華人小娘と愉快な艦娘たち   作:マッコ

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第8話 華人小娘と海軍中尉

    ガラガラガラガラ

 

 島の海岸に輸送艦が停泊し、錨を降ろす。

 

美鈴「大きな船だなぁ~」

 

 美鈴は海岸で、輸送艦を眺めていた。

 

天龍「日本本土から、美鈴への補給物資を持ってきたみたいだぞ」

 

美鈴「えっ、どうして?」

 

天龍「これから、深海棲艦と戦う仲間だってことだろ?」

 

美鈴「私、日本人じゃないけど大丈夫かなぁ~」

 

天龍「今どき、国籍なんか気にしないんじゃないか?」

 

美鈴「私は、この時代のご時世がよくわからないからねぇ~」

 

天龍「まぁ、ここの提督としてドーンとかまえてりゃ良いんじゃないか」

 

美鈴「そんなガラじゃないんだけどなぁ~」

 

深雪「司令官っていうか『気前のいい姉ちゃん』って感じだよな」

 

雪風「雪風は、しれぇのこと好きですよ」

 

美鈴「ははは、みんなありがとう」

 

 輸送艦を曳航して帰投した天龍達は、海岸で待っていた美鈴に経緯を説明し、輸送艦の指揮官である女性中尉が美鈴に面会を求めている旨を説明していた。

 

 天龍達の説明を受けた美鈴は、輸送艦から女性中尉が降りてくるのを待ちながら雑談していると、輸送艦から白い軍服を着た女性が降りてきて、輸送艦の下で待機していた白雪と共に美鈴の下に歩いてきた。

 

軍服の女性「貴女がこの島の鎮守府の提督となって下さった方ね」

 

 軍服の女性が美鈴の前に立ち止まり敬礼をする。

 

美鈴「はい!紅美鈴と申します!」

 

 美鈴もいつもの『龍』と書かれた星型のワッペンのついた帽子では無く、正装のつもりで以前妖精さん達からもらった白い軍帽をかぶっており、軍服の女性に素早く敬礼を返した。

 

軍服の女性「ホン・メイリンさん……、華人の方かしら?」

 

美鈴「はい、生まれは上海ですが、母と共に台湾に渡り暮らしていました」

 

 美鈴は、軍服の女性の『華人』と言う言葉に感じるものがあり、幻想郷に行く前の人間だった頃の簡単な経緯を説明した。

 

軍服の女性「台湾から……、日本国民として感謝致します」

 

美鈴「田舎の出なので、世間知らずですがよろしくお願いします」

 

軍服の女性「深海棲艦による人類存続の危機である今、私個人としては出自は気にしません」

 

美鈴「(悪い人ではなさそうだなぁ)」

 

軍服の女性「申し遅れましたが、私は日本海軍中尉の町井田 可怜(まちいだ かれん)と申します」

 

美鈴「町井田中尉ですか、よろしくお願いします」

 

 町井田中尉は美鈴に右手を差し出して来たので、美鈴も町井田中尉に右手を差し出し握手を交わす。

 

 

    ウィィィィン ガガガガ

 

 町井田が乗艦していた輸送艦の修復作業が、島の海岸で行われている。

 

 再建中である美鈴の鎮守府(仮)には艦船の修理ドックが無いため、屋外での応急修理しか出来ない状態ではあったが、輸送艦の乗組員達によってテキパキと作業進んでいる様子であった。

 

美鈴「皆さん、手慣れていますねぇ」

 

町井田「日本は特に深海棲艦の被害が大きかったから、どうしてもこういう作業が手慣れてしまうのよ」

 

美鈴「あっ……、すみません。何も知らないもので」

 

 町井田の言葉に、美鈴は何か失礼なことを言ってしまった気がして思わず謝罪をしてしまった。

 

町井田「もしかして、貴女はこの世界や深海棲艦についてあまりご存じないのかしら?」

 

美鈴「実は……、はい……」

 

町井田「仕方がないことだわ、本来深海棲艦については民間レベルには知らされていなかった事案だものね」

 

美鈴「そうなんですか?」

 

町井田「今から5年前、アメリカのポーカー大統領や日本の宇野総理を中心に世界各国の首脳が一同に揃ったハワイサミットを知っている?」

 

美鈴「知らないです」

 

町井田「世界的に問題視された核廃棄物による水質汚染を議題とした会議が行われる予定だったの」

 

