華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第40話 金色の深海棲艦

    ズダダダ

 

 龍星鎮守府の入渠施設があった場所の上空で、咲樂の僚機である零戦52型が、最後の1機になっていた深海棲艦の艦載機を追い詰め、咲樂の零戦レプリカがとどめとばかりに機銃を放つ。

 

    ドォォン

 

 咲樂の放った機銃は敵航空機に直撃し、敵航空機は上空で爆散する。

 

あかぎ「お見事です!」

 

咲樂「今回は気絶しなかったのですね……」

 

あかぎ「このくらい、『元』一航戦の誇りにかけて問題ありません!」

 

 咲樂の操縦にだんだんと慣れてきたあかぎは、激しい戦闘機動においても気を失うこと無く咲樂の戦いを見守っていた。

 

   ガタガタン…… プシュー

 

 急に咲樂の零戦レプリカが、激しい振動と共にプロペラを停止し機体のあちこちから白煙を上げ始める。

 

咲樂「ふぅ、なんとかここまでもってくれたのね、感謝するわ……」

 

 咲樂は燃料も底をつき、機体自体も限界を超えていたはずの愛機が力尽き機能を停止した状況を確認すると、優しく愛機に声をかけた。

 

あかぎ「か、感動的なシーンだとは思いますが、まだ上空ですよ! 大丈夫ですか?」

 

咲樂「エンジンは停止しても、まだ主翼は大丈夫です、この子を最後に墜落させたりはしませんわ」

 

 咲樂は自信に満ちた表情で、機体をコントロールして滑空させながら降下させていく。

 

咲樂「どこか、着陸できそうな場所はあるでしょうか?」

 

あかぎ「あっ、それならあそこに見える工廠の近くが広そうですよ」

 

 咲樂は、あかぎが指し示す方角を視認して、工廠横の空き地が着陸に十分な広さがあることを確認した。

 

咲樂「あそこなら大丈夫ね、入渠施設は壊されたけど工廠は無事だった様ね……」

 

 

 

 

 龍星鎮守府北側の海域では、那珂と五月雨が龍星鎮守府に空襲を行っているヲ級を討伐するために夜戦に突入していた。

 

五月雨「空襲を止めるためにも、ここでヲ級を倒しましょう!」

 

那珂「那珂ちゃんたちのナイトライブ、これから開演するよー!!」

 

 追撃してくるル級を食い止めてくれている暁のためにも、龍星鎮守府近海で迫り来る敵航空機と戦っているはずの響たちや町井田と龍星鎮守府の艦娘たち、龍星鎮守府で指揮を執っている麗美のためにも負けられない戦いの火蓋が切って下ろされた。

 

五月雨「まずは私が敵の注意を引きますから、那珂さんはいつものようにお願いします!」

 

那珂「とびっきりの那珂ちゃんライブ、行っくよぉー」

 

 頑丈な正規空母を確実に叩くためには、確実に攻撃をヒットさせなければならず、その確実性をあげるためには、狙い通りに攻撃を当てられる距離に近づくことと、暗闇の中でも狙いを定められるように視界を確保する必要があった。

 

 その手段として、あえて敵艦に発砲させることで敵の艦砲から発する発火炎を目印にする方法や、暁や神通が使用していた探照灯などを敵艦隊に照射して敵影を確認する方法などがあるが、敵のヲ級は空母であるためほとんど艦砲射撃をしてくることは無く、那珂も五月雨も探照灯を装備してはいなかった。

 

那珂「どっかーん!!」

 

 那珂は、2体のヲ級の裏へ回り込むと、突然上空へ向けて砲撃を開始する。

 

    ドォォォォン パンパン……

 

 那珂が放った砲弾は上空で小さく破裂すると、強い輝きを放ちながらゆらゆらと降下していく。

 

五月雨「いつもながら、那珂さんの照明弾はタイミングや場所がバッチリですね」

 

 五月雨は、12.7cm連装砲と61cm四連装酸素魚雷の発射管の照準ヲ級に合わせて素早く構える。

 

