いつの間にか7月になってましたね。
今年の七夕イベは誰なんだろう。
あ、ちなみに今回は千聖さん回です。
『キーンコーンカーンコーン』
生徒A「終わったー!」
生徒B「ねぇ、今日いっしょに帰ろー!」
生徒C「ちょっと見てよこれ、マジヤバくない!?」
生徒D「あ、これあたし知ってるよ。確か最近出来たばかりの店で、毎日毎日行列が絶えないんだってさ。」
生徒E「今からカラオケ行くやつ、手挙げてー!」
生徒C・D「「はーい!」」
生徒A「カラオケ!?私も行きたい!」
生徒B「あ、あたしもあたしもー。」
HR終了のチャイムが鳴って放課後になった途端、クラスの大半がワイワイ状態と化した。
その外見はまさに、今時の女子高生という感じだ。
この今時の女子高生(以下JK)が集まっている場に、1人だけ混じっている男が、僕だ。
橋山「じゃーねー空見。」
美菜「また明日ねー。」
楓「あ、うん、じゃー…「ちょっと待ってくださいよ~!橋山さん!浅井さん!」「ごめんごめん。」「軽いジョークだよ、宮村。」……」
……よくよく考えると、僕ってものすごい場にいるんだよな。
……///。
慣れない……いや、こんなの慣れるわけがない……。
こんなJKがいっぱいいる場に、男が1人だもん、慣れるほうがおかしい……。
僕はそんなことを考えながら、机に顔を伏せた。
花音「! ど、どうしたの!?空見くん!」
え?
花音「もしかして、具合でも悪いの!?ふぇぇ、ど、どうしよう……。」
楓「……」
花音「そ、そうだ!保健室、保健室に行こ、空見くん!私が連れていって…「大丈夫だよ。」ふぇ?」
千聖「花音、何をそんなに騒いでるの?」
花音「あ、千聖ちゃん。その、空見くんが、具合悪いみたい…「だから大丈夫だって、松原さん。」ほ、ほんと?」
千聖「……まさか楓、あなた、花音に何か…「してませんよ何も!」……言ってみただけよ。何をそんなにむきになってるのかしら?」
楓「!(こ、この人は~!)」
花音「……ふふ。」
楓「?」
千聖「か、花音?どうしたの?」
花音「なんか、2人を見てると和むなぁって。」
楓・千「「……そ、そう?……え?」」
花音「ふふ。うん、とっても♪」
……JKが大勢いる場は慣れないけど。
千聖「和むといえば……私は花音、あなたを見ているときが、一番和むわね。」
花音「え?どういうこと?千聖ちゃん。」
千聖「そのままの意味よ。」
花音「え~?教えてよ千聖ちゃ~ん。」
千聖「教えない♪」
花音「もう、千聖ちゃんの意地悪~。」
……この2人と、松原さんと白鷺さんといっしょにいるときのこの場は、いつか慣れるかもしれないな。
楓「……じゃあ僕は、そろそろ帰…ガシッ ん?」
千聖「……」ニコニコ
楓「……あのー、白鷺さん?この手は…「まさか、このまま帰るなんて言わないわよね?」……あの、怖いんですけど。」
花音「じゃ、じゃあ私、帰るね?」
楓「え?ちょ、松原さん!?助けてくれないの!?」
楓「が、頑張ってね、空見くん。ダッ!」
楓「頑張って!?え、何、どういう…「忘れたとは言わせないわよ?」へ?」
千聖「言ったでしょ?昨日、『勘違いしないで。私はただ、“一旦許す”と言っただけ。その意味を、よーく噛み締めておいて。』って。」
楓「……」
あー、そういやそんなこと、言われた…グイッ! うわっ!
千聖「というわけで行くわよ。」
楓「え?い、行くって、どこに…「いいから黙ってついてきなさい。」……」
何で?
何で白鷺さんは、いつも行き場所を教えてくれないんだ?
