ドォォォン ドォォォン
明石は、美鈴を追おうとしている敵航空機に向かって高角砲を連射する。
カァァン カァァン
明石が放った高角砲の砲弾は敵航空機をかすめるが、やはり主機となる艤装が無い明石の砲撃では威力が10分の1以下となり大きなダメージを与えることが出来ない。
明石「2、3発当ててもダメなら、何十発でも当てて見せます!」
そう言うと、明石は両手に高角砲を持って敵航空機が飛行している空を見上げている。
夕張「明石も気合いバッチリね!」
真剣な表情で敵航空機に睨みをきかせている明石の横に、両手で複数の対空機銃を装着した夕張が肩を寄せてくる。
明石「戦うことは得意じゃないし、好きじゃ無い……、けどここは私の、私たちの鎮守府、深海棲艦なんかに好き勝手させるわけにはいかないって思って……」
夕張「ふ~ん、私はまだ来たばかりで提督と明石しか知らないけど、明石がそう言う位いい場所なんだね、私もいきなり家が無くなるとか勘弁して欲しいし頑張らないとダメみたいね!」
明石の攻撃に、敵航空機が応戦する構えを見せ、明石と夕張は2機の敵航空機から挟撃を受ける形となった。
夕張「来たわね、いいデータをとってみせるわよ!」
明石「私の攻撃じゃ撃破できないけど、こっちの1機は牽制するからそっちの1機は任せます!」
明石と夕張は、互いに背中を合わせて上空の敵航空機に向かって対空砲火を開始した。
ズダダダ ズダダダ
入居施設の上空で、咲樂は5機の敵航空機と激しい交戦を繰り広げていた。
咲樂「ちっ、一遍に戦うには敵の数が多いわね……」
咲樂は、後部席にあかぎを乗せていることもあり、多少なりとも被弾しないように回避重視の戦闘を行っているからか、なかなか敵航空機を撃墜することが出来ない状況であった。
咲樂「個々の実力なんて、たかが知れているけど流石に1対5じゃ戦いにくいわ……」
咲樂が敵航空機に照準を合わせようとすると、別の敵機が次々に咲樂の機体へ攻撃を仕掛けてくる。
咲樂「くっ、少しでもいいから敵機の注意を他に引くことが出来れば……」
咲樂は本来であれば、このくらいの戦力差をモノともしない自信があったが、本来の愛機ではなく練習機での出撃である上、後部席ではあかぎが搭乗していて気を失っているという悪条件が重なっているため、思うような戦闘が出来ない状態であった。
咲樂「燃料も弾薬も少なくなって来ているわね、この敵を倒しきることが出来るかしら……」
咲樂は、敵航空機の攻撃を紙一重で回避しながらも計器を確認し、冷静に戦況の把握に努めようとしていた。
美鈴「そんな……、金剛は無事なの?」
金剛の下に向かう美鈴の目の前に、敵航空機の爆撃によって破壊され黒煙をあげる入渠施設が見えてきた。
更に、自分たちで建設した施設が破壊されて、泣き出している妖精さんや、逃げ遅れて怪我をした妖精さんを懸命に運び出す妖精さん達の姿が次々と美鈴の目に映る。
美鈴「みんな、大丈夫? 怪我をした子は提督室に避難して!」
美鈴は、目の前にいた入渠施設で働いていた妖精さん達に駆け寄って声をかけ続け、負傷していない妖精さん達は美鈴の指示に従い怪我をして身動きがとれない妖精さん達を救助し提督室へ運んでいく。
美鈴「金剛や、一緒にいたパイロットの妖精さん達の姿が無い、どこにいるんだろう……」
美鈴は、負傷者の救助を行っている妖精さん達と共に崩れた建物の瓦礫を撤去しながら、負傷した妖精さんや姿を確認出来ない金剛達の捜索を続ける。
美鈴「この近くから金剛の『気』を感じない、最悪の事態だけは……」
美鈴は、焦る気持ちを懸命に抑えながら目の前の瓦礫を慎重に撤去しながらも、金剛の『気』を感じ取ろうと意識を集中していた。
妖精さん『テイトク コレハ……』
美鈴と共に救助作業を行っていた妖精さんが、どこかで発見したらしい金色の金属片を拾って美鈴に手渡してきた。
美鈴「これは……、まさか……」
それは爆風で折れ曲がり変形してしまってはいたが、金剛がいつも頭につけていた電探カチューシャによく似ていた。
美鈴「こ、これをどこで?」
美鈴は、震えた声で妖精さんにこのカチューシャを発見した場所について尋ねる。
妖精さん『コッチ ツイテキテ』
妖精さんは、涙目になりながら美鈴を案内する。
