美鈴が2番工廠のドアに手をかけると、工廠の中から金色の光と共に1人の人影が見えてきた。
美鈴「どんな娘が来てくれたのかな?」
工廠から出て来た艦娘を、美鈴が目を凝らしながら見ると、光の中から緑色の髪を大きな緑色のリボンで束ねたポニーテールの女性が姿を現した。
ポニーテールの艦娘「はーい、お待たせ?兵装実験軽巡、夕張、到着いたしました!」
夕張と名乗る艦娘は、元気よく美鈴に敬礼をして挨拶する。
美鈴「初めまして、私が龍星鎮守府の提督をしている、紅美鈴です」
美鈴は、夕張に敬礼を返すと右手を差し出して握手を求める。
夕張「女性の提督ですか、こちらこそよろしくお願いします!」
夕張は笑顔で美鈴の手を取り、握手に応じる。
明石「夕張と言ったら、小型艦に効率的に兵装を搭載する研究をしていた軽巡ですよね」
夕張「そう、3,000t級の船体だけど、5,500t級と同等の火力を持つ画期的な巡洋艦よ!」
明石「今度、艤装を見せて下さい!みんなの艤装を改造する時の参考になりそうです!!」
船体や艤装の修理・改造を得意とする明石は、夕張が持つ実験艦としての艤装に興味津々な様子であった。
美鈴たちが、新たに着任した夕張と会話をしていると、提督室の麗美から明石が携帯していた無線に通信が入る。
明石「はい、明石です」
麗美「美鈴提督はいるかしら」
無線の声を聞いた美鈴は、明石から無線機を受け取ると麗美の呼びかけに答える。
美鈴「どうしました?」
麗美「そろそろ敵の航空機に突破されそうなの、新しい艦娘とは合流出来たかしら?」
美鈴「はい、なんとか実験軽巡とかいう夕張が着任しました!」
麗美「あの兵装実験艦の夕張!?」
明石「そうなんです、あの夕張が着任したんですよぉ!」
興奮する麗美と明石の会話を聞きながら、美鈴は思い出したかのように口を挟む。
美鈴「わざわざ無線をくれたと言うことは、防衛線は厳しい状態なのでしょうか?」
麗美「そうだったわ、咲樂たちの援軍のおかげで敵航空機のほとんどの足止めに成功したのだけど、10機ほどの敵航空機がバラバラに防衛線を突破したらしいの」
明石「そ、そんな……」
麗美「今、大淀も明石が準備していた対空用の艤装で迎撃するために出て行ったわ、そちらからも応援に向かって欲しいの」
美鈴「はい、明石に夕張もいいかな?」
明石「は、はい……」
夕張「出撃ね!対空戦用の艤装のチェックもしっかりするからね!」
美鈴の指示にやる気満々の夕張と、絶望に満ちあふれた明石の表情はまさに対極的であった。
夕張「軽巡夕張、出撃するわよ!」
夕張は1人で海岸へ向かって高速で駆けだして行った。
町井田「くっ、何機か突破されたぞ、誰か追えないのか!?」
輸送艦ミディアで防衛線の指揮を執っていた町井田は、悲鳴に近い声をあげていた。
響「こっちもまだまだ敵機が来る、追いかけるのは無理だよ」
雷「電が被弾したわ、突破した敵を追うのはこっちも無理よ!」
電「こんな時に申し訳ないのです……」
対空砲撃を続けていたミディアと紅月鎮守府の響たちは、徐々にダメージが大きくなってきており、突破した敵航空機を追うことが出来ない状態であった。
鳳翔「基地航空隊の皆さんが来てくれましたが、やはり敵の数が多すぎる……、敵航空機を全て抑えることは無理なのでしょうか?」
激しい戦闘の末、多数の艦載機の被害を出してしまった鳳翔もいつもの気丈さは無く、つい弱気を出してしまう。
そんな中、咲樂の機体が防衛線を突破した10数機の敵航空機を単機で追いかけ始める。
咲樂「龍星鎮守府の中には、お嬢様がいらっしゃる!お嬢様に害する者は全て駆除しなければ!!」
今まで冷静に基地航空隊を指揮していた咲樂も、声に焦りがにじみ出ていた。
麗美「諦めてはダメよ!美鈴が建造した艦娘が援軍に向かっているわ!!」
敵航空部隊に押され初めて士気が下がり始めていた防衛部隊に向けて、麗美が通信を送ってきた。
響・電・雷「司令官!」
咲樂「お嬢様!!」
麗美の一言で、紅月鎮守府の面々は一気に士気を取り戻す。
町井田「麗美……、ふっ、さすがは良いタイミングで援軍を出してくれる、それに一言で挫けかけていた紅月鎮守府の面々の士気がもどったな」
麗美の声を聞いた途端に、艦娘たちは喪失していた戦意を取り戻し、咲樂は冷静さを取り戻した様子を見て町井田は思わず感嘆する。
