田舎から引っ越してきた僕と個性的な人達   作:知栄 砂空

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どうも、知栄砂空です。

……特に何もないのでさっそく本編をどうぞ!

今回は……あの人が、メインの回、ですよ。


18話 同じタイプの二人=気が合う(のかもしれない)

【花咲川女子学園 2-A 教室】

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

先生「お、チャイム鳴ったな。というわけで授業終わりー、机戻せー。」

 

「ねぇ、次の授業何だっけ?」ガタ

 

「確か英語。」ガタ

 

「いっしょに手洗いに行こー。いっぱい書いたから手が汚れちゃって。」

 

「いいよー。」

 

や、やっと終わった。

 

やっぱ班活動は苦手だ……。

 

えーっと、次は英語か。

 

……いいや、準備はあとでしよう。

 

さて、読むぞー。スッ

 

 

 

 

 

???「……」ジー

 

楓「……」

 

……なんか、視線感じるような……。

 

???「……」ジー

 

楓「……えーっとー……

 

 

 

 

 

どうしたの?松原さん。」

 

花音「え?」

 

視線の正体は松原さんだった。

 

花音「あー……空見くんって、最近その本よく読んでるよね。」

 

楓「え?」

 

花音「好きなの?本読むの。」

 

楓「あー、まぁ、うん……。松原さんは、本読んだりしないの?」

 

花音「うーん、最近はあまり読んでないかなぁ。」

 

楓「そ、そっか……。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

僕が本読むのに集中したいからってのもあるけど、相変わらず会話少ねー……。

 

まぁ、主に僕のせいだけど……。

 

だって話すにしても話題がねーんだもん!

 

少しは会話が続くように心がけようとは思ってるものの、話題が思いつかないんだもん!

 

仕方ないでしょ!こればっかりは…「あら楓、その本……」ん?

 

楓「あ、千聖ちゃん。」

 

千聖「知ってるんですか?これ。」

 

千聖「ええ。確か、3年くらい前に実写映画化されたシリーズよね。」

 

花音「へぇ、そうな…「そうなんですよ!」え?」

 

千聖「この本、お母さんにおすすめされて貸してもらったんですけど、いざ読んだらめちゃくちゃ面白くて!全部で何巻あるかは知らないんですけど、面白すぎて1ヶ月でもう3巻までいっちゃったんですよ!」

 

千聖「……それは、早い、のかしら……?」

 

楓「お母さんは、早いって言ってましたよ。」

 

花音「まぁ、感性は人それぞれだもんね。……ところで、空見くんがそんなに楽しそうに話すの、珍しいよね。」

 

楓「え?」

 

千聖「珍しい……というか、初めて見たわ。なるほど、楓はそういうタイプなのね。」

 

そういうタイプ?

 

ってどういうタイプだ? 

 

……とは言いつつも、まぁだいたい察しはつくけど。

 

美菜「何何ー?何の話してんのー?」

 

花音「あ、浅井さん。」

 

千聖「楓が読んでいる本の話をしてたのよ。」

 

美菜「本?……へぇ~、意外。空見って本読むんだ。」

 

楓「そ、そりゃ読むよ。人間だもん。」

 

美菜「あぁごめんごめん、そういう意味で言ったわけじゃないんだよ。って、あー!本で思い出した!」

 

千聖「! ちょっと、いきなり大きな声出さないでちょうだい。」

 

美菜「本の返却日、昨日だったの忘れてた……。」

 

花音「み、美菜ちゃんも、本読むんだね。」

 

美菜「前までは全然だったんだけどね。宮村にある本をおすすめされて、それではまったんだ。」

 

千聖「返却日を過ぎちゃったのなら、昼休みになったらすぐ返しに行かなきゃダメよ。もちろん、カウンターの人にそのことを謝ってね。」

 

美菜「わ、分かってるよ~。」

 

楓「……この学校にも、図書館があるの?」

 

花・千・美「「「え!?」」」

 

楓「……」

 

千聖「……まさか楓、知らなかったの?」

 

花音「紗夜ちゃんが、空見くんに学校案内をしてあげたって言ってたけど、そのときに案内してもらわなかったの?」

 

楓「……いや?図書館なんか案内されてないよ?」

 

花・千「「……」」

 

美菜「……氷川さんでも、忘れることがあるんだね……。」

 

そっか、この学校にも図書館があったのか。

 