妖精さんに案内された場所は、大浴場や脱衣場が建っていた場所であった。
美鈴「嘘……、そんなことって……」
かつて大浴場があった場所は、敵航空機が投下した爆弾が直撃したらしく地面には大きな穴が開いており、そこにあったはずの浴室や脱衣場は跡形も無い状態であった。
焼け落ちた柱や、真っ黒になって砕け散った石材が周囲に散らばっており、その場に人や妖精さんがいたとしても遺体を発見できるような状態では無かった。
美鈴「でも、まだここに金剛達が残っていたかなんてわからな……」
美鈴は希望を捨てまいと、爆撃があった時にこの場所に金剛達がいたかどうかわからないと口にしようとした時、目の前に焼け焦げた布片を見つけた。
その布片は白と赤の生地が特徴的な物で、見るからに金剛が着用していた巫女服風の衣服の生地であった。
美鈴「あぁっ……」
その布片を見つけた瞬間、美鈴の脳裏に無防備な状態で爆発に飲み込まれてしまった金剛の姿が思い浮かんでしまい、言葉が止まってしまう。
隣にいた妖精さんも、美鈴と同じく布片を見た瞬間に動きが止まり、言葉を失ってしまっていたが、だんだんと目には涙があふれてきて泣き始めてしまう。
妖精さんが泣き出した瞬間、美鈴も膝から崩れ落ちその場にうずくまってしまう。
美鈴「うぅ……、私が休憩しておけなんて言ったばかりに……」
美鈴は、高速修復材の使用確認をしてきた金剛の申し出を断り、艤装の修理が終わるまでゆっくり入浴しているように言った自分の指示を悔やんでいた。
美鈴「艤装はさておき、金剛たちだけでも高速修復材ですぐに回復させてあげるべきだった……」
美鈴は、涙をこらえながら左手で金剛のカチューシャと衣服の布片を握りしめながら、右手を強く握って右拳を地面に振り落とす。
美鈴「うぅ……、こ、金剛……、取り返しのつかないことを、取り返しのつかないことをしてしまった……」
天龍「見えたぞ! もうドンパチ始まってるぞ!!」
深雪「鎮守府から煙が上がってる! みんな大丈夫なのか!?」
白雪「島の北側から更に敵の艦載機が近づいています!」
龍星鎮守府南西側の海域にいるであろう敵空母部隊を捜索していた 天龍、深雪、雪風、白雪は途中で合流した榛名からの情報により、敵航空機の攻撃を受けている龍星鎮守府救援のために海域攻略を後回しにして急遽帰還中であった。
榛名「あぁ……鎮守府が燃えている……、あの日に守れなかった呉のように……」
火の手が上がる鎮守府の光景を目の当たりにした榛名は、急に全身を震わせて声も震え顔からは血の気が引いていた。
雪風「榛名さん! 大丈夫ですか?」
艦娘は艦船時代の記憶や経験を多かれ少なかれ持っており、その事が戦闘に役立ったりトラウマになってしまったりする場合があるという。
榛名の場合、自身が大破着底した呉軍港空襲の記憶と、龍星鎮守府が現在受けている空襲の光景が重なってしまい強いトラウマ反応を引き起こしてしまったのである。
榛名「嫌です……、もうみんながいなくなるのは……、みんなが沈むのは……」
榛名は声を荒らげながら、両手で頭を抱え込んでしゃがみ込んでしまう。
雪風「榛名さん! 榛名さん! しっかりして下さい!!」
深雪「どうしちゃったんだよ、榛名さん!」
白雪「鎮守府が攻撃を受けていることが、過去のトラウマを引き起こしてしまっているのでは無いでしょうか?」
天龍「くそっ、でも事態が事態だ……、雪風! 榛名さんを頼む! 深雪と白雪はオレと一緒に鎮守府の救援に向かうぞ!!」
天龍は、雪風に榛名の護衛を指示し、深雪と白雪を引き連れて鎮守府の救援に向かう決断を下すのであった。
ウゥゥゥゥー
響「このサイレンは何だい?」
龍星鎮守府の北側海上で敵航空部隊の迎撃を行っていた鳳翔や響たちの下に、龍星鎮守府や輸送艦ミディアからの警報が聞こえてきた。
電「た、大変なのです!!」
突然、電が北側上空を指さして大声を上げる。
雷「嘘でしょ、暁たちはどうしたのよ!!」
鳳翔「深海棲艦は、まだあれほどの戦力を残していたと言うのですか!?」
電が指さす北側上空には、龍星鎮守府に向かってくる100機近い数の敵航空機があった。
町井田「くぅ……、何とか押し返せると思ったがここまでか……」
鳳翔「先ほどの敵の第二次攻撃でしょうか……」
町井田「このままでは全滅する、お前達だけでも龍星鎮守府へ逃げ延びろ!!」