いやまぁ、怒ってるからってのもあると思うけど……行き先ぐらいは教えてくれてもいいんじゃ…「楓、少し黙っててもらえるかしら?」「! す、すみません。」……はぁ。
白鷺さんに逆らうと怖いし、黙ってついてくか。
……ところで白鷺さんの心読む能力ほんとに何なの?
芸能人特有の何かなの?
~20分後~
千聖「着いたわ。」
白鷺さんに引っ張られながら歩くこと20分。
僕が連れてこられた場所は……ん?
どこだ?ここ。
……マンション、じゃ、ないよな?
……ビル?
だとしたら……何の?
千聖「入るわよ、かえ…「あの、白鷺さん。」何?」
楓「ここって、ビル、ですよね?」
千聖「ええ、そうよ。」
楓「(あ、合ってた。)サラリーマンとかが働いてる、あのビ…「そういうのとは、少し違うわね。」え?」
そういうのとは、少し違う?
サラリーマンとかが働いてるわけじゃないってことか……?
楓「白鷺さん、それ、どういう意…「入れば分かるわよ。」は、はぁ。」
入れば分かる、か。
まぁ、確かにそうだけど。
……内心めちゃくちゃ怖え。
白鷺さんのことだから、そんなヤバいビルじゃないとは思うけど。
……うん、ただただ怖い。
千聖「いつまでボーッとしてるのよ。さっさと行くわよ。」ガシッ
楓「! ちょ、ちょっと白鷺さん!?僕まだ、心の準備が…「そんなのどうだっていいわよ。」僕にはどうでも良くないんですよ~!」
【謎のビル エントランス】
楓「……」
千聖「どう?この建物が何のビルなのか、だいたい想像ついた?」
エントランス……。
カウンターがあり、その近くにはソファーやイスがある。
自販機もあるし、タバコを吸うところもある。
その向かい側にはロッカーがあって、鍵のついてるものとついてないものがある。
他には傘おき、冷水機、テレビ、更には観葉植物も置いてあり、まぁごく普通のエントランスだ。
うん、ごく普通のエントランス。
……エントランス自体はね。
千聖「ちょっと楓、聞いてる?」
楓「え?」
「・・・聞いてなかったわね。」
「き、聞いてましたよちゃんと!ただ、少しだけ、考え事をしてまして・・・」
「考え事?何か、気になることでもあった?」
「は、はい、まぁ。」
「そう。・・・言ってみて。」
「・・・一言で言いますね?」
「ええ、構わないわ。」
「・・・僕の記憶違いじゃなければあの人、よくテレビや映画に出たり、雑誌とかネットとかでもちょくちょく話題になってる気がするんですよ。あの人とかあの人とかも、映画の予告とかでよく見るし・・・。あ、すいません、一言じゃ無理でした。」
「なるほど。・・・つまり、何が言いたいの?」
「・・・ここ、普通のビルじゃないですよね?」
「というと?」
「このビルは、白鷺さんに深く関係している何か、だと思うんですけ…「その何かって何?」え?いや、そこまでは、分かりませんけど・・・」
「・・・はぁ。」
え、何でため息?
「そこまで分かってるなら、答えはもう出てるでしょうに・・・」
「え、あ、・・・なんか、すいませ…「いいわよ謝らなくても。」・・・」
「・・・芸能事務所よ。」
「え?」
「だから、芸能事務所。ほら、行くわよ。」
「! ちょ、ちょっと待ってくださいよ~!」
芸能事務所、・・・確か、Pastel*Palettes、だっけ。
白鷺さんと丸山さんを含めた、そのアイドルバンドの五人が所属してるとこ。
そりゃ、テレビとかでよく見るような人達がいるわけだ。
芸能事務所って、一言で言うと芸能人がいっぱいいるとこだもんな。
・・・あれ?
僕ってもしかして、結構すごいところに来ちゃった?
