 

 金剛は、笑顔で両手を伸ばして妖精さんを受け止め、艤装の上に妖精さんを乗せる。

 

金剛「さぁ、後はル級だけネ、皆が来るまでもう一暴れして見せマース!」

 

 金剛は、零戦21型の牽制を受けているル級に向かって右手を伸ばし、高らかに宣言したのであった。




 今回は前話で省略していた部分を、冒頭で少し遡っています。

 前話から艦載機に搭乗する妖精さんが、登場していますが、艦これの世界観では艦載機が撃墜された時の妖精さんってどうしているのでしょう?

 私的には、付近の艦娘に救助されて実際の船に救助されたときのように帰って来るか、戦闘が終わった後に鎮守府などから救助艇が出されて帰って来るとかそんな想像をしているので、この世界でもその方針でいます。

 でも、そうなると、航空戦で大量の艦載機がやられたら、雷や電が戦闘そっちのけで救助に回ってしまいそうですが、それはそれで個性と言うことでいいかなぁ……
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