……いや、よくよく考えてみれば、図書館がない学校なんてないか。

 

楓「……行ってみたいな、図書館。」ボソッ

 

花・千・美「「「え?」」」

 

楓「え?……あ、もしかして今の、声に出てた?」

 

千聖「う、うん。」

 

千聖「はっきりと出てたわよ。」

 

美菜「図書館に行ってみたいって。」

 

……なんか僕って、ときどきこういうことあるよな。

 

美菜「……!それならさ空見、いっしょに行かない?」

 

楓「え?」

 

美菜「図書館、行ってみたいんでしょ?」

 

楓「い、いいの?」

 

美菜「もちろん!私も最近行き始めたばっかだけど、少しぐらいなら案内もできるし。」

 

千聖「それに今日は、あの子も。ね。」

 

花音「あ、そっか。確か今日だったよね、当番。」

 

? 白鷺さんと松原さん、何の話してんだ?

 

美菜「よし!そうと決まったら、さっそく…「の前にもう1時間あるのだけど、忘れてないわよね?」そ、そうでした。うぅ、英語嫌い……。」

 

あ、浅井さん、英語苦手なんだ……。

 

……ていうか、本全然読めなかったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

先生「はい、それじゃあ授業終わり。昼休みに入ってよし。」

 

ふぅ、やっと終わった。

 

ってあれ、僕さっきも似たようなこと言ってなかったっけ?

 

花音「ごめんね、空見くん。次は、ちゃんと最後まで読めるように頑張るから……。」

 

楓「あ、いや……う、うん。」

 

英語の授業の最後のほうは、隣の席の人と本文を読み合うというものだった。

 

僕はちゃんと最後まで読めたが、松原さんは途中で時間切れ(授業終了)になってしまった。

 

うーん、松原さんが読み始めたのは授業が終わるまでもう30秒もないぐらいのときだったから、読めなくてもしょうがないと思うんだけど。

 

真面目なんだな、松原さん。

 

美菜「空見ー!図書館行こー!」

 

楓「あ、浅井さん……って、もう?」

 

美菜「もちろん!あ、弁当なら、図書館から戻ってきた後で食べるから大丈夫だよ。」

 

楓「そ、そうなんだ……。……!?」

 

な、何だ?

 

今一瞬、背筋が凍りつくような何かが…「楓。」!!

 

この人だーー!!

 

背筋が凍りつくような何かの正体は白鷺さんだーー!!

 

千聖「まさかあなた、お昼を食べずに図書館へ…「だ、大丈夫ですよ白鷺さん!図書館から戻ってきたらすぐ食べますから!」とか言って、気づいたら昼休みが終わってて結局食べれなかったというオチでしょ?」

 

楓「き、気を付けます!そこはちゃんと気を付けますから!」

 

千聖「……じゃあ、約束して。」 

 

楓「へ?」

 

千聖「10分以内に図書館から戻ってきなさい。いいわね?」

 

楓「10分以内!?……ちょっとそれは、厳しいような…「いいわね?」ニコニコ !! は、はい!分かりました!」

 

美菜「……そ、それじゃあ空見、行こうか。」

 

楓「う、うん。」

 

 

 

 

 

花音「……ち、千聖ちゃん。10分以内は、流石に早すぎるんじゃ…「そんなこと言ってたら、お昼を食べる時間がなくなっちゃうでしょ?」ま、まぁ、そうだけど……。」

 

千聖「もし約束を守れなかったらどうなるか……分かっているわよね?楓♪」

 

花音「!! ち、千聖ちゃんの顔、笑ってるはずなのに、怖い……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【2-A 教室〜図書館】

 

楓「……」

 

美菜「……」

 

……気まずい。

 

なぜかというと……浅井さんが全っ然しゃべらないから。

 

いつもの浅井さんなら、もっとこう、グイグイ話しかけてくるようなイメージなんだけど(さっきもそうだったし)……教室出てから、ずっと黙ったままだ。

 

しかも浅井さん……心なしか、ちょっと震えてない?

 

まるで、何かに怯えてるような……。

 

美菜「……ねぇ、空見……。」

 

あ、やっとしゃべった。

 

楓「何?浅井さん。」

 

美菜「……白鷺さんてさ、……いつも、あんな怖いの?」

 

楓「へ?……何で白鷺さん?」

 

美菜「何でって、そりゃあ……ほら、あれだよ。さっきの白鷺さんの。」

 

あれ?