「確か、ここら辺のはずだけど・・・」キョロキョロ。
さ、流石芸能事務所、中がめちゃくちゃ広い・・・。
なんかいっぱい歩いたから、自分が今何階にいるのかも分かんなくなっちゃったよ・・・。
何階かは分かんないけど、ここがなんかの部屋だってことだけは分かる。
・・・ところで白鷺さんは、何でさっきからキョロキョロしてるんだろ?
誰かと待ち合わせでもしてんのかな?
てか僕、まだこの芸能事務所に連れてこられた理由も知らないんだよな。
ここに来る前に何度か聞こうとしたけど、全部はぐらかされたし。
たぶん今聞いたとしても、教えてくれないんだろうなぁ。
・・・あれ?
そういえば・・・。
「あの、白鷺さん。」
「何?楓。」
「今ふと思ったんですけど、僕のような一般人が、普通に芸能事務所に入ったりできるんですか?」
「ええ、そこは問題ないわ。事前にアポを取っておけばね。」
「はぁ、アポを・・・、ん?あれ、でも僕、アポなんか取って…「私が代わりに取ったのよ。」あ、なるほど。」
「・・・いたいた!白鷺さーん!」タッタッタ。
「!」ビクッ!
「あ、小杉さん、こんにちは。お忙しいところを呼び出してしまって、すみません。」
「いやいや全然、気にしないでよ。・・・それで、その子が白鷺さんの言ってた・・・」
「はい、友達の空見楓さんです。」
「ど、どうも。」
この人が、白鷺さんの待ち合わせ相手、かな。
「・・・男の子だったんだね。」
「へ?」
「白鷺さんの友達っていうから、てっきり女の子かと思ってたよ。」
「失礼ですね。私にも、男友達くらいいますよ。」
「そ、そうだよね。ごめんごめん。・・・」ジー。
「・・・あの、何ですか。」
「い、いや、なんでもないよ。」
? 何だ?この人。
「(スキャンダルじみたことになりそうと思ったら、空見くんには悪いけど、即刻帰ってもらおう。)」
「白鷺さん、この人誰ですか?」
「あ、ごめんなさい、紹介が遅れたわね。この人は小道具担当の小杉さん。ドラマの撮影のときに必要な小道具を整備、管理してくれている人よ。」
「小道具・・・、ん?」
『あるドラマの撮影のときに、小道具として渡されたのよ。でも、返すのを忘れてしまって・・・。』
『私は、“一旦許す”と言っただけ。その意味を、よーく噛み締めておいて。』
まさか、今日僕が芸能事務所に連れてこられたのって・・・。
「小道具担当って、よく簡単な仕事だと思われがちなんだけど、実際はすごく大変な仕事なんだよ。ものを運ぶときは壊さないように気を付けなきゃいけないし、ものをセッティングするときもカメラの位置を確認しながら配置しなくちゃいけない。特に大変なのは…「小杉さ ん、一旦そこで話をやめてもらってもいいですか?」あ、ご、ごめん。つい熱く語りだしちゃったよ・・・」
「い、いえ。えっと、・・・勉強に、なりました。」
「ほんと!?それは良かった。じゃあまた今度この話を…「あ、いえ、大丈夫です。」え、そう?」
・・・まぁ、悪い人ではないっぽい、けど。
・・・こういうのは見た目で判断しちゃダメなんだよな。
「小杉さん、私達、そろそろ本題に入りたいんですけど・・・」
「あ、そ、そうだよね。ごめん白鷺さん。」
「「・・・」」
「えっと、確か本題というのは、白鷺さんが返し忘れたっていう小道具のことだよね?」
「!」
「はい。」
・・・やっぱ思った通りだった。
だから白鷺さんは、僕を芸能事務所に連れてきたんだ。
