ズガガガ ズガガガ
鳳翔の艦載機と、基地航空隊の零戦たちが深海棲艦の艦載機と交戦する様子を少し引いた位置で伊在井咲樂は眺めていた。
咲樂「あれが噂の『始まりの空母』の艦載機ですか、太平洋戦役時での実戦は少ないと聞きましたが多くの優秀なパイロットを輩出したと聞きますし、まずはお手並み拝見と行きましょうか」
咲樂は、穏やかに語りながら後部席に座っている作業服姿の女性を確認する。
咲樂「まだ気を失っていますか……、機体に搭乗することは慣れていないとは言え何だか情けないものね」
咲樂は、やれやれといった表情で正面に向き直ると、咲樂の機体に接近してくる5機の敵機を発見する。
咲樂「後ろでお客様がお休みになっているから、あまり無理はしたくないのですがね……」
咲樂は、そう呟くと操縦桿を巧みに操り敵艦載機の攻撃を華麗に回避する。
咲樂「加賀の艦載機との訓練に比べると、イージー過ぎるわね」
ズガガ ズガガ ズガガ
咲樂の零戦レプリカは、敵艦載機の攻撃を回避すると一気に敵機の真後ろに回り込んで機銃を短く3度に分けて連射し、同時に3機を撃墜する。
咲樂「昔の瑞鶴でも、もっと上手だったわね……」
響「なんだい、あの零戦は?まるでレベルが違うじゃ無いか!!」
咲樂機のマニューバを目撃した響は、驚きの声をあげる。
鳳翔「あの機体、サイズからいって妖精さんでは無くて人間が操縦しているのでは……」
響「あんなのまるで加賀さんの精鋭の艦載機と互角かそれ以上だよ」
鳳翔「加賀さんと互角って……、日本海軍一の実力を誇る一航戦と同レベルのパイロットですか!?」
咲樂のことを知らない響と鳳翔は、驚きを隠せない様子で咲樂機の鮮やかな戦闘に目を奪われていた。
龍星鎮守府の北側において、鳳翔や咲樂たちが深海棲艦の艦載機と交戦中、美鈴は工廠に向けて走っていた。
美鈴「戦闘の音が近くなってきているなぁ、早く新しい艦娘を出迎えないと」
間もなく完成する艦娘を出迎えて、迎撃部隊の増援に向けたいと言う考えは美鈴も麗美も一緒であった。
工廠へ急ぐ美鈴の視界に、足を引きずる様に歩く金剛の姿が見えてきた。
金剛「Oh!提督デスねー!!」
美鈴の姿を見つけた金剛は、先ほどまでの痛々しい様子から一転して元気そうな声で美鈴を呼びながら大きく手を振っている。
美鈴「金剛!戻ってきたんだね、とにかく無事で良かったよ」
金剛「提督こそ無事だったんですネー、無線で声は聞いたけどまだ顔を見ていなかったから安心しましター」
美鈴が向かっている工廠と、金剛が向かっているであろう入居施設は同じ方向にあったため、美鈴は金剛を入居施設まで送っていくことにした。
美鈴「今は緊急事態だからゆっくりおしゃべりはしていられないけど、一緒に行けば少しは話は出来るから一緒に行こうか」
金剛「提督も入渠ですカ?」
美鈴「私は近くの工廠に用事があるんだよ」
金剛「Oh!榛名以外にも艦娘を建造していたのですカ?」
美鈴「榛名には一つだけあった高速建造材を使ったんだけど、もう1人分の建造材が無かったから普通に建造していたんだよ」
金剛「そうでしたカ、さすが提督デース!」
そう言うと、金剛は急に美鈴に抱きついてくる。
美鈴「(そうだ、鳳翔さんの時みたいに金剛にも『気』を送ってあげれば少しは傷が癒えるかも……)」
そう考えた美鈴は、そのまま金剛を抱きしめて『気』を集中し始めた。
金剛「えっ、提督どうしたのデス?」
友人的な感覚で美鈴に抱きついた金剛は、美鈴が優しく抱きしめ返して来ることが予想出来ておらず、若干困惑しながら美鈴に声をかける。