美鈴「ふむふむ(なんかよくわからない難しい話だなぁ)」

 

町井田「12月8日にサミットが開催される前日晩に、各国首脳が顔合わせのための食事会が開かれていたらしいの」

 

美鈴「(レミリアお嬢様も、よくお屋敷で幻想郷の大物を集めてパーティーを開いてたなぁ)」

 

町井田「その時、厳重な警護が行われていたはずのサミット開催地のオアフ島に正体不明の艦隊から一斉砲撃が行われたの」

 

美鈴「まさか、それが……」

 

町井田「そう、それがこの世界に初めて現れた人類の敵、突然海上にその姿を現した深海棲艦の大軍だったのよ」

 

美鈴「……」

 

町井田「この時、オアフ島周辺には当時世界最強と謳われていたアメリカの太平洋艦隊が警備にあたっていたのだけど、深海棲艦の一斉攻撃で1時間と持たずに壊滅」

 

町井田「オアフ島周辺は火の海になり、各国首脳のほとんどが犠牲になったの」

 

美鈴「そんな……」

 

町井田「この事態にいち早く気付いたのは、アメリカとの合同演習のためにハワイ沖に向かっていた日本の海上自衛隊だったの」

 

町井田「この時の海上自衛隊の八雲1等海佐は、救援に向かうためオアフ島に向かったのだけど、自衛隊の装備では深海棲艦に傷一つ出来ず自衛隊艦隊も大損害を受けたの」

 

美鈴「それじゃあ、その人達も……(八雲ってスキマ妖怪の関係者?)」

 

町井田「いえ、この時は八雲1等海佐の判断でオアフ島の救援を断念して撤退したの」

 

町井田「撤退した八雲艦隊が間もなく横須賀基地に帰投しようとした時、東京湾に正体不明の艦影が現れたの」

 

美鈴「……深海棲艦」

 

町井田「そう、現在戦艦ル級と呼んでいる大型の深海棲艦が東京湾に急遽出現し首都東京は壊滅の危機に直面したの」

 

町井田「八雲1等海佐からの報告を受けていた自衛隊は陸・海・空の総力をもってル級に総攻撃を仕掛けたのだけど、結果は傷一つ負わせることが出来ずに部隊は半壊してしまったの」

 

美鈴「それじゃあ、東京は……」

 

町井田「その時に、突如勇ましい声と共に最初の艦娘と呼ばれる戦艦『長門』が東京湾に現れたの」

 

美鈴「戦艦長門?」

 

町井田「かつて大日本帝国海軍の象徴と呼ばれた戦艦の魂を宿した艦娘よ」

 

美鈴「大日本帝国海軍……、聞き覚えがあるような……」

 

町井田「長門は、死闘の上でル級を撃破し東京は彼女に救われたの」

 

美鈴「よかった」

 

町井田「これが、未だに不明点が多い、深海棲艦と艦娘の歴史が幕開けた瞬間よ」

 

美鈴「なるほど!難しい話も多かったですがわかりました」

 

町井田「なんだか話が長くなってしまったわね」

 

 美鈴は町井田から深海棲艦や艦娘の聞き、この世界が置かれている現状が改めてわかった気がした。

 

 

 

 日没前に輸送艦の応急修理が終わり、再び静かになった海岸。

 

 夜の海は危険ということで、明日の夜明けに出港することになり、美鈴と艦娘たちは町井田中尉に招かれ輸送艦内の食堂への食事に招待された。

 

 

 この日は金曜日ということもあり、夕食のメニューは輸送艦特製のカレーライスであった。

 

深雪「やっぱりカレーだぜ!」

 

美鈴「このカレー、すごく美味しいです!」

 

雪風「しれぇ、美味しいですね!」

 

天龍「美鈴の料理も美味いけど、カレーはやっぱり良いなぁ!」

 

町井田「ははは、こんなに喜んでくれるとウチの調理担当も喜ぶわね」

 

 久しぶりのカレーに喜ぶ艦娘達。

 

白雪「私もこの島に来る間、ずっとこの食堂で食事を頂いてましたが調理担当の方々もみんな良い人達ですよ」

 

美鈴「島でも米やカレー粉を準備できたら良いなぁ」

 

町井田「置いていく補給物資の中に、備蓄しているカレー粉や米も入れておこうかしら?」

 