小道具の紙をぐしゃぐしゃにしてしまったことを、小道具担当である小杉さんに謝らせるために。
「というわけで楓、さっそくだけど、例のものを出してちょうだい。まさか、忘れたなんて言わな…「・・・」スッ。・・・なんだ、ちゃんとあるじゃない。」
僕、忘れたなんて一言も言ってませんけどね。
「! 白鷺さん、それ、まさか・・・」
「ごめんなさい、小杉さ…「すみませんでした!」え?」
「これ、実は白鷺さんが返し忘れたっていう、小道具の紙なんです。」スッ。
「(か、楓・・・?)」
「う、嘘だろ?・・・ど、どうして、そんな、くしゃくしゃに?」
「実はおととい、学校であることに巻き込まれちゃって。そのときに、白鷺さんにこれを渡されたんです。そのおかげで、なんとかそのときは事なきを得たんですけど。・・・その渡された紙を白鷺さんに返すのを忘れてたうえ、制服のポケットに入れたまま洗濯に出しちゃって。そのせいで、その、こんな、くしゃくしゃに・・・。」
「・・・」
「だ、だから、その、・・・す、すみま…「ごめんなさい!」へ?」
「確かに楓はその紙、いや、小道具をくしゃくしゃにしてしまった張本人です。でも、そうなってしまった原因は私です。私が小杉さんに小道具であるその紙を返し忘れてしまったうえ、緊急事態とはいえ返さなくてはいけない大事な小道具を楓に渡してしまったから。・・・だから、・・・楓を責めるようなことは、あまりしないでください!お願いします!」
「(し、白鷺さん・・・。)」
「・・・」
「・・・楓。」
「え?・・・!は、はい。」
「・・・「「小杉さん。」」?」
「「ほんとに、・・・すみませんでした!」」
「・・・」
僕も白鷺さんも、言いたいことは全部言ったはずだ。
正直、白鷺さんも謝り始めたのにはびっくりしたけど、・・・僕のこともちゃんと、考えてくれてたんだ。
「・・・「大丈夫だよ、白鷺さん。僕は怒ったりしないし、空見くんを責めたりもしないから。」! ほ、ほんとですか?」
「うん。・・・でも、白鷺さんがそこまで彼のことを心配してるなんて、少し意外だな。」
「そ、そうですか?私はただ、友達が自分のせいで怒られてるのを見たくなかったから、あのように言っただけで…「まぁなんにせよ、そんな紙きれ一枚のことで怒ることはないから安心して。」は、はぁ。・・・って、え!?こ、小杉さん、今なんて?」
「え?・・・安心し…「その前です!」・・・そんな紙きれ一枚のことで…「それです!」・・・白鷺、さん?」
「あ、あの、白鷺さん?いったいどうし…「どういうことですか、紙きれ一枚って。」!(こ、この感じ。・・・今は、話しかけないほうがいいかも・・・。)」
「この紙は、大事な小道具じゃなかったんですか!?」
「な、何でそんなに怒ってんの?白鷺さ…「いいから答えてください!」・・・」
し、白鷺さんがここまで熱くなるのは珍しいな。
「えーっと、・・・そもそも僕、その紙が“大事な”小道具とは、一言も言ってないんだよ?」
「・・・」
「(しゃ、喋らない・・・、話を続けろってことか?)そ、空見くん、それ、ちょっと貸してもらえるかな。」
「あ、はい。」スッ。
「ありがとう。・・・これさ、一応小道具として扱ってるけど、どこにでもあるようなごく普通の紙なんだよ。だから、なくなったらなくなったでまた作ればいいし、汚れたら汚れたでまた作ればいい。正直な話、この小道具、いや、この紙は、ものすごく大事ってわけでもないんだよ。」
「・・・」
「・・・えっと、一応話しておくべきことは、全部話したつもり…「つまり?」え?あ、・・・」
