ウサギと小鬼と捻くれ者と…なにこの合わない組み合わせ 作:ゆっくりカノン
桜木夏音<さくらぎかおと>
本作の主人公。アルビノの少年でかなりの甘党、苦いものは絶対に無理。以前まで友だちがいたのだが2年前の出来事をきっかけに友人ゼロのボッチ状態になった。新しい街に引っ越し、何人か友だちを作れるといいな~とか思ってる。
幼い見た目と男性離れした容姿から、よく女の子と間違われる。
彼は俺によく似ていると思っていた__。
だってそうだろう。そのキラキラと輝くメッキで隠された瞳の奥底は、いつだって淀んで腐っていたのだから…。自己を犠牲にすることで事を成し得ようとするその姿も、人を恐れ、悶えるその姿も、あの頃の憐れな自分の姿と重なって見えたのだ……。
しかし、彼は違った__。
「ボクはそんなものが欲しい訳じゃない!!」
メッキで隠されている腐った瞳のその更に奥には熱く、それでいてとても冷たい負の感情の炎が在ることを知った。奉仕部にいた頃、俺が他人を頼らずに自己犠牲で解決するその様を雪ノ下雪乃は自意識の塊と評し、雪ノ下陽乃は彼の行いを欲望の塊と評した。
昔の俺はあの部室で言った……『本物が欲しい』と。そう、俺は本物が欲しい……。分からないことは酷く怖いことだから。知りたい、知って安心したい。安らぎを得ていたい。この願望がどれほど醜いものなのか理解はしている。全てを完全に理解したいだなんて酷く独善的で独裁的な浅ましい願い……。こんな願望を抱いている自分が気持ち悪くて仕方ない。だけどもしも、それでも……。
「ボクは怖いんだ……皆のことを知ってしまった僕は……皆を拒絶してしまうんじゃないかって………」
「ボクの醜い部分を知られることで拒絶されてしまうんじゃないかって!!」
だけどもしも、それでも……と、自分の願望を他人に押し付けた結果がこれだ。彼と彼女らとなら分かり合えるかもしれない……。そんな妄想を、思い違いをして勝手な期待を抱いていた自分に虫酸が走る。
「もう、一人は嫌だ……嫌なんだよ……」
「だからボクは……偽物でもよかった、上辺のだけのものでもよかった……なんでもいいからボクは人との繋がりが欲しかっただけなんだよ……」
俺と彼は求めているものが違っていた。彼が欲していたのは、俺がそんなものはいらないと切り捨てた関係であり、俺のように全てを知りたいと願っているわけではなかったのだ。俺はそんなことにも気付かずに……いや、俺は彼の気持ちを見て見ぬ振りをして強引に自分の願望を彼に押し付け、傷付けた。
「だからボク……八幡の言ってること……これっぽちも分からないよ」
俺はただ、呆然と彼の隻眼から流れ落ちる涙を見つめていることしか出来なかった。
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『春』
それは出会いと別れの季節。この季節になると青春を謳歌せし若者共は親しい者との別れに涙を流し、新たな仲間との出会いに胸を踊らせ、新たな生活への第一歩を踏み出すものである。
え? ボク? ボッチのボクにそんなのある訳ないだろいい加減にしろ!!(半ギレ)
でもまぁ、今年でボクも晴れて中学校を卒業して新しい街に引っ越してきた。今まで住んでいた場所とは全然違う環境で下宿先から学校に通うのだ。高校で友達100人できるかな? ウ↓フ↑フ↑フ↑フ↑フ↑♪なんてキモい期待は一切してないが、まぁそんなボクでも今日から始まる新生活にはドキがムネムネしっぱなしだ。
ボクがこれから通う高校では、「下宿先で奉仕活動を行いなさい」という訳の分からない決まりがあり、今日から下宿させていただく香風さんのお宅は喫茶店を営んでいるため、奉仕活動=お店の手伝いを無償で行う……つまり、ただ働きをする、ということになる。若干面倒臭くはあるけど、なんだか中学二年生の時の職場体験みたいな感じで少し楽しみだ。
「更衣室はここです。早く着替えてきて下さい」
「アッハイ……」
それだけ言い残し、ご機嫌斜めな様子で去っていくのは香風智乃という青いロングヘアの女の子だ。去り際に頭に乗ってるウサギがフシャー!とか言って毛を逆立てている。わーすごーい猫さんみたーい☆
そんなことはさておき、ボクは案内された扉の前で一人反省会を行う。
「(やっぱあれか、あれがいけなかったのか……?)」
出会ってからほんのわずかな時間であの少女に完全に嫌われてしまったボクは、やはりこれしかないよなと数分前の出来事を思い返してみる。
長旅(約三時間半)の末にようやく辿り着いた下宿先のラビットハウス。中に入ってみるとテーブル席とカウンターの席がいくつかあり、お昼頃だというのに客の姿は一つもなかった。あれ? この店大丈夫?
