ドォォォォォォン
ヲ級エリート「コノ バクハツハ? オイ、ドウナッテイルンダ!!」
金剛の弾着観測射撃を受けて大破状態の、ヲ級エリートは夕張と交戦していたヲ級がいる方角での大爆発に気がつき、慌ててヲ級の安否を確認する。
しかし、天龍と夕張により撃沈されたヲ級からの返信が来るわけは無く、ヲ級エリートはヲ級が撃墜された事を悟った。
ヲ級エリート「クソ、コウナレバ メノマエノ カンムスドモ ダケデモ……」
まともに動けなくなったヲ級エリートではあったが、深海棲艦の残存数は大破した重巡リ級1体、未だに健在な軽巡へ級1体と駆逐ロ級2体に加え、敵の援軍と誤認し北西に向かわせていた艦載機約50機がこの海域に急行している。
それに対して、目の前にいる艦娘は行動不能になった雪風と、リ級との戦いで消耗している榛名、そして何故か海軍士官の服装をしている金剛の3名であるが、実質脅威となるのは金剛、そして疲労している榛名のみである。
ヲ級エリート「アノ クチクカンヲ リヨウスレバ、ショウキハ アル!」
自身も大破し、有力な友軍が撃沈という絶望的な状況下から、不思議と冷静さを取り戻し始めたヲ級エリートは、後方から広い視野で友軍に対して指揮を執り始める。
金剛「Shit! 深海棲艦の艦載機が戻って来たネ!!」
ヲ級エリートの艦載機の接近に気がついた金剛は、大至急迎撃する必要があると判断し、榛名に指示を出す。
金剛「動きの速い軽巡と駆逐艦は、私に任せるネ! 榛名は三式弾で対空砲撃をお願いしマース!!」
榛名「は、はい! 対空射撃はお任せ下さい!!」
リ級に攻撃を仕掛けようとしていた榛名であったが、大破しまともに動けなくなっているリ級よりも、数が多く通常の敵艦載機よりも強力なヲ級エリートの艦載機たちの方が脅威であると判断し、主砲の砲弾を三式弾に換装する。
ズゥゥゥゥゥゥン ズゥゥゥゥゥゥン
ヲ級エリートの艦載機たちが、上空を飛んで行く様子を、少し離れたところから深雪と白雪は確認していた。
深雪「敵の艦載機たちが南西側に向かって行く!!」
白雪「カモ吉が、引き付けてくれていた艦載機たちが戻っていくみたいね」
深雪「と言うことは、敵や雪風たちはあの先にいるということか!?」
白雪「きっとそうに違いないわ、でも凄い数の艦載機……」
あらためて、敵艦載機の数が多い事に不安を感じる2人であったが、だからこそいち早く救援に向かう必要があると認識させられた。
深雪「雪風、榛名さん、もうすぐ行くから待っててくれよ!!」
白雪「特に雪風は、連戦が続いているから、燃料の消耗が心配だよね」
白雪が雪風の燃料の心配をしていると、白雪が引っ張っているドラム缶の上で休憩していたカモ吉が、何かを言いたげにクチバシでドラム缶をコンコンとつついてみせる。
白雪「カモ吉が何かを伝えようとしている?」
深雪「雪風に燃料を届けてくれるって言っているのか?」
くぁー
カモ吉は、深雪に『そうだ』と言う様にドラム缶の上で翼を広げて見せた。
榛名と連携して、深海棲艦の水雷戦隊と艦載機を迎え撃とうとした金剛であったが、軽巡へ級と、駆逐ロ級2体はヲ級エリートの指示に従い、二手に分かれて雪風と榛名に攻撃を仕掛けようとしていた。
金剛「Shit! このままでは味方に被害が出てしまうネ」
燃料切れで身動きのとれない雪風と、敵艦載機の迎撃に集中している榛名を狙う敵水雷戦隊に対して、金剛はとっさに主砲を構える。
金剛「撃ちます! Fire~!」
金剛は、榛名に向かっていた軽巡へ級を牽制するよう主砲を放つ。
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
金剛「ふふっ、Hey、Hey! ワタシはここデース、まとめてかかって来るネー!!」
金剛は続けざまに、雪風に向かっていた駆逐ロ級2体に向けて機銃を放つ。
ズガガガガ ズガガガガ
金剛「ワタシは金剛型超弩級戦艦1番艦の金剛ネー、アナタ達程度の相手はワタシ1人で十分デース!!」
金剛は、敵部隊で未だに健在であるヘ級1体とロ級2体の合計3体に対して、敢えて大きく立ち回りながら挑発する。
軽巡へ級「グゥゥゥ」
駆逐ロ級「シャァァ」
