雪風「うぅ……、ここまで来てもまだ鎮守府と満足に交信が出来ません」
援軍を要請するため、榛名と別れて龍星鎮守府に近づきながら無線で呼びかけ続けていた雪風であったが、電波状態が悪く無線が上手く通じない事と、今まさに敵艦隊と交戦しているであろう榛名を心配する気持ちから来る焦りで徐々に冷静さを失いつつあった。
美鈴「ゆきか……、きこ……る?」
そんな時、雪風の無線機に相変わらず不明瞭な状態ではあったが美鈴からの通信が入ってくる。
雪風「しれぇ、聞こえます!!」
焦りと不安から冷静さを失いかけていた、雪風には途切れ途切れではあっても美鈴の声は暗闇を照らす一筋の光のように感じられた。
美鈴「いまか……、こんごうが、えんぐ……に……うわ」
雪風「金剛さん? 援軍に来てくれるんですか!!」
美鈴「はる……が、しんぱ……だ……ら、ゆ……かぜ……は……なと、ごうりゅ……して」
雪風「雪風は、榛名さんと合流、これでいいですか?」
美鈴「そう、は……なと、ご……りゅう……て」
雪風「はい! 雪風は榛名さんを沈めさせません!!」
無線状態は不明瞭であったが、美鈴からの無線で雪風の援軍要請が伝わっており、龍星鎮守府から金剛が援軍に来てくれるという返信があったことは、雪風の崩れかけそうになっていた心にこの上ないほどの勇気を与えた。
明石「艤装の装着に問題ありません、金剛出撃可能です!」
明石の手によって艤装の最終チェックを受けていた金剛は、出撃可能とのチェック結果を受けてゆっくりと立ち上がりながら明石に笑みを見せる。
金剛「明石、艤装の装着手伝ってもらってThank youネ!」
美鈴「今すぐに援軍に向かえるのは金剛しかいないけど、北方面に出ている娘たちも準備ができたら援軍に向かってもらうから、無理は禁物よ!」
金剛「妹や仲間がピンチなのデス、多少は無茶はしちゃうと思いマスが、必ずみんなで帰ってくると約束するデース」
美鈴「帰ってくるまでにお風呂や晩ご飯の準備はしておくから、必ず帰って来るのよ!」
そう言うと、美鈴は右拳を金剛に向けて軽く突き出す。
金剛「ハイ、約束デス!」
金剛も、右拳を美鈴に軽く突き返して美鈴の右拳をタッチするように答える。
麗美「今回は美鈴の服を借りているんだから、被弾は出来ないわね」
金剛「ふふっ、その通りデース!!」
麗美の軽くプレッシャーをかける様な激励にも金剛は軽く笑みを見せて答える。
あかぎ「妖精さんたちも、偵察機へ搭乗完了したようです、金剛さんも妖精さんたちも、どうかご武運を!」
金剛「妖精さんたちも、一航戦の赤城に色々と手伝ってもらったから、恥ずかしいところは見せられないと気合い入ってるみたいデース」
あかぎ「今の私は一航戦の赤城では無く、ただの『あかぎ』ですよ……(一航戦時代の『赤城』としての能力があれば、もっとみんなの力になれるのですが……)」
あかぎは、まだ水上機になれていない妖精さんたちの搭乗準備を手伝いながらも、自身にかつて日本海軍最強との呼び声もあった、一航戦時代の正規空母としての能力が残っていればと思い詰めていた。
咲樂「水上機での実戦経験が無いとは言え、あの熟練と見まごうほどの練度を誇った鳳翔航空隊の妖精さんたちです、きっと上手くやれるはずですわ」
金剛「紅月のSilver Falconと呼ばれる、Ace Pilotに認められて、妖精さんたちもやる気満々デース!!」
咲樂「シルバーファルコンじゃなくて、お嬢様が名付けて下さった二つ名は『白銀の隼』ですわ!」
咲樂の激励に、零式水上偵察機に搭乗している妖精さんたちは敬礼で答える。
大淀「金剛さん、榛名さんは私にとっても艦船時代に共に最後まで戦った戦友です、どうか無事に一緒に帰ってきて下さい」
金剛「艦娘になって色々な戦史を見て榛名や大淀たちの最後の戦いを知りました、でも今は燃料も弾薬もありますし、大好きな提督や大淀たち仲間もいます、みんなのLove Powerが有る限り絶対に勝って帰って来るネー」
金剛は仲間たちの期待を背負いながら、榛名と雪風の救援のために龍星鎮守府の海岸から出港していった。
空母を擁する敵艦隊を相手に、主砲の射程距離外で対峙し続ける事は不利と判断した榛名は、敵艦隊に突入し戦闘を開始する決意を固めていた。
榛名「必ず雪風さんは援軍を連れて来てくれます、それまでに少しでも敵を叩きます!」
榛名自身、艦娘になってからの戦闘は初めてであり、練度不足であるということは重々承知していたが、艦船時代に日本の戦艦として老朽艦と呼ばれながらも、太平洋戦争で最も活躍した戦艦と呼ばれた金剛型戦艦としての誇りなのか、人型の身を得て芽生えた榛名自身の大和魂から来る行動なのか、榛名は数的不利な状況にも関わらず勇敢に深海棲艦へ立ち向かう。
ズゥゥゥゥゥゥン ズゥゥゥゥゥゥン
深海棲艦の艦隊から、先ほどとほぼ同規模の艦載機が榛名を目掛けて向かって来る。
榛名「今度の狙いは、榛名ですね……」
榛名は再び主砲に、金剛から譲り受けていた三式弾を装填し、敵艦載機に向けて狙いを定める。
榛名「あの時は、比叡お姉様と霧島は鉄底海峡で散り、金剛お姉様は本土に帰還中に台湾沖で散ってしまい、榛名は一人残されてしまいました……」
榛名は、艦船時代の記憶で姉妹艦たちが沈んでいったと言う報告を受け、金剛型戦艦姉妹の最後の艦として呉の港に帰港した事を思い出す。
榛名「でも、今は艦娘として再び生を受け、金剛お姉様と再会する事が出来ました……」
榛名は、迫り来る深海棲艦の艦載機が、主砲の射程圏内に入るのを狙いを定めながら待っている。
榛名「きっと、この海のどこかで比叡お姉様や霧島もいると思いますし、姉妹みんなが再会出来る日が来るまで、榛名は戦い抜きます!!」
敵艦載機に狙いを定める榛名の目に一段と力がこもり、先ほどまで過去の記憶によるトラウマに悩まされていた榛名は、スポーツ選手が極限まで集中力が高まった時に体感する『ゾーン』と呼ばれるような状態に達していた。
榛名「榛名!全力で参ります!!」
ズゥゥゥゥゥゥン ズゥゥゥゥゥゥン
榛名に向かって来る敵艦載機の大軍を目の前に、榛名は狙いを定めながら大きく息を吸い込む。
ドォォォォォン ドォォォォォン
榛名は、特に敵艦載機が密集している二つのポイントを目掛けて、三式弾2発を発砲し多くの敵艦載機が爆発に飲まれて行く。
先ほど龍星鎮守府への爆撃のために発艦していた艦載機が、榛名に迎撃された反省を生かして、榛名への攻撃は部隊を大きく二手に分けていた深海棲艦の艦載機たちであったが、極限までに集中している榛名によって大半の艦載機を失った状況であった。
スコシハ ヤルデハナイカ…… ダガ コレナラ ドウダ……
対面する深海棲艦の艦隊の方から、再び声のようなものが聞こえてくる。
榛名「この声は、深海棲艦なの?」
榛名が、声の方向に視線を向けると、敵艦隊の中央にいる正規空母ヲ級と目が合った気がした。
榛名「あのヲ級があの艦隊の旗艦!?」
中央のヲ級は、榛名と視線が合った事を察すると、ニヤリと笑みを浮かべながら周囲に赤いオーラを放ち始める。
榛名「あの雰囲気、ただ者じゃ無さそう……」
敵艦隊の中央にいるヲ級は、その全身に赤いオーラを纏いながら、榛名がいる方向に右手をかざし、周囲に赤いオーラを纏った球体型の艦載機を展開させ始める。
このヲ級も、龍星鎮守府の北側海域で五月雨や那珂が戦ったヲ級の高位体である、ヲ級エリートであった。
ヲ級エリート「オアソビハ オワリダ……」
榛名「くっ、この雰囲気は……、あの深海棲艦は間違いなく強い……」
ヲ級エリートの雰囲気に榛名は気圧されてしまい、極限まで高まっていた集中力が途切れ、心臓の鼓動がどんどん早くなる感覚を抱き、体中から汗がどんどんと吹き出てくる。
ヲ級エリート「ホンノウデ ワタシノチカラヲ ミヌイタカ……」
ヲ級エリートは、左手に持った黒い杖のようなものを頭上に掲げた後、力強く榛名の方向に向けて振り下ろす。
ヲ級エリート「イカシテオクト アトアト ヤッカイニ ナリソウダ ココデ シズメ!」
ヲ級エリートの号令で、赤いオーラを放った艦載機たちが榛名に向かって飛来してくる。
榛名「これは、さっきの艦載機と比較にならないくらい早い!?」
ヲ級エリートの艦載機は、先ほどまでの通常の敵艦載機と比べて倍以上の速度で、機動の一つ一つにキレと力強さを感じた。
榛名「迎撃を! ま、間に合わない!?」
ヲ級エリートの艦載機が、榛名の眼前に迫ろうとするその時、榛名の後方から高速で向かってくる何者かの気配を感じた。
ドォォォン ドォォォン
雪風「榛名さん、伏せて下さい!!」
榛名が感じた気配の正体は、敵艦載機に砲撃を行いながら全速力で駆けてくる雪風であった。
榛名「雪風さん!?」
雪風の声を聞いた、榛名は雪風の指示通り身を伏せながら後方の雪風に視線を向ける。
雪風「沈むわけにはいきませんっ!!」
ドォォォン ドォォォン
雪風は、両手で持った12.7cm連装砲をヲ級エリートの艦載機に向けて発砲する。
雪風が放った砲弾は的確に敵艦載機を捉え、少数ではあったがヲ級エリートの艦載機を撃墜していく。
ヲ級エリート「クチクカンガ イッピキ フエタテイド ドウトイウコトハナイ…… ヤレッ!!」
突然の雪風の増援にも、深海棲艦の艦隊を指揮するヲ級エリートは動じること無く、冷静な声で水雷部隊に攻撃を指示する。
出鼻を挫いたことで、ヲ級エリートの艦載機による攻撃を回避する事に成功した榛名と雪風に、重巡リ級率いる水雷部隊が突撃を仕掛けてくる。
榛名「敵は、重巡と軽巡に駆逐艦が2体の4体、対するこちらは榛名と雪風さんの2人、戦力差は2対1ですか……」
雪風「軽巡と駆逐艦は任せて下さい! 榛名さんは重巡をお願いします!!」
榛名「雪風さん一人で、3体も!?」
雪風「しれぇに無線は通じました、必ず増援は来てくれます!」
榛名「無線は届いたんですね!!」
雪風「はい! 鎮守府から金剛さんも来てくれます!!」
榛名「お姉様が!?」
雪風の口から金剛の名前を聞いた榛名は、先ほどボロボロな状態で榛名と合流し龍星鎮守府まで曳航していった時の金剛の姿を思い出す。
榛名「お姉様は、自力で航行できないほどボロボロだったのに大丈夫でしょうか……」
榛名の言葉から、不安な気持ちを感じた雪風は、榛名を勇気づけるように声をかける。
雪風「艦娘の怪我は、提督が高速修復材を使ってくれたらあっという間に治っちゃいますし、艤装の修理だって優秀な整備妖精さんたちがすぐに修理してくれます!」
榛名「しかし……」
雪風「それに、雪風たちが知っている金剛さんは、賢くて、とても強くて、みんなに優しい頼れる大戦艦なんです!!」
榛名「お姉様が、皆さんにそんなにまで……」
雪風「はい、だからどんなにピンチだって絶対、大丈夫!!」
そう言うと、雪風は軽巡ヘ級1体と駆逐ロ級2体の合計3体を自分に引きつけるため、向かってくる敵水雷戦隊に突撃していく。
雪風の背中を見つめる榛名は、雪風が不安になっている自分を勇気づけようとしてくれていることに気がつき、自分の胸に右手をあてて軽く頭を下げる。
榛名「雪風さんは、優しいのですね……、お心遣い、ありがとうございます」
妖精さん『コンゴウ ムコウデ ダレカガ タタカッテイルヨ』
零式水上偵察機で、榛名たちがいると思われる海域に向けて偵察中の妖精さんから金剛に報告が入る。
金剛「その方角なら榛名たちに間違いないデース、もっと近づいて確認して欲しいネ!」
妖精さん『リョウカイ マカセテヨ!』
榛名たちがいる龍星鎮守府の南東側海域に向かっている金剛は、零式水上偵察機の妖精さんたちに戦闘中の艦娘たちについて詳しく偵察するように指示を出すと、龍星鎮守府に妖精さんたちからの報告について一報する。
金剛「Hey、提督ぅー、妖精さんたちが南西方面で戦闘を確認したデース!」
美鈴「本当!? 榛名たちは無事なの?」
金剛「今、妖精さんたちが詳しく見に行ってくれていマース!」
大淀「こちらにも、妖精さんからの戦闘発見地点のデータが転送されてきました、他の艦娘たちにも至急連絡します!」
金剛「他にもHelpに向かえる艦娘がいるデース?」
大淀の無線から、他に援軍に向かえる艦娘がいると察した金剛は、大淀に質問する。
夕張「こちら夕張、私だけだけど南西海域に向かっているわ!」
金剛の質問に対して、鎮守府北方面に出撃していたはずの夕張が名乗りをあげる。
金剛「ゆうばり……、たしか兵装実験をしていたあの夕張ですカ?」
まだ着任した夕張と接点が無かった金剛は、突然の夕張からの無線に驚きながらも、過去の艦船時代の夕張を思い出す。
美鈴「金剛が入渠した後に建造が完了して、北方面の応援に向かっていたんだけど、到着した頃には北側での戦闘が終わっていたから、燃料や弾薬もまだ大丈夫だからってそのまま、そっちに応援に向かってくれているのよ!」
金剛「足の速い軽巡が向かってくれているのはありがたいネー!」
夕張「足の速い軽巡か、あはは……」
夕張の巡航速度は、他の軽巡や駆逐艦と比較しても決して劣るものでは無いが、艦船時代に改装により兵装の重量が増加すると共に速力が低下してしまったこともあり、本人は自分が鈍足だと勘違いしているため、夕張は自虐的に笑うのであった。
今年は7月になっても30度を超えるような日が無く、何だか夏だという実感が無いなぁと油断していたら、急に30度越えを連発されて困っている今日この頃です。
今年に入って、近くの市民プールが平日の夜まで一般開放されていることを知り、避暑と運動不足解消を兼ねて何度か通っていましたが、昔地味に得意だった潜水で伊168や伊58みたいにスイスイ潜水してみようと思っていたのですが、思った以上に体力が低下していて前に進まないし息も持たないという散々な結果に現実を突きつけられています。
提督として泳ぎぐらい出来なければと、少し頑張ってみようかと思いますが、昔から息継ぎが出来ない人間なのでなんともなぁ……、誰かボクに泳ぎを教えてくれる艦娘はいないでしょうかねぇ(笑)
艦娘は、みんな元々軍艦だし、きっと泳ぎは上手なんでしょうね(まるゆを除く……)