 

あれなんて言われても、何のことか全然……。

 

 

 

 

 

『10分以内に図書館から戻ってきなさい。いいわね?』

 

『10分以内!?……ちょっとそれは、厳しいような…『いいわね?』ニコニコ !! は、はい!分かりました!』

 

 

 

 

 

あ……なるほど。

 

楓「あれね。あのときの白鷺さんね。僕を脅迫してるときの…「やめて!言わないで!」……え?」

 

美菜「ガクガクガク……」

 

……なーるほど。

 

もしかしなくても、これはあれだな。

 

トラウマになってんな。

 

さっきの白鷺さんの怖い笑いが。

 

え、でもあれだけで?

 

あれだけでトラウマになる?

 

……もしかして浅井さんって、意外とこ…「それ以上言ったらどうなるか、分かってるよね?」!!

 

う、嘘だろ!?

 

まさか、浅井さんまでもが、心を読む能力を……?

 

……とまぁ、冗談は置いといて。

 

浅井さんの意外な一面が、明らかになったな。

 

……あ。

 

そんなこんなで歩いてたら、たぶん着いた。

 

楓「あ、浅井さん、図書館って、ここ?」

 

美菜「見れば分かるよね。見るからに本いっぱい並んでるし、どう見ても図書館だよね。」

 

……あれ?

 

なんか浅井さん、喋り方に棘が…「このこと橋山と宮村に言ったら許さないから。もし言ったら空見、あんた、こうだからね?」ビシッ! ……怖い。

 

浅井さんがいつもの10倍怖い。

 

何、今のビシッ!って。

 

首のところをビシッ!って、見るからにあれのやつじゃん。

 

この怖さ、白鷺さんといい勝負かもしれん。

 

美菜「ほら、早く入って。」

 

楓「え、僕から入るの?まぁいいけどさ。……ガラガラガラ」

 

 

 

 

 

【図書館】

 

「……ガラガラガラ」

 

???「っ!?ビクッ! サッ!」

 

楓「あ、あれ?

 

 

 

 

 

白金さん?」

 

燐子「え?あ……空見、さん。」スッ

 

今、本で顔隠してたな。

 

すぐ取ったけど。

 

美菜「私もいるよ!」

 

燐子「! 浅井、さん。」

 

美菜「今日は、白金さんが当番だったんだね。」

 

燐子「は、はい。」

 

ん?当番?

 

……そういや白鷺さんと松原さんが、そんなような会話をしてたような……。

 

美菜「あれ、……もしかして空見、知らなかったの?」

 

楓「え、何が?」

 

美菜「白金さんが図書委員だってこと。」

 

楓「白金さんが、図書委員?……えぇ!?そ、そうだったの!?」 

 

燐子「!!」ビクッ!

 

美菜「そ、そんなに驚くことないじゃん……。ほら、白金さんもびっくりしてるよ。」

 

楓「え?あ……ご、ごめん白金さん。」

 

燐子「い、いえ……。」

 

いや、しかし驚いたなぁ。

 

まさか白金さんが図書委員だったなんて。

 

……こう言っちゃ失礼だけど、白金さんって委員会とかそういうのに入ってるイメージなかったから、ほんとびっくりしたよ。

 

うん、自分で言っててもめちゃくちゃ失礼なこと言ってるなって思うわ。 

 

美菜「ってそうだそうだ!白金さん。これ、返し忘れてた本!」

 

燐子「え?あ、これ……。浅井さんが、借りていたんですね。」

 

美菜「うん。読み終わったのは借りてから3日後ぐらいだったんだけど、返すのが昨日だったってことをすっかり忘れてて……。」

 

燐子「そうだったんですね。次は、気をつけて……くださいね?」

 

美菜「はーい。」

 

楓「……ん?ジー……」

 

燐子「……あの……空見さん、何か?」

 

楓「え?あ、ごめん……。えっと、その本……」

 

燐子「これ、ですか?これは……今、私が読んでる本、です。」

 

美菜「さっき私達が図書館に入ってくる前、それ真剣に読んでたもんね。」

 

燐子「え、ええ、まぁ……。」

 

楓「……白金さんって、ミステリー系、好きなの?」

 

燐子「え?」

 

美菜「え、何で?空見。」

 

楓「いやだって、白金さんが読んでたっていうその本、ミステリー系の小説だからさ。好きなのかなって。」

 

