田舎から引っ越してきた僕と個性的な人達   作:知栄 砂空

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どうも、知栄砂空です。

Huluでのリゼロの配信が今月の30日までなので早く見なきゃと焦ってはいるものの見る時間がなかなかとれません。

てかイベントやらなきゃ……。

紗夜さんとリサ姉とらなきゃ……。


26話 後輩からの急な誘い

たえ「私と付き合ってください。」

 

楓「……」

 

『『『……』』』

 

花音「……お、おたえ、ちゃん?」

 

千聖「か、楓?」

 

現在僕は、1-Aの前にいる。

 

……とまぁ、そんなことはどうでもいいか。

 

みんなが気になるのは、今の花園さんの言葉だろう。

 

……では、説明しよう。

 

時は遡ること数分前……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数分前〜

 

【花咲川女子学園 2-A教室】

 

花音「空見くん。今日のお昼ごはん、いっしょに食べない?」

 

と、松原さんにお昼に誘われたのが始まりだった。

 

楓「え……。でも、いいの?」

 

花音「もちろん!ね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。」

 

楓「(松原さんと白鷺さんとお昼ごはんか。……お花見のとき以来だな。)」

 

千聖「何ぼーっとしているの、楓。さっさと机くっつけなさい。」

 

楓「! は、はい!」

 

ガタンッ

 

ガタンッ

 

花音「……えへへ♪」

 

千聖「どうしたの?花音。」

 

花音「教室でこうして三人で机くっつけてお昼ごはん食べるのって、初めてだなって思って♪」

 

千聖「……ええ、そうね。」

 

楓「(パカッ おぉ、今日のお弁当はオムライスか。うまそー。あ、でもこのオムライス、確か中にグリーンピースが……。)」

 

花音「……?」

 

千聖「花音、座らないの?」

 

花音「あ、ごめん千聖ちゃん。お母さんから電話がきちゃって。ちょっと電話してきてもいい?」

 

千聖「いいわよ。」

 

花音「ありがとう。……タッタッタ」

 

楓「……」

 

千聖「……オムライス、好きなの?」

 

楓「え?あ、いや、別にそういうわけじゃないんですけど。たまたま今日が、オムライスだっただけで。」

 

千聖「ふーん。」

 

楓「……あ、あの、白鷺さん。何か、怒ってます?」

 

千聖「あら、そう見える?」

 

楓「じゃ、若干……。」

 

千聖「若干、ねぇ。……あなたも言うようになったじゃない。」

 

楓「そ、それは、どうも…「別に褒めてはないけど。」うっ……。」

 

千聖「……花音ね、ずっと楓といっしょにお昼を食べたがってたのよ。」

 

楓「え?」

 

千聖「オリエンテーションの時くらいから、ずっと言ってたわ。楓といっしょにお昼ごはんを食べたい、今日こそは楓をお昼に誘うんだって。」

 

楓「……」

 

千聖「それなのにあなたは、橋山さん達と先にお昼ごはんを食べ始めちゃったり、花音が誘おうと思ったら教室にいなかったりするし。」

 

楓「あ、えっと、それは…「言い訳はいいのよ!」! す、すいません……。」

 

千聖「とにかく楓。あなたは今日から、ここでお昼を食べなさい。私と花音と三人で。」

 

楓「で、でも、橋山さん達にはなんて言えば…「そんなこと自分で考えなさいよ!」は、はい!(……な、なんか今日の白鷺さん、やけにいらいらしてるなぁ。)」

 

『……プルルルル、プルルルル……』

 

楓「ん?」

 

千聖「何?あなたも電話?」

 

楓「は、はい、そうみたいです。……牛込さんからだ。」

 

千聖「牛込さん?」

 

楓「あとで説明しますよ。……もしもし?」

 

りみ『あ、空見先輩。こんにちは。』

 

楓「こんにちは。それで、どうしたの?牛込さん。」

 

りみ『すみません、実は……』

 

楓「……え?今すぐ1-Aの前まで来てほしい?」

 

千聖「!」  

 

りみ『はい。えっと、おたえちゃんが、空見先輩に用があるって。』

 

楓「花園さんが?……うん、分かった。」

 

りみ『わざわざすみません。』

 

楓「いや、いいよ。じゃ、すぐ行くから待ってて。」

 

