華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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 龍星鎮守府の南西海域に出現したヲ級エリート率いる深海棲艦の機動部隊と交戦中の榛名と雪風の援軍に向かっていた金剛と夕張は、美鈴からの指示により二手に分かれて援軍に向かうこととなった。

 金剛の零式水上偵察機を敵艦隊に突入させて、金剛の主砲で弾着観測射撃を狙うための作戦であったが、零式水上偵察機を突入させるために、戦闘海域の制空権をとっている深海棲艦の艦載機を一時的でも戦闘海域から引き離す必要があった。

 戦闘海域に到着した夕張による陽動により、ヲ級1体は自分の艦載機を全て引き連れて夕張のもとへ向かい、ヲ級エリートの艦載機は榛名の三式弾を警戒して大多数が戦闘海域から少し離れた空域に待避しようとしていた……


第47話 飛行機乗りと元空母

深雪「ちっくしょぉ、深海棲艦のやつらまだいたって言うのかよ」

 

天龍「南西方面の敵は、あの時やっつけた艦隊以外に発見できなかったから、もういないと勘違いしていたなんてな……」

 

 北方面の敵艦隊を倒した暁たちを出迎えるため、北方面に向かっていた天龍、深雪、響の3名は、その途中で龍星鎮守府の南西方面海域で榛名と雪風が、突如出現した深海棲艦の機動部隊と交戦中との無線を受けた。

 

 天龍と深雪は、暁たちの出迎えを響に託して、援軍に向かうために鎮守府の南西方面に急行していた。

 

町井田「お前たちは燃料も弾薬も補給が必要だ、一度ミディアに合流して補給を受けるんだ!」

 

天龍「悪いがそんな余裕は無いな、新しく着任した金剛さんの妹や、雪風が危ないんだろぉ、このオレたちが行ってやらないでどうするっつうんだ!」

 

深雪「鳳翔さんも艦載機の損傷がひどくてすぐに出られないなら、深雪さまと天龍さんが先行するしかないだろぉ?」

 

町井田「しかし、補給を受けなければお前たちも動けなくなるぞ!」

 

天龍「そんな事にビビっていたら、間に合うものも間に合わなくなるぜ!!」

 

深雪「それに燃料だったら、たまに海上に漂流してるドラム缶に入っている事もあるし、それで補給すれば問題ないぜぇ」

 

町井田「そんな都合良く見つけられるものじゃないだろ! くっ、無線を切られたか……」

 

 良くも悪くも仲間思いで一直線な天龍と深雪は、長時間の出撃で燃料を消耗している上、深海棲艦の艦載機との交戦で弾薬も消耗している状況であった。

 

 その二人に対して、輸送艦ミディアに一度帰投して補給を受けるように指示する町井田であったが、天龍も深雪も聞く耳を持たずといったところであった。

 

鳳翔「申し訳ありません、町井田中尉……」

 

町井田「いや、そもそも私は君たちの提督でも無いし、君たち艦娘に指示できる様な立場でもないのだからしかたがないさ」

 

鳳翔「とはいえ、お世話になっている中尉の言うことも聞けないなんて、帰ったら二人にはお説教が必要みたいですね」

 

白雪「妹の深雪がすみません……、しかし漂流しているドラム缶で燃料補給ですか……」

 

 そう言いながら、白雪はミディアに積まれている艦娘用の燃料や弾薬を確認する。

 

白雪「町井田中尉、あの二人に補給を受けてもらうための考えがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

町井田「ん? 何か良い方法があるなら教えて欲しい」

 

 町井田は、天龍と深雪に補給を受けさせるために、白雪が思いついたという案に耳を傾けるのであった。

 

 

 

 

大淀「提督、北方面にいる町井田中尉のミディア経由で、天龍たちにも無線連絡がついたとの報告がありました」

 

明石「でも、天龍や深雪はずっと出撃したままだから、燃料や弾薬の補給が必要なタイミングですよね」

 

あかぎ「一度輸送艦で補給を受けてからの再出撃となると、時間がかかりそうですね」

 

美鈴「そうなると、金剛や夕張に頑張ってもらうしかないかなぁ……」

 

 美鈴は、艦娘たちの意見を聞きながら榛名と雪風の救援についての作戦を考えていた。

 

 

咲樂「紅提督は、先ほどから艦娘たちの意見を聞いてばかりですわね」

 