美菜「あ、ほんとだ!え、そうなの!?白金さん!」

 

燐子「は、はい……。好きといえば、好き、です。」

 

ほんとグイグイいくな浅井さんは。

 

最初僕に話しかけてきたときも、こんな感じだったっけ。

 

美菜「へぇー。じゃあさ、白金さん。ミステリー系のやつで、何かおすすめってない?」

 

燐子「お、おすすめ、ですか?」

 

美菜「うん!さっきのは宮村におすすめされた本だったから、白金さんのおすすめの本も読んでみたい…ってあああーーーー!!!」

 

燐子「!?」ビクッ!

 

楓「ちょ、浅井さん!ここ図書館だよ!?僕と浅井さんと白金さんしかいないからって、そんな大声出…「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ!」え、えぇ?」

 

美菜「見てよ時計!もう5分経ってる!」

 

楓「へ?……あぁ、白鷺さんの10分以内で帰ってこいって話ね。」

 

美菜「あの人のことだからきっと、『あなたは5分前行動もできないのかしら?』とか言いそうじゃん!」

 

楓「そ、そうか…「そうだよ!とにかく、私は戻る!空見も早く戻ってきたほうがいいよ!死にたくなかったらね!あ、というわけでじゃーね白金さん。」ピュー! ……」

 

燐子「……」ポカーン

 

は、早っ……。

 

開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだな。

 

ていうか浅井さん、どんだけ白鷺さんのこと怖いんだよ。

 

まぁ確かに白鷺さんは怖いときは怖いけど……あんな怖がるか?

 

燐子「……そ、空見さんは……行かなくて、いいんですか?」

 

楓「え?あぁ……うん。僕はもう少し、図書館にいるよ。どこにどんな本があるのかなぁとか、見ておきたいから。」

 

燐子「そう、ですか。……も、もし、よろしければ、ですが……私が図書館を、案内、しましょうか?」

 

楓「え……でも、いいの?白金さん、当番なんじゃ…「今なら、人もあまり来なさそうですし……大丈夫、です。それに……空見さんと喋る、いい機会、ですから。」え?……そ、そう……。」

 

燐子「……っ///!ち、違います!私決して、そういう意味で、言ったわけじゃ…「わ、分かってるって。あまり僕と話したことがないからって意味でしょ?」……は、はい。」

 

確かに、僕と白金さんって、あまり話したことないんだよな。

 

最初会ったときなんて、オリエンテーションのときだし。

 

その後だって……まぁ、いろいろあったし。

 

まともに話したことと言えば……僕が氷川さんを避けてるって、白金さんに追及されたとき。

 

……やめよやめよこんな話。

 

もう解決したことなんだし、あまり思い出したくない。

 

……どうやら僕は、白金さんとの会話があまりにもなさすぎるらしい。

 

いやまぁ、僕みたいなやつは女子との会話がないのなんて普通のことなんだけど。  

 

あれ?

 

今では、そうでもない、のか?

 

燐子「あのー……空見、さん?」

 

楓「! あ、ごめん白金さん。ちょっと考え事をしてて。」

 

燐子「考え事?……大丈夫、です…「大丈夫大丈夫。言われてみれば僕と白金さんって、ちゃんと話したことないなーって思ってただけだよ。」そうですか。……そ、それでは、さっそく……図書館を、案内しますね?」

 

楓「お、お願い、します。」

 

あー、何だろう。

 

この変な緊張感。

 

図書館を案内してもらうだけなのに、なぜかめちゃくちゃ緊張する。

 

燐子「……」

 

あ、分かった……白金さんも緊張してるからだ。

 

だから僕もつられて緊張してるのか。 

 

楓「……あ、あの、白金さん?」

 

燐子「は、はい!」

 

楓「……そんなに、緊張しなくても、いいんじゃない?」

 

燐子「……そ、それは、分かってるんですけど……この場に、空見さんと2人だけって思うと……すごく、意識しちゃって……。」

 

……まぁ、僕男だからね。

 

普通女子高に男なんていないからね。

 

それが普通だよね。

 

楓「わ、分かった。じゃあいいよ、別に緊張したままでも。」

 

燐子「え?」

 

楓「白金さんの気持ちは、僕も分かるからさ。僕がこの学校に転校してきたばっかのときも、今の白金さんと同じ気持ちだったもん。」

 

燐子「……」

 

とは言っても、まだ1週間ぐらいしか経ってないけどね。

 

普通こういうセリフって、漫画とかだと何ヵ月か経った後とかに言うことが多いよね。

 

ってあれ?