ヘ級達は金剛の挑発にまんまとかかり、攻撃目標を金剛に変更した様子で向かって来た。
ヲ級エリート「バ、バカッ! オマエタチ ワタシノ サクセンニ シタガエ!!」
榛名「お姉様が敵を引き付けてくれている?」
接近してくる敵艦載機に集中しながらも、敵水雷戦隊を引き付ける金剛の様子を確認する。
榛名「敵の艦載機が迫って来ている……、あの日と同じように……」
自分たちを討つべく戦場に戻ってきているヲ級エリートの艦載機を見ながら、榛名の脳裏には艦船時代に経験した呉軍港空襲の光景が浮かんでいた。
傷つき、燃料も底をついてまともに航行することが出来なくなった状態の友軍艦と共に、必死に対空射撃を繰り返すも、度重なる爆撃で次々と撃沈されていく友軍艦、そして榛名自身も行動不能となり、呉の軍港で大破着底したあの日の光景を……
金剛「Burning Looove!」
榛名の後方から聞こえてくる、金剛の勇ましい声
今の榛名の目には、『不安』、『恐怖』、『悲しみ』といった感情はなく、頭の痛みも混乱もなかった。
榛名「今の榛名は、自由に動くことも出来るし弾薬も十分にあります……」
金剛「榛名を攻撃させないネ! てぇぇぇぇい!!」
榛名の後方からは、敵水雷戦隊と戦闘を繰り広げる金剛の声が聞こえてくる。
榛名「そして、あの時にはもういなかった金剛お姉様が、今はいて、榛名の背中を守ってくれているの……」
もう少しで敵艦載機が三式弾の射程圏内に入るところで、榛名は大きく息を吸い込み、主砲の標準を敵艦載機の編隊に合わせる。
榛名「だから……」
榛名は、上空の敵艦載機に向けて右手を力強く振り上げる。
榛名「榛名は!もう!大丈夫です!!」
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
榛名の主砲から放たれた三式弾は、敵艦載機編隊の先頭集団を撃ち落とすと、続けざまに機銃で対空射撃を行いながら、素早く主砲に三式弾を再装填する。
榛名「金剛お姉様が、榛名の背中を守ってくれている様に! 金剛お姉様の背中は、榛名がお守りします!!」
そのころ龍星鎮守府では、見事にヲ級を撃破した天龍と夕張からの無線が届いていた。
天龍「ふぅー、やっと無線が届いたか」
大淀「通信設備を持つ町井田中尉のミディアが、電波の中継の為に、そちらの海域に向かって下さっているおかげで、少しずつ交信可能な距離が広がっています」
夕張「なるほど、確かにそうすれば電波の不感地帯が解消されますね」
美鈴「うーん、専門的なことはよく分からないけど、2人とも怪我は無い?」
鎮守府のレーダーで、夕張がおびき出したヲ級1体を、天龍と夕張が撃墜したという簡単な状況はわかっていたが、詳しい戦況が不明だった事もあり、美鈴は2人の安否を心配していた。
天龍「んー、まぁオレはまだ行けっけど、夕張は中破してるし帰投する必要ありってところか」
夕張「いやいや、天龍さんも私のためにヲ級の艦載機を全機相手にしたせいで、中破してしまっているじゃないですか」
天龍と夕張は中破していると報告を聞いた美鈴は、南西方面の状況を確認する。
美鈴「確か、まだ雪風や金剛たちとは連絡は取れないけど、深雪と白雪も向かってましたよね?」
明石「そうですね、いざとなればミディアから鳳翔さんも向かえます」
美鈴「なら、損傷した2人には一度戻って来てもらった方がいいですよね」
あかぎ「では、天龍と夕張は鎮守府に帰投するように連絡しましょう」
美鈴たちのやりとりを、紅茶を飲みながら眺めていた麗美は、嬉しそうに微笑みながらテーブル越しに腰掛けている咲樂に声をかける。
麗美「あかぎも、何だか生き生きしているわね」
咲樂「艦娘として戦えなくなったことで、どこか塞ぎ込みがちなところがありましたが、お嬢様の仰るとおり、引っ張り出してきてよかったみたいですわ」
麗美「あかぎの知識や経験は、必要としているところでは活かすことができるのよ」
麗美は、そう言いながらティーカップをそっとソーサーに置いた。
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
ズダダダダ ズダダダダ ズダダダダ
迫り来るヲ級エリートの艦載機を、榛名は懸命に迎撃し続けている。