五月雨「前衛はお任せ下さい!」

 

 五月雨は、上空の照明弾に注意をそらされているヲ級に向けて連装砲を発砲する。

 

    ドォォォン

 

 照明弾に気をとられていたヲ級(ヲ級A)は、完全に不意を突かれた形となり、無防備な状態で五月雨の砲撃が直撃すると思われたその時、もう一体のヲ級(ヲ級B)が五月雨の攻撃に気がついた様で無防備なヲ級Aを庇うかのように立ち塞がる。

 

ヲ級B「ヲヲォ……」

 

 ヲ級Aを庇ったヲ級Bは、中破状態ではあるが依然海面に立っており鋭い眼光で五月雨を睨み付ける。

 

五月雨「この感覚……、ただのヲ級じゃない?」

 

 ヲ級Bは、五月雨を睨み付けながら赤いオーラの様なモノを全身から放ち始める。

 

五月雨「ヲ級エリート……、どうしてヲ級の高位体がこんな海域に!?」

 

 

 

 

五月雨「こんなところにまでエリート級が出現するなんて……」

 

 ヲ級の強化型ともいえるヲ級エリートが鎮守府の近海に出現したことに、五月雨は若干の焦りを感じていた。

 

那珂「那珂ちゃんセンター、一番の見せ場です!」

 

 五月雨の焦りを振り払うかのように、那珂がヲ級エリートに突撃を仕掛けて急接近する。

 

ヲ級エリート「カ、カンムスドモガ……」

 

 ヲ級エリートの声が聞こえた、那珂は寂しそうな表情を見せながらもヲ級エリートに肉薄し連装砲を突きつける。

 

那珂「もし生まれ変わったら、一緒にアイドルになろうね……」

 

 那珂は、ヲ級エリートに連装砲を発砲すると、その反動を利用しながら右に旋回しつつ酸素魚雷を放つ。

 

ヲ級エリート「グヲヲォ……」

 

 那珂の連続攻撃を受けたヲ級エリートは、生き残ったヲ級Aに後を託すようにゆっくりと海に沈んでいく

 

ヲ級A「ヲヲォ……」

 

 ヲ級Aは、共に行軍していたヲ級エリートの轟沈を悲しむ様に見守りながら、沈みゆくヲ級エリートに向けて右手をかざす。

 

五月雨「深海棲艦も、仲間とか友達の意識はあるのでしょうね……」

 

 五月雨は、感傷に浸りながらもヲ級Aにとどめを刺すために、連装砲と酸素魚雷を向け狙いを定める。

 

 すると、ヲ級Aの体からも赤いオーラが放たれて来て、沈んで行くヲ級エリートからも赤いオーラの塊のような球体が出現し、ヲ級Aに向かって移動をし始める。

 

那珂「なに、何が起こっているの!?」

 

 歴戦の艦娘である那珂や五月雨は、今までの戦いで通常の深海棲艦の上位体であるエリート級との戦闘を何度も経験しているが、このような光景を見るのは初めてであった。

 

五月雨「沈んで行く深海棲艦の力が、生き残った深海棲艦に引き継がれていく?」

 

 五月雨は深海棲艦の能力を計測するような装備は持ち合わせていないが、戦士としての感なのかヲ級Aの戦闘能力が強大になっていくことに気がつく。

 

那珂「こ、この感じって……」

 

 ヲ級Aは強い悲しみや怒りの感情をむき出しにしながら、那珂や五月雨を睨み付けてヲ級エリートから放出されたオーラの塊を吸収していく。

 

ヲ級A「ユルサンゾ……、キサマタチ!!」

 

 ヲ級Aの目が金色に輝き出すと、全身から放たれていた赤いオーラが金色に変化していく。

 

那珂「うそ……、金色のオーラの深海棲艦って……」

 

五月雨「あれは……、あれが伝説のフラッグシップ級……」

 

 

 

 

    ドォォォォォォォン ドォォォォォォォン

 

 川内と神通に追い詰められたル級は、苦し紛れに川内に砲撃を仕掛ける。

 

川内「うかつな動きは、負けにつながるよ!」

 

 夜間のため視認しにくいはずのル級の砲撃を、川内は容易に回避すると手に装備している12.7cm連装高角砲を砲撃音がした方向に向けて撃ち返す。

 

ル級「ぐぉぉぉ……」

 

 川内の砲撃を受けてひるんだル級に、神通が至近距離から探照灯を照射する。

 

ル級「ぐぁぁぁ……」

 

神通「貴女の相手は、こっちですよ!」

 

    ドォォォォォォォン ドォォォォォォォン

 

 いつの間にか背後をとっていた神通に驚いたル級は、闇雲に砲撃を繰り返す。

 

    ドォォォォン ドォォォォン

 

ル級「ぐぉぉぉん……」

 

 ル級が神通に注意を向けた途端、川内が背後から連装高角砲を撃ってきて直撃する。

 

川内「こっちだよ! さあ、私と夜戦しよっ!」

 

神通「戦いは一瞬で決まります、迷いのある方が負けなのです……」

 

 ル級が川内に意識を向けた瞬間、今度はル級の真横から神通が声をかける。

 

神通「魚雷は次発装填済みです!」

 

 ル級が神通がいる方向に視線を向けた時には、神通が放った酸素魚雷が目の前にまで迫っており、ル級の機動力ではもう回避することは出来なかった。

 

    ドゴォォォォン

 

 神通の放った酸素魚雷が直撃したル級は、激しく爆発を繰り返しながら水底へと沈んで行った。

 

川内「やったぁー!」

 

神通「ここはやりました、しかし、まだ空母がいます」

 

 2体のル級を仕留めた事に喜ぶ川内の横で、神通は神妙な表情で那珂たちがヲ級と戦闘中の海域に視線を向ける。

 

川内「たしかに、なんか嫌な感じがするんだよね……」

 

神通「川内姉さんも感じますか……」

 

 

 

 

    ドォォォォン ドォォォォン

 

 フラグシップへと進化したヲ級に向けて、那珂が連装砲を打ち込む。

 

ヲ級フラッグシップ「……」

 

 那珂の砲撃は、フラッグシップとなったヲ級に命中するが、ほとんどダメージを受けている様子は無く、ヲ級は無言で那珂を睨み付ける。

 

那珂「うそ……、那珂ちゃんの砲撃が効いていない?」

 

五月雨「あのヲ級はフラッグシップ化したことによって、装甲や耐久力が格段に上がっているみたいです!」

 

那珂「砲撃がダメなら、距離を詰めて魚雷を当てないと!!」

 

 那珂は発射管に魚雷が装填済みなのを確認すると、まっすぐにヲ級に向かっていく。

 

那珂「パワーアップしたからって、夜の間は艦載機を飛ばせないはず!!」

 

五月雨「そうです、夜が明ける前にヲ級をやっつけないと、パワーアップした艦載機を発艦されてしまいます!!」

 

 川内の夜間偵察機の様な特例を除けば、空母は夜間に艦載機を発艦することは出来ないため、フラッグシップとなったヲ級を仕留めるのは夜戦中である今しかないと判断した五月雨も、那珂と共にヲ級に突撃を仕掛ける。

 

ヲ級フラッグシップ「ワレワレハ、クライカイテイデ、クラシテキタ……」

 

 那珂たちに向かってつぶやくように言葉を向けてくる。

 

ヲ級フラッグシップ「トモノカタキヲ、カンムスドモヲ、マッサツスルノダ……」

 

 ヲ級は右手を那珂たちに向け、艦載機を発艦する時のような姿勢をとる。

 

五月雨「あれは、まさか!?」

 

 五月雨は急停止し、那珂に向かって叫ぶ。

 

五月雨「那珂さん! 止まって下さい!!」

 

 那珂は五月雨の声に気がついたが、五月雨が何故止まる様に言っているのか理解が出来ず反応が遅れていた。

 

ヲ級フラッグシップ「ユケッ! カンサイキタチ!!」

 

 ヲ級の声と共に、これまでの深海棲艦の艦載機とは異なり、球体に近い形の艦載機が出現する。

 

五月雨「那珂さん! 逃げてぇぇぇ!!」

 

 

 

 

美鈴「う、うぅ……」

 

 いつの間にか気を失っていた美鈴は、気がつくとベッドの上にいた。

 

美鈴「こ、ここは?」

 

 美鈴が目を覚ましたことに気がついた、白と赤色の作業服を着た黒いロングヘアーの女性が、すぐさま美鈴に近づいてきて声をかける。

 

あかぎ「目を覚ましましたね、具合の悪いところはありませんか?」

 

 美鈴は、初対面のあかぎに不思議な感覚を抱きながらも、自分の体を確認しながら上体を起こす。

 

美鈴「はい、特に異常は無さそうですが……」

 

 美鈴の不思議そうな表情に気がついたあかぎは、まだ挨拶をすませていなかった事を思い出し美鈴に正対して敬礼をする。

 

あかぎ「失礼しました、私は紅月准将にお世話になっているあかぎと申します!」

 

美鈴「は、はい、私は紅美鈴です! 助けていただいたようでありがとうございます!!」

 

 あかぎの敬礼につられて、美鈴もあかぎに敬礼をしながら名乗り返す。

 

    ガチャ

 

 美鈴が横になっていた部屋のドアが開かれ、明石が部屋に入ってくる。

 

明石「提督、目を覚まされたんですね!!」

 

美鈴「あ、明石!」

 

 明石は不満そうに頬を膨らませながら、美鈴が横になっていたベッドに近づいてくる。

 

明石「あれほど、『気』を使いすぎたらダメだと言ったじゃないですか!」

 

美鈴「ご、ごめん……って、どうしてここに?」

 

明石「夕張と鎮守府上空の敵機を撃墜したら、紅月准将から気を失っている提督が保護されて、近くにあった工廠に運び込まれたと聞いたので、海に向かった夕張さんと別れてここに来たんですよ!」

 

美鈴「そ、そうか……、入渠中にやられた金剛の仇は明石と夕張で討ってくれたんだね……」

 

 そう言いながら下を向く美鈴に、明石とあかぎはキョトンとした表情をしながら首をかしげる。

 

明石「いや、入渠施設を破壊した敵機を倒してくれたのは伊在井少尉ですし……」

 

あかぎ「入渠施設は破壊されましたが、金剛さんは……」

 

    ドタドタドタ

 

 明石とあかぎが、美鈴に状況を説明しようとした時、部屋の外から誰かが走ってくるような足音が聞こえて来た。

 

    バターン!!

 

 美鈴たちがいる部屋のドアが勢いよく開かれると、バスローブを着ている栗色のロングヘアーの女性が美鈴に向かって駆け寄って来た。

 

金剛「テーイートークゥー!!」

 

 突然の出来事に目を丸くしている美鈴に、バスローブ姿の金剛が抱きついて来たのである。

 

美鈴「こ……、金剛!?」

 

金剛「提督ぅー、深海棲艦の航空機と戦いながら倒れたと聞いて心配していたヨー」

 

 深海棲艦の航空機の爆撃でやられてしまったと思っていた金剛が、元気に飛びついてきながら涙目になりながらも美鈴に抱きついて頬ずりして来ている今の状況について、美鈴はいまいち理解が出来ずにキョトンとしていた。




何とか間に合いました、これが正真正銘の平成最後の投稿になります!!

今日は、家に帰ってきてからテレビをつけると、ちょうど天皇陛下が退任する儀式がライブ中継されていたのを見て、31年続いた平成が終わるのを初めて実感したような気がします……

次は新年号である『令和』初の投稿になりますが、西暦が変わってもよろしくお願いいたします!!
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