 

白金さんが黙っちゃった。

 

……僕のせい、かな?

 

僕が緊張しなくていいんじゃないかとか、余計なことを言ったから?

 

……サー(血の気の引く音)

 

楓「ご、ごめん白金さん!僕が余計なことを言ったから…「わ、私、頑張ります。」へ?」

 

燐子「空見さんと2人だけの状態でも……緊張しないように、頑張ります。そのためにはまず……呼び方や喋り方を、空見さんや浅井さんに、合わせないと……。」

 

楓「えーっと……白金さん?」

 

なんか、白金さんに変なスイッチが入っちゃったみたい?

 

燐子「空見さん……じゃなかった。えっと……そ、空見、くん。」

 

楓「え?……あ、は、はい。」

 

燐子「い、今から私が……図書館を、案内し……じゃなくて……す、する、ね?」

 

楓「……お願い、します。」

 

なんか、緊張がより高まってしまった気がする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「えっと……ここが、歴史や地理などの本が置いてある場所で、こっちが……文学の本が置いてある場所で……だよ。」

 

楓「は、はぁ。」

 

燐子「それで、さっき私が読んでたミステリー系の小説は……ここの棚にありま……あるよ。」

 

楓「そ、そうなんだ。」

 

燐子「……空見さん、やっぱり、私の案内じゃ……分かりにくかったですか?……!じゃなかった!えっと……わ、分かりにくかった、かな?空見……くん。」

 

楓「い、いや、そういうわけじゃないんだけど……。」

 

こういうときは、思ったことははっきり言った方がいいのだろうか。

 

でも、それを言っちゃったら僕は……こんなに頑張ってる白金さんを、傷つけてしまうことになるんじゃ……。

 

あーもう!

 

こういうときどうすりゃいいんだよ~!

 

燐子「……空見、さん?」

 

楓「……やっぱり、その呼ばれ方のほうがしっくりくるな。」ボソッ

 

燐子「え?」

 

楓「え?……!ご、ごめん!今のなし!今言ったことは忘れて…「やっぱり、そう……ですか?」え?」

 

燐子「私のこの口調……変、ですか?」

 

楓「い、いや、変ではないけど…「けど?」っ!……」

 

……決めた。

 

正直に言おう。

 

今の白金さんの頑張りを否定することになるかもしれないけど、それなりの覚悟で、正直に。

 

楓「……変ではない、けど……やっぱり、前の丁寧語のほうが、白金さんっぽいっていうか、合ってる気がする。」

 

燐子「……」

 

楓「僕や浅井さんに合わせようと頑張ってるのは、すごい伝わってくるんだよ。でも、それだとさ……白金さんの緊張が、より高まっていく一方でしょ?」

 

燐子「!」

 

楓「白金さんも、気づいてるんじゃないの?」

 

燐子「……」

 

楓「このやり方だと、緊張はなくなってプラスになるどころか、より大きくなってマイナスになる…「じゃあ……」……」

 

燐子「じゃあ私は、どうすれば…「変えなきゃいいんだよ。」……え?」

 

楓「変えなきゃいいんだよ。呼び方も話し方も変えずに、前と同じように呼んだり話したりすれば。……確かにこの場に僕と2人きりってのは、白金さんからしたら、ハードルが高すぎて、緊張せざるを得ないよね。つい最近まで、この学校には女子しかいなかったわけだし。」

 

燐子「……」

 

楓「呼び方話し方を変えてまで緊張するぐらいなら、変えないで緊張するほうが、まだ楽だと思うよ。」

 

燐子「……で、でも、私は…「さっき白金さんの読んでた本さ、僕も読んだことあるんだ。」え?」

 

楓「ていうか、今読んでる。」

 

燐子「……これのこと、ですか?」スッ

 

楓「そうそれ。めちゃくちゃ面白いよね、その小説。現代版のシャーロックホームズっていうのかな。」

 

燐子「わ、分かります!特に私が好きなのは、主人公がホームズ側じゃなくてワトソン側っていうところです。1巻で主人公は、ホームズ的ポジションの先輩に無理矢理探偵部に入部させられるんですよね。」

 