小杉さんも大変だな、いろんな意味で。
「つまりは、まぁ、・・・こんな小道具と呼べるのかすらも分からないような紙のことで、そこまで責任感じながら謝らなくてもよかったってことを…「分かりました。ありがとうございます、小杉さん。」え?あ、・・・うん。」
「行くわよ、楓。」
「へ?いや、でも…「いいから。」は、はい・・・。」
「(・・・僕、何か白鷺さんの気にさわるようなこと言ったかな?・・・「小杉さん。」「え?」)」
「・・・」
「あ、な、何かな?空見くん。」
「ずっと気になってたことなんですけど、・・・その紙、何の撮影で使ったやつなんですか?」
「え、何の撮影で使ったか?」
「はい。白鷺さんに渡されたときから、ずっと気になってて。あ、でもこういうのって、やっぱ企業秘密みたいな感じで、教えてもらえ…「まぁ一言で言うと、逃げるときかな。」・・・はい?」
「簡単に説明すると、まずそのドラマには臆病な高校生の男の子が出てくるんだけど、あるとき大勢の不良に絡まれるんだよ。で、その男の子がどうしようどうしようってなってたときに、その男の子の友達の女の子が助けてくれるわけ。で、その女の子は男の子の腕を掴みながらその不良で溢れた人混みをするすると抜けていくんだけど、そこで女の子が男の子に渡すのがこの紙。」
「・・・」
「でまぁその後はなんやかんや起きて、その男の子は突然お腹が痛いってわめき出すんだよ。でも、本当にお腹が痛いわけじゃなくてね。そう、なぜ男の子が突然お腹痛いってわめき出したのか、そのカギがずばりこのか…「も、もういいです。分かりました。」え、でも、まだ最後まで言ってな…「そんなに言うと、ドラマのネタバレとかになりそうですし。」・・・あーー!!そうだったーー!!」
「と、というわけで、僕もう行きますね。」
「え?あ、ちょっと空見く…「い、いろいろありがとうございました。」あ、・・・うん。」
「・・・ペコリ。」
「(あ、ちゃんとお辞儀はしてくれるんだ、白鷺さん。)き、気をつけて帰るんだよ。」
「ほら、さっさと行くわよ楓。」グイッ!
「わっ!し、白鷺さん、何をそんなに怒って…「別に怒ってなんかないわよ。」・・・(絶対怒ってる・・・。)」
「(・・・スキャンダルになりそうだったらとか、いろいろ考えてたけど、・・・なんか、大丈夫な気がしてきた。まぁ、白鷺さんだもんな。そういうところは、きちんと考えてるだろう。空見くんも、あの感じじゃ問題なさそうだし。・・・なんか空見くんって、”臆病な高校生の男の子“に似てるよね。って、それはちょっと失礼か。あ、そういや、これ、どうしよう・・・。後で捨てとくか。)」
現在僕と白鷺さんは、ある部屋を出たところの近くにあったソファに腰かけている。
しかし良かったな。
あの紙、そんなたいしたものじゃなかったみたいで。
小道具っていうから、どれだけ怒られるんだろうとか思ってたけど、・・・いろいろあるんだなぁ。
ていうか、白鷺さんがなんか機嫌悪くなりだしたのって、小杉さんがあの紙のことを説明し終わったとこぐらいだよね?
何であのとき、白鷺さん機嫌悪くなったんだろ?
とまぁ、そういうことは置いといて。
・・・最後の小杉さんの話、すげぇデジャヴを感じたんだけど?
あの話って、・・・もしかしなくても、あれだよね?
・・・こんな偶然、そうあるものじゃないぞ?
あれ、白鷺さんはまさか、このことを知ってて、僕にあの紙を…「楓。」!