咲樂「戦闘中に冷静さを失うなんて、私もまだまだね……」
咲樂は基地航空隊の中で、僚機を失って孤立していた零戦52型に自分に付いてくるように指示し即席の編隊を組むと、周囲を一瞥して瞬時に戦況を確認する。
咲樂「残存戦力は、基地航空隊が52型7機に21型6機と私を含めて14機、それに鳳翔隊が21型5機に九六式4機の9機、対して敵機は防衛線を突破した11機とその他が約40機……」
当初の戦力差40対100と比較して、現状が28対約50と善戦しているもの基地航空隊と鳳翔隊は確実に気力・体力の消耗が見え始めていた。
咲樂「突破された敵艦載機は、私の編隊で相手をするとして、残りの戦力差は約1.5倍というところか……」
咲樂はこの戦力差なら、自分の指揮が無くとも対応出来ると判断し、僚機とした零戦52型1機と共に防衛線を突破した敵航空隊の追撃を決断する。
咲樂「鳳翔さん、私は僚機と共に突破された敵機を追撃するわ、残りの基地航空隊の指揮権をお願いして良いかしら?」
鳳翔「分かりました、鎮守府には私たちの提督や仲間たちもいます、よろしくお願いしますね!」
鳳翔は咲樂からの通信に即座に回答すると、鎮守府にいる美鈴や大淀、明石に入渠中であろう金剛の事を思い浮かべていた。
咲樂「伝説の一航戦さんがしっかりしていればこの程度の敵なんて鎧袖一触なのでしょうけど、ご迷惑をおかけしますわ」
咲樂はそう呟くと、僚機を伴って龍星鎮守府方向に向かって行った。
鳳翔「一航戦?紅月鎮守府にいるという加賀さんの事でしょうか?」
咲樂の呟きを聞いた鳳翔は、かつて大戦で艦娘としての力を失ったと聞く赤城と共に一航戦として数多くの深海棲艦を打ち破ってきた紅月鎮守府の秘書艦の1人である加賀を思い浮かべていた。
明石「あれ?おかしいなぁ」
美鈴と共に、増援に向かうため先行していった夕張の後を追いながら鎮守府方向へ向かっていた明石は、時折何も無い通路を見ながら不思議そうに首をかしげていた。
美鈴「さっきから何度も不思議がっているけど、何かあったのかな?」
明石の様子に気が付いた美鈴は、何を気にしているのかを明石に尋ねる。
明石「確かこのあたりにも対空用の高角砲を置いていたはずなのですが、無くなっているんですよ」
美鈴「大淀が持って行ったか、事情を知らない妖精さんが片づけたのかな?」
ウゥゥゥゥー ウゥゥゥゥー ウゥゥゥゥー
その時、敵襲を告げるサイレンが連続で鳴り響いた。
美鈴「このサイレンは……?」
サイレンを聞いた美鈴と明石は、咄嗟に上空を確認する。
明石「敵の航空機が鎮守府上空に襲来したみたいですね」
美鈴「どこか建物の中に避難しよう!」
美鈴は明石の手を引き、提督室に向かって駆けだした。
その瞬間、美鈴は後方から敵意のようなものを感じ、振り向き上空に視線を向けると、すでに目視出来る距離に敵航空機が接近している事に気が付く。
美鈴「もう、あんなところまで来ているなんて……」
明石「こっちに向かってきます、見つかったんじゃないですか!?」
美鈴が見つけた敵航空機は、真っ直ぐに美鈴たちがいる方向に向けて飛行してくる。
美鈴「ダメだもう逃げられない、戦おう!」
明石「武器も無いのにどうやって上空の敵機と戦うんですかぁ」
美鈴「近くに何か無いの?」
明石「何も見当たりません、敵機は私が引きつけますから提督だけでも逃げて下さい!!」
明石は美鈴の前に立ち、早く逃げるように美鈴に促す。
美鈴「それはダメ、逃げるなら明石も一緒だよ!」
美鈴は、明石の手を引き一緒に来るように言うが、明石は素直に言うことを聞こうとしなかった。
明石「私は艦娘、深海棲艦と戦うために生まれてきた兵器です、今は戦うことが出来なくても提督を守ることくらいさせて下さい」
美鈴「兵器……?いや、それは違うよ!!」
明石の発言に対して、美鈴は語気を強めながら否定する。
明石「私は多少壊れたって、入渠したら治りますが提督はそうも行かないですよね」
美鈴「だとしても、私はこの鎮守府の提督……、リーダーなんだ」
明石「リーダーだからこそ、ここは私を盾にしてでも逃げ延びて下さい!」
明石はテコでも動かないという気迫で、自分を囮にして逃げるように美鈴に迫るが、美鈴も一歩も引こうとしない。
