華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第43話 部屋と士官服とワタシ

金剛「Wow! こんな新品、本当にお借りして良いのですカ?」

 

美鈴「帽子は何度かかぶったけど、こういうカチッとした服はあまり好きじゃ無くて、作ってもらったけど、サイズ確認で着た位なんだよねぇ」

 

 美鈴は、提督として着任した当初に裁縫が得意な妖精さんに仕立ててもらった提督服を、着用できる衣服が無くなってしまった金剛に手渡す。

 

金剛「Oh! 丈もちょうど良さそうデス、早速着させていただきマース!」

 

美鈴「シャツとかも支給品の中から金剛に合いそうなサイズのものを、いくつか明石が持ってきてくれたから合うのがあったら使ってね」

 

 美鈴はそう告げると、金剛が着替えやすいように部屋から出て行く。

 

金剛「海軍士官用の真っ白な制服って、クールでカッコいいデース!」

 

 金剛は密かに憧れていた白色の海軍士官服を手に、嬉しそうに着替えを始める。

 

金剛「うーん、ズボンはちょうど良いSizeですが、上着は少し大きい気がするネー」

 

 金剛は、上着の胸元が少しだけ大きな事に気がつき、手でダボダボさせていた。

 

金剛「提督は活動的だから、こういう方が動きやすいのかもしれないデスネー」

 

 金剛は、鎮守府内でも艦娘たちと一緒に運動や肉体労働をしていることの多い美鈴の事を思い出し、上着の胸元のサイズが大きいことについて勝手に納得していた。

 

金剛「ふふふ、我ながらなかなか似合っているネー」

 

 着替えが終わった金剛は、室内の鏡で自分の姿を確認しながら色々とポーズを決めてみたりなど悦に入っていた。

 

美鈴「金剛、そろそろ大丈夫かな?」

 

 部屋の外から、美鈴が金剛に声をかけてきたため、金剛は慌てて姿勢を正して直立する。

 

金剛「だ、大丈夫なのデース!」

 

美鈴「入るよー」

 

    ガチャリ

 

 美鈴がドアを開けると、見事に士官服を着こなした金剛の姿があった。

 

美鈴「おぉ~、似合っている! 格好良いよ!!」

 

金剛「へへ……、そうですか、似合っていますか?」

 

美鈴「前の服装もそうだったけど、金剛は白い服装が似合っているし、その服装だと本当の提督みたいだよ」

 

 美鈴の褒め言葉に、金剛は頬を赤らめながら得意げな表情を見せた。

 

 

 

 

麗美「帰還中の五月雨から、戦闘の詳細な報告データが送られてきたわね……」

 

大淀「はい、ただいまモニターに表示しますね」

 

    カタカタカタ

 

 龍星鎮守府北方海域での戦闘結果について、大まかな内容の無線報告を受けていた麗美ではあったが、五月雨から戦闘結果の報告書が送られてきたため目を通し始める。

 

麗美「戦闘終了直後は疲れているでしょうし、緊急事態が起きていない限り、報告は帰還してからで良いと言っているのだけどね……」

 

大淀「データ受信完了、開きます」

 

 龍星鎮守府提督室のモニターに、五月雨から転送されてきた報告書の内容が表示される。

 

大淀「!?」

 

麗美「ふふ、これは暁ね……」

 

大淀「えぇっ!?」

 

 モニターの全面に、デフォルメされながらもキラキラとキラ付けされた暁のイラストが表示される。

 

大淀「こ、これは?」

 

麗美「この戦闘のMVPを暁にして欲しいということね」

 

大淀「MVPですか……」

 

麗美「五月雨ったら、暁のことを大分気に入ったみたいね」

 

 大淀が報告書のデータを下にスライドさせていくと、『戦闘結果に関する報告書』と明朝体で書かれた表紙と思わしきページが表示される。

 

大淀「急に真面目な感じになりましたね……」

 

麗美「五月雨は優秀な子よ」

 

 報告書には数ページにわたり、五月雨たちの戦闘内容が詳細に記録されていた。

 

大淀「各艦の戦果についても記載されていますね」

 

麗美「1番練度の低い暁が、歴戦の五月雨や那珂を上回る戦果を上げたというところを見せてもらおうかしら」

 

 

 

 

    トントン

 

 麗美と大淀が五月雨の報告書を閲覧していると、誰かが提督室のドアをノックする。

 

麗美「在室しているわよ」

 

 麗美がドアの外にいるであろう、ノックしてきた者に対して返事をすると、雷の声が聞こえてきた。

 

雷「司令官、お茶を持ってきたわ!」

 

麗美「あら、ありがとう、入って良いわよ」

 

    ガチャリ

 

雷「紅茶が切れてたから、冷蔵庫にあったウーロン茶をもらってきたわ」

 

 麗美の返事を聞いた雷は、元気よくドアを開けると笑顔で提督室に入ってきた。

 

麗美「ありがとう、いただくわ」

 

 麗美は、雷が持ってきたウーロン茶を受け取るため、モニターの正面から移動して机に向かうと、雷が机に人数分の紅茶用のソーサーとティーカップを並べていた。

 