「は、はい!何でしょう!?」
「・・・ごめんなさいね。」
「え?」
「私があんなことを言ったせいで、あなたに妙な緊張をさせてしまったみたいで。」
「べ、別に大丈夫ですよ。まぁ、確かに最初は緊張しましたけど、・・・白鷺さんのおかげで、後半からは緊張もとけましたし。」
「私の?」
「白鷺さん、言ってくれてたじゃないですか。僕のことを責めないであげてくれって。」
「っ!だ、だからそれは、自分のせいであなたが怒られてるのを見るのが嫌だったから…「それでも僕、嬉しかったです。」・・・」
「ありがとうございます、白鷺さん。」
「・・・あなたって、変なところ律儀よね。」
「へ?」
「はぁ、なんか無駄に疲れたわ。」
「え、白鷺さん、む、無駄って…「小道具と呼べるのかすらも分からないようなものなら、あんなに本気で謝らなきゃ良かったわ。」あ、そのこと、ですか。」
「あの手の小道具は初めて使ったから、最初返し忘れたことに気づいたときはどうしようって思ったけれど、・・・次からは、使い終わったらくしゃくしゃにしてゴミ箱に即捨てることにしましょうかしらね。」
「は、ははは・・・」
無駄に疲れたって、別に僕といたからってわけじゃなかったのか。
ふぅ、良かった。
・・・てか白鷺さん、やっぱそのことで怒ってたんじゃん。
「思ってたことを口に出したらスッキリしたわ。どう?楓。もしだったら、帰りにどこか寄って…「あー!千聖ちゃんだー!」え?」
ん?
この声、なんか聞いたことあるような・・・?
「あら、日菜ちゃん。」
「やっほー千聖ちゃん。ん?ってあーー!君、SPACEにいた子じゃーん!」
SPACE?
・・・あ、思い出した!
この人、あのときSPACEにいた人だ。
なんか、白鷺さんの知り合いみたいだけど。
「・・・」ジー。
「ど、どうしたの?日菜ちゃん。」
「・・・やっぱりこの子って、千聖ちゃんの…「違うわよ?」えー、でも二回もいっしょにいるんじゃ…「いい加減にしないと、例え日菜ちゃんでも怒るわよ。」んー、まぁいいや。」
いや軽いなこの人。
「そういえば、日菜ちゃんはどうしてここに?今日はパスパレの練習は休みだったはずだけど。」
ん?
パスパレ?
今白鷺さん、パスパレって言った?
「いやーそれがさ、昨日うっかりスタジオに忘れ物しちゃってさー。おねーちゃんに怒られちゃったから、取りに来たんだ。」
「そうだったの。忘れ物って、何を忘れたの?」
「教科書だよ。」
「教科書?あぁ、そういえば昨日、彩ちゃんと何か話してたわね。」
「彩ちゃんが、今度勉強教えて欲しいって頼んできたから、それなら今教えてあげるって言って教えてあげたんだ。でも彩ちゃん、あたしの教え方じゃ分からなかったみたいでさ。」
「・・・ちなみに日菜ちゃんは、どういうふうに教えたの?」
「え?どういうふうって、普通にここをギュンッてやって、そしたらシュパーンってやって、最後にドーン!ってやったら出来るよって教えただけだよ?」
「・・・相変わらずね、日菜ちゃん。・・・彩ちゃんには、今度私が教えてあげることにするわ。」
・・・擬音ばっかで、何言ってんのかさっぱり分からない・・・。
「それでそれで?千聖ちゃん達は何してたの?」
「え?い、いや、そんな大したことじゃないわよ。」
「え~、気になるじゃ~ん、教えてよ~。」
「教えてあげてもいいけど、今話すとそれなりの時間がかかるのよ。」
「そうなの?んー、じゃあまた今度でいいや。」
「ええ、そうしてもらえると助かるわ。」
「それじゃあ千聖ちゃん、あたし行くね。」
「ええ、また明日ね。」
「うん、また明日ー。」タッタッタ。
・・・なんか、よく分からん人だったな。
途中丸山さんの名前も出てたけど、丸山さんとも知り合いなのか。
てかさ、白鷺さんがパスパレの練習がどうとか言ってたんだよね。
スタジオでどうたらこうたらとも言ってたし、・・・もしかしてあの人・・・。
ん?
てか待って?
あの人、戻ってきてない!?
「ひ、日菜ちゃん!?どうしたの?スタジオに行ったんじゃなかったの?」
「いやーそれがさ、あることを忘れてて。」
「あること?」
「君の名前、そういえば聞いてなかったなって。」
「え、僕?」
「うん。名前、なんてゆーの?」
「・・・そ、空見、楓だけ…「やっぱり!」え?」
「あたしの思った通りだよ!君があの空見くんなんだね。」
「え、あ、え?お、思った通り?あの?」
「ほらほら、早く出して!」サッ!