美鈴「どうしても言うことを聞かないなら、無理矢理でも聞いてもらうよ!」
ここで口論している場合では無いと判断した美鈴は、両手で明石の腰を掴んで一気に持ち上げる。
明石「えぇぇ!!」
突然の事に明石は素っ頓狂な声をあげる。
美鈴「今は時間が無いから、無理にでも連れて行くからね!!」
美鈴は、明石を肩に担いで人攫いのように走り出す。
明石「わわわわ……、分かりました!一緒に逃げますから降ろして下さい~!!」
龍星鎮守府上空に侵入した11機の敵航空機を追う咲樂は、敵機の位置を確認するために周囲の索敵を行っていた。
咲樂「敵はバラバラに動いているわね、せめてまとまってくれていればまとめて落とせるのですが……」
ちりぢりになりながら防衛線を突破していた敵航空機たちは、統率出来るものがいないのかそれぞれ自分勝手に行動しているらしく、まとまりが無くバラバラに動いている状態であった。
咲樂は、現時点で龍星鎮守府の各施設に大きな被害が出ていない事を確認すると、中央に所在する提督室兼司令室を目指した。
咲樂「麗美お嬢様はあそこにいらっしゃるはず、あの場所だけでも確実に死守する必要があるわ……」
咲樂が、僚機である零戦52型の妖精さんに自分が操縦している零戦レプリカに追従するように指示をしていると、後部席で気を失っていた作業服の女性が目を覚ました様子であった。
咲樂「ようやくお目覚めかしら?」
作業服の女性「うぅ……」
咲樂「ちょっと戦闘に入っただけで気を失うなんて、情けないですわ」
作業服の女性「私は、貴女のようなパイロットではありませんし、あんな加速や旋回をされたら誰だってついて行けませんよ」
抗議する作業服の女性の表情をミラーで確認しながら、咲樂は小さく微笑む。
作業服の女性「ところでここは?」
作業服の女性は周囲を見渡し、初めて見る龍星鎮守府を目視していた。
咲樂「最近、新設されたという龍星鎮守府というところよ」
作業服の女性「あぁ、麗美さんが言っていた『紅き龍』が眠っているという鎮守府ですね」
咲樂「麗美さんとか、一航戦とはいえ馴れ馴れしいわね……」
作業服の女性の発言に、咲樂は怪訝な表情を見せる。
作業服の女性「こ、怖い顔をしないで下さい、それに今の私はもう一航戦ではなく、ただの作業員ですよ」
咲樂「じゃあ、元一航戦様にお願いがあるのだけど、敵機の位置を確認出来るかしら?」
作業服の女性「あぁ、この鎮守府は深海棲艦の攻撃を受けているのですね、分かりました索敵はお任せ下さい」
咲樂「艦娘としての力を一度失ったとはいえ、最近はリハビリも好調と聞くし、私たちより目は良いのだから任せたわよ、一航戦!」
咲樂の言葉に、作業服の女性は少し不満そうな顔をする。
作業服の女性「咲樂さん、私はもう一航戦ではありませんし、一航戦という名前でもありません」
咲樂「では、なんとお呼びすれば良いかしら?」
作業服の女性「今の私は、紅月麗美提督に『あかぎ』という名前をいただいています、出来ればその名前で呼んでいただけると嬉しいですね」
咲樂は、自分の問いかけに対して笑顔で自分の意思を伝えてきたあかぎの表情をミラーで確認すると口元を緩ませながら小さく頷いた。
咲樂「わかったわ、あかぎさんよろしくお願いするわ」
あかぎ「はい、いまの私に昔の『赤城』としての力は無いですが、共に力を合わせて深海棲艦に打ち勝ちましょう!」
敵航空機に発見された美鈴と明石は、機銃や爆撃によって破壊された建物の瓦礫に隠れながら様子をうかがっている。
明石「どこかで大淀が対空装備を使って敵機を迎撃しているはずです、無線で助けに来てもらいましょう」
美鈴「いや、大淀には麗美さんがいる提督室を守ってもらわなきゃ私たちの逃げ込む場所までやられてしまうよ」
そう言うと美鈴は、足下に転がっていた大きめの石を拾い上げて20メートルくらい離れた場所にある破壊された小屋の窓に向かって投げつける。
ガシャーン
美鈴の投げた石は見事に窓ガラスに直撃し、ガラスは大きな音を立てて割れる。
明石「そんな音を立てたら見つかっちゃ……」
突然の美鈴の行動に、思わず抗議する明石に美鈴は素早く左手で明石の口を塞ぐ。
美鈴「大きな声を出さないで」
美鈴に制止された明石は、我に返り静かに頷く。