楓「そうそう!先輩は常に成績学年トップの超優等生で、頭も冴えて閃きもすごいんだけど、主人公は成績は中の中でスポーツはからっきし、頭は冴えないし閃きもないっていう、先輩とは正反対の性格なんだけど、超がつくほどの幸運体質なんだよね。」

 

燐子「はい!逆に先輩は超がつくほどの不運体質なんですよね。そんな全てが真反対の二人が、いくつもの困難や苦難を乗り越えて次から次へと起こる事件を解決していく。一つの巻に四話くらい収録されていて、難しい漢字には振り仮名がついているし、ところどころ絵とかもあるのですごく読みやすいんですよね。」

 

楓「うんうん。こうしていろいろ話してると、映画化された理由が分かる気がするね。」

 

燐子「そうですね。」

 

楓「……それで、どう?」

 

燐子「どうって、何がですか?」

 

楓「緊張、解けた?」

 

燐子「え?……あ!……いつの間にか緊張、解けてる……。」

 

楓「白金さんも、僕と同じだったんだね。」

 

燐子「?」

 

楓「自分の好きなもののことになると、つい夢中になって熱く語りたくなるタイプ。白鷺さんが言ってたんだ。僕はそういうタイプなんだ、って。たぶん、白金さんもそうなんじゃないかな。」

 

燐子「私が……。……ふふ。確かに、そうかも、しれませんね。……あの、空見さん。」

 

楓「ん?」

 

燐子「もう一度私に……図書館の案内、させてくれませんか?今度は図書委員ではなく……同じ本好きの友達として。」

 

楓「白金さん……。うん、分かった。それじゃあ、お願い、しようかな。」

 

燐子「あ、ありがとうございます!わ、私、頑張ります!」

 

楓「そ、そんなに気合い入れなくても、大丈夫だよ……?」

 

燐子「え?あ///……。……ふふふっ。」

 

同じ本好きの友達か。

 

……そんなの、今までいなかったな。

 

というか、女子の友達なんてのがそもそもいなかったしできなかったしね。  

 

この学校に転校してくるまでは。

 

燐子「それではまず、この棚から紹介しますね。……2回目、ですけど。」

 

楓「いいよいいよ。……改めて、お願いします、白金さん。」

 

燐子「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「そしてここが、文庫本が置いてある棚です。って、さっきも説明しましたから分かりますよね。私と空見さんが好きなこの本も、この棚に…「あった!」は、早いですね……。」  

 

楓「へぇー、もうこんなに出てたんだ。一番新しいのは……14巻か。……ん?ってもう14巻まであるじゃん!すごっ!」

 

燐子「結構人気の作品なので、この本を図書館に入れてほしいとリクエストする人が多かったんです。11巻以降は、リクエストがなくても最新巻が出るたびに入れるようにしていると、司書の先生が言ってました。」

 

楓「そうだったんだ。……じゃあ今度からは、わざわざお母さんに借りなくてもここで借りればいいのか。」

 

燐子「図書館は基本いつでも空いてますから、気軽に借りに来て大丈夫ですよ。」

 

楓「そっか。ありがとね、白金さん。」

 

燐子「い、いえ。」

 

いつでも、か。

 

借りに来るとしたら、昼休みかな。

 

あれ?

 

でも僕、貸し出しカードどうしたっけ?

 

……ヤバい、どうしたか全然覚えてない……。

 

家帰ったら探そ。

 

 

 

 

 

???「……こんにちはー。」ガラガラガラ

 

燐子「!」ビクッ!

 

楓「ん?あ、美澤先生。」

 

美澤先生「そ、空見くん?え、どうしてここに……」

 

楓「どうしてって……今、昼休みですし……。」

 

美澤先生「あ、そういえばそうね。」

 

燐子「……」

 

楓「……僕の教室の担任だよ。」ボソッ

 

燐子「! そ、そうなんですね。」ヒソヒソ

 

楓「……それで、先生は何で図書館に?」

 

美澤先生「本を借りに来たのよ。」

 

楓「本を?……先生でも本借りたりするんですね。」

 

美澤先生「当たり前でしょ。図書館は生徒専用の場所じゃないのよ。……ん?ってあぁ!あなた!」

 

燐子「!?」ビクッ!