榛名「ここから先へは、榛名が通しません!!」
榛名の対空射撃によって、ヲ級エリートの艦載機の編隊は半壊し、完全に足止めを受けていた。
ヲ級エリート「ナ、ナンテコトダ……」
健在だった軽巡ヘ級と駆逐ロ級も、完全に金剛の挑発に乗ってしまったうえ、ロ級2体が撃沈され、ヘ級1体が金剛と砲撃戦を繰り返している状況であった。
ヲ級エリート「クソォ、ワタシノ メイレイヲ ヤツラガ キイテイレバ……」
金剛の弾着観測射撃により大破し、まともに体を動かす事の出来ないヲ級エリートは、悔しさで唇をかみしめながら、燃料切れのため行動不能となった雪風に視線を向ける。
ヲ級エリート「アイツヲ ツカマエテ ヒトジチニ デキテ イレバ……」
ヲ級エリートは、雪風が行動不能になった時点で、雪風を人質にして金剛たちに武装解除を要求しようとしていたのだが、ヘ級とロ級にはその意図は伝わりきらず、作戦は失敗してしまっていた。
ヲ級エリートは、榛名に足止めを受けている自身の艦載機たちに視線を移そうとしたその時、金剛や榛名からやや離れた海面でもがいている重巡リ級の姿が目にとまった。
ヲ級エリート「リキュウ!? マダウゴケルノカ?」
ヲ級エリートの呼びかけに、痛々しく手を上げてリ級が答えた。
ドォォォォォォン ドォォォォォォン
金剛は、主砲を軽巡へ級に向けて主砲を放つが、ヘ級はしぶとく砲撃を回避する。
金剛「Shit! あの深海棲艦なかなかしぶといネ……」
交戦していたロ級2体は撃沈したものの、最後の1体であるヘ級に苦戦している金剛は焦る気持ちで、ついつい深追いしてしまっていた。
妖精さん『コンゴウ タイヘンダ! ユキカゼノ トコロニ ハヤク!!』
金剛「あぁっ! 雪風に敵が迫ってマス!!」
零式水上偵察機の妖精さんからの報告を受けた金剛は、視線を雪風に向けると、大破し身動きがとれなくなっていたはずの重巡リ級が低速ながらも迫っていた。
金剛「距離が離れすぎていて、ここからじゃ敵だけを狙い撃てないデス!!」
榛名「くっ、雪風さんの支援に……」
ドォォォォォォン ズダダダダ
雪風の窮地は榛名の耳にも届いていたが、榛名もヲ級エリートの艦載機を迎撃するので手一杯であり、支援に向かえる状況ではなかった。
雪風「て、敵が迫ってきます……、な、なんとか動いて……」
リ級の接近に気付いた雪風は、必死に体を動かすが艤装の燃料切れのため、その場から移動する事が出来なかった。
ヲ級エリート「ウゴケナイ カンムスヲ ヒトジジニスレバ、 コノバヲ キリヌケル コトガ デキルハズ!!」
炎上し身動きがとれないヲ級エリートは、同じく大破し満身創痍でありながらも懸命に動くリ級に必死に指示を出し、雪風を捉える様に指示する。
金剛の挑発にのり金剛と戦闘を繰り広げていた軽巡へ級も、偶然ではあったが金剛を雪風から北西方向へ遠ざけており、ヲ級エリートがリ級に指示している作戦を理解して、金剛が雪風の支援に向かえない様に時間稼ぎをするように逃げ回ったり、榛名に攻撃を仕掛けるそぶりを見せたりしながら金剛を牽制していた。
妖精さん『コンゴウ! ホクトウホウコウカラ ナニカガ トンデクルヨ!!』
金剛「何かが飛んで来る? 艦載機ですカ!?」
零式水上偵察機の妖精さんの報告を受けた金剛は、北東方向の上空に視線を向ける。
金剛「あれは!?」
金剛の目には、クチバシで何かをくわえているやや大柄なカモメが、たった一羽でこちらに飛んで来る様子が映った。
金剛「こんな戦闘海域に、どうしてカモメが来るデース?」
高速で飛来してくるカモメがいるという、金剛からの通信を聞いた雪風は、北西方向の上空に視線を向けると、見知ったカモメである事に気がついた。
雪風「あ、あれは! カモ吉!!」
大変長らくお待たせいたしました。
前回の投稿から5ヶ月も経ってしまいましたが、ようやく第51話が完成しました。
pixivで2018年4月に、この『華人小娘と愉快な艦娘たち』を投稿しはじめてからまもなく3年が経過します。
このペースだと、以前からお話ししている、この第1部の完結ですらいつになるんだというところですが、何とか書き進めていこうと思いますので、今後もよろしくお願いいたします!