ドゴォォォォォォン ドゴォォォォォォン
深海棲艦の増援の戦艦ル級は、龍星鎮守府の北西方向から現れ、ちょうど那珂たちが相手をしている正規空母ヲ級と反対方向からの増援であった。
五月雨「このままでは挟み撃ちにされてしまいますね……」
那珂「倒さなきゃいけないのは、麗美提督や暁ちゃんの妹たちがいる龍星鎮守府を攻撃しているヲ級ちゃんたちだけど……」
暁「でも、それじゃぁル級が後ろから撃ってくるんじゃ……」
ヲ級の撃破に専念したいが、ル級に無防備な背中を晒す危険性のある状況で、3人は夜戦の戦い方について考え込む。
那珂「ヲ級ちゃんたち空母は、夜間は艦載機を飛ばせないから気をつけるのはロ級だけだし、那珂ちゃんがル級ちゃんたちの相手をすれば、2人はヲ級と戦えると思います!」
五月雨「でも、そうなると駆逐艦の私たちだけで、ロ級とヲ級2体と戦うことになりますね……」
暁「五月雨なら大丈夫だけど、暁1人じゃヲ級は倒せないわ……」
暁は、いつものプライドの強さや強気の姿勢は影を潜めて、現実的な発言をしている。
那珂「暁ちゃんは、さっき魚雷でヲ級をやっつけたじゃない! 諦めたらそこでライブ終了ですよ!!」
五月雨「暁ちゃんは自分の練度が足りないから無理って思っているかも知れませんが……」
暁「……」
五月雨の問いかけに、自信が無い暁は言葉が出てこない。
五月雨「麗美提督は、暁ちゃんにすごく期待しているんですよ!」
暁「司令官が……、暁に?」
那珂「たしかにー、提督は暁ちゃんのことを、昔の自分に似てるって言っていたね」
暁「暁が司令官に似てる?」
五月雨「私も提督が子供の頃は知りませんから、詳しくはわかりませんけど、きっと暁ちゃんも将来大人になったら提督のような素敵な大人になれるんですよ」
暁「あ、暁が……」
暁は、尊敬し密かに目標としている麗美が、自分に期待してくれている事や、昔の自分に似ていると話してくれていた事に感動し、身を震わせていた。
やがて、那珂たちの周辺がすっかり闇に覆われて、夜と同じように深海棲艦の姿も見えなくなる。
五月雨「そろそろ敵も仕掛けてくる頃ですね、いいですか第一目標は敵空母です!」
那珂「ちょっと危ないけどー、ル級ちゃんたちは後にしてヲ級ちゃんたちに素敵なライブを見せてあげるんだよ!」
暁「(2人がヲ級を倒せるように、暁が敵の駆逐艦を引きつけないと……)」
真剣な表情の五月雨と、楽しそうな那珂、緊張した表情の暁と三者三様の3人は夜戦に突入した。
五月雨「暁ちゃんは夜戦は初めてみたいだけど、怖かったら私たちの後ろに隠れていても良いですからね」
緊張している暁に気がついた五月雨は、暁に優しく言葉をかける。
暁「だ、大丈夫、暁は司令官みたいなレディーになるんだから……」
暁は敬愛している麗美が、自分に期待してくれているという五月雨や那珂の言葉で自信をつけ、臆病な自分を克服しようとしていた。
那珂「暁ちゃんもトップアイドル目指して頑張っているんだね、那珂ちゃんも負けないからね!!」
暁「あ、暁はアイドルじゃ無くてトップレディーなんだから!」
五月雨の思いやりと那珂の明るさで、緊張で凝り固まっていた暁の体や表情をほぐすことに成功していた。
ザザー ザザザー
暗闇の中から、海面をかき分ける音が聞こえてくる。
五月雨「敵が近づいてくる音が聞こえます……」
艦娘も深海棲艦も、暗闇の中では視界が悪く互いに敵の位置を慎重に探り合う必要があった。
那珂「大体の場所がわかったら、照明弾が使えるねー」
那珂は、夜戦装備の一つである照明弾を装備していた。