「・・・出してって、何を…「携帯だよー、決まってんじゃん。」き、決まってる、の?・・・スッ。」
「じゃ、ちょっと貸してねー。」パシ。
「へ?あ、ちょ、僕の携帯!」
「んーと、ここをこうして、・・・よしOK !はい、ありがとう!」
「あ・・・。」
「それじゃあ千聖ちゃん、空見くん、今度こそじゃーねー!」ピュー!
・・・な、何だったんだ、マジで。
「だ、大丈夫?楓。」
「は、はい。・・・あ。」
・・・あの人、あの数秒で電話番号交換してある。
いろいろやべえな、あの人。
「・・・なんか、ごめんなさいね。」
「! い、いえ、別に白鷺さんが謝ることじゃないですよ。」
「・・・」ジー。
「・・・な、何ですか。人の携帯の画面じっと見て。」サッ。
「三人か。」
「へ?」
「楓が最近電話番号を交換した女の子の数よ。」
「・・・ああ、松原さんと白鷺さんと、あとさっきのあのひ…「日菜ちゃんよ。」ひ、日菜、さん、ですね。」
「意外と、彩ちゃん達とは交換してないのね。」
「いや、それが普通だと思いますけど。」
「普通?どうして?」
「いやだって、そんなほいほい女子と電話番号の交換なんてしないでしょ?」
「・・・そういう、ものなの?」
「まぁ、人によってはそういうやつもいますけど、僕は決してそういうタイプじゃないので。」
「・・・ま、楓の性格じゃ普通は女の子と電話番号の交換なんて無理よね。」
「・・・地味にひどいこと言いますね。」
「傷ついた?」
「いえ、別に。自分がこんな性格だってのは自分がよく分かってるんで。」
「・・・なんか、ごめんなさい。」
「いや、別に謝らなくてもいいですって。」
・・・女子と電話番号の交換なんて、一生ないと思ってたんだけどな。
人生分かんないものだなぁ。
『ピロリン♪』
「!」
「え、メール?誰から…って、日菜さん!?」
「さっき別れたばかりなのに、もうメール?」
「えーっと、何々?・・・『次の日曜日、予定空けといてね!詳しいことは今度またメールで知らせるから!千聖ちゃんとのデート、楽しんできてね!それじゃーね、空見くん!』・・・はぁ、この人は…って、げっ!」
「・・・」ゴゴゴゴゴ・・・。
し、白鷺さんから、なんか、ヤバいオーラが・・・。
この人、なに白鷺さんに喧嘩売ってんだよ・・・。
「・・・ふぅ。」
あ、おさまった。
「日菜ちゃんのことは後で考えるとして、・・・楓。」
「は、はい。」
「さっきも言おうとしたのだけど、もしだったら帰り、どこか寄っ…『ピロリン♪』「わっ!またメール!?」・・・」
ったく、今度は誰から…あ、お母さんだ。
何々?
『今日は外食に行くから早く帰ってきて。』
おぉマジで!?
今日外食なんだ!
よっしゃー!