麗美「あら、持ってきたのはウーロン茶じゃなかったの?」

 

大淀「准将が持ってきたティーセットですね」

 

雷「さっきの戦闘でガラスのコップとかが割れちゃったらしいんだけど、司令官のティーセットは高そうだからって妖精さん達が死守してくれたみたいなの」

 

麗美「何だかここの妖精さん達に、余計な気を遣わせちゃったみたいね……」

 

 雷から、ティーセットの話を聞いた麗美は申し訳なさそうな笑みを見せながらも、大淀や雷と共に雷が注いでくれたウーロン茶を飲み始めた。

 

 

 

 

麗美「ところで、電の様子はどうなの?」

 

雷「空襲で宿舎や入渠施設が壊されちゃっていたから、入渠は出来ていないわ」

 

大淀「そうですよね……」

 

 中破していた電は、雷と共に提督室に立ち寄った後、怪我の治療のために一度提督室を後にしていた。

 

雷「でも、ここの仮眠室で休ませてもらいながら、怪我をして避難してきた妖精さん達と一緒に無事だった妖精さん達が治療してくれているわ」

 

麗美「入渠施設が壊されたのは痛いわね、妖精さんがいれば簡単な治療は出来ても本格的な治療は無理だものね……」

 

大淀「明石も簡単な治療は出来ますが、中破以上の負傷となると入渠施設は不可欠ですからね……」

 

 深海棲艦による空襲によって龍星鎮守府には多数の被害が出ており、艦娘が休憩する宿舎の大半や入渠施設が全壊してしまっていた。

 

 特にこの度の戦いでは多数の艦娘が負傷ていることから、入渠施設が破壊されたことは大きな痛手となっていた。

 

雷「ところで司令官、さっき大淀さんと見ていたのはなんなの?」

 

 ウーロン茶を飲み干した雷は、自分が提督室に入って来たときに麗美と大淀がモニターで眺めていた戦闘報告書が気になるようであった。

 

麗美「そうね、五月雨から北方での戦闘結果についての報告書が届いたから見ていたんだけど、雷も一緒に見るかしら?」

 

雷「暁が活躍したっていう話だったわよね、気になるわ!」

 

大淀「それなら、もう一度最初のページから見てみましょうか」

 

 大淀は、途中までスクロールしていた報告書を最初のページまで戻し、雷も最初から報告書が見られるように配意した。

 

 

 

 

雷「こ、これは……!?」

 

 提督室のモニターに表示された、暁のイラストを見て雷は戦慄する。

 

大淀「准将の話だと、五月雨さんが暁さんを評価して書いたものだとか」

 

雷「わかってるわ、あ、あの暁が五月雨さんにここまで評価されてるなんて……」

 

麗美「姉でありライバルの暁の活躍、雷はどう見るかしら?」

 

雷「ま、まぁ暁だって雷たちのお姉ちゃんだから、やるときはやるはずよ……」

 

 麗美の質問に対し雷は、焦っているような喜んでいるような微妙な表情を見せていたが、だんだんと口元がにやけてくる様子がうかがわれた。

 

雷「暁はプライドばっかり高いのに、いまいち自信が無くて失敗が多いからみんなからは『頼り姉ぇ(たよりねぇ)』なんて呼ばれることが多いけど、私たち暁型のネームシップなんだからね」

 

麗美「ふふ、嬉しそうで何よりだわ……」

 

 いつもは口げんかが多い暁と雷であるが、心の中では暁を認めている雷の様子を微笑ましく感じながら麗美たちは、五月雨の報告書を確認していった。

 

 

    那珂   空母ヲ級 1体(エリート級) 重巡リ級 2体

         雷巡チ級 2体  軽巡ヘ級 4体

         駆逐ロ級 5体  駆逐イ級 12体

         合計  26体

 

    五月雨  軽空ヌ級 1体  重巡リ級 2体

         雷巡チ級 3体  軽巡へ級 5体

         駆逐ロ級 6体  駆逐イ級 11体

         合計  28体

 

    暁    空母ヲ級 2体(内1体はフラッグシップ級)

         駆逐ロ級 1体  駆逐イ級 2体

         合計   5体    

 

 五月雨の報告書によると、各艦の戦果はこのようになっており、数字上では那珂と五月雨の戦果が際立っていた。

 

大淀「練度の影響か、暁さんの戦果は他の二人と比べると5分の1程ですね」

 

雷「でもヲ級2体撃破って凄いわね……、ところでエリート級は聞いた事あるけど、このフラッグシップ級ってなんなの?」

 

麗美「エリート級は通常の深海棲艦の強化型なのは知っていると思うけど、フラッグシップ級はそれを超えた存在で目撃された例はほとんど無いわ……」

 

 麗美は、雷の質問に答えながら軽く天井を見上げる。

 

麗美「詳しいことをいうと色々違うのでしょうけど、わかりやすく艦娘に例えるなら、エリート級が『改』、フラッグシップ級は『改二』と言ったところかしらね」

 

雷「改二の正規空母!? そんな凄い深海棲艦を暁が倒したっていうの?」

 

