華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第36話 姉妹達の絆

    ズガガガ ズガガガ

 

雷「敵の艦載機は一体何機いるのよ!」

 

電「はぁ、はぁ、絶対に護るのです……」

 

 深海棲艦よる空襲の第二波である約100機の敵航空機が近づいてくる中、空襲の第一波を防ぐだけでもやっとの状態であり、輸送艦ミディアと鳳翔、響、雷、電といった艦娘たちは、必死の迎撃を続けながらも疲労の色を隠せなくなってきていた。

 

響「(負傷している電は雷がなんとかフォローしてくれていたけど、流石に二人の疲労が心配になってきたな……)」

 

 響はだんだんと動きが鈍くなっていく妹たちの状況を確認しながら、海面を駆け回り敵航空機への対空攻撃を続ける。

 

鳳翔「敵の増援が近づいてますか……、早く今の敵を撃退しなくてはなりませんね」

 

 鳳翔も徐々に少なくなっていく艦載機と、咲樂に委ねられた基地航空隊を巧みに指揮しながら敵航空機と交戦しているが、鳳翔も艦載機を操縦する妖精さん達も心身の疲労は隠しきれなくなっていた。

 

鳳翔「九六式艦戦隊の動きにキレが無くなって来ましたし、ふらつき始めていますね……」

 

 鳳翔は特に疲労が大きい九六式艦戦隊について、このまま戦闘を続けるよりも燃料や弾薬の補充も必要であるため、一度着艦させる必要があると判断していた。

 

 しかし、基地航空隊や鳳翔の零戦21型隊も敵航空部隊と比べて数的不利な状態であるため、着艦させる部隊を支援することが出来ない状況であった。

 

鳳翔「敵の増援も来ますし、九六式艦戦隊以外も順次着艦させて補給を行う必要があるのですが、響さん達も町井田中尉も手一杯の状況ですから着艦する航空隊の支援は厳しい状況ですね……」

 

 このままでは鳳翔の艦載機や援軍に来てくれた基地航空隊の零戦部隊が、敵航空機に撃墜される前に操縦士の疲労や、燃料弾薬切れで戦闘不能になってしまうと鳳翔が焦りを感じ始めていた。

 

    ガガガ…… ザザザ……

 

 その時、鳳翔が持っていた無線機にどこかからかの通信が入ったが、雑音がひどくて聞き取れなかった。

 

鳳翔「無線でしょうか? 一体どこから……」

 

 鳳翔は無線が気になってはいたが、雑音によって聞き取ることが出来なかった上、敵航空機との交戦で手を離すことが出来ず無線に応答することが出来なかった。

 

 

 

 

    ズガガガ ズガガガ ドォォォン

 

電「ふあーーっ!?」

 

 雷と電が相手をしている6機の敵航空機は、負傷し動きが鈍くなっている電に気がついたのか電に攻撃を集中し始める。

 

雷「こ、このままじゃ、電がやられちゃうわ……、雷が何とかしなきゃ」

 

 ダメージが蓄積し中破してしまった電を救うため、敵航空機を必死に撃墜しようとする雷も、これまでの戦闘による疲労と満足に攻撃を回避できない電への攻撃を、身を挺して防いだりしているために迎撃に集中しきれず苦戦を続けている。

 

響「雷や電も限界が近いみたいだ、でも私もこのままでは……」

 

 妹たちの支援に向かいたい響も、敵航空機4機からの攻撃を受けており支援に向かうことが出来ない状態であった。

 

電「雷ちゃん、電には構わず響ちゃんと合流して欲しいのです!」

 

雷「馬鹿なこと言わないで、そんなことしたら電がやられちゃうじゃない!!」

 

 自分が雷に負担をかけてしまっていると自覚している電は、雷に自分から離れるように依頼するが、雷は電の言葉を拒否する。

 

電「電のせいで、雷ちゃんが傷つくのを見たくないのです」

 

雷「雷だって、電も響も暁だって傷つくところは見たくないし、他のみんなだって傷ついて欲しくないわよ!」

 

電「でも、このままじゃ雷ちゃんだって……」

 

 電に攻撃が直撃しないように庇いながら戦闘を続ける雷を見ながら、電の目から涙があふれてくる。

 

雷「大丈夫よ電……、絶対にあなたを助けるわ……」

 

 

 

 

    ドォォォン ドォォォン

 

 雷と電が最悪の事態を覚悟し始めたその時、南西の方角から敵航空機めがけて対空砲撃が行われた。

 