麗美「戦いは指揮官一人で出来るものでは無いわ、人の意見を聞く事が出来ない様な独善的な指揮官より、メーリンみたいに人の意見を聞けると言うことは、良い指揮官の証しだと思うわ」

 

咲樂「おっしゃるとおり、独善的すぎる指揮官は独裁者になりかねませんが、紅提督は指揮官としてもっと部下を統率していく必要があると思いますわ」

 

麗美「まぁ、そういうことは経験も必要だから、これから経験を積んでいけば出来るようになると思うわ」

 

 麗美はそう言いながら、ふと窓の外に目を向ける。

 

麗美「戦闘が長引いているからか、空の様子が騒がしくなってきたわね」

 

咲樂「騒がしい? 確かに海鳥の数が増えてきているようですが……」

 

麗美「この島の近くは魚が豊富で、昔は良い漁場として有名だったのよ」

 

 麗美の話を聞いた咲樂は、感心した様子で麗美の横顔を見つめる。

 

咲樂「本当にお嬢様は博識でいらっしゃいますわね」

 

麗美「海を守ると言う仕事柄かしら、戦闘とは関係の無いことでも、色々と自然に海のことには詳しくなるのよ」

 

 麗美は空を見上げながら、紅茶をゆっくりと口にする。

 

麗美「魚が多いからか、この島の周辺には海鳥が多いわね……」

 

咲樂「飛行機乗りとしては遠目で視認した海鳥の群れを、敵機の編隊と誤認してしまうこともあるので、あまり海鳥が多いのはご遠慮いただきたいのですけどね」 

 

麗美「へぇ、そういうものなのね……」

 

 咲樂の話を聞いた麗美は、ティーカップをソーサーに置いて、美鈴たちと一緒に作戦を考えているあかぎに目を向ける。

 

麗美「戦闘機乗りの咲樂が誤認してしまうことがあるのなら、艦載機を運用する空母も誤認することはあるのかしら……」

 

 

 

 

町井田「白雪、本当にやるのか?」

 

白雪「あのまま深雪ちゃんや天龍さんが援軍に向かっても、途中で燃料や弾薬が切れてしまうのは確実です」

 

鳳翔「だからといって、武装を外してそんなものを2個も運ぶだなんて……」

 

白雪「仲間として、姉として、天龍さんと深雪ちゃんを危険な目に遭わせる訳にはいかないのです」

 

 白雪は、天龍と深雪に補給物資を運ぶため、艤装から主砲や魚雷といった武装を取り外して、その代わりに燃料と弾薬を満載したドラム缶を2個装備した状態で、ミディアから出撃しようとしていた。

 

鳳翔「まだ他にも深海棲艦が潜んでいるかも知れません、せめて私の艦載機の出撃準備が出来るようになるまで待って下さい」

 

白雪「心配して下さりありがとうございます、しかし、私の速度では今出撃しないと二人に接触することが出来ません」

 

町井田「確かに、あの二人が真っ直ぐに雪風たちがいる海域を目指すのであれば、このタイミングで白雪が西に向かえば接触できるタイミングだが……」

 

白雪「この機を逃せば、二人に追いつくことが出来ません! それに敵に遭遇しても逃げ回れば死にはしません!!」

 

 白雪は、町井田と鳳翔に敬礼すると、ミディアの甲板から飛び降りて緊急出撃する。

 

町井田「う~む、本当にこれで良かったのだろうか……」

 

鳳翔「これでは白雪も、中尉の指示を無視する形になってしまい、申し訳ありません」

 

町井田「いや、結局白雪に燃料と弾薬の入ったドラム缶を渡したのは私だ……」

 

 龍星鎮守府の艦娘の中では、非常に真面目であり物静かで控えめな印象が強い白雪が、町井田や鳳翔の引き止めを無視して自分の意思を押し通した事に、町井田と鳳翔は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

あかぎ「海鳥の群れと、敵航空機の編隊との誤認ですか?」

 

 麗美は、先ほどの咲樂との会話で出てきた海鳥と航空機を誤認してしまう件について、あかぎを呼び寄せて話を聞いていた。

 

あかぎ「平常時ならほぼあり得ませんが、とっさに視界に入ってきた場合や、交戦中などで情報が錯綜していて混乱状態の時などでしたら、十分にあり得る話ですね(紅月准将のお茶菓子美味しそう……)」

 