しかし、美鈴は優しい笑みを返すのみで無言で集中している様子であった。
金剛「て、提督?」
金剛は困惑しながらも美鈴のぬくもりを感じ、緊張の糸が緩んだのか出撃による肉体的な疲労と精神的な疲労が一気に襲ってくる感覚を抱いた。
金剛「なんだかポカポカしてきましタ……」
金剛は強い眠気を感じてきて、意識が朦朧としてくる。
幻想郷時代とは違い、『気』を自由に扱えない美鈴はゆっくりと時間をかけて全身から金剛に『気』を送り始める。
鳳翔の時に一度『気』を送ることに成功していたおかげか、段々と美鈴の体全体が緑色の光に包まれ、金剛の体を包み込む。
しかし、疲労していただけの鳳翔とは違い、戦闘で中破状態の金剛の傷を全て治すまでには至らず、見た目では多少の出血が治まる程度でしか無かった。
金剛「Zzz……」
すっかり美鈴にもたれかかって寝息をたてている金剛の顔を見た美鈴は、金剛を背負って入渠施設に連れていこうとしたが、金剛の艤装が邪魔で上手く背負えないことに気が付く。
美鈴「う~ん、金剛の装備が邪魔で上手くおんぶが出来ないなぁ……」
美鈴が困った表情で金剛の艤装をみていると、不意に聞き慣れた女性の声が聞こえてきた。
明石「だいぶ壊れてますねー、急いで修理しておきますね」
金剛の艤装に触れながら、艤装越しに明石が美鈴の顔を覗き込む。
美鈴「あ、明石!提督室で待っていなかったの?」
明石「金剛さんの艤装の修理もありますし、私は待機命令は受けていなかったですよ」
明石は、驚く美鈴の表情をみながら笑顔で答える。
美鈴「でも、もうすぐ空襲が来るかもしれないのに……」
明石「空襲がきたら提督だって危ないですよ?」
美鈴「それは、工廠に新しい艦娘を迎えに行く必要があったから……」
明石「さっきまで散々引っ張り回しておいて、いざとなったら危ないから待っていろは無いですよ!」
明石の言葉に言い返す言葉を失った美鈴は、静かに頷いて力強く明石の瞳を見つめる。
明石「と、とにかく金剛さんを連れて行くなら、艤装は私が運びますから!」
美鈴「ありがとう、明石……」
美鈴は金剛を入渠施設へ、明石は金剛の艤装を修理するために工廠へ2人は歩みを進めて行った。
金剛「ていとくぅ~、紅茶が飲みたいネ~」
美鈴「こんなにハッキリした寝言を言う人も珍しいなぁ」
美鈴は、背中に背負った金剛の寝言に思わず笑いがこみ上げ、金剛の顔を覗き込もうとすると、金剛の両肩に3人の妖精さんが乗っていることに気が付いた。
美鈴「あれっ、どうしてこんな所に妖精さんが?」
明石「金剛さんの艤装の妖精さんたちでしょうか?」
妖精さんたちは眠り込んだ金剛の様子を見ていたが、美鈴と明石が見ていることに気が付くと慌てて美鈴に敬礼をしてきた。
よく見ると、妖精さんたちは緑色のパイロットスーツに茶色のマフラーを身につけており、頭にはゴーグルをつけていた。
明石「この妖精さんたち、艦載機のパイロットたちでは?」
美鈴「空母じゃない金剛にどうして飛行機のパイロットが?」
不思議そうな表情の美鈴に対し、明石は何かを思い出したような表情であった。
美鈴「明石は何か知ってるの?」
明石「金剛さんの救援に行っていた鳳翔さんの零戦21型が3機撃墜されていると報告がありましたが、そのパイロットを金剛さんが救助していたのではないでしょうか!」
美鈴「そうなの?妖精さんたちにも聞いてみよう!」
そう言うと、美鈴は妖精さんたちに向かって声をかける。
美鈴「あなたたちは、鳳翔さんのところの妖精さんなの?」
