- 川内と神通が夜戦に突入した那珂隊の支援に到着する少し前 -
龍星鎮守府の北西方面海域で、深海棲艦の大艦隊と交戦していた航空戦艦日向率いる紅月第一艦隊は、激戦の末に敵大艦隊の大半を撃退しており、あらかじめ麗美が指示をしていたタイミングで、機動力の高い軽巡洋艦である川内と神通を那珂隊の支援に向かわせていた。
神通「提督の想定では、あとわずかで那珂ちゃんたちと合流出来る地点のはずですが……」
川内「こんな昼間っから出撃出撃って大変だよねぇ~」
実直で真面目な神通とは異なり、川内はどこか面倒くさそうな感じで索敵を続けていた。
神通「提督の話だと、そろそろ深海棲艦が周りを暗くし始めて、俗に言う夜になるはずだと言っていましたが……」
川内「夜? 夜戦!?」
神通が口にした『夜』と言う言葉に、全く覇気が無かった川内の瞳に輝きが戻る。
川内「夜戦と言ったら私の出番だよねー、くんくん……、夜戦はどっちだ?」
神通「そんな鼻をきかせても……」
急にテンションが跳ね上がり、先ほどまでとは別人のように周囲をキョロキョロと見渡しながら、嗅覚までも利用して夜戦となっているはずの戦闘海域を探し始める川内に神通は困惑の表情を見せる。
川内「夜戦は良いよねぇ、はやくー、やーせーんー!!」
神通「まだ、那珂ちゃんたちが夜戦に突入していると決まった訳では……」
妙にハイテンションな川内と、その川内に少々困り気味の神通は那珂たちとの合流を目指していた。
神通「なんだか、辺りが暗くなって来ましたね……」
那珂たちとの合流を目指して進軍中の、川内と神通は目指している海域付近が暗くなりかけてくることに気がつく。
川内「くんくん、夜戦が近づいているぞ……」
神通「川内姉さんは、匂いで夜戦がわかるのですか? 匂いがするわけでもないでしょうし……」
川内「ん? わかるよ!」
神通「えぇっ!?」
川内「正確には、匂いというか感覚でわかるんだよね、夜戦だーって」
川内のハイテンションな口ぶりに、神通は少々困ったような表情を見せる。
神通「そんな科学的な根拠もなさそうな事を言われましても……」
川内「五感や第六感だって大事だよ、神通だって夜戦になったら体が熱くなったりしない?」
神通「体が火照ってくることはありますが……」
川内「そうだよ、その感覚だよ! 私もその感覚で夜戦を探しているんだ!!」
困り顔の神通に、川内は力強く拳を握りガッツポーズを見せる。
川内「夜戦はこっちだよ、神通! 行くよ!!」
神通「この距離なら、まずは那珂ちゃんに無線を入れれば……、って姉さん、待って下さい!!」
冷静に那珂に無線を入れようとする神通を無視して、川内が全力で駆け出してしまったため、神通は無線連絡を取りやめて慌てて川内を追いかけた。
神通は川内を追いかけて海域を進んでいくと、たちまち周囲が真っ暗になってしまった。
川内「ふふふ、夜戦突入だね」
神通「確かに夜戦に突入ですが、この視界では那珂ちゃんたちがどこにいるかわかりません……」
満面の笑みを見せる川内とは対照的に神通は困った表情を見せる。
川内「そうか、こう暗くちゃ音は聞こえても、確かに仲間か深海棲艦か見えないから困るよね」
神通「こうなっても、感覚で判断するんですか?」
川内「はは、仲間を信じて突撃しようか?」
神通「同士討ちになったらどうするんですか!!」
感覚任せの川内の発言に、神通が忠告していると、那珂たちがいると思われる方角から探照灯が照射されているのが見えた。
川内「あっ、明かりが見えるよ!」
神通「これは艦娘の探照灯?」
その探照灯は、深海棲艦に向けて照射されているようで、探照灯が照射されている方角には戦艦ル級2体の姿が見えた。
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
ル級たちが探照灯を照射している艦娘をめがけて主砲を撃ち返すと、小柄な艦娘が必死に回避行動をとっている様子が見える。
川内「あれは那珂じゃないな、五月雨かな?」
神通「いえ、那珂ちゃんも五月雨さんも探照灯を装備していませんでした」
川内「じゃあ、あの艦娘は?」
神通「おそらくは、那珂ちゃんと合流しているはずの第六駆逐隊の暁」
川内「暁と言ったら、あの『レディー』なお子様だよね」
神通「この状況だと、敵艦隊と交戦中にル級2体と遭遇して挟撃されているのでは?」