りみ『はい、お願いします。では。プツンッ』

 

楓「……花園さんが用、か。」

 

千聖「あなた、いつの間に一年生の子達と交流してたのよ。」

 

楓「いや、交流ってほどでもないんですけど。まぁ、いろいろあって。……それじゃあ僕、ちょっといってきます。」

 

千聖「あ、ちょっと楓!待ちなさい!」

 

 

 

 

 

花音「……!空見くん!?え、どこ行くの!?」

 

千聖「花音、あなたもいっしょに来て。」

 

花音「ふぇぇ!?な、何がどうなってるの~!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という感じで1-A前に呼び出され、そこで待ち構えていた花園さんに先程の告白を受け、今に至る。

 

楓「……え、えっと、花園さん?それはいったい、どういう意味で…「そのままの意味です。私と付き合ってください。」……」

 

……付き合って、ください。

 

……これはいったい、どっちの意味なんだ?

 

千聖「ちょ、ちょっとあなた!」

 

花音「あ、千聖ちゃん!」

 

千聖「何考えてるの!?こんな人がいっぱいいる中で告白なんて、あなた本気で言ってるの!?」

 

たえ「まぁ、どちらかというと本気ですね。」

 

千聖「どちらかというとって……。……そんな甘い気持ちで告白されても、誰もOKしないと思うけれど。」

 

たえ「私は空見先輩に言っているんです。他の人になんて告白しないし、甘い気持ちで言っているわけでもありません。だいいち、先輩には関係ないことだと思いますが。」

 

千聖「そ、それは……」

 

あ、あの白鷺さんが、押し負けてる……。

 

て、てか、まだどっちの意味の付き合ってくださいなのか分からないのに、どうしてそんなむきに……。

 

たえ「それで空見先輩。手始めに今日の放課後、いっしょにデートしてほしいんですけど。」

 

楓「で、デート!?しかも、今日の放課後って……。ていうか僕、まだ何も返事してな…「それじゃ、お願いしますね。あ、帰りのHRが終わったらまたここに来てください。では。」あ、ちょっと花園さん!まだ話は終わって……」

 

千聖「……」

 

花音「……空見、くん。」

 

楓「……」

 

沙綾「りみ、私達も教室戻ろう。」

 

りみ「沙綾ちゃん。……うん。」

 

……で、デート……。

 

面と向かってこの言葉を言われたのは初めてだけど……これ、完全にこっちの意味の付き合ってくださいだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【2-A教室】

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

花音「……」

 

楓「……あ、あのー、松原、さん?」

 

花音「……」

 

楓「……えっと、し、白鷺、さん?」

 

千聖「……」

 

……はぁ。

 

二人とも、さっきからずっとこんな感じだよ。

 

……。

 

 

 

 

 

『HRが終わった後、また1-Aの前に来てください。デートなんですから、もちろん帰るのもいっしょでないと。』

 

 

 

 

 

……花園さん、何を考えてんだか。

 

花・千「「……」」ガタッ

 

楓「え?」

 

花・千「「……」」

 

楓「え、ちょ……二人とも、どこに…「どこでもいいでしょう?」!!」

 

や、ヤバイ……。

 

白鷺さんの、声のトーンが……。

 

花音「空見くん。」

 

楓「!」

 

花音「すぐ帰ってくるから、待っててね。」

 

楓「……う、うん。」

 

ま、松原さんは普通だ。

 

……ちょ、ちょっと安心したよ。

 

『ピロリン♪』

 

楓「ん?」

 

メール……誰からだろう?

 

……!

 

 

 

 

 

たえ『もし来なかったらどうなるか、……分かってますよね?』

 

 

 

 

 

……何でだ?

 

何で花園さんから、メールが……。

 

考えられることはただ一つ、……誰かが僕の番号を花園さんに教えたんだ。

 

いや、まぁそれは別にいいんだけどさ。

 

……この文面、なんかすんげえデジャヴを感じる……。

 

何?こういう脅し系のメール最近流行ってんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜放課後〜

 

【1-A教室前】

 

楓「……」

 

「ねぇ、どうして空見先輩が一年生の教室の前にいるの?」

 

「知らないの?今日の昼休み、ここら辺で公開告白があったじゃん。」

 

「あ、私それ見たよ。確か、花園さん、だっけ?告白したの。」

 

「すごいよね~、こんなところで、しかも大勢の生徒の前で告白だなんて。」

 

「もうすごいを通り越して、尊敬に値するレベルだよね。」

 

「流石にそれは言い過ぎなんじゃない?」

 

……ああいうのって、わざと聞こえるようにしてしゃべってんのかな?