 

美澤先生「確かオリエンテーションのとき空見くんと同じ班だった、えーっと……白金さん!白金燐子さんね!あ、もしかしてあなた、図書委員?」

 

燐子「は、はい……。」

 

美澤先生「そうだったのね。丁度良かったわ。それじゃあさっそくで悪いんだけど……白金さん、本の貸し出し、お願いできる?」スッ

 

燐子「あ、は、はい……!」

 

 

 

 

 

燐子「ど、どうぞ。」

 

美澤先生「ありがとう。」

 

さ、流石図書委員、めちゃくちゃ手際良かった……。

 

対応も丁寧で、テキパキと作業を……。

 

美澤先生「あ、そうだそうだ。空見くん。」

 

楓「! な、何ですか?」

 

美澤先生「この前聞き忘れてたんだけど、空見くんは何かやらないの?」

 

楓「何か、って?」

 

美澤先生「部活とか、委員会とか、そういうのよ。」

 

楓「あぁ……え、今からでも入れるんですか?」

 

美澤先生「ええ。本当はダメなんだけど、空見くんは転校してきたでしょ?だから、特別に、ってことで。」

 

楓「な、なるほど。」

 

燐子「……あ、あの、空見さん。」

 

楓「? どうしたの?白金さん。」

 

燐子「えっと……そ、その……」

 

楓「?」

 

燐子「……す、すみません。やっぱり、何でも、ないです……。」

 

楓「そ、そうなの?」

 

燐子「……」

 

美澤先生「……話、戻していいかしら?」

 

楓「あ、すいません。大丈夫です。」

 

美澤先生「こほんっ!……それで、空見くんは何か、やりたい部活とか委員会とか、あったりしない?まぁなかったら、それはそれでいいんだけど。」

 

燐子「……」

 

楓「……やりたい部活とか委員会……。……それじゃあ僕は……

 

 

 

 

 

図書委員がやりたいです。」

 

燐子「!」

 

美澤先生「図書委員?……少し、意外ね。ボソッ」

 

楓「ん?何か言いました?」

 

美澤先生「! う、ううん?何でもないの、何でもないから。ごめん、気にしないで。」

 

楓「は、はぁ……。(先生の慌て方よ……。)」

 

美澤先生「こほんっ!……分かった。じゃあそういうことで、顧問の先生に伝えとくわね。何かあったらまた連絡するから、そのつもりでね。」

 

楓「あ、はい、お願いします。……えっと、ほんとにこんなんで、図書委員会に入ったことになるんですか?」

 

美澤先生「なるわよ。少しは先生を信用しなさい。」

 

楓「いや、別に信用してないわけでは…「じゃ、私はそろそろ職員室に戻るから。4時間目に遅れないようにね、空見くん、白金さん。」は、はぁ……。あ、ありがとうございます。」

 

美澤先生「……ええ、頑張ってね。」

 

ガラガラガラ……パタン

 

楓・燐「「……」」

  

……とは言ったものの、心配だなぁ。

 

……ま、ちゃんと入ったことになってるなら、後から委員会の集まりとかあるだろうし、そのときに連絡がくるか。

 

もしこなかったら……うん、そのときは先生が悪い。

 

燐子「……あの、空見さん。」

 

楓「ん?どうしたの?白金さん。」

 

燐子「……どうして……図書委員会に入ろうと、思ったんですか?」

 

楓「へ?ど、どうしてって……」

 

燐子「……」」

 

楓「単純に、本が好きだからだけど。」

 

燐子「え?」

 

楓「小学校、中学校のときも、それを理由に図書委員をやってたからさ。何か変かな?」

 

燐子「! い、いえ!全然変なんかじゃ、ありません。」

 

楓「あ、ありがとう……。」

 

燐子「(本が、好きだから……。それだけの理由で、図書委員に……。そっか。空見さん“も”、そうなんだ。)」

 

楓「あのー、白金さん?」

 

燐子「私達って、やっぱり同じタイプなんですね。」

 

楓「へ?……あ、う、うん。え、急にどうしたの?」

 

燐子「何でもありません、こっちの話ですよ。」

 

楓「そ、そう……ですか。」

 

燐子「……空見さん。これから、図書委員……いっしょに、頑張りましょうね。」

 

楓「……うん。これから、よろしくお願いします。」

 

燐子「はい、こちらこそ♪~~♪♪」

 

白金さん、鼻歌歌ってる……。

 

なんか良いことでもあったのかな?