その言葉に妖精さんたち3人は、そろって頷く。
妖精さん『ワタシタチハ コンゴウニ タスケテモラッタンダ』
一番手前にいた妖精さんの声が美鈴に伝わってくる。
美鈴「そうなんだ、鳳翔さんは今出撃中だけど戻ってきたら会わせてあげるからね」
美鈴の声に、後ろの2人の妖精さんたちは嬉しそうに手をあげているが、声をかけてきた手前の妖精さんは少し驚いた表情をしていた。
妖精さん『モシカシテ テイトクハ ワタシノ コエガ キコエテイルノ?』
美鈴「うん、耳で聞こえるというか、頭に直接伝わってくるよ!」
妖精さん『スゴイ! カンムスジャナイノニ ワタシタチノ コエガ キコエルナンテ!!』
美鈴は、深雪や鳳翔から妖精さんの声が聞こえるのは基本的に艦娘だけで、人間では妖精さんの声が聞こえる者はほとんどいないと聞いた事を思い出した。
美鈴「私も、使えなくなっていた『気』を使えるようになるまでは、妖精さんとは身振り手振りでしかお話し出来なかったんだけどね」
妖精さん『サッキ コンゴウノ ケガヲナオシタ マホウノコト?』
美鈴「魔法とは少し違うかもしれないけど、大雑把に言うとそうなのかなぁ……」
妖精さん『スゴイ テイトクハ マホウショウジョ ダッタンダネ!』
明石「ぷっ、魔法少女って……」
美鈴と妖精さんの会話を隣で聞いていた明石は、妖精さんの言葉に思わず吹き出してしまう。
妖精さんたちと話をしているうちに、美鈴は目的の入渠施設へ到着した。
美鈴「ふぅ、ようやく到着した」
明石「では、金剛さんを起こして入渠してもらって下さいね、私は艤装の修理があるので先に工廠へ行ってますよ」
美鈴「うん、私も金剛が入渠したら工廠に行くよ」
明石が金剛の艤装を抱えて工廠に向かっていく様子を確認した美鈴は、入渠施設に入り金剛に声をかける。
美鈴「金剛、そろそろ起きて」
しかし、金剛は幸せそうに美鈴の背中に顔を埋めたまま寝息を立てている。
美鈴「私も紅魔館にいたころ、よく門の前で昼寝……、いや瞑想をしていたけど、今は緊急だから起きてもらわないと」
そう言うと、美鈴は金剛を近くにあったベンチに座らせるように降ろし、金剛の両肩を軽く揺らす。
金剛「むふふ、紅茶が美味しいネー」
美鈴「紅茶の夢でも見ているのだろうけど、なかなか起きないなぁ……」
美鈴は、更に強く金剛の肩を揺らし大きな声で金剛に声をかける。
美鈴「金剛、そろそろ起きてよ!」
金剛「ムニャムニャ……」
金剛は何か言葉を発しながら、ゆっくりと目を開け、目の前にいた美鈴の顔を見ると驚いた様子で飛び起きた。
金剛「提督!?」
美鈴「おはよう、金剛」
金剛「はっ!もしかして寝ていたデース?」
美鈴「疲れていたみたいだからね、それよりも怪我を治すために入渠して欲しいんだけど」
金剛「そうデシタ……、ってワタシの装備が無いデース!」
金剛は装着していたはずの艤装が無い事に気が付き、慌てた様子で周りを見渡す。
美鈴「壊れた艤装は、工廠で明石が修理してくれているよ」
金剛「Oh!そうでしたか、アリガトウゴザイマース!」
美鈴「私も、工廠に行って新しい艦娘を迎えに行くけど、金剛はゆっくり休んでいなよ」
金剛「高速修復材は使っちゃダメですカ?」
美鈴「良いけど、艤装の修理には時間がかかるみたいだし少し休憩していなよ」
金剛「そうですか、ではお言葉に甘えマース!」
金剛が立ち上がると、ベンチに座っていた妖精さんたちも一緒に立ち上がる。
美鈴「妖精さんたちも一緒にお風呂に行ってきなよ」