店内のスピーカーからは緩やかなヴァイオリンのクラシックが流れており、とても静かな雰囲気だった。客一人もいないし。
カウンターの方に目を向けると、そこには球のように丸く、白いウサギ(確かアンゴラウサギとかいう種類だった気がする)を頭に乗せた青いロングヘアが特徴的な女の子の店員さんがいた。ボクは挨拶をしようと口を開く。
「あ、すみません。今日からここで下宿す」
「いらっしゃいませ。あちらのお席へどうぞ」
「え? いや、今日からここで下……」
「ご注文はお決まりでしょうか?」
ダメみたいですね(諦め) 客があまりに来なさすぎたので必死になっているのだろうか? まぁ、ちょうど一休みしたかった所だったので案内されるがまま席に座り、店員さんに「おまかせでお願いします」と言っておく。コーヒーなんてどれ頼んでも同じやん? 苦いだけやん?
「おまたせしました」
「あ、どうも」
店員さんがコーヒーを持ってきてテーブルの上に置く。そして何故か戻ることなくこちらをじ~~~っと見ている。滅茶苦茶見てる。えっ、なにこの子超怖い。
「え、あの……えっと……」
ずっと見つめられて居心地が悪い。耐えきれなくなったボクは、この店に入った時点でしておく予定だった挨拶をした。
「ここ香風さんのお宅で合っていますか? ボクは今日から香風さんのお宅で下宿させていただく桜木夏音《さくらぎかおと》です……」
「え?」
「え?」
何故か困惑したような表情を浮かべられる。今の挨拶はボクがこの街の駅に着く直前の電車の中で睡魔と戦いながら六秒くらい掛けて全力で考えた完全完璧な挨拶のはずだ、なにかおかしな所があっただろうか?
「えっ……あの、すみません。 桜木夏音さんは男性の方と聞いていたのですが……」
「えっ、ボク男ですけど……」
「えっ………!?」
「え?」
「あ、いえ……失礼、しました……」
「アッハイ」
「……」
「……」
「あの……」
「ハイ」
「コーヒーが冷めてしまうので、飲んでしまってください」
「アッハイ」
数秒続いた沈黙が、店員さんのコーヒーの催促によって途切れる。べ、別に傷ついてなんかないし? この見た目のせいで女子と間違えられたことは1回や2回なんてレベルじゃないから慣れてるし?? ……あれ? なんか眼球から汗が滲み出てきたよ?
「じゃあ……いただきます」
とりあえず、出されたコーヒーを飲むことにした。せっかく出して貰ったんだし飲まずに案内して貰う訳にもいかないだろう。ボクはカップの中のコーヒーに、テーブルの上に置いてあったシュガーポットから角砂糖を取りだし、入れる。
1個…2個……。
思い返しながら、これがいけなかったのだろうなぁ……なんて心中で呟いてみる。前にクラスの女子が「彼氏にチャーハン作ってあげたら一口も食べずにいきなりマヨネーズべっとり付けて食べ始めたんだよ!? マジあり得ないんですけど~!!」みたいな会話をしていたことがある(実話)
やはりせっかく作った物を味わいもせずに勝手に味付けをされるのはいい気にはならないのだろう。この行為はさすがに好ましいものではないらしい。しかし、その時の僕はそこまでの考えが及ばず、コーヒーの苦さを"消す"為に更に角砂糖を入れていく。
6個…7個……。
角砂糖を入れ終えたコーヒーをマドラーでかき混ぜ、一口飲んでみる。じゃりじゃりとした最悪な食感と砂糖の甘さ、そしてコーヒー独特の苦さが口内に広がっていく…。
「甘さが足りない……」
「「え?」」
店員さんの声と一緒に何処からかダンディーな声が聞こえてきたような気がするが、気のせいだろう。客一人もいないし。コーヒーを更に甘くすべく、今度はミルクポットを手に取りドバドバとミルクを入れて更にかき混ぜる。カップの中の射干玉色をした湖が乳白色の液体に侵され、マイルドなカフェオレのような色になっていく(てかこれほとんどカフェオレだわ)
「……ん、ごちそうさま。とても美味しかったで、す………」
甘ったるい液体を全て飲み干し、満足した僕は店員さんの方へと顔を向ける。その時にはそれはそれはもうゴミを見るような冷ややかな目で店員さんと頭の上のウサギに睨まれてました……。
なんて言って謝ろう……。回想を終え、自己嫌悪に苛まれながらボクは1人頭を抱える。
「仕方なかったんや……コーヒー苦いもん……あれくらい甘くしないと飲めないもん……」
あぁ、でもなんだろう。あの冷ややかな絶対零度の瞳。あの子からあの視線を受けた時、なんだか新しい扉を開いてしまいそうな感覚に陥った。なんだか背筋の辺りがゾクゾクしてスゴくこうふ(ry
「お前何をしているんだ?」
おっと誰か来たようだ。後ろを振り返ってみるとそこにいたのは紫がかった黒のツインテールの女の子だ。多分高校生位だと思う。
「えっ……え?」
後ろを振り返ったボクは、ツインテールの女の子が持つそれに目を奪われ、動けずにいた。突然のことに戸惑い、震える喉を落ち着かせながらボクは静かに言葉を発する。
「……強盗ですか?」
「違う!」
学校の制服を身に纏い、一見普通の女子校生である彼女が持つには実にミスマッチな黒の金属が握られていた。
グロック17。確か1980年にオーストリアの銃器メーカーであるグロック社が開発した自動拳銃だ。犯罪防止の為に一般での販売が禁止され、公的機関……つまり、警察や自衛隊等の公共的な組織にしか持つことが許されない銃であるはずなのだが……。
「そういえば少し前にも元自衛官の男が警察から銃を奪い取って人を殺すとかいう事件が……」
「無関係だからな!?」
警察官と警備員のおじさん、可哀想だよなぁ……。
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「……というわけで、今日からこのラビットハウスで下宿、奉仕活動として働かせていただく桜木夏音です」
「天々座理世だ。リゼでいい。さっきは悪かったな」
なんとか誤解を解いたボクはツインテールの女の子、リゼと握手を交わす。ついでにさっきのグロック17はモデルガンであり、彼女は強盗ではないとのこと。当たり前だけど。あとこの子は銃刀法をご存知でないのかしら? モデルガンも持ち歩けば立派な銃刀法違反にあたりますことよ?