 麗美の説明を受けた雷は、思わず大きな声を出して驚きの表情を見せた。

 

 

 

 

    コンコン

 

 麗美たちが五月雨の報告書を確認していると、提督室のドアをノックする音が聞こえてきた。

 

麗美「誰かしら?」

 

 麗美がノックに応えると、ドアの外から複数の人の気配がした。

 

   ガチャリ

 

美鈴「麗美さん、遅くなっちゃいましたが戻りました~」

 

咲樂「(また、お嬢様のことを『麗美さん』だなんて馴れ馴れしいわね……)」

 

 そこには、工廠から戻って来た美鈴たちの姿があった。

 

麗美「メーリンに咲樂、あかぎも一緒だったのね」

 

明石「私もいますし……」

 

 名前を呼ばれ無かった明石が、ドアの外から顔をのぞかせると、更にその横から白い士官服を着たすらりと背の高い女性が現れた。

 

大淀「もう一人の方は……」

 

士官服の女性「皆さん、ご挨拶が遅れました……」

 

 士官服の女性は礼儀正しく、深々と礼をしており顔を見ることが出来ない。

 

麗美「どうも、あなたどこかで……」

 

 麗美は士官服の女性に礼を返しながらも、知っている人物であると感じていた。

 

 士官服の女性は、ゆっくりと顔を上げると満面の笑みを見せた。

 

金剛「ははっ、気づきませんでしたカ? 金剛デース!!」

 

 金剛は大きな声で名乗ると、左手を突き出して得意のポーズを決める。

 

雷「え!? 金剛さんも司令官になったの?」

 

大淀「さすがにそれは無いでしょうけど、その服装はどうしたのですか?」

 

 いつもの服装と違い、美鈴の士官服を着ている金剛に驚く様子の大淀たちに、美鈴と金剛が事のいきさつを説明した。

 

 

 

 

麗美「なるほど、戦闘で汚れてしまった服の着替えを探してる内に入渠施設や宿舎が爆撃されて着替えが無くなってしまったから、美鈴が普段着ていない士官服を貸したという訳ね」

 

美鈴「せっかくサイズを合わせて作ってもらったんですが、どうもいつもの服の方が落ち着くというかで、ずっと仕舞いっぱなしにしていたもので……」

 

金剛「Sizeもほとんど一緒でしたし、胸回りも大きめに作られているから動きやすくて快適デース!」

 

大淀「(あぁ、金剛さんも大きい方なのに、提督はもっと大きいから……)」

 

咲樂「(お嬢様に馴れ馴れしい上に、戦艦よりも大きいなんてなんか腹立つわ……)」

 

 服の胸回りのサイズが大きいことについて、動きやすくて快適だと喜ぶ金剛に対して、スレンダー体型である大淀や咲樂は、なにか別の感情を抱いている様子であった。

 

明石「大淀、どうしたの? 提督の胸部装甲を睨み付けてるみたいだけど?」

 

大淀「な、何でもありません!!」

 

 空襲の脅威が無くなった事で、一安心していた一行は和やかな雰囲気で談笑をしていた。

 

 

    ガガッ…… ザザザ……

 

 しかしその時、提督室の無線機から感度が悪い状態の通信音が聞こえて来た。

 

美鈴「今のは、無線機ですか?」

 

麗美「誰からの通信かしら?」

 

 美鈴たちは、無線機から聞こえて来た雑音に反応し、大淀が無線機の通信感度を調整しながら交信を試みる。

 

大淀「こちら龍星鎮守府、感度が悪く聞き取れませんがどちらでしょうか?」

 

    ザザ…… こち…… ゆ……ぜ ……とうし……い

    ……ら ……かぜ おう…… ……ます

 

 雑音混じりではあるが、かすかに少女の声が聞こえてくる。

 

美鈴「この声は、雪風?」

 

麗美「雪風と榛名は、この鎮守府の西方面にいるはずだわ」

 

大淀「こちら大淀です、雪風さんですか? 応答願います!」

 

    ザ…… ザザ…… こち…… ゆきか……す ……よど……ん

 

 雑音混じりではあるが、だんだんと雪風の声が聞こえてくる。

 

大淀「だんだん聞こえて来ました、雪風さんも聞こえますか?」

 

雪風「はぁはぁ……、え、援軍を……、榛名さんが交戦中……」

 

 未だに無線の感度が悪くて詳細が判明しないが、息も絶え絶えになっている雪風から、突然交戦中との無線が入り美鈴たちに再び緊張が走った。




5月の後半から忙しくなってしまい、更新が遅れていました……

そして、本家『艦隊これくしょん』の2019年春イベントもまだ攻略できていない状態ですが、第43話を投稿いたします(笑)

今回の春イベのE5攻略ボーナスには前回ここで触れた艦載機の『一航戦』仕様というか、まさかまさかの烈風改二戊型(一航戦/熟練)があるようで、これで烈風も赤城さんに「知らない子」と言われなくなって良さそうですが、ボーナス入手の条件がE5を甲で攻略しなければならないので、ウチの鎮守府ではまだ手に入れられそうにありませんね……(泣)


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