照明弾は、砲弾に硫黄などで作った発光物質を打ち上げて落下傘でゆっくりと降下させることで周囲を明るくする事が出来る砲弾で、夜戦時に敵艦隊の後ろに回り込んで打ち上げることで友軍に敵艦隊への視界を確保することが出来るのである。
五月雨「波の音は一隻のみ……、おそらくロ級のものです」
那珂「照明弾は、ヲ級ちゃんにとっておいた方が良いよね」
五月雨「しかし照明弾を打ち上げることで、ル級にこちらの位置を知らせることになるので危険を伴いますね……」
暁「それじゃ、探照灯も危険だよね……」
暁は装備していた探照灯を手に持ち、五月雨に確認する。
五月雨「そうですね、探照灯を使えばル級の的になってしまう可能性が高いですね……」
五月雨は、冷静な表情で暁の質問に答える。
その表情は、暁も知っている鎮守府で見せるあどけない少女のものでは無く、いくつもの戦火をくぐり抜けてきた暁が見たことの無い大人の女性のものであった。
暁「(あの五月雨が、一人前のレディーに見えるわ……)」
ドォォォン ドォォォン
那珂たちの気配を感じたロ級が、砲撃を開始してきた。
暁「撃ってきた、見つかった!?」
五月雨「大丈夫、まだ視界には入っていないです、ただのめくら撃ちです!」
見えないロ級のからの砲撃音に驚く暁と対照的に、冷静沈着な五月雨は動揺する暁を制する。
那珂「先に撃ってくれたおかげで、発砲した時の光と音でロ級ちゃんの位置がわかったね!」
五月雨「そうですね!」
暁「えっ、今の一瞬で……」
敵の攻撃に対し、素早く反撃体制に入る那珂と五月雨の動きに暁は言葉を失う。
那珂「暗くったって、ロ級ちゃんの動きが……、見えているよぉ!!」
ドォォォォン
那珂は、暗闇の中で的確にロ級の位置を捉えて砲撃を加える。
ぐぉぉぉん
那珂の砲撃を受けたロ級が、爆発しながら海に沈んでいく。
暁「やったぁ、さすが那珂さん!!」
那珂がロ級を仕留めたことに、喜ぶ暁とは対照的に五月雨は厳しい表情をしていた。
五月雨「ロ級の爆発が大きすぎます、敵の罠にはまったかも知れません……」
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
ロ級の爆発による光で、那珂たちの位置を特定した2体のル級が一斉に砲撃を仕掛けてきた。
五月雨「うわっ、やっぱりル級に見つかってしまいました!」
那珂「いくら那珂ちゃんたちのサインが欲しいからって、強引なのはダメなんだからね!!」
暁「ル級が来た……、どうしよう……」
ル級の砲撃に、陣形を乱された那珂たちは素早い決断を求められていた。
五月雨「私がル級を引きつけます、那珂さんと暁ちゃんは近くにいるはずのヲ級をお願いします!」
那珂「那珂ちゃんのミスでル級に気がつかれたんだから、那珂ちゃんがル級を引きつけるよ!」
囮役に名乗り出た五月雨を制して、那珂がル級への囮役を買って出ようとする。
五月雨「いえ、那珂さんはこの艦隊の旗艦です、旗艦を囮にすることなんて出来ません!」
那珂「ダメ、五月雨ちゃんを危険な目に遭わせる訳にはいかないよ!!」
囮役について那珂と五月雨が口論していると、暁が探照灯をル級が砲撃してきた方角に向けて照射する。
五月雨「暁ちゃん!?」
暁「ル級は暁が引きつけておくから、2人はヲ級を倒してきて……」
暁は、覚悟を決めた表情で那珂と五月雨に語りかける。
那珂「暁ちゃん……、貴女はきっとスーパーアイドルになれるよ……」
暁「ヲ級を倒さないと、妹たちが危ないの……、絶対倒してきてよね」
五月雨「……うん、わかったわ」
ヲ級を仕留めるため、暗闇の中の索敵に向かった那珂と五月雨とは別行動をとることにした暁は、暗い海面を高速移動しながら探照灯をル級に向けて断続的に照射し、ル級の注意を引く。