「それにしても、綺麗な髪だな。瞳も赤みがかった黒色で不思議な色だ……。アルビノってやつか?」
「うん、そうだね。確か父さんがアルビノで目の色も完全に赤色だったよ」
言いながら、リゼはボクの白い髪をワシャワシャする。犬を撫でるみたいにするのやめて恥ずかしい。あっでもなんだか微妙に心地良いぞこれなんだこれ。
「さて、そろそろ仕事の時間だ。早く着替えるぞ」
「あ、うん……うん?」
ここでボクは少し違和感を覚えた。今、リゼはなんて言った……? 着替、える……??
「カオト、お前の制服のサイズはこれ位でいいか? 女用の制服がこれしかなくってな、男用の制服ならあるんだが」
そう言ってリゼがボクに差し出してきたのは可愛らしく、明るいピンク色とリボンが特徴的な制服だった。絶対に男が着るものではないであろうロングスカート付きの。あとこれボクには少し大きいです、リゼの姉御……。
「てっ……! まっ、待って! 脱がないで!」
「……? どうかしたのか?」
どうやらリゼはボクの存在をその辺の道端に転がっているジャガイモ程度にしか思っていないらしい。じゃないと男であるボクの前で服を脱ぐなんてことするはずない。ボクは紫色のブラウスがあらわになったリゼから視線を反らす。リゼは訳が分からないとでも言うような怪訝な表情を浮かべている。
「いや、あの……突然脱ぎだすから……とにかく、前隠して…」
ボクの言葉に、リゼはますます分からないといった様子で小首をかしげる。
「いや、女同士だろう? そんなに気にすることじゃ……」
「ボクは男だよっ!!」
まぁ、そうだよね。女子だと勘違いしてなければこんなピンクピンクした「THE・女の子!!」って感じの制服をボクに寄越す訳がない。
「はっ!? お、男!?」
リゼは体を後ろに仰け反らせ、更に2歩程度後ずさりするというオーバーなリアクションをとる。そのまままじまじとボクの顔を見た後、思い出したかのように自分のブラウスに視線を向け、急いで両腕で隠す。
「お、お前ッ……」
「ゑ?」
瞬間ッ! 彼の脳裏には彼自身の青春が走馬灯のように……駆け巡る訳ねーわ。そんな簡単に走馬灯とか見てたまるか。この瞬間、リゼはテンプレ通り攻撃を仕掛け、ボクをノックアウトさせるつもりであろう。今までこのハーメルン内のオリジナル主人公たちはこのリゼの一撃に沈められてきたが、ボクはその辺のオリ主たちとは違うのだよ!!
リゼは右腕を振りかぶり、こちらに急接近してくる。リゼとボクとの距離は1メートル程度。これなら余裕でかわすことができる!! ボクはリゼの右腕の射程距離内に入るギリギリの所で屈み、リゼの渾身の右ストレートが繰り出されている空間の下を潜り抜け、ダッシュで扉へと向かう。
「(フハハハハ! これで気絶エンドは免れた!! 第3部、完!!!)」
「逃がすか!!」
ガンッ!!!(会心の一撃)
嬉々として扉へとダッシュで向かっていたボクは、突如後頭部に謎の凄まじい衝撃を与えられ、その場で倒れ込む。馬鹿な……一体何がッ…………!?
薄れ行く意識の中で、ボクは黒光りする謎の金属を目にした。あぁ、なるほど……そういうことか……。ボクは意識を失う直前、毒づくように心中で呟いた……。
この人グロック17を人の後頭部目掛けて思いっきりぶん投げてきたよ酷くない?
どうも、ゆっくりカノンです。
どうですかね?w初めての投稿なので話の進み方とか地の文とかちゃんと出来ているのかとかとても不安です。よろしければ感想と評価をよろしくお願いします。今後の参考にも、モチベーションにもなります。