神通は、作戦予定海域や暁とル級の位置関係から戦況を冷静に分析する。
ドォォォォォォン
ドォォォォォォン
ドォォォォォォン
ル級たちが少しずつタイミングをずらしながら砲撃の間隔を狭めて、暁に波状攻撃を仕掛けてだんだんと暁を追い込んでいく。
川内「暁や第六駆逐隊の練度ってどのくらいだったっけ?」
神通「一番高い響でも13、暁も10にいったかどうかくらいです」
川内「なら、早く助けてあげないと大変だよね、神通! 突撃するよ!!」
そう言うと、神通の返事を待たずに川内がル級に向けて全速力で駆け出す。
神通「川内姉さん!!」
川内の無鉄砲な行動に、神通は驚くと同時に諦めたような嬉しいような微妙な感じの笑みを浮かべる。
神通「まぁ、これも川内姉さんの良いところでもあるのですがね……」
神通は川内を追いかけながらも、自分の体が高揚するかのように熱を帯びてくる感覚を抱いた。
神通「ふふ姉さんの熱さにやられたか、体が火照って来ましたね……」
川内と神通が全速力でル級に向かっていると、直撃こそはしていないはずであるが暁がバランスを崩すと共に探照灯が消灯してしまう。
川内「おつかれ、あとは私たちに任せておくれよ」
神通「暁さんの勇敢な行動に感動しました、あとは私たちが暁さんの想いを受け継ぎましょう!」
ル級たちの背後から射程距離まで近づいたタイミングで、川内はル級たちに攻撃を仕掛けるために夜間偵察機である九八式水上偵察機を発艦させ、神通はル級たちの注意を暁から自分に向けるために装備していた探照灯をル級たちの方向へ照射する。
神通「探照灯照射……、姉さん準備は良いですね!」
川内「待ちに待った夜戦だー!!」
海面に体を強く叩き付けられてまだ立ち上がれていなかった暁は、神通の探照灯の光に気がついた。
暁「仲間が……、来てくれたの!?」
暁の目に、ル級に突撃する川内と神通の姿が飛び込んでくる。
素早く左右にフェイントを入れながらル級に攻撃を仕掛ける川内と、あえて目立つように探照灯をル級に照射しつつ攻撃を引きつける神通の戦いは、バラバラに動き回っているようにも見えるが、ものすごく息の合った連携の様にも見えた。
暁「あれが、噂の川内さんと神通さんの夜間戦闘なの……」
川内と神通は瞬く間に1体のル級を追い詰め、川内の放った魚雷がル級に直撃しル級が火に包まれながら海に沈んで行った。
神通「先ほどまでの戦いで、弾薬がもう残りわずかですか……」
1体のル級を撃破したとはいえ、もう1体のル級を相手にしなければならない川内と神通ではあったが、日向たちと共に龍星鎮守府と紅月鎮守府の航路上において、深海棲艦の大艦隊との大戦後であったため、燃料はまだ余裕があったが弾薬の消耗が激しく弾薬切れまであとわずかという状況であることに神通は危惧していた。
川内「大丈夫、ここでル級を倒すだけの残りはあるし、残りは那珂たちに任せれば良いんだからね!」
弾薬不足を危惧する神通とは対照的に、川内は自分たちの敵は目の前のル級のみと割り切って目の前のル級との戦いを楽しんでいた。
神通「残りわずかな弾薬で、ル級を倒せますか?」
川内「私はもう無いけど、神通は魚雷をまだ持っているじゃない」
神通「あら、よくご存じでしたね」
感覚のみで動いているように見える川内が、自身の弾薬以外に僚艦である神通の残弾の把握をしていたことに、神通は驚いたような表情で答える。
川内「当然だよ、使わないならその魚雷貸しておくれよ」
神通「切り札は最後までとっておくモノですよ」
川内「でも温存したまま燃料が無くなって使えませんは、カッコ悪いって」
神通「それも一理ありますね……」
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
突然の敵の増援と不意打ちよって仲間を失ったル級は、慌てる様子で神通に向けて砲撃を繰り返してくる。
川内「来るよ、神通!」
神通「第二水雷戦隊旗艦を甘く見ないで欲しいですね……」
肉薄した状況での砲撃のため、瞬時にル級の16インチ連装砲の砲弾が眼前に迫るが、神通はいともたやすくル級の砲撃をかいくぐる。
暁「すごい、私とは全然違う……」
神通の神速とも思える回避に、暁は驚きの声を上げる。
川内「ん、立てるようになったら那珂たちのところに行ってあげてよ、ここは私たちが何とかするからさ」