美鈴「良いんですか?」

 

町井田「物資もそうだけど、食料や調味料も置いていける分は置いていこう」

 

美鈴「ところで、町井田中尉はどうしてこの島に?」

 

町井田「最近、この島の周辺で度々深海棲艦と艦娘が交戦していると噂になっていて、日本海軍所属の艦娘たちが調査ていたのよ」

 

深雪「戦ってた艦娘たちって……」

 

雪風「きっと、深雪と雪風ですね!」

 

町井田「しかも、近隣の島から妖精さん達が集まっていると海軍の妖精さん達の間でも噂になっていて、美鈴殿が提督となっていてこの島の鎮守府を再建していると確認できたから八雲元帥の指示で、艦娘の白雪と補給物資を持って極秘裏にこの島に向かってきたの」

 

美鈴「その八雲元帥って、5年前の八雲1等海佐の関係者ですか?」

 

町井田「その八雲1等海佐よ」

 

町井田「海上自衛隊の艦隊じゃ深海棲艦に太刀打ち出来なくて、海上自衛隊が半壊した後で艦娘を主体とした日本海軍が新設された、その中心人物が八雲元帥なのよ」

 

美鈴「海上自衛隊と日本海軍って違うんですか?」

 

町井田「海上自衛隊は護衛艦による日本防衛を目的とした組織だけど、深海棲艦と戦うための組織として日本海軍が設立したの」

 

美鈴「別物なんですね」

 

町井田「本来は、海上自衛隊の組織に艦娘を投入していく予定だったのだけど、艦娘の中には空母や戦艦もいるから自衛隊として保有できない戦力だし、太平洋戦争時の軍艦の高潔な魂を引き継いだ艦娘たちを束ねるなら『海軍』が相応しいとなって今に至るのよ」

 

美鈴「護るための組織と、戦うための組織ですか……」

 

町井田「自衛隊は自衛隊として残ってはいるわ」

 

町井田「日本海軍とは言っても深海棲艦には人間の力じゃ対抗できないから、戦闘は艦娘たちに頼るしか無いから艦娘の援護専用部隊というところなのだけどね」

 

美鈴「どうして、人間とほとんど変わらない艦娘だけが深海棲艦と戦えるのでしょうか?」

 

町井田「難しい質問ね……、正直艦娘については未だに研究が進んでいないのが現状だし、一時期は艤装に特別な力があるのではないかと研究されたこともあったのだけど、実は艤装自体は通常兵器と対して変わらない事が判明しているわ」

 

美鈴「そうなんですか?」

 

町井田「艦娘が艤装を装着して初めて深海棲艦に打撃を与えることが出来る、おそらくは艦娘自体に人間にはない特別な能力があるみたいなの」

 

町井田「とは言っても、艦娘自体も艤装がないと身体能力に優れた人間と対して変わらないの」

 

町井田「唯一違うと言ったところは人間と比べて、成長や老化が遅いと言ったところかしら」

 

美鈴「寿命が長いというところですか?」

 

町井田「まぁ、まだ艦娘が現れて5年位しか経っていないから寿命については不明だけどね」

 

美鈴「そうですよね」

 

町井田「一人の女性としては、若さを長く保てるということは羨ましくてしょうがないのだけどね」

 

深雪「そうは言っても、こっちは速く美鈴や町井田中尉みたいな大人になりたいけどなぁ」

 

雪風「もっと大きくなりたいです!」

 

町井田「ははは、艦娘たちもみんな年頃の女の子と変わらないのよね」

 

美鈴「確かに、こんな女の子達ばかり危険な戦いをさせて自分は待っているだけというのがなんだか歯がゆくて……」

 

深雪「でも、美鈴は初めて会った時に不思議な力でイ級の砲撃を撃ち返してやっつけたじゃないか」

 

町井田「本当なの!?」

 

美鈴「あの時は必死で何が何だか……、って何を?」

 

 町井田は急に美鈴の身体を色々触って来た。

 

町井田「あっ……失礼……、貴女も人間だと思うけど、艦娘じゃないわよね」

 

美鈴「多分、艦娘じゃないです。海の上も走れないし」

 

町井田「何か特別な力があるとかは?」

 

美鈴「私はこの見た目なので、子供の頃に結構周りからイジメられていまして……」

 