美鈴の言葉に妖精さんたちは喜びながら万歳をしていた。
金剛を入渠させた美鈴は、近くにある工廠にやって来た。
美鈴「今も鳳翔さんたちが必死に敵の飛行機を食い止めてくれているんだ、早く新しい艦娘を連れて行かないと」
美鈴は、工廠内で金剛の艤装の修理を行っている明石の様子を見ながら、艦娘を建造している2番工廠の扉の前にやって来ると、美鈴の姿に気が付いた作業服の妖精さんが近づいてきて状況を説明する。
作業服の妖精さん 『テイトク チョウドイイトコロニ! モウスグ カンセイスルカラ マッテイテネ』
妖精さんの言葉を聞いた美鈴が扉の前で待機していると、近くで艤装の修理を行っていた明石が近寄ってくる。
明石「艤装の修理は妖精さんに頼んじゃいました、もうすぐ完成ですよね?」
美鈴「そうだね、妖精さんがもう少しだって言っていたよ」
明石は、懐から懐中時計を取り出し時間を確認する。
明石「建造開始から大体1時間20分、巡洋艦クラスなのは間違いないですね!」
美鈴「一体どんな娘が来てくれるのかなぁ」
2人が話をしていると、工廠の扉が一瞬輝き、ヘルメットをかぶった妖精さんと、作業服の妖精さんが万歳をしながら美鈴に完成を報告する。
明石「新しい艦娘が着任したみたいですね!」
美鈴「よし、それじゃあ早速出迎えよう!」
そう言うと美鈴は、2番工廠の扉に近寄りドアを開けるために手を伸ばした。
今年中に何とかもう一話をと考えていたのですが、何とか間に合いました(笑)
今まで使っていただいぶ古いパソコンのモニターから新しいモニターに買い換えたら、妙に本家艦隊これくしょんがヌルヌル動く様な不思議な感覚に陥っている今日この頃です!
今回は、美鈴が久しぶりに動き回っている気がしますが、主人公なのですから今後はもっと動き回ることに期待したいです!(書いているのは自分ですが……)
補足ですが、前回颯爽と登場した伊在井咲樂と美鈴はまだ接触していない(無線での会話もしていない)状態ですので、今後の接触に期待したいです!(書いているのは自分ですが……)
前回募集した『質問コーナー』ですが、早速感想で質問をいただいたので回答をしたいと思います!
~質問~
作者が好きな艦娘、深海棲艦、東方キャラを教えてください!!
~回答~
好きな艦娘は、みんなです!!
……と言っては質問の答えになっていない気がするので一番好きな艦娘はゲーム内でも唯一ケッコンカッコカリをしている『金剛』でしょうね☆
まぁ、最近はレベルを上げていなかった舞風を改装したときに聞いた「なんてね。」にやられ気味だったりして、まだまだあまり使っていなかった艦娘たちも多いので新たな魅力にあふれているかなぁ~と思います。
深海棲艦は、初めて見た時の印象が強烈だったのは潜水艦カ級のなんか呪われそうな感じが妙に印象に残っています。(好きかどうかと言う回答にはなっていませんが)
東方キャラについては、美鈴と咲夜さんは特に好きですし、レミリアお嬢様やパチュリー、妹様(フランドール)に小悪魔と言った紅魔館メンバーが特に好きですし、アリスや妖夢、永遠亭メンバーなどいっぱいいますが、いろんなRPGとかでキャラクターを作る系の場合、美鈴、咲夜さん、レミリアは外していないですね。(リーダー的な意味で勇者ポジがレミリア、武闘家系が美鈴、盗賊やアサシン系などのナイフ使いが咲夜さんみたいな感じで)
今年から始めたばかりで、まだまだ力不足な小説ですが、来年も細々と続けていこうと思いますので、どうかよろしくお願いします!!