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
2体のル級も、探照灯を照射する暁に狙いを定めて砲撃を繰り返してくる。
暁「響や雷、電のためにも、絶対生きて帰るんだから!!」
暁はル級から繰り返し放たれる砲撃を、必死に避け続けていた。
ドォォォォォォン
ドォォォォォォン
ドォォォォォォン
ル級たちは、タイミングを少しずつずらしながら砲撃してきて、徐々に砲撃と砲撃の間隔が狭くなってくる。
暁「まさか、交代交代に撃ってきているの!?」
砲撃の間隔が狭くなってくることで、足を止めること無く回避するしか出来なくなってしまった暁は、徐々にル級たちに追い詰められていく。
ドォォォォォォン
だんだんとバランスを崩してきた暁は、ル級からの至近弾により更にバランスを崩されて転倒してしまう。
パリィン
転倒した衝撃で暁の艤装から、何かが割れた音が聞こえた。
暁「うっ、探照灯が……」
暁は転倒した際に探照灯を割ってしまい、更に利き足である右足の膝を負傷してしまう。
暁「痛っ、血が……」
膝を負傷したことで、暁は踏ん張りがきかなくなってしまい、これまでのように高速で回避することが出来なくなってしまった。
ドォォォォォォン
追い打ちをかけるように放たれたル級の砲弾は暁の直近に着弾し、暁は着弾の衝撃で吹き飛ばされてしまい体を強く海面に叩き付けられる。
その時、ル級の背後から探照灯を照射する者と、黒色の複葉機を発艦させる者がいた。
神通「探照灯照射……、姉さん準備は良いですね!」
川内「待ちに待った夜戦だー!!」
カンカンカンカン トントントントン
龍星鎮守府の工廠から、何かを修理している音が響き渡る。
工廠の妖精さん『モウスグ シュウリガ オワルカラネ』
宿舎や入渠施設から離れた場所に建っていた工廠は、敵航空機の爆撃の被害を受けておらず、工廠の妖精さん達は激しく損傷していた艤装の修理を行っていた。
工廠内の机には、バスローブ姿の艦娘が艤装の修理が終わるのを心待ちにして待っていた。
工廠の妖精さん『コワレタ シュホウノカワリニ テイサツキヲ ソウビシテ オイタカラネ』
工廠の妖精さんは、バスローブ姿の艦娘に修復中の艤装について説明を行っていた。
バスローブの艦娘「でも、偵察機を操縦できる妖精さんなんて、いるのデスカ?」
パイロット姿の妖精さん『コウクウキノ ソウジュウナラ マカセテヨ』
偵察機のパイロットを心配するバスローブ姿の艦娘の発言に対し、机の上に腰掛けていた3人の妖精さんたちのリーダーと思われるパイロット姿の妖精さんが答える。
バスローブの艦娘「Oh! でも、アナタたちは鳳翔さんの零戦のパイロットデース!」
パイロット姿の妖精さん『ホウショウサンニハ イロイロナ コウクウキノ クンレンヲ サセテモラッテ イタンダ』
バスローブの艦娘「水上偵察機も乗れるという事デスカー?」
パイロット姿の妖精さん『ダイジョウブダヨー』
パイロット姿の妖精さんは、バスローブの艦娘に拳を突き出して笑みを見せる。
バスローブの艦娘「艤装は大丈夫そうデスガ、どこかに服はないですかネー、バスローブじゃ戦いにくいデース!」
どこかで見たようなバスローブ姿の艦娘は、自分が着用できる着替えを探している様子であった。
北海道も徐々に気温が上がり、ようやく春の兆しが見えてきたところです。
今回は、待ちに待った夜戦回と言うことで、あの艦娘たちが久々の登場です!
そしてラストに登場した艦娘は一体誰なのか?
次回の展開に期待デース!(口調でなんとなくわかる方もいるでしょうけど……笑)