ガラスが割れる音に気が付いた敵航空機は、その音につられるように美鈴が割った窓ガラスに近寄り機銃を斉射する。
ズガガガガガァァ
近くに着弾する機銃の轟音に、思わず手で耳を塞ぎながら美鈴は明石に海岸方向へ向かうように目で指示を送る。
明石「ついて来いって、そっちは海岸の方角じゃ……」
明石が美鈴が向かう方向に視線を向けると、大量の艤装を両手や背中に積んだ女性の姿があった。
夕張「あちこちに機銃や高角砲が置かれていたからって、ちょっといろいろ積みすぎたかしら」
それほど大きくない体に、過積載と思えるほどの対空装備をした夕張であった。
明石「あれだけの艤装を全部装備したって言うの!?」
空襲に備えて、鎮守府内のあちこちに明石が並べていた対空艤装がなくなった原因が目の前にあった。
大量の艤装を装備した夕張の動きは明らかに重そうであったが、何故か満面の笑みを見せる夕張は、駆け寄ってくる美鈴や明石に気が付くと、その後ろから迫ってくる敵航空機の存在に気が付いた。
夕張「あれが提督の言っていた敵ね!」
夕張は、両手に装備した大量の艤装の照準を敵航空機に向ける。
夕張「さっそく艤装のチェックが出来るわね!」
全ての艤装の照準を敵航空機に向けた夕張は、一度大きく息を吸い込み、射程内に敵航空機が来るのを待つ。
美鈴「やっぱりここにいたのは夕張だったのね」
明石「提督はこっちに夕張がいることを知っていたんですか?」
美鈴「夕張かどうかはハッキリ分からなかったけど、艦娘の『気』を感じたからね」
そう答えると美鈴は走りながら笑みを見せる。
夕張「あと少し、もうちょっとこっちに来るのよ……」
金剛と比べると射程の短いうえ、海上と違い艤装による推進力を発揮出来ない夕張は、敵航空機が自分の射程に入ってくるのをじっくりと確認している。
そして、美鈴と明石を追いかけて夕張に気づいていない敵艦載機が、夕張の射程に入った瞬間に夕張が敵艦載機に照準をあわせる。
夕張「来たわね、さぁ!色々試してみても、いいかしら?」
なんとか1月中に今年の1作目を投稿出来ました。
色々忙しかった様な気がしたり、艦これの2019年冬イベをやっていたりしているうちに気が付けば1月も後半になってしまいました。
でもそのおかげか、艦これの冬イベは提督を初めて以来初の完全攻略となりました!
今後は、もっと速いテンポで投稿出来るように頑張りたいと思います!
さて、前回同様に今回も質問をいただいたので、回答したいと思います!
~質問~
作者が艦これをプレイし始めた理由とこの小説を書こうと思った理由を教えてくださーい!
~回答~
昔、とあるガンダムのネットゲームをやっていたのですが、そのゲームが2014年に終了してしまい、新しいゲームをと思ったときに候補にあがったのが、艦これで理由としてはそんな大層なモノでは無かったです(笑)
元々ミリタリーにも興味がありましたが、太平洋戦争と言えば戦艦大和や零戦位しか知らないようなただのアニメや東方Projectが好きな程度の人間でした。
しかし、艦これをプレイしたくて何度も何度も新規登録を試みましたが、その頃はすでに超人気ゲームになっていたため、着任出来たのは柱島泊地サーバーが出来た2015年の夏でした……(着任までの道のりは長かった……)
次にこの小説を書いた理由としては、子供の頃から漫画を書きたいとか思っていたのですがどうにも絵の才能も無く、大人になってからも東方や艦これ系の動画など見るのが趣味になっていたので、自分も作りたいと思ったこともありましたが、動画を作る技量も無い事に気がつかされました。
しかし、高校生の頃に漫画を書きたいけど話を作れないと言う友人と、書きたい話はあるけど絵が描けないと言う私が手を組んで漫画を作った事を思い出し、自分で何か物語を作れないかと考え、昔から好きだった東方Projectと、今まさにプレイしている艦隊これくしょんを参考にしていわゆる二次創作の話を書いてみたいと思ったのがきっかけですね~。
ここだけの話、今回の話が遅れていたのは、前々から言っていた登場人物図鑑を作ろうとして難航していたのも大きな理由となっています。
どういう形で作れば見やすくなるか考えながら作っていますので、そのうちこちらの方も公開出来ればなぁと思います。