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

楓「!」

 

燐子「あ、昼休み、終わりましたね。」

 

楓「う、うん。」

 

もうそんな時間か。

 

……なんか、あっという間だったな。

 

……ん?

 

昼休み終わり?

 

あれ、なんか僕、忘れてるよう……な……。

 

……あ。

 

あ……ああ、あああ……!!

 

燐子「では空見さん、教室のほうへ、戻り…「ああああーーーー!!!!」!ビクッ! そ、空見、さん……?」

 

楓「……忘れてた。」

 

燐子「え?……あ。」

 

 

 

 

 

『見てよ時計!もう5分経ってる!』

 

『へ?……あぁ、白鷺さんの10分以内で帰ってこいって話ね。』

 

『あの人のことだからきっと、『あなたは5分前行動もできないのかしら?』とか言いそうじゃん!』

 

『そ、そうか…「そうだよ!とにかく、私は戻る!空見も早く戻ってきたほうがいいよ!死にたくなかったらね!あ、というわけでじゃーね白金さん。」ピュー! ……』

 

 

 

 

 

燐子「……」

 

ヤバい、10分以内に帰ってこいって話、すっかり忘れてた……。

 

どうしよう……絶対、120%白鷺さん怒ってる……。

 

いや、怒ってるどころの話じゃないかもしれん……。

 

……ヤバい、これは本当にヤバい……。

 

どうなるのか、全然想像がつかん。

 

……僕、今日死ぬかも。

 

いや、冗談じゃなく、わりとマジで。

 

あぁくそー!

 

浅井さんといっしょに帰っとくべきだったー!

 

……はぁ、今日が僕の命日か。

 

燐子「……空見さん、行きましょう。」

 

楓「いや、ごめん白金さん。流石に今回ばかりは、僕も逃げないとヤバ…

 

 

 

 

 

「……」ギュッ! 

 

 

 

 

 

……////!?」

 

燐子「//////」

 

何何何何何!!??

 

急にどうしたの白金さん!!??

 

楓「ちょ、あの……白金さん/////!?な、何で、その……急に手なんか、つないで…「わ、私も!」へ?」

 

燐子「私も、いっしょに……謝ります、から///。……あの、だから……こ、こうやって手を握れば、少しは気が楽になるかと、思いまして、それで……/////。」

 

楓「……えっと……そんな、無理しなくても…「無理なんかしていません!そ、そう……?」

 

……絶対無理してるよね白金さん。

 

てか、手つなぐとか聞いてないんだけど/////!!??

 

白金さんってこんな人だっけ!!??

 

燐子「/////」

 

……でも、きっとこれが、白金さんなりの優しさなんだよな。

 

手をつながれたときは、正直びっくりしたけど。

 

……今だけは、甘えさせてもらおうかな。

 

楓「……分かったよ、白金さん。……行こう。」

 

燐子「! ……は、はい!」

 

楓「あ、でも、教室行ったら流石に離し…「も、もちろんです!」だよね……。」

 

ふぅ。

 

今この場に僕と白金さんしかいないっていうのが幸いだったな。

 

こんなとこ、もし先生とかに見られてたら……うん、絶対あらぬ誤解が生まれてた。(松原さんと手を繋いだときはめちゃくちゃいろんな人に見られてたけどね。)

 

……よし、じゃあ行こう。

 

白鷺さんのところへ…「あ、空見くん、まだ図書館にいたんだ……ね?」……え?

 

燐子「……!?まま、松原、さ、さん!?ど、どうして!?」

 

花音「え?あ、えっと……空見くんの帰りが遅いから、様子を見に来たんだけど……何で空見くんと燐子ちゃん、その……手、繋いでるの?」

 

燐子「……/////」

 

楓「ち、違うんだよ松原さん!これは、あの、その…「何が違うのかしら?楓?」え……。」

 

燐子「し、白鷺さんまで……/////。」

 

……終わった。

 

やっぱり今日が、僕の命日だったんだ。    

 

はは、ははは。

 

短い人生だったなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後僕と白金さんがどうなったかは……まぁ、今のところはご想像におまかせします。

 

あ、でも一言だけ言わせて?

 

……白金さんマジありがとう。




りんりん回、どんなのにしようかと考えてたらふと思い出しました。

そうだ!りんりんは図書委員だった!と。

よって今回はりんりん×図書館回にしました。

さて、次回はまんまるお山の彩回です。(意味不明)
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