 美鈴は長い赤髪を指差し幼少時代の事、『気』の事について町井田に説明をすることとした。

 

町井田「その綺麗な赤毛は地毛なのかしら」

 

美鈴「そうなんです、私の祖母がオランダの人なので、その遺伝で髪の毛と目の色が黒くないんですよ」

 

町井田「確かに、アジアでは珍しいわよね」

 

美鈴「この見た目が理由で、イジメられていた私を見かねた近所に住む老師さまが、私に拳法を教えてくれたんです」

 

美鈴「己を鍛えて強くなれば、周りに何と言われても大丈夫だって教えてくれて」

 

天龍「イジメたやつをやっつけろってことじゃないのか?」

 

美鈴「天龍、武術や力というのは本来そんなことのために使うものじゃないのよ」

 

天龍「まぁ、そうだよな」

 

美鈴「それで、武術を習ううちに『気』を使えるようになって、老師が亡くなってからも『気』の修行をずっと続けていました」

 

町井田「『気』というのは、『気功』と考えて良いのかしら?」

 

美鈴「まぁ、同じようなものですね」

 

深雪「でもあの時の美鈴は右手の周りが緑色に光っていたけど」

 

天龍「オーラってやつか?」

 

町井田「興味深いわね」

 

美鈴「こんな事を言って信じてもらえるかわかりませんが、『気』の力を使えば身体能力を高められたり、気弾として攻撃に使えたり、『気功』のように治癒に使えたり、空を飛べたりもするんです」

 

町井田「ファンタジーで言うところの魔法みたいなものね」

 

美鈴「でも、何故かここに来てから急に『気』が思うように使えなくなって……」

 

深雪「でも、あの時使った不思議な力は『気』なんだろ?」

 

美鈴「火事場のクソ力みたいな感じで、あの時だけ『気』が使えた感じだったの」

 

町井田「確かに、聞く人が聞けば嘘みたいな話ですが、貴女や深雪が嘘をついているようにも見えないし、とても興味深い話ね」

 

天龍「オレは『気』を見たこと無いけど、美鈴は嘘をつくようなやつじゃないぜ!」

 

雪風「雪風もしれぇの言うことは信じていいと思います!」

 

白雪「私も美鈴さんとはあったばかりですが、嘘をつくような人じゃないと思います」

 

町井田「私も貴女の言うことを信じたいと思う。それにしても短期間で艦娘たちの信頼を得られるのも凄いな貴女は」

 

 町井田は、美鈴が短期間で艦娘達からの信頼を勝ち取ったことについて素直に驚いていた。

 

町井田「貴女はもしかすると深海棲艦との戦いを終わらせるために、神がこの世に遣わせた英雄なのかもしれない」

 

美鈴「そ、そんな」

 

町井田「それからも頑張って」

 

美鈴「はい」

 

 

 

 町井田との夕食会を終えた美鈴達は、鎮守府(仮)に戻り休むことにした。

 

美鈴「妖精さん達が用意してくれたから、白雪ちゃんはそこの新しいベッドを使ってね」

 

白雪「はい、って司令官も同じ部屋なのですか?」

 

深雪「そうだぜ~、寝ぼけて美鈴のベッドに行っちゃダメだぞ~」

 

白雪「そんなことしないよ、深雪ちゃん!」

 

天龍「ははは、姉妹は仲良くて良いじゃねぇか!」

 

美鈴「まだ仮の宿舎だから狭くてごめんなさいね」

 

白雪「いえ、別に文句があるわけではありません」

 

深雪「美鈴は、私達のことみんな家族みたいだって言って同じ部屋で良いって言うんだよ」

 

雪風「しれぇは、雪風達のお姉ちゃんです!」

 

 

 美鈴達は談笑をした後、真っ先に深雪が寝てしまったので美鈴がそっとライトの火を消した、明日は輸送艦からの補給物資を受け入れる作業もあるので皆早めに就寝することとした。

 

 今日は輸送艦の隊員たちが夜間警戒をしてくれるとのことであったため、久しぶりに美鈴達はぐっすりと休むことが出来たのであった。




 今回は、いわゆるひとつの説明回です。

 自分なりの世界観を一度整理してみたのですが、なんかよくわからなかったらすみません。

 この世界は、太平洋戦争を終えた後、現在と少し異なる歴史を歩んできた現在という用な感じの設定でやってるつもりです。
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