咲樂「あの一航戦の赤城でも、鳥と航空機の誤認はあるのですわね(この感じ、まさかお嬢様のお茶菓子を狙っている!?)」

 

あかぎ「加賀さんが瑞鶴に稽古をつけている時も、何度か瑞鶴が鳥の群れを敵襲と誤認して説教を受けていた事もありましたね(なんだか、お茶菓子を見ていたらお腹が減って……)」

 

麗美「そうかぁ、海鳥の群れと敵機の編隊の誤認というのは、空母や飛行機乗りなら『よくある話』といったところだったのね、勉強になったわ」

 

 そう言うと、麗美は咲樂が切り分けてお茶菓子として置いていた羊羹を数切れ小皿に移してあかぎに手渡す。

 

あかぎ「ん、これは……、いただけるのですか!?」

 

麗美「紅茶と和菓子が意外と合うなんて知らなかったけど、それを教えてくれたのはここにいる咲樂なの」

 

あかぎ「咲樂さんも、准将の為にいつも色々と研鑽されていますからね」

 

麗美「私にとっては自分以外の人はみんな師であると思うし、貴女からも咲樂からも学べるものは多いわね」

 

咲樂「もったいないお言葉です……」

 

 麗美の言葉を聞いた咲樂は、上品に深々と頭を下げる。

 

麗美「その羊羹はお裾分けよ、人数分あるからみんなで食べてちょうだいね」

 

あかぎ「えっ? あ、ははは……(確かに人数分ありますね、危うく全部一人で食べてしまうところでした……)」

 

 

 

 

雪風「夕張さんと榛名さんのおかげで、ヲ級の艦載機の攻撃が緩みました……、今が好機です!!」

 

 3体の深海棲艦と交戦中であった雪風は、敵艦載機からの攻撃もあり防戦一方であったが、夕張の陽動と榛名の三式弾による対空攻撃によって敵艦載機が周囲から姿を消したため、眼前の戦闘にようやく集中することが出来た。

 

雪風「敵水雷戦隊の要は目の前の軽巡ヘ級と、榛名さんが相手をしてくれている重巡リ級のはずです」

 

 雪風は、駆逐ロ級の砲撃を避けながら両手に持った連装砲の照準を軽巡へ級に向ける。

 

    ドォォォン ドォォォン

 

 しかし、軽巡へ級を護衛している2体の駆逐ロ級の動きも良く、雪風はなかなかヘ級を攻撃することが出来ずにいた。

 

 

榛名「雪風さんが苦戦しています、早くリ級を倒して援護に向かわなければ……」

 

 重巡リ級を相手にしている榛名も、リ級の熟練された動きに翻弄され、苦戦を強いられていた。

 

 

夕張「これじゃあ、キリが無いわね……、でも私が空母を引き付けておかないとねっ!」

 

    ズダダダダダ ズダダダダダ

 

 ヲ級の陽動に成功した夕張は、ヲ級の艦載機によって激しい攻撃を受けながらも、もうすぐ金剛が到着することを信じて、満載している対空機銃を撃ち続けていた。

 

 

 

 

 麗美との会話を終えたあかぎは、麗美から受け取った羊羹を持って色々と作戦を考えている美鈴たちの下に歩いてきた。

 

美鈴「あかぎさん、麗美さんの要件は済んだんですか?」

 

あかぎ「あっ、えぇ……、これを皆さんへと」

 

明石「あっ、これは間宮の特製羊羹じゃないですか!」

 

 あかぎは、麗美から受け取っていた羊羹が入った小皿を提督机の片隅に置き、美鈴たちに食べるように促した。

 

美鈴「ありがたいですが、みんなが戦っている中で私だけお菓子を食べるなんて……」

 

 しかし美鈴は、鎮守府の南西方面で戦闘中の艦娘がいる中で、提督である自分が安全な提督室でお菓子を食べるなんて許されないという気持ちであった。

 

明石「でも、甘いものは脳の疲れに良いとも言いますし、せっかくですからいただきましょうよ」

 

あかぎ「そうですよ、さぁさぁ暖かいうちに食べて下さい」

 

美鈴・明石・大淀「(羊羹が暖かいうち?)」

 

 空腹のあかぎは、目の前の羊羹を早く食べたかったが、この龍星鎮守府の提督である美鈴が渋っている状況では一人で食べるわけにもいかず、思わず意味不明な事を口走ってしまった。

 

明石「紅月准将の用事って、お菓子の差し入れだったんですか?」

 

 羊羹を目の前にうろたえるあかぎの様子に、明石は少し呆れながらあかぎが麗美に呼ばれた理由について確認する。

 

あかぎ「いえ、元空母の艦娘として、鳥の群れと航空機の編隊を見誤ったりすることはあったかという質問を受けまして」

 

明石「もの凄く唐突な質問ですね~」

 

あかぎ「何やら准将が窓から外を見たときに、この島の周りにいる海鳥の数が増えていることが気になった様で……」

 

大淀「もともと、この島の周りには海鳥が多く生息していましたが、深海棲艦からの一連の攻撃で海鳥たちも慌ただしくなってしまっていますね」

 

美鈴「(かもめさんたちの住み処も、深海棲艦に荒らされているのかなぁ……)」

 

 あかぎたちの話を聞いて、美鈴は島の周りに生息しているかもめたちの心配をしていた。

 

 

 

 

明石「それで、実際に鳥の群れと航空機の編隊を見誤ると言うことはあるんですか?」

 

あかぎ「はい、普段ならほぼ無いですが、戦闘で混乱している状態や、必要以上に敵の攻撃を警戒して過敏になっている時には、そのような誤報が発生してしまう事がありますね」

 

大淀「確かに、敵襲を警戒しているときに遠くから鳥の大群が接近してくると、敵航空機の編隊と見誤る事はあり得そうですね」

 

あかぎ「はい、戦闘機乗りとして咲樂さんもこのような誤認があるという話をされていたようで、空母としての立場でも同じ様な事があり得るのかと言う確認だった様です」

 

 あかぎは、麗美や咲樂に呼ばれて質問されてきた事について、美鈴たちにも簡単に説明した。

 

美鈴「人や艦娘も場合によっては、空を飛ぶかもめさんの群れが飛行機と見間違えることがあると言うことは、深海棲艦も見間違える事があるのかなぁ?」

 

 あかぎたちの会話を聞いていた美鈴は、ふと思いついた疑問を何となく口に出してみた。

 

大淀「なるほど、提督の仰るとおり私たちも場合によっては鳥の群れと航空機の編隊を誤認することがあると言うことは、深海棲艦にも同じような事があり得るという事ですね!」

 

あかぎ「たしかに、そのように考えれば今の海鳥の数が増えてきている現状を上手く利用すれば、敵を出し抜くことが出来るかもしれませんね!」

 

 美鈴の何気ない一言を聞いた、あかぎと大淀は鎮守府の周辺に海鳥の数が増えてきている状況を利用して、深海棲艦に対して何らかの作戦を立てられるのではないかと考え始める。

 

あかぎ「どうにかして、海鳥たちの動きを制御することが出来れば、深海棲艦を混乱させて交戦中の艦娘たちを援護することが出来るかもしれません!」

 

大淀「あかぎさんの言う通り、海鳥の群れで深海棲艦の少しでも気を引くことが出来れば、隙を突いて金剛さんの零水偵を敵艦隊に突入させることが出来るかもしれません!!」

 

 あかぎと大淀は、海鳥たちをコントロールすることが出来れば……、との前提で深海棲艦と交戦中の艦娘たちを支援する作戦を考え始める。

 

大淀「しかし、私たちには海鳥と意思疎通をしたり出来るわけでもないですし、思い通りに海鳥の群れを動かすことが出来るかどうか……」

 

あかぎ「今から海鳥たちを餌付けしたりして、伝書鳩のように飼い慣らす時間もありませんし……」

 

 海鳥の群れを利用した作戦で盛り上がっていたあかぎと大淀は、大前提として海鳥たちとコミュニケーションをとることが出来ないという現実を前に落胆していると、突然明石が興味深い一言を口にする。

 

明石「たしか、妖精さんたちの噂では、島の周りのかもめとコミュニケーションがとれる者がこの島にいるとか聞いたことがありますよ」  




何とか8月中にもう1話と頑張っていたのですが、間に合わず8月中の投稿が前話の1話のみとなってしまい申し訳ありませんでした。

8月も終わり、北海道はだんだんと秋となり、私自身も『執筆の秋』となれるように頑張っていきたいと思います!!

……でも、提督の一人としては、まずは艦これ秋イベをちゃんとやらなきゃいけませんかね(笑)
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