 

女子というのはよく分からん……。

 

たえ「空見先輩。」

 

楓「! は、花園、さん。」

 

たえ「そんなに驚かなくても。」

 

楓「いや、別に、驚いたわけじゃ…「それじゃあ帰りましょっか。」……う、うん。」

 

たえ「……」

 

楓「……ね、ねぇ、花園さん。」

 

たえ「何ですか?」

 

楓「……ぼ、僕と付き合ってくださいって、その……ほ、本気なの?」

 

たえ「本気ですよ。」

 

楓「そ、即答……。」

 

たえ「本気じゃなきゃ、わざわざ先輩のこと自分の教室の前に呼んだりなんてしませんって。」

 

楓「……そ、そっか。」

 

たえ「時間はたっぷりあるんです。今日はとことん付き合ってもらいますよ。」

 

楓「う、うん……。」

 

き、緊張と不安が、半々……。

 

たえ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

楓「……ねぇ、花園さん。どこまで行くの?」

 

たえ「もうすぐ着きますよ。」

 

楓「いや、そういうことじゃなくてさ。」

 

……どこだよ、ここ。

 

花園さんについてきたはいいけど、回りは全部知らない住宅街、知らない道、知らない景色ばっか。

 

自分が今どこにいるのかも全く見当つかない。

 

……どこに連れてかれるんだろ、僕。

 

たえ「着きました、ここです。」

 

着いた!?

 

おぉ、まさかの言った矢先に着くという……。

 

楓「……ここ?」

 

たえ「はい、ここです。」

 

……公園、か。

 

意外と普通のとこだな。

 

たえ「さ、入って待ってましょう。」

 

楓「あ、うん。……ん?待ってましょう?」

 

え、今の、どういう意味?

 

たえ「……」

 

……どうせ聞いても答えてくれなそうだから、聞かないでおこう。

 

 

 

 

 

……ふーん、ほんとに普通の公園なんだなー。

 

水道があったり、ベンチがあったり、池があったり。

 

子どももいっぱいいて、いろんなことして遊んでる。

 

他にも学生や家族連れの人達、若い人から高齢の人までいて、みんなそれぞれ散歩したりベンチに座ったりなどしてくつろいでいる。

 

……こういう光景って、なんか見てて和むなぁ。

 

 

 

 

 

「ねぇお母さん、クレープ買って~。」

 

 

 

 

 

クレープ? 

 

……へぇ~、食べ物の移動販売もやってるんだ。

 

……ん?

 

……んん!?

 

 

 

 

 

「わーい!ありがとうお母さん!」

 

「落とさないように気を付けるのよ。」

 

 

 

 

 

……あの親子、どこかで……。

 

…………!!

 

そうだあのときだ!

 

僕がショッピングモールに向かってる親子だと思ってついていったら、なぜか間違って別の親子についていっちゃったときの、あの。

 

まさか、また公園であの親子を見かけることになるとは。

 

……そっか。

 

なんか初めて来た感じがしないなと思ったら、ここ奥沢さんと北沢さんに初めて会ったときのあの公園だったのか。

 

そのときに奥沢さんにショッピングモールへの道を教えてもらって、……その後はいろいろあったなー。   

 

たえ「はい。」ズイッ

 

楓「うわっ、花園さん。……え、これ、クレープ?」

 

たえ「いっしょに食べましょう。」

 

楓「あ、ありがとう。……あ、でもお金…「いいですよ。私の奢りです。」お、奢り……。」

 

一応デート(のはず)なのに、女子に奢ってもらう僕って……。

 

たえ「……食べないんですか?」

 

楓「いや、ちゃんと食べる……って早っ!」

 

たえ「?」

 

この子、食べるの早すぎでしょ。

 

もう半分いってんじゃん。

 

……僕も、食べるか。

 

上手く食べれるかなぁ?