倒れていたはずの暁が、いつの間にか立ち上がってこちらを見ている事に気がついた川内は、那珂たちの支援に向かうように暁に声をかける。
暁「えっ、あ、ありがとう……」
不意に声をかけられた暁ではあったが、川内の言葉を理解して救援に来てくれた事にお礼を言う。
神通「お礼をきちんと言える、良いことですね」
暁のとっさに出たお礼の言葉に、ル級の攻撃を回避しながら神通が微笑みを見せる。
川内「生真面目な戦闘狂や自称アイドルな妹じゃなくて、ああいう素直な妹がいたら可愛いのにねぇ~」
神通「だ、誰が戦闘狂ですか!?」
ズガガガガ ズガガガガ
天龍「オラオラ! ここから先に進みたかったらこの天龍様を倒してからだぜ!!」
迫り来る深海棲艦の航空機に機銃を連射して、多数の敵航空機を撃墜しながら天龍が立ち塞がる。
ドォォォン ドォォォン
深雪「いっけるいけるぅ!」
白雪「敵の動きが鈍くなって来た感じがします」
天龍に続いて、深雪と白雪も高角砲で敵航空機を撃破していく。
鳳翔「今のうちです、基地航空隊の皆さんも順次着艦して下さい」
九六式艦戦隊に引き続き、自身の艦載機である零式艦戦21型隊も収容し、弾薬を補給後に再発艦させた鳳翔は、咲樂から託されていた基地航空隊の航空機も補給のための着艦準備に入っていた。
補給を終えた後の鳳翔の艦載機たちの戦果は目覚ましく、敵航空機を圧倒し始めていた。
響「敵航空機の動きが明らかに不安定になってきている……」
鳳翔「艦載機は母艦を失ったら、帰る場所を失うほかに指揮系統も遮断されてしまいます」
動きが悪くなった敵航空機に対し、鳳翔は自身の考えを口にし始める。
鳳翔「恐らくですが、暁さんたちが敵航空機を発艦させた空母と交戦し、一部を撃破し始めているのではないでしょうか?」
町井田「私も同じ考えだ、北方面には那珂や麗美の秘蔵っ子である五月雨も向かっている、もうしばらくの辛抱だ!!」
鳳翔や町井田の言葉に、絶望的なまでの数の敵航空機を迎え撃たなければならないはずの艦娘たちは、士気を盛り返していた。
榛名「うぅ……、雪風さん、ご迷惑おかけしました……」
何とか自我を取り戻した榛名は、痛む頭を押さえながら隣で声をかけ続けてくれていた雪風に謝罪をする。
雪風「榛名さん、もう大丈夫ですか?」
榛名「まだ少し頭が痛みますが、榛名は大丈夫です」
言葉とは裏腹に、榛名の体は未だ小刻みに震えており顔色も悪くどう見ても『大丈夫』な状況では無かった。
雪風「雪風が付き添いますから、榛名さんは一度鎮守府に戻って休みましょう」
榛名「いえ、まだ敵は来ますし、仲間も戦っています……、榛名も大丈夫です」
榛名を気遣う雪風に対して、榛名は頭痛を堪えながらも雪風に優しい笑みを見せて自分は平気だと主張する。
雪風「確かに深海棲艦の航空機が大軍で攻め寄せていますが、何だか様子がおかしいです」
榛名「敵はあれで全部でしょうか?」
雪風「あの航空機が来ている北側海域には、紅月提督の艦隊のみんなが深海棲艦と戦ってくれているみたいです、きっと大丈夫です!」
榛名「今は頼れる仲間がいるみたいですね……」
雪風「はい、だから榛名さんは少し休んでても大丈夫です!」
しかし、榛名は雪風の言葉に首を横に振り、苦しそうに南東方向に視線を向ける。
榛名「私たちが後にした海域から、何かを感じませんか?」
何か予言めいた榛名の言葉に、雪風は背筋が凍る様な感覚を覚えながらも榛名に笑顔を見せる。
雪風「何も感じません! 榛名さんは休んでてもらっても大丈夫です!!」
雪風「(榛名さんも感じているのでしょうか、あの海域から感じる敵の気配を……)」
北海道もついに桜が開花し、春の兆しが見えてきた今日この頃です。
原作の艦隊これくしょんでは、私の嫁艦でもある金剛がついに更なる改装を遂げてスーパーサイヤ人を超えたスーパーサイヤ人ならぬ改二を超えた改二丙(Hey!)になりましたが、慢心していた私は改装設計図不足で未だ改二丙(Hey!)には出来ていません……(T-T)
先週末には風邪をこじらせてしまって、この話の投稿が遅れてしまいましたが、金剛改二丙の速報を聞いて回復したので、私は大丈夫です!
次話が『平成最後の投稿』になるか『令和最初の投稿』になるかわかりませんが、平成中にもう1話投稿できたら良いなと思います。
出来なかったら、これが『平成最後の投稿』になるので、皆様平成の間は大変お世話になりました!!