雷・電「!?」

 

 響も町井田のミディアもいない方角からの砲撃に、雷と電は状況が理解出来ずに一瞬言葉が止まる。

 

    ドォォォン ドォォォン

 

 敵航空機への命中弾が無かったことから更に対空砲撃が続き、雷と電は南西方向に視線を向けると、10cm連装高角砲を上空の敵航空機に向けて対空砲撃を続ける白雪の姿があった。

 

電「あれは、龍星鎮守府の白雪さんなのです!」

 

雷「私たちを助けに来てくれたのね!!」

 

 援軍の到着に喜ぶ雷と電は、喜びのあまり敵航空機への警戒をおろそかにしてしまう。

 

    ズガガガ ズガガガ

 

 その隙を突いたのか、敵航空機が電に向けて機銃を斉射する。

 

電「きゃぁぁあ!」

 

 不意を突かれた電は、敵航空機の攻撃を受けて大破してしまう。

 

雷「しまった、逃げて! 電!!」

 

 大破した電に向けて3機の敵航空機が迫ってきており、完全に身動きがとれなくなってしまった電は、両手で頭上を護りながら目を向けることが出来なくなっていた。

 

 その瞬間、電の目の前に猛スピードで一人の艦娘が現れ、電を護るように仁王立ちする。

 

深雪「待たせたな、深雪さまが来たからもう大丈夫だぜ!」

 

 深雪は両手に持った10cm連装高角砲を瞬時に敵航空機に向ける。

 

深雪「深雪スペシャルだぁぁ! くらいやがれぇぇぇ!!」

 

    ドォォォン ドォォォン ドォォォン ドォォォン

 

 深雪は敵航空機に向かって、高角砲を乱射すると電に迫っていた3機の敵航空機を瞬く間に撃墜する。

 

白雪「私も深雪ちゃんに負けてられないですね!」

 

    ドォォォン ドォォォン

 

 深雪に触発されたか、白雪も多少距離がある中、高角砲で敵航空機2機を狙撃して撃墜する。

 

雷「みんなやるわね、雷も負けてられないわ!」

 

 深雪と白雪の攻撃で残り1機となった敵航空機に、雷が12.7cm連装砲で狙いを定める。

 

雷「電もみんなも、絶対に助けるわ!!」

 

    ドォォォン

 

 雷の放った一撃は、敵航空機に直撃し敵航空機の撃墜に成功する。

 

電「はわわ、みんなすごいのです!」

 

 深雪たちの増援により、雷と電に攻撃を仕掛けていた敵航空機6機の撃墜に成功したのであった。

 

 

 

 

    ズガガガ ズガガガ

 

 1機の九六式艦戦が大きくふらつきながらも、必死に敵航空機の攻撃を回避する。

 

鳳翔「これ以上は無理です、九六式艦戦隊の着艦を急がなければ!」

 

 鳳翔は何度も九六式艦戦隊に帰還指示を出すが、敵航空機に食いつかれている状況では着艦体制に入ることが出来ず、九六式艦戦隊は鳳翔の甲板に帰投することが出来ずにいた。

 

鳳翔「くっ、どうにか敵機の注意を引いて、艦載機を収容できれば……」

 

    ガガッ…… ザザザ……

 

 先ほどから断続的に、誰かが鳳翔に無線を送っているようだが雑音がひどく声を聞き取ることが出来ない。

 

鳳翔「誰かが無線を入れてくれている様ですが……」

 

 鳳翔は無線に応答したくても、艦載機に指示を出すので精一杯の状況であり、無線機を操作する余裕は無く、周波数を操作するなどの調整をすることも出来ずにいた。

 

鳳翔「もうすぐ敵の増援が到着してしまう……、このままでは私たちの航空隊が全滅してしまう……」

 

 大きな戦力差があった中、鳳翔の艦載機たちは獅子奮迅の活躍を見せていたが、戦闘が長引くことで操縦する妖精さん達の疲労、艦載機の燃料や弾薬の消耗、機体のダメージの蓄積など様々な要因で、鳳翔の艦載機と基地航空隊の混成部隊である航空隊は壊滅の危機を迎えている。

 

 当初の戦力差を考えてみれば、大健闘と呼べる戦果ではあるのだが、責任感の強い鳳翔は今の状況をすべて自分の責任と考えてしまい、艦載機への冷静な指揮を執ることが出来なくなっていた。

 

鳳翔「1分、1分でいいですから艦載機を収容する時間を!」

 