 

……あー、ん。

 

……あ、うまい。

 

たえ「どうですか?」

 

楓「美味しい……。これ、何味なの?」

 

たえ「オレンジクレープです。空見先輩、SPACEでオレンジジュース頼んでたから、好きなのかと思って。」

 

楓「あぁ、なるほどね。……確かに、これ好きかも。」

 

たえ「ちなみに、私のはもっちりクレープです。生地がすごくもちもちしてて美味しいんですよ。」

 

楓「へぇ~。」

 

たえ「一口食べます?」

 

楓「え、いいの?」

 

たえ「もちろん。」

 

楓「ありがとう。じゃあ…「あーん。」……あの、花園さん?」

 

たえ「男女で食べ物を分け合うってなったら、あーんですよ。」

 

楓「あ……う、うん、そうだよね。そうなんだよね。それは、まぁ、分かってはいるんだけど、さ。……人いっぱいいるし、恥ずかしいっていうか…「えいっ。」!? ん!んん~!!」

 

たえ「どうですか?」

 

楓「んぐっ!……お、美味しい……。」

 

たえ「ですよね。」

 

び、びっくりしたぁ。

 

いきなり口の中つっこむんだもん……。

 

……花園さんって、そういうの気にしないんだ。

 

たえ「空見先輩のもくださいよ。」

 

楓「僕の?うん、いいけど…パクッ うわっ!」

 

たえ「……ん~、美味しい~♪」

 

……はは、ははは、ほんとすげぇなこの子……。

 

たえ「……そろそろかな。」

 

楓「? 何のこと?」

 

 

 

 

 

???「……おたえー!空見先ぱーい!」

 

 

 

 

 

ん?この声は……あ、北沢さん。

 

たえ「はぐみ、時間通りだったね。」

 

はぐみ「ちょっと遅れそうだったから、学校からここまで走ってきたよ!」

 

楓「へ?学校からここまで?……え、マジ?」

 

はぐみ「うん!」

 

学校からここまでって、結構距離あるよな?

 

……この子もすげぇな。

 

……あれ、そういえば。

 

楓「北沢さん、どうしてここに?」

 

はぐみ「おたえに誘われたんだよ!いっしょにキャッチボールやらないかって。」

 

楓「花園さんに?え、キャッチボール?」

 

はぐみ「そうだよ!空見先輩もいっしょって言うから、はぐみ、すごくすっごく楽しみで!ちょっと遅れそうだったってのもあるけど、学校終わったらすぐ家帰って、グローブ三つとボールを持ってすぐ家出て、そしてこの公園まで、ずっと走って…「ちょ、ちょっと待って、北沢さん。」? どうしたの?空見先輩。」

 

楓「……花園さん。」

 

たえ「何ですか?」

 

楓「……もしかしてこの公園に来たのって、北沢さんとキャッチボールをするため?」

 

たえ「はい。」

 

楓「じゃあ……デート、っていうのは?」

 

たえ「だからさっきまでデートしてたじゃないですか。」

 

楓「……そういうこと?」

 

たえ「そういうことです。あぁ、昼休みに付き合ってくださいって言ったのも、キャッチボールに付き合ってほしいって意味で言ったんですけど、気づきました?」

 

楓「……あ。……そっか、そういうことだったのか。」

 

たえ「はい、そういうことです♪」

 

……なるほどね。

 

僕はまんまと、花園さんの策略に乗せられてたってわけか。

 

昼休みのときの告白も、放課後のデートも、北沢さんとキャッチボールをするための、……嘘。

 

はぐみ「はい、おたえ。」

 

たえ「ありがとうはぐみ。すごい、本当に人数分あるんだ。」

 

はぐみ「小さい頃、家族でよくやってたからね。家族分持ってるんだよ。それで、これが空見先輩の分。」

 

たえ「私が渡すよ。」

 

はぐみ「そう?ありがとう、おたえ。」

 

たえ「……はい。これ、空見先輩の分です。」

 

楓「……」

 

たえ「……もしかして空見先輩、怒ってます?」

 

楓「……いや、別に。」

 

たえ「……」

 

はぐみ「おたえー、早くキャッチボールやろ…「ごめんはぐみ。私ちょっと、空見先輩と話してくる。」話?」

 

たえ「すぐ終わるから、ちょっと待ってて。」

 

はぐみ「……分かった!」

 

たえ「ついてきてください、空見先輩。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

たえ「綺麗ですよね、この池。ほら、鯉がいっぱいいるんですよ。」

 

楓「……」

 