雷「これ以上ここを突破されたら、司令官が危ないじゃない! それはダメよ!!」
町井田「日向達が来るまで、麗美や美鈴と一緒に鎮守府の防空壕に隠れているんだ!」
響「たしかに、中尉の言うとおりそれが最善策かも知れないね……」
電「でも、それでは中尉が……、そんなの嫌なのです!」
麗美から現場の指揮を任されている町井田の指示に対して、雷と電は反対する構えを見せる。
響「やれやれ、わがままな妹達を持つと大変だな……、だけど私も最前線で戦っている暁を信じてここは絶対に守り抜くつもりだよ!」
ズダダダ ズダダダ
咲樂「くぅ、流石に練習機でのこれほどの実戦は無理があったか……」
敵航空機5機に囲まれながらも被弾せずに戦い抜いていた咲樂機であったが、ついに燃料が尽きかけてきて燃料計に警告灯が点灯し、激しい機動を繰り返してきたためか機体のあちこちが軋み始めて機動が怪しくなり始めてきた。
咲樂「不時着もやむなしでしょうけど、地上には人や妖精さんの姿も見える……」
咲樂が敵航空機と交戦している下には、美鈴や妖精さんが敵航空機の爆撃で破壊された入渠施設で瓦礫の下敷きになった妖精さんや、行方不明の金剛の捜索を続けていたのである。
咲樂「ここで私が下がったら、この鎮守府の人たちに危険が及ぶ……、それではお嬢様を悲しませることになってしまうわ……」
操縦桿を握る咲樂の握力は、これまでの激戦で無くなりかけていたが、咲樂は力を振り絞り操縦桿を強く握りふらつき始める機体を必死にコントロールする。
美鈴「みんなごめんね、私がもっとしっかり提督を出来ていたらこんなことにならなかったのに……」
美鈴は、たとえまともな状態で無いとしても何とか金剛や一緒にいたはずの妖精さんたちを見つけ出そうと鬼気迫る形相で瓦礫を掘り起こし続けていた。
そんな中、明石が対空用に入渠施設の横に設置していた機銃の艤装を発見する。
美鈴「これは艦娘用の艤装……、明石が設置していたやつかな……」
美鈴は、ふと機銃の艤装に手を触れた時、上空で激闘を繰り広げている咲樂の零戦レプリカと敵航空機の存在に気がついた。
美鈴「誰かが深海棲艦の飛行機と戦っている……、深海棲艦の飛行機と……」
咲樂機と敵航空機の戦闘を眺めていると、美鈴は体の奥底から『気』が湧き出てくる感覚を抱いた。
美鈴「あれが、あいつらが金剛やみんなをやったのか……」
美鈴は機銃を両手に持つと、美鈴の体から湧き出ててきた虹色の『気』が艤装に伝わっていく感覚を抱いた。
美鈴「みんなの敵討ちだ! 深海棲艦の飛行機をたたき落としてやる!!」
ズガガガガガ ズガガガガガ
咲樂が必死に機体を立て直して敵航空機に照準を合わせようとした瞬間、地上から機銃の斉射が行われ敵航空機1機に直撃する。
どごぉぉん
機銃の斉射を受けた敵航空機はその場で爆散し、他の4機の敵航空機は突然の機銃斉射に混乱し始める。
咲樂「地上から艦娘の支援射撃か!?」
咲樂はこの機を逃すまいと、ふらつく機体で機銃の照準を一番近くにいた敵航空機に合わせる。
咲樂「弾薬はまだ残っているんだ、あいつらを倒したら壊れてしまっても構わない! もう少し私に力を貸せぇぇぇ!!」
咲樂の強い叫びに答えるように零戦レプリカは青白い光に包まれ、機体の軋みが無くなり機動が安定し始める。
美鈴「まだだ、まだ4機敵がいる!!」
機銃斉射で敵航空機を撃墜した美鈴は、高揚しながら次の敵機に照準を合わせようとすると、咲樂機から発している青白い光に気がつき、『気』と通じる物を感じとる。
美鈴「この『気』……、この感覚は!!」
美鈴は、幻想郷にいた頃の同僚であり親友でもあった人物を思い浮かべていた。
美鈴「あの味方の飛行機に乗っているのは……」
上空を高速で飛行する零戦レプリカのコクピットにいる、銀髪の女性の顔が一瞬美鈴の瞳に映る。
美鈴「さ、咲夜さん!?」
な、なんとか2月中に完成しました……
本当はもっと早く投稿できる予定でしたが、色々あってギリギリになってしまいました。
今の構想では、今の話に一区切りがついたらこの、『華人小娘と愉快な艦娘たち』も第一部終了となる予定です。
とは言ってももう少し今の話も続くと思いますので、いきなり次話で第一部完となるわけではありませんよ~