「・・・楓、今度は誰から?」
「あ、お母さんです。今日は外食だから、すぐ帰ってこいって。」
「そう。・・・じゃあ楓、もう帰るの?」
「まぁ、すぐ帰ってこいって言われてますし、そうですね。」
「・・・そう。」
「? どうかしました?」
「どうかしたように見える?」
「え?あ、まぁ。」
「・・・いいわ。じゃあ帰りましょう。」スタスタスタ。
「え?あ、ちょっと白鷺さん!?今のどういうことですか!?」
「何もないわよ。」
「・・・何もないわけないと思うんだけど。ていうか、待ってくださいよー!」
「(・・・はぁ。何でこうタイミングが悪いのかしら。)」
「ここからは、一人で帰れるわね?」
「はい、大丈夫です。・・・白鷺さん、ほんとに何もないんですか?」
「ほんとに何もないわよ。あなた、少ししつこいわよ。」
「えぇ?(僕、ただ心配してるだけなのに・・・。)」
「・・・じゃーね楓、また明日。」クル。
「あ、・・・は、はぁ。」
・・・ちょっと、冷たかったかしら。
・・・謝ったほうがいい、かしら。
「・・・か、かえ…「白鷺さんすいません!」きゃっ!」
「え?」
「あ、危ないじゃない!急に出てこないでよ!」
「えぇ?す、すいま…「あと。」?」
「謝るときも、すいませんじゃなくてごめんなさいでいいから。私達、クラスメイトでしょ?」
「そう、ですか。・・・じゃあ、ごめ…「別に謝られることなんて何もないわよ。」いや、でも・・・」
「・・・じゃああなた、何に対して悪いと思ってるの?」
「え?あ、えっと、白鷺さんを驚かしちゃったことと、なぜか白鷺さんの機嫌を悪くさせちゃったこと、ですかね。」
「・・・」
「・・・外食のこと、断りました。」
「! ど、どうして?」
「白鷺さん、僕を何かに誘おうとしたんですよね?」
「・・・き、気づいてたの?」
「誰だって気づきますよ。芸能事務所でも、僕を誘おうとしたところをあの人…日菜さんに邪魔されてましたし。」
「! ・・・」
「それで、白鷺さん、僕を、何に誘おうと…「行くわよ。」ガシッ! え?」
「あ、もちろんどこへ行くかは…「行ってみてのお楽しみ、ですよね?」・・・分かってるじゃない。」
「(・・・ほんとは外食行きたかったけど、あのままじゃなんか気まずかったし。・・・良かったんだよな、これで。)」
・・・楓って、のんびりしているようで、実は周りのことをちゃんと見てるのよね。
だから花音の元気がなかったことも、私が楓を誘おうとしていたことも、この子は見抜いてた。
最初に会ったときは、ほんとに気弱そうで、頼りなさそうで、・・・言い方悪いけど、頭も悪そうで。
まるで、ドラマに出てくる“臆病な高校生の男の子”のリアル版みたいだなって思ってた。
・・・でも、人って見かけによらないものよね。
確かに楓は、見てて呆れたりすることが多々あるけど、・・・いざというときになると、彼は私を驚かせるほどの行動力を見せてくれる。
「・・・あの、白鷺さん。」
「何?楓。」
「腕、そろそろ離してくれませんかね?結構人通りの多い場所に出たので・・・」
「恥ずかしいの?」
「え?あ、えっと、・・・まぁ、はい///。」
「・・・嫌よ。」
「えぇ!?な、何でですか!?」
「特に理由はないわ。」
「ちょ、白鷺さん!?理由はないって、何言って…「それとも楓は、腕を捕まれるより手を繋がれたほうがいい?」!? ・・・こ、このままで、いいです。」
「・・・そう。」
「・・・///」
・・・ふふ、これからの楓の成長が楽しみね。
「!(な、何だ?今一瞬、寒気がしたような・・・。気のせい、なのか?)」
「楓、もう少しペースあげるわよ。」
「え?わっ!ちょ、いきなりはびっくりしますって~!」
-おまけ-
「! いつの間にか8話から12話のタイトルが変わってる!?え?何で!?」
「・・・」
※それぞれ以下のように変えました
8話:『たぶんこうなったの全部先生のせいだわ』
→『全てはこの一瞬の出来事から始まった』
9話:『僕って、苦手なものとか嫌いなもの多くない?』→『公民館で嫌いなものに遭遇した』
10話:『なんか〇〇探し始まった』
→『子供達の相手と楽器探し』
11話:『この建物、いろいろありすぎる・・・。』
→『秘密の多い公民館ホール』
12話:『やっといろいろ進展してきた(と思いたい)』
→『仲直り、と同時に仲良しにも』