たえ「……いつまで黙ってるんですか?空見先輩。いい加減何か言ってくださいよ。」

 

楓「……」

 

たえ「……分かりました。もういいです。」

 

楓「……」

 

たえ「……デート、楽しかったですか?」

 

楓「……」

 

たえ「公園に向かってる道での会話や、さっきのクレープ。時間は短かったですけど、……空見先輩的には、どうでした?」

 

楓「……あんなの、デートなんて…「言いますよ。」え?」

 

たえ「男子と女子がいっしょに歩いてたら、それはもうデートなんです。だからこの前の松原先輩との商店街も、りみとのライブも、さっきのクレープも。……全部同じデートなんです。」

 

香澄「……じゃあ僕は、……花咲川に転校してから、何回もデートをしてたってこと?」

 

たえ「空見先輩がそんなに女子と歩いてたのなら……そうなんだと思います。」

 

楓「……で、でも、僕は…「デートじゃないと思いたい。」!?」

 

たえ「それでいいんじゃないですか?解釈なんて、人それぞれなんですから。これは普通のお出かけ、これはデートっていうふうに、空見先輩も勝手に解釈しちゃえばいいんだと思います。」

 

楓「……勝手に、解釈……?」

 

たえ「今のを踏まえてもう一度聞きます。……さっきのデート、楽しかったですか?」

 

楓「……」

 

たえ「……」

 

楓「……うん、楽しかった。さっきのは、僕的に、……お出かけじゃなく、デートって解釈したい、かな。」

 

たえ「……空見先輩をからかうのは、いろいろ大変だな~。」

 

楓「? からかう?」

 

たえ「私、付き合ってくださいとか、放課後デートしましょうとか、先輩をからかうつもりで言ったんですよ?」

 

楓「……か、からかう、つもりで……?」

 

たえ「でも、今の会話で、空見先輩をからかうにはいろいろ考えなきゃなんだってことが分かりました。」

 

楓「その前に、まずからかわないでほしいんだけど。あと、からかうにしても言っていいことと悪いことがあると思う。」

 

たえ「まぁ、今回は確かに悪かったです。まさか、あんなに本気で信じ込むとは思わなかったですから。」

 

楓「誰だってあんな場面であんなこと言われたら、普通に告白だって思うよ。」

 

たえ「それがからかうってことなんですよ。」

 

楓「だからからかわないでよ!」

 

たえ「……ほんと、空見先輩って面白い人ですよね。」

 

楓「はぁ、何で結局そうなる…「はぐみのところまで競走ですよ。よーいドン!」いきなりすぎるよ!てか僕、キャッチボールするなんて一言も言ってないし!」

 

たえ「やらないんですか?」

 

楓「……や、やるよ!楽しみにしてくれてる北沢さんにも悪いし!」

 

たえ「……今度空見先輩に、何か埋め合わせでもするかな。」ボソッ

 

楓「? 何か言った?」

 

たえ「何も言ってませんよ。ていうか何で止まってるんですか?競走って言いましたよね?」

 

楓「花園さんも今止まってたじゃん!もぅ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あ!二人ともおかえり~!」

 

たえ「ごめんねはぐみ、遅くなっちゃった。」

 

はぐみ「全然大丈夫だよ!それよりおたえ、何で空見先輩、こんなに疲れてるの?」

 

たえ「さぁ?」

 

楓「はぁ……はぁ……は、花園さんって、意外と、……体力……あるんだ。はぁ……はぁ……はぁ……あー疲れたぁー。ドサッ!」

 

はぐみ「そ、空見先輩!大丈夫!?」

 

楓「大丈夫、じゃ、ない……。」

 

はぐみ「え~!ど、どど、どうしよ…「はぐみ、水ある?」水?……!そっか!……あった。空見先輩はい!お水だよ!」

 

楓「あ、ありがとう。……ゴクゴクゴク……ふぅ、生き返ったぁ。」

 

たえ「もう平気?」

 

楓「うん、まぁさっきよりは。」

 

はぐみ「良かったぁ、空見先輩が元気になって。」

 

楓「ごめんね北沢さん、心配かけたみたいで。」

 

はぐみ「ううん全然!はぐみは大丈夫だよ!」

 

たえ「……空見先輩、キャッチボール、できそうですか?」

 

はぐみ「! そうだよ空見先輩!キャッチボールやろうよ!」

 

楓「走って疲れてただけだから、できることはできるけど、……一つだけ言わせて?」

 

た・は「「何(ですか)?」」

 

楓「僕、キャッチボール下手だよ。」

 

はぐみ「下手って、どういうふうに?」

 

楓「ボールをそんな遠くまで投げれないし、グローブでボールを取るなんてのもほぼほぼやったことないし。」

 

はぐみ「もし上手くできなかったら、はぐみがその都度教えるよ。」

 

楓「……たぶん二人とも、僕の下手っぷりにうんざりする…「「それはない!」」え?