 つい感情的になってしまった、鳳翔は天を仰ぎながら叫ぶように声を上げる。

 

    - 1分あればいいんだな -

 

 どこからともなく、声が聞こえてくる。

 

鳳翔「声が……、一体どこから?」

 

 突然聞こえてきた声に、鳳翔は呆気にとられる。

 

    - 1分と言わず、もっとゆっくりでもいいぜ -

 

 再び声が聞こえてきて、鳳翔は声が無線機から聞こえてきているものだと気がつく。

 

鳳翔「無線機から……、こ、この声は!?」

 

 無意識に鎮守府方向へ振り返る鳳翔の目の前には、作戦のため別方面へ出撃中であった仲間の姿があった。

 

 

 

 

天龍「天龍様の攻撃だ! うっしゃぁっ!」

 

 天龍は14cm単装砲と7.7mm機銃の砲塔を上空の敵航空機に向け、気合いを込めたかけ声と共に対空砲撃を開始する。

 

    ドゴォォン ズガガガガ

 

 天龍の対空砲撃は、鳳翔の九六式艦戦隊を追撃中の敵航空機に次々と命中し撃墜していく。

 

鳳翔「天龍さん!!」

 

天龍「早く艦載機を収容してやんな、あいつらもうフラフラじゃないか」

 

鳳翔「は、はい、ありがとうございます」

 

 お礼を言う鳳翔に対して天龍は無言で左手を挙げて答えながら、満身創痍の雷と電の状況を確認する。

 

天龍「鳳翔さんや紅月鎮守府のチビたちが、だいぶ世話になったみたいじゃないか……」

 

 天龍は今なお上空から攻撃を続けている敵航空部隊に視線を移して、強くにらみつける。

 

天龍「南西での戦いじゃ、金剛に良いとこ全部持って行かれちまったしなぁ……」

 

 天龍が左手で右腰に装着していた独特の形状の刀を引き抜くと、上空の敵航空部隊に切っ先を向ける。

 

天龍「深雪! 白雪! 1機も撃ち漏らすなよ!!」

 

 天龍が近くで対空戦闘中の深雪と白雪に指示を出すと、天龍の右舷と左舷に深雪と白雪がそれぞれ近づいてきて横一列の陣形を作る。

 

深雪「深雪さまの実力、見せてやるぜぃ!」

 

白雪「雷ちゃんは電ちゃんを連れて行ってあげて下さい!」

 

 対空戦闘に気合いを入れる深雪と、負傷した電の身を案じる白雪の様子を見た雷と電は素直に白雪の指示に従う。

 

電「皆さん、ありがとうなのです……」

 

雷「みんな……、電は雷が絶対に助けるわ!」

 

深雪「鎮守府もやられちゃってるけど、しっかり直して来いよな!」

 

 大破した電を雷が背負い、龍星鎮守府へ引き上げる。

 

電「みんなの前でおんぶされるなんて、恥ずかしいよぉ……」

 

雷「雷はお姉さんなんだから、もっと頼っていいのよ!」

 

 雷の言葉を聞いた電は、恥ずかしさを隠すように雷の背中に顔を埋める。

 

電「(雷ちゃんの背中、とても暖かいのです……)」

 

 

 

 

    ズガガガガガ ズガガガガガ

 

 4機となった敵航空機に、美鈴は咲樂と連携をとるように機銃斉射を続ける。

 

咲樂「あの艦娘、何故だか私の欲しいところに掩護射撃を入れてくれる……」

 

 人間では満足に性能を発揮させることが出来ないはずの艤装を、本来の性能に近い水準で操っている美鈴を咲樂は艦娘だと勘違いする。

 

美鈴「あの味方の飛行機、本当に咲夜さんが乗っているの?」

 

 十六夜咲夜と同じ銀色の髪、ゴーグル越しにもわかる整った顔立ちの咲樂を見た美鈴も、咲樂のことを十六夜咲夜だと勘違いしていた。

 

咲樂「しかし、あんなチャイナドレスの様な服装をした艦娘見たこと無いな……」

 

美鈴「でも、咲夜さんって飛行機なんか操縦できただろうか……」

 

 戦闘中で互いに無線連絡も出来ず、会話を交わすことが出来ない二人はお互いに疑問を持ちながらであったが戦闘を継続していた。

 

咲樂「たしかこの鎮守府には雪風がいると聞いたが、練度をあげて改良され台湾海軍の旗艦を務めた『丹陽』にでもなったのか?」

 

美鈴「まぁ咲夜さんなら器用だし、しれっと飛行機の操縦くらい出来たりしそうだな……」

 

咲樂「しかし、あの見た目は駆逐艦と言うか戦艦か重巡洋艦クラスだ、中国や台湾の艦が艦娘になったという話は聞いたこと無いぞ……」

 

 咲樂が美鈴がどんな艦娘なのか不思議がっていると、後部席で気を失っていたあかぎが目を覚ます。

 

    ズガガガガガ ズガガガガガ

 

 美鈴が放つ機銃の砲撃を見たあかぎは、驚きの声を上げる。

 

あかぎ「えっ、えぇっ! どういうこと? 何が起こっているのですか!?」

 

咲樂「寝ていたと思ったら急に騒ぎ出して、元気な人ですね……」

 

 目覚めた瞬間に大声を出すあかぎに、咲樂は呆れたように返事をする。

 

 

 

 

あかぎ「あの艤装を使っている人は誰ですか? 何者なんですか!?」

 

咲樂「この鎮守府の艦娘みたいですが、何という艦娘かわからないわ」

 

あかぎ「艦娘? とんでもないあの人は艦娘じゃないです、人間ですよ!!」

 

咲樂「人間が艦娘の艤装をあんなに使いこなせる訳無いじゃないですか、まだ寝ぼけてますか?」

 

 あかぎの言葉に対し咲樂は呆れたように答えるが、あかぎは負けじと言い返す。

 

あかぎ「私だって力はほとんど失っていますが艦娘です、同じ艦娘かどうかは貴女以上にわかるんですよ!」

 

咲樂「そう言われても……」

 

あかぎ「この機体のセンサーだって彼女を艦娘や深海棲艦だと認識していますか?」

 

 紅月鎮守府では、最新鋭の技術で製造された艦娘や深海棲艦を認識出来るセンサーが開発されており、訓練機である咲樂の零戦レプリカにもそのセンサーは装着されていた。

 

咲樂「!!」

 

 あかぎの言葉を聞いた咲樂はセンサーを確認したが、あかぎの言うとおり美鈴からは艦娘としての反応も、深海棲艦としての反応も無かった。

 

咲樂「彼女は人間だと言うのか?」

 

あかぎ「だから私は聞いているのです、あの人は誰ですかって!」

 

 その時、突然咲樂の機体に麗美からの通信が入る。

 

麗美「騒がしいわね、戦闘中にケンカかしら?」

 

咲樂「お嬢様?」

 

 突然の無線に咲樂が驚きの声を上げると、麗美は呆れた様に答える。

 

麗美「あかぎだと思うけど、興奮して無線のスイッチが入っているわよ……」

 

 麗美の言葉に、あかぎが手元を確認すると、力強く無線機の通話ボタンが握られていた。

 

あかぎ「あら……、む、無線機? 知らない子ですね……」

 

咲樂「嘘をつくな、元一航戦……」

 

 思わず無線機の通話ボタンを押していたことをごまかそうとするあかぎに、咲樂が思わず突っ込みを入れる。

 

麗美「ふふっ、いつの間にか仲良しになったのね貴女たち……」

 

咲樂「仲が良いというか何というか……」

 

 咲樂は戦闘に集中しながらも、美鈴の援護もあることから麗美やあかぎと会話をするくらいの余裕が出来ていた。

 

麗美「ところで、貴女たちが気になっているあの女性の正体なのだけど……」

 

あかぎ「ご存じなのですか?」

 

麗美「彼女こそが、『深き眠りより目覚めし紅き龍』ことこの鎮守府の提督である紅美鈴よ!!」




3月になり、北海道もだんだんと春の兆しが見えてくる季節となりました。

前話のラストで伊在井咲樂の事を十六夜咲夜だと美鈴が勘違いしていますが、絵も無くわかりにくいかと思いますが、咲樂は咲夜さんとヴィジュアル的には非常に似たキャラクターだと思ってください。

私に絵の才能があれば、挿絵の一つや二つ入れたいところですが、絵の才能が無いのでうまく表現できなくて申し訳ありません。

念のため、本編でうまく伝わっていないかも知れませんのでここでザックリ補足しておきますが……

紅月麗美 → 成長したらこうなるだろうと思うレミリア・スカーレット

伊在井咲樂 → 三つ編みが無い十六夜咲夜

町井田可怜 → 機動戦士ガンダムのマチルダさん

この作品に出てくるオリキャラたちは、こんな感じのヴィジュアルだと脳内再生していただければ幸いです。
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