 

はぐみ「それはないよ、空見先輩。」

 

たえ「そんなことをするのは、他人かいじめっこくらいだよ。」

 

楓「……ふ、二人は、その……ぼ、僕の…「「友達でしょ?」」! ……うん、そうだね。」

 

はぐみ「よーし!そうと決まったら、さっそく向こうの空いてるところでキャッチボールだー!ダーッ」

 

楓「……」

 

たえ「……何してるんですか?空見先輩。行きますよ。」

 

楓「あ、うん。」

 

北沢さん、元気だなー。

 

なんか、丸山さんとかと気が合いそう。

 

……なるほどね。

 

一年生だから後輩だと思ってたけど、友達だったのか。

 

じゃ、これからもそう解釈しようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「行きますよー!……えいっ!」

 

楓「……うわっ!あ、ご、ごめん!」

 

たえ「……空見先輩、ほんとにキャッチボール下手なんだ。」

 

楓「……ふぅ。よし、次は僕か。……えいっ!」

 

たえ「え?」

 

楓「あ、曲がっちゃった……。ごめん、花園さん。」

 

たえ「……い、いえ。」

 

はぐみ「ドンマイだよ!空見先輩!」

 

たえ「……空見先輩って、私やはぐみが思ってる以上に、スポーツ下手?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

「あ、空見先輩、おはようございます。」

 

「おはようございます。」

 

楓「う、うん、おはよう。」

 

登校時、僕はいつものように一年生にあいさつされながら教室に向かったが、みんな昨日の花園さんの告白については何も触れてこなかった。

 

いや、触れる必要が無くなったというべきか。

 

昨日のあの一件、なんと花園さんが、あの告白は嘘、二ヶ月遅れのエイプリルフールだ、と、みんなに説明したらしいのだ。

 

最初そのことを聞いたときは、そんなので信じるわけないと思ったが、……なぜかみんな普通に信じたらしい。

 

二ヶ月遅れのエイプリルフールなんてのでなぜみんな信じたのかは謎だが、まぁ結果的にこの件は丸くおさまってくれたのでよしとした。

 

そしてもう一つ、びっくりしたことがあった。

 

 

 

 

 

花音『空見くん、数学のこの問題なんだけど、解き方とか分かるかな?』

 

楓『うん、分かるよ。これはこの数字をここに代入して……』

 

花音『……解けた!空見くん、ありがとう。』

 

千聖『楓って、数学"だけ"は得意よね。』

 

花音『千聖ちゃんも、分かんないところがあったら空見くんに教えてもらうといいよ。空見くんの教え方、すごく分かりやすかったから。』

 

楓『いや、そうでもないと思うけど……。』

 

千聖『……ならさっそく、この問題の解き方を教えてもらおうかしら。』

 

楓『え?あ、は、はい。これは……』

 

 

 

 

 

……昨日と比べて、二人の対応が明らかに違ったのだ。

 

あの告白の後、なぜか急によそよそしくなり、昼ごはんの途中にどこかへ行ってしまった白鷺さんと松原さん。

 

僕はてっきり怒ってる(理由は知らないが)のかと思ったが、そんなことは全然なく。

 

むしろ、あのことはなかったかのように普通に接している。

 

いつもと同じ感じに戻ったのはすごく嬉しいのだが、……なんかスッキリしない。

 

女子は考えが変わりやすいというが、二人もそういうことなのか否か。

 

まぁ、理由を知りたければ聞くのが一番良いのだが、……やめておこう。

 

これも、朝の一年生と同じ、花園さんの言った二ヶ月遅れのエイプリルフールというのを信じた、というふうに解釈しておこう。

 

……ほんと、女子って分からんな。




あと